電話でのご予約・お問い合わせはTEL.075-822-2777
MSのMRI -撮影法・RRMSの診断-
脳MRIの撮影法でFLAIRは有力で、84例の患者で810の皮質や皮質直下白質病変を見いだせるが、T2ではこれらの26%しか同定できなかった(Arch Neurol 2001;58:742-8)。
大脳皮質病変検出にもFLAIR画像は有力(Neuroradiology 1996;38(Suppl 1):S10-3)。しかし、FLAIRは後頭蓋窩や脊髄ではほとんど病変を見いだせない(Neurology 1997;49:364-70)。
sagittal imagesは脳梁内病変の検出に有用で、診断が確定している42例の患者の93%で脳梁病変が見出されるが、他の原因による白質病変を呈した127例ではわずか2%に見出されたのみ(Radiology
1991;180:215-21)。 15例の患者を対象に検討したところ、1.5Tより4Tで撮影すると、さらに88もの病変が見いだされた、という報告がある。一人当たり5.9もの病変がさらに検出可能となったことに。(Am
J Neuroradiol 1998;19:1489-93)
4Tでは1.5Tより患者当たり平均で6個以上の病変を見いだせる(AJNR 1998;19:1489-93)。
3Tでは造影病変数を21%多く同定でき、造影病変容積では30%増加、T2病変容積では10%多く見いだすことができる(Invest Radiol 2003;38:423-7)。
Gd-DTPA注射速度
1991年のガイドライン(JNNP 1991;54:683-8)によれば、0.1 mmol/kgを3分以上かけて静注すべきで、血管外に漏れると炎症を起こすのでscannerで確認すべきだそうな。
造影剤を1筒より3筒投与すると、造影病変の数も大きさも増加する。(J Neuroimaging 1994;4:141-5; Am J Neuroradiol
2003;24658-62)
造影病変をより多く検出するには、
Weekly MRIを行うと、
全てのT2病変の出現前あるいは同時に造影される。毎週撮影することは診療上困難であるばかりか、造影病変は一過性で、30%でしか造影病変は見出されないので(JNNP 1996;60:339-41; Brain 1988;111:927-39)、毎週撮影する必要性はない。 新しいT2病変の多くは造影される。このとき、以前から存在しているT2病変が再び造影されることもある。毎月撮影すると、造影病変はT2病変の2倍見出される。
造影パターンは、
当初は瀰漫性に、次第に結節状となって、やがてはリング状になる。大きな病変がリング状に造影される場合があり、このとき、リングは皮質側が開き、”open-ring”を呈する。この所見は膿瘍との鑑別に重要である(Neurology
2000;54:1427-33)。
3 mm厚と5 mm厚sliceでの脳造影病変の比較
Filippiらによれば、slice厚を15 mmから3 mmにまで薄くすると、病変容積は直線的に増加。5 mmを3 mmにすると、平均8.8%病変容積が増加するそうです。眼で判断するときは一次元ですから(造影病変の大きさの定義は直径です)、2%程度の差ということになりますね。(Ann
Neurol 1995;38:749-54)
増加する理由として、
partial volume effectsを減少させることがあげられています。 その翌年、Filippiらは3ヶ月以内に再発し、IFNなどの治療をしていない26例のRRMSと7例のSPMSを対象に、1
mm、3 mm、5 mm厚slice別の大きさ別に検討した造影病変数を計測(Ann Neurol 1996;40:901-7)。6-10 mmと10
mm以上では差はありませんでしたが、5 mm以下の造影病変は48, 60, 73と薄くなるにつれて増加。
3 mmと5 mmとではp<0.04と有意。
5 mm sliceで少なくとも1つ以上造影病変のある14例中6例(43%)で、3 mm sliceでさらに検出可能だった、と。5 mm sliceで検出できなかった病変が3
mm sliceで発見されるという報告はないようです。ま、検出できる造影病変数が違えば、臨床試験で差が出しやすいので、3 mm no gapは良いでしょうが・・・
MRI撮影時のslice厚とgapの関係をsimulationした結果が、以前、報告されています(AJNR 1987;8:1057-62)。 その結果、小さなlow-contrast lesionsの場合は、patial volume effectsの影響を受けやすいので、thin slicesが良く、high-contrast lesionsの場合は、gapの影響を受ける。MS病変はsmall, low-contrast lesionsなので、gapがあっても、thin sliceのほうが検出しやすい。
clinically definite MSでは、95%以上の患者で脳MRIで多発性の大脳白質病変が認められ、75-85%の患者で局所的脊髄病変が認められる。これら二つの MRIで1-2%以下の患者のみが所見を呈さない。(Miller
DH. Neuroimmaging in multiple sclerosis in "Multiple Sclerosis A Comprehensive
Text", ed by Raine CS, McFarland HF, Hohlfeld R, Saunders, Edinburgh,
2008, pp.69-87)
脳梁病変は38%に認められたが、最終的にはBarkhof criteriaには取り上げられなかった。
modified Barkhof criteria (Ann Neurol 2003;53:718-24)は、以下の4項目のうち3つ以上がRRMSのdissemination in spaceの条件だが、全ての病変は3
mm以上。
CISに対する新しい診断基準が出ている(一般にMcDonaldの診断基準はMSと言われていますが、本質はCISの診断基準です)(JNNP 2006;77:830-3)。
McDonaldの診断基準との違いは以下。
空間的多発性
部位は同じで、脳室周囲、皮質白質境界部、テント下、脊髄。これらで必要とされる病変数を減らしました。これら4ヶ所のうち、2ヶ所以上で1個以上の病変。造影病変の項目を廃止して、新しいT2病変。
時間的多発性
3ヶ月後に1つ以上の新しいT2病変が必要。 Vancouver/CanadaからMS center向けのalternative criteriaが出ている(Adv Neurol 2006;98:125-46)。
CSFでオリゴクローナルバンドが陽性かIgG indexが亢進していること。この場合、脊髄病変は1つの脳病変としてカウント可能。 時間的多発性の条件の記載はない。
American Academy of Neurology Therapeutics and Technology Assessment Subcommittee
MRI criteriaというのがdissemination in spaceに関して出ている(Neurology 2003;61:602-11)。
空間的多発性に関してはMRIでの証明が推奨されている。症状だけではダメ。空間的多発性に関しては以下の3つのうちのどれかがあればよい。