本文へスキップ

多発性硬化症の診断や治療に関する最新の情報サイト

電話でのご予約・お問い合わせはTEL.075-822-2777

研修医向け

MSについて−治療と再発について注意するべきこと−

治  療

●急性期

再発時には、メチルプレドニゾロンを1g/dayを維持用の電解質液200mlに混ぜて3日あるいは5日間、点滴する。再発であるかどうかを判断することは、時に困難なこともある。病変が存在すると想定される部位のMRIは、必ずしも必要ではない。

MRIにより再発病変が認められなくとも、必要と考えられた場合、ステロイド・パルスを行うべきだからである。再発後無治療であっても、4週間以内であれば、パルスを試みる価値はある。

●再発・進行防止

発症早期から臨床的に明らかな再発がなくとも、脳内ではMRIで検出できる再発が進行していること、脳萎縮が発症初期から進行していることから、早期診断治療が必要であり、そのためにMcDonaldの診断基準が提案された。

特に、CISの段階での診断と治療が必要である。

FDAとEMEAで承認されたMSへの薬剤効果

  CIS RRMS SPMS 
with relapses
SPMS
without relapses
SPMS
without relapses
IFNβ1b  +  +  +  −  −
IFNβ1a
Azathioprine −*
Mitoxantrone

* FDAは認めていない。 EMEA: Europe  Medicines Agency
(Expert Rev Neurotherapeutics 2008; 8: 433-55より、一部変更)

disease-modifying drugsおよびFTY720の効果

 Drugs Doses (duration) Mean number of enhanced lesions (placebo) Annualized relapses rate (placebo) Proportion of relapse-free pts (placebo)
IFNβ1b 30 μg im weekly 0.8 (1.65) 0.61 (0.9) 38% (26%)
IFNβ1a 250 μg sc every other day (2 years) 2 (4.9) 0.84 (1.27) 31% (16%)
Mitoxantrone 12 mg/m2 iv every NA 0.35 (1.02) 57% (36%)
Natalizumab 300 mg iv every 4 weeks (2 years) 0.1 (1.2) 0.23 (0.73) 67% (41%)
FTY720 1.25-5 mg po per day  (6 months) 1.25 mg: 1.29 5 mg: 0.27 (2.21) 1.25 mg: 0.35
5 mg: 0.36 (0.77)
1.25 mg: 86%
5 mg: 86% (66%)

(Expert Rev Neurotherapeutics 2008; 8: 699-714より一部修正)

インターフェロン(IFNβ1b)

作用機序としては、抗原提示の抑制、Th1からTh2へのシフトと、ICAM-1やVCAM-1発現を抑制することで、T細胞の中枢神経への侵入を阻害する。
  • 治療効果

    IFNb1bを投与しても効果がない患者さんがいる。こういうヒトたちをnon-responderとよんでいる。non-responderの確立した定義はない。投与前から効果の有無が推定できれば良いが、未だに確立した方法はない。

    OSMSではCMSより効果が乏しいとか、ベタフェロン投与1ヶ月ほどで再発が認められるケースが10例ほど国内で報告されていて、そのほとんどがOSMSであることから、OSMSではCMSとは異なる病態が関与していることが予想される。
    OSMSでは禁忌とまでは言えないが、注意深い観察が必要であるし、今後、何らかの対策が考慮するべきと思われる。

    IFNb1b投与により、中等度・高度の再発が約50%減少する。再発抑制効果の発現には1ヶ月以上を要するので、投与早期に再発したからといって中止するべきではない。最初の再発までに要する期間は、投与群で295日、プラシーボで153日だったという報告がある。また、脳MRI造影効果が投与前に比し、1/8に減少し、T2強調画像で新病巣と拡大病巣の総和である活動病巣面積が劇的に減少する。

    T2強調画像での総病巣面積は、プラシーボ群では年平均 6%増加するが、投与群では5年間増加がほぼ抑制される。しかし、EDSS障害度や脳萎縮の進行の抑制は充分とは言えず、軸索障害への抑制は困難である。一般的に、現在、治験レベルも含めて本症で使用されている薬剤のほとんどは再発防止であり、炎症を抑制する作用であり、神経変性過程を抑制する薬剤の開発が今後の課題といえよう。

  • 投与方法

    患者さん本人あるいは家族が隔日に皮下注射をおこなう。どうしてもできない場合、訪問看護ステーションの看護師の助けを求める場合もある。後述するように、皮膚の局所反応を防ぐために、注射部位を左右の腹部、左右の大腿を順番に交代でおこなう。
    自分でシリンジを刺すことができない場合、ベタアシストという補助具を使用することもできる。ただ、音が大きいなどの理由で、意外に利用されることは少ない。

