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MSのMRI -Brain atrophy ・Spinal cord・予後(CIS)-
通常、脳室拡大や脳梁の容積の減少として認められる。(Neuroradiology 1988;30478-80)
脳萎縮は発病早期から認められる。(Neurology 2000;541689-91)
MSでの脳萎縮の速度(年に0.6-1.0%)は加齢(年に0.1-0.3&)より早い。(Neurology 1999;53:1698-704; Am J Neuroradiol 2000;21:112-8; Radiology 2000;214:665-70; Neurology 2000;54:807-12; Brain 2001;124:1803-12; Lancet 2001;357:1576-82; Arch Neurol 2002;59:1572-6; Am J Neuroradiol 2002;23:1327-33)
健康人では脳室容積は毎年0.3 ml増加しているが、患者では毎年1.6 ml増加している。毎年組織が17-24ml減少している計算になる(Radiology 2000;214:665-70)。
脳萎縮の病理の詳細は不明だが、ミエリンや軸索の減少によると考えられており、発病早期では、脳の容積減少は灰白質より白質の減少による。(Radiology
2001;220606-10)
臨床の障害度はMS病変より脳萎縮とより強く相関する。(Neurology 2001;571253-8) I
FNβやNatalizumab、幹細胞移植を行って再発を抑制すると、治療当初の数ヶ月から1年は炎症病変を抑制することで、かえって脳容積は減少するという現象(pseudoatrophy)(Miller
DH, Soon D, Fernando KT, et al : MRI outcomes in a placebo-controlled trial
of natalizumab in relapsing MS. Neurology 68 : 1390-1401, 2007)もあるので脳萎縮を指標とする場合には注意を要する。
MSの脊髄病変の検出には、short-inversion-time inversion recovery-fast spin echoがコントラストが付いて検出しやすい、という報告がある(AJNR
1996;17:1555-65)。
脊髄MRIの役割としては、
1). McDonaldのcriteriaでも取り上げられたように、脳MRIでは診断できない場合に診断に寄与すること。
2). 脊髄病変の有無を調べることで、脳MRIだけでは鑑別診断が困難な疾患を除外する為に有用(Expert Rev Neurotherapeutics
2007;7:1203-11)
脊髄病変は脳病変と異なり、症状を呈することが多い(AJNR 1998;19:1025-33)。RRMS患者で脊髄症状を呈した患者の75%が脊髄病変がMRIで認められるが、symptomatic
brain lesionsは1%以下。(Neurology 1996;46:373-8)
脊髄症状を有する患者の55%で脊髄MRI所見が認められる。一方、91%では脳MRIで異常所見が認められる(Neurology 1991;41:657-60)。
脊髄病変は胸髄より頚髄のほうが多い(Radiology 2002;223:46-56)。脊髄のT2病変数とdisabilityとの相関は乏しいが(Neurology
1993;43:2632-7)、上部頸髄の萎縮とdisabilityとは相関する(Brain 1996;119:701-8)。 脳と同じように、円形かovoid状の病変を示し、1-2椎体の長さにとどまる(Radiology
1995;195:725-32; Eur J Neurol 1998;5:35-48)。脊髄病変の80%はcross-sectionでみると脊髄の1/2以下の病変の範囲にとどまる(Eur
J Neurol 1998;5:35-48)。
MS以外の脊髄炎ではこれ以上の長さになることが多く、横断面でも脊髄の1/2以上に病変が拡大する(Eur J Neurol 1998;5:35-48)。MSでは脊髄の外側か後方に限局することが多く(Am
J Med 1953;12:510-46)、典型的には1側に偏移していて両側性ではない。
脳病変では脱髄病変はMRI病変より範囲が広いことはない(Ann Neurol 2007;62:219-28)が、脊髄ではMRI所見を超えて脱髄病変が広がっていることが多い(Ann Neurol 2002;51:652-6)。
