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専門医向け

MSについて論文2

NMO IgG の対応抗原

NMO IgG の対応抗原はaquaporin-4 water channel という報告が出ました!(J. Exp. Med., 202:473-7, 2005) すでに昨年末に、Dr. Vanda A. Lennon はNeuromyelitis optica の 患者血清中にはマウス中枢神経の微小血管の内腔側に結合するIgG 抗体が、NMO の73%、視神経 脊髄型(東北大例)の58%に認められることを報告しています。このとき、laminin と部分的に colocalize していることを示していました(Lancet, 364:2106-12, 2004)。

このNMO IgG は中枢神経だけでなく、腎や胃粘膜とも反応するため、aquaporin-4 が抗原として候補に挙がりました。で、AQP4-transfected cells の細胞表面にNMO IgG が結合することが示されました。

世界で二番目、我が国で初めて新潟大学脳研究所神経内科・田中恵子助教授が、宇多野病院 MS センターの田中正美と共同研究にて、この抗体の測定系を確立し、日本人のデータについて、 平成17 年度神経免疫研究班班会議および2006 年3 月に名古屋で開催された日本神経免疫学会で 発表しました。

MS の血漿交換の効果は脳病理に

MS の血漿交換の効果は脳病理に依存する、という当然といえば当然ですが、きれいな報告 がMayo Clinic らの共同研究で明らかになりました(Lancet, 366:579-82, 2005)。

欧米のMS 患者では急性増悪した劇症型の45%はステロイドに反応せず、血漿交換で改善す る、と言われています(数字が大きいですが、fulminant attacks が母集団)(Weinshenker, B., “Multiple Sclerosis: tissue destruction and repair, 2001:267-74”)。

脳生検を行い、2 週間で隔日に7 回血漿交換を施行した19 例を解析。すると、効果と脳病理 とは驚くほど対応していて、抗体と補体が沈着する、Pattern II の10 例はすべて改善が認められ、他のPattern I やIII の患者、それぞれ3、6 例はすべて効果なし。この効果はall or noneで、平均3日で改善が認められています。

ここでは対象から除外されていますが、NMO=OSMS も当然、血漿交換は効果が期待できます(Neurology, 58:143-6, 2002)。

日本初の第2 の免疫抑制剤

スイスNovartis 社は10 月1日、三菱ウェルファーマから導入し た免疫抑制剤FTY720 が、MSを対象としたPhase II 臨床試験で有望な結果が得られたと発表。 FTY720 は、冬虫夏草の一種であるlasaria sinclairii 菌が産生するミリオシン(myriocin)を リード化合物として、化学修飾により創製された化合物。細胞障害を引き起こすT細胞に直接作用することが特徴で、既存の単剤もしくは既存の免疫抑制剤と