  • 副作用とその対策

    副作用としては、注射部位の局所反応、発熱などのflu-like symptoms、うつ、頭痛などが挙げられる。 注射部位に発赤や腫脹、硬結がしばしば認められる。稀には壊死になることさえある。これを予防するには、ビデオなどのマニュアルにも説明してあるが、注射部位を左右の腹部、左右の大腿などを利用して、同じ部位に短期間で反復注射しないようにする。 ただ、なかには、8日間間隔が開いて同じ部位に戻ってきた際に、注射しやすいからと、再び同じ場所に注射してしまう患者さんもいらっしゃるので、同じ部位といっても3 cm以上離して注射するなど具体的に説明することが望ましい。

    両手はあらかじめきれいに洗い、注射液は注射前にあらかじめ手で温めておく。あらかじめ30-60秒間、注射部位を氷で冷やすと、疼痛や腫脹を予防できる。発赤が生じたら、ステロイド軟膏を塗布する。壊死になったら、外科医に相談する。壊死を生じるようだと継続が難しくなるが、筋注では生じないといわれるので、推奨はしないが、皮下注射ではなくて、少し深めに注射する手はある。筋注タイプのIFNβ1a(Avonex)に変更も可能である。

    発熱、頭痛、寒気、倦怠感などのflu-like symptomsもしばしば認められる。投与開始時、1/4から1/2量から始め、体を慣らすと良い。これは特に投与開始6ヶ月以内に出現するので、開始当初だけ鎮痛解熱剤を注射する前に服用すると抑えることができる。多くは、1-3ヶ月ほどで中止できるが、稀には3年以上経過しても鎮痛解熱剤を必要とすることもある。
    うつは、当初問題となり、自殺者も出た。投与量が少なくなって、頻度は減少しているが、最近、再び投与量を増加する動きがあるので、今後、対策が重要になるだろう。うつ症状が出現したらIFNを中止し、SSRIなどの抗うつ療法をおこなう。うつ症状が良好に治療されている限り、安全にIFNは使用できるとされているが、もともと、うつがある場合、IFNの投与は難しいと思われる。
    検査所見では、肝機能障害、白血球減少、好中球減少、リンパ球減少などが認められることがある。  IFNに対する抗体が生じると、IFNの効果が乏しくなるとも考えられたが、長期投与で消失することが少なくないし、必ずしも抗体の有無と効果が一致しないともいわれており、中止の判断基準にはならない。

他の予防方法

  • 定期パルス

    4ヶ月ごとにステロイド・パルス(1g/day for 5 days)を行うことで、T2強調画像で認められる脱髄病変の拡大や再発率を抑えることはできないが、T1強調画像でblack holeとして認められる壊死病変の拡大や脳萎縮の進行を抑制できる、と言われている(Neurology, 57:1239-47, 2001)。

  • Mitoxantrone

    急性白血病や悪性リンパ腫、乳癌などに保険適応されているが、もちろんMSでの適応は本邦ではない。欧米では、すでにMSで使用されることは常識とされている。宇多野病院では倫理委員会の承認の元、すでに10例以上の患者さんに投与して、良好な結果を得ている。 

    副作用としては、特に心毒性が強く、一生のうちの投与量が140 mg/m2以下と設定されている。当初はヨーロッパでずいぶん心不全で死亡したが、実際に、この限界近くまで投与することは少なくなり、次第に1回投与量も少なくなり、むしろ、長期間投与する方向へ変わってきているように思われる。

    国内でも少しづつ投与例が増えている。最大でも1回投与量は、12 mg/m2程度に留めるべきであろう。総投与量が多くなければ心機能(left ventricular ejection fraction)への影響は心配しなくとも良いが、投与前には心電図や心エコーによる心機能のチェックは必要である。心機能への影響は薬剤中止後も持続するので、注意が必要である。

    また、胎児の奇形性への影響があるので、妊娠する可能性がある女性には投与するべきではないし、治療中は妊娠を避けるべきである。投与後、4日後から7日後頃に、白血球が減少する。週に2回ずつ検血をチェックし、白血球が2000以下になるようだったら、G-CSF投与を考慮する。末梢血血液像で単球が増加してくれば、白血球は立ち上がってくる。血小板数にも注意する。1例、白血病になったという報告があり、あらかじめ説明しておくべきであろう。

  • Plasmapheresis

    埼玉医大の野村教授が定期的に血漿交換することで、再発を予防できる可能性があることを報告しているが、まだ数例のデータであり、対象となる病型や方法など、今後の検討が必要である。

再発について注意するべきこと

一般的な定義は、前回のエピソードが改善を始めてから30日以上経過した後に、新しいあるいは従来から存在している症状が増悪し、24時間以上持続する場合、とされていますが、これはあくまでも臨床研究上、同じ基準で比較するための定義で、24時間以上経過しないと再発ではないので、検査もステロイドパルスもしない、という理由にはなりません。炎症病変を待つ理由はなく、速やかに治療をするべきです。30日以内に症状が増悪した場合、臨床疫学的には再発とは言いませんが、急性期の治療をするべきです。