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研修医向け

MSについて -McDonaldの診断基準-

診断基準−(神経内科 2004;60:113-5.より)

McDonaldの診断基準 (2005年秋に改訂されているが、改訂版の追加修正は後日に)この基準を満足しない場合は、possible MSとする。
  1. 2回以上の発作があって、2ヶ所以上の病変を証明する客観的な証拠のある場合
  2. 2回以上の発作があって、病変を証明する客観的な証拠が1ヶ所しかない場合
  3. 1回の発作と2ヶ所以上の病変を証明する客観的な証拠のある場合
  4. 1回の発作と病変を証明する客観的な証拠が1ヶ所しかない場合 (*clinically isolated syndrome) 時間的・空間的多発性の証明が必要である。
  5. 潜行的に発症し、慢性進行性に経過する場合 (Primary progressive MS)
T. 2回以上の発作があって、2ヶ所以上の病変を証明する客観的な証拠のある場合
時間的空間的多発性を示す病変の証拠があって、2回以上の発作があれば、検査データは不要である。しかし、この場合、MRIあるいは脊髄液所見あるいはVEPで異常所見を示すことが期待され、仮にこれらの検査が正常であった場合は、診断にはきわめて慎重であるべきである。

U. 2回以上の発作があって、病変を証明する客観的な証拠が1ヶ所しかない場合
  1. MRIで証明された、空間的に異なる2番目の病変の存在が必要となる。
  2. MRIで証明された、MSに合致した、少なくとも2つ以上の脳病変あるいは一つの脳病変と一つの脊髄病変の存在があって、さらに脊髄液所見が陽性である必要がある。
    診断には、1)あるいは2)の条件が必要。
    あるいは、MRI画像がない場合、
  3. 異なる部位による再発が出現するまで診断を保留する。
V. 1回の発作と2ヶ所以上の病変を証明する客観的な証拠のある場合
  1. MRIで証明される時間的多発性が必要**
  2. MRI画像が得られない場合、時間的多発性を証明する2番目の発作が必要
    診断には、1)あるいは2)の条件が必要。
W. 1回の発作と病変を証明する客観的な証拠が1ヶ所しかない場合
   (*clinically isolated syndrome) 時間的・空間的多発性の証明が必要である。
  1. 空間的多発性の証明

    a). MRIによる証明**
    b). MSと思われる2ヶ所以上のMRI病変と脊髄液所見
    a)かb)の一方が必要。

  2. 時間的多発性の証明

    a).MRIによる証明**
    b).次の再発をまつ

    診断には1)と2)の両者が必要である。


*clinically isolated syndrome (最初のエピソードからなる症候群):
一側視神経傷害あるいは脳幹あるいは脊髄傷害からなる症候群で、多発性硬化症の早期の臨床的なエピソード(Neurology, 53:1184, 1999)

**空間的多発性
以下の4項目のうち、3項目を満たす必要がある。
  1. 一つのGd造影病変あるいは造影病変がない場合はT2強調画像で9つ以上の病変
  2. 少なくとも一つのテント下病変
  3. 少なくとも一つのjuxtracortical病変
  4. 少なくとも3つの脳室周囲病変
cross sectionにて病変は少なくとも3mm以上の長さが必要。
一つの脊髄病変*は一つの脳病変として数える。
* T2強調画像で少なくとも3mmの長さが必要だが、2椎体以下の長さ。病変はcross sectionでは脊髄の一部であって、全体であってはいけない。脳病変がなくて、二つ以上の脊髄病変だけでMSの画像上の時間的空間的多巣性が証明される場合もあり得るが、この件については今後とも検討が必要と考える。MSの脊髄病変の画像については、感受性や特異性の検討が今後必要。

**時間的多発性
  1. 最初のMRIが発病3ヶ月以上経過した後の場合。最初の症状とは関連のない部位にGd造影病変があった場合は、以前の病変ではなくて新たに形成された病変として考える。仮にこの時に造影病変がなかった場合には、3ヶ月後に取り直すべきである。この時、新たなT2高信号病変あるいは造影病変が認められた場合に、時間的多発性が証明される。
  2. 最初のMRIが発病の3ヶ月以内だった場合。発病の3ヶ月以上経過後に撮影された、2回目のMRIで新しいGd造影病変があった場合に、時間的多発性が証明されたと考える。仮に2回目の時点で造影病変がなかった場合は、最初の撮影から3ヶ月以後に撮影されたMRIで新しいT2病変があるか造影病変があれば、時間的多発性が認められた、と考える。
X.潜行的に発症し、慢性進行性に経過する場合 (Primary progressive MS)
  1. 脊髄液所見
  2. 空間的多発性の証明-MRIやVEPにより証明する
    1. MRIで9ヶ所以上のT2病変の存在
    2. 2ヶ所以上の脊髄病変
    3. 4-8ヶ所の脳病変と1ヶ所の脊髄病変
    4. VEPの異常と4-8ヶ所の脳病変
    5. VEPの異常と4ヶ所以下の脳病変と1ヶ所の脊髄病変

      a)-e)のいずれかを満足する必要がある。

  3. 時間的多発性の証明
    1. MRIによる証明**
    2. 1年以上進行する経過

      a)あるいはb)のいずれかを満足する必要がある。

診断には1)2)3)とも満たす必要がある。


除外診断の必要性
MSを強く示唆する臨床所見や検査所見がある場合であっても、MS以外では説明できないことが重要である。