SPMSやPPMSではRRMSより頚髄が萎縮しており、RRMSでは顕著ではない(Neurology 1998;51:234-8; J Neurol
2001;248:297-303; JNNP 2003;74:1090-4; J Neurol 2003;250:307-15; Acta Neurol
Scand 2003;108:401-6; J Magn Reson Imaging 2006;23:473-6; J Magn Reson
Imaging 2007;26:61-5; JNNP 2006;77:1036-9)。PPMSは脳(13%)より脊髄萎縮(26%)をきたすことが多く(Eur
J Neurol 2003;10:663-9)、PPMSはmyelopathyを呈することが多いが、脊髄MRI所見に関してはSPMSとPPMSとで一定した見解がない。SPMSのほうが脊髄病変や萎縮が目立つという報告がある(Neurology
1999;53:765-71)一方で、余り差異を認めない報告もある(Brain 2001;124:2540-9)。
Clinically isolated optic neuritis 115例のMRIで、27%は脊髄病変があり, 70%では脳MRIで所見があった。一方、脳MRIで所見のなかった患者の12%で脊髄病変が認められた(JNNP
2003;74:1577-80)。
脊髄での無症候性造影病変の頻度 8例の新しい症状を有さない、寛解期のMS患者さんのうち、わずか1例(13%)で脊髄の造影病変が認められ、25例の患者さんたちを2, 6, 12ヶ月後にMRIを撮影したところ、6例で9つの造影病変があって、このうち3つ(症例数は不明ですが)はasymptomaticだった、という報告があります(AJNR
1998;19:1025-33)。感覚的にはこの程度でも多い印象があります。
DH Millerらの報告もあります(Neurology 1996;46:373-8)。10例のRRMSを1年以上、毎月、脳と脊髄のMRIを撮影。6例の患者が11回再発し、うち8回は脊髄。合計167個も脳MRIでは造影あるいはT2新病変(両方でMRI
activityという表現もします)が認められ、脊髄では19個発見されましたが、脳ではわずか1個のみが症候性病変。脊髄では1/3が症候性だったそうです。逆に言えば、再発してもMRIでは脳でも脊髄でも
責任病巣は同定できないことが少なくない、ってことですね。
また、再発時には(つまり、疾患活動性が高い時期)脳でも脊髄でも同時に新病変が見いだされることが多く、再発前後に脳や脊髄に病変が出現し、造影病変の出現は再発の予兆とも言える。脊髄だけに新病変が見いだされることは少ない。つまり、疾患活動性をチェックするには脊髄MRIを撮らなくても活動性の検出率は46%から45%に低下するだけだそうで、疾患活動性の検出には脳MRIの新病変をみるだけで充分ということですね。
MSと同じ病変がCIS患者の50-80%で見いだせる(Arch Neurol 1986;43:452-5; Brain 1987;110:1579-616;
Ann Neurol 1997;41:392-8)。
CISの時点でのT2病変の数と容積はMSに進展する高いリスクと相関し、後の障害度とも相関する(Brain 1993;116:135-46; Neurology
1994;44:635-41; Brain 1998;121:495-503; Neurology 1999;52:599-606; N Engl
J Med 2002;346:158-64; Neurology 1997;49:1404-13)。
CIS発症時に脳MRIで所見があった50例中44例(88%)がMSに進展したが、正常だった21例中でMSになったのはわずか4例(19%)のみ(N
Engl J Med 2002;346:158-64)。また、14年経過観察したところ、EDSS scoreと発症5年後のT2病変容積とが相関(r=0.61,
p<0.001)し、EDSSと発症後5年間のT2病変容積の増加とが相関(r=0.61, p<0.001)(N Engl J Med
2002;346:158-64)。
Optic Neuritis Treatment Trial (ONTT)研究では、視神経炎患者のうち50%は脳MRIに異常所見があり、10年後、これらの56%がPoser criteriaのCDMSに進展した。異常所見のなかった視神経炎患者群では22%のみがCDMSに進展しなかった(Arch Ophthal 2003;121:944-9)。これらのことから、CIS患者の早期の脳MRI所見がMSへの進展を決定し、発症早期の病変が後のEDSSを決定していることが示唆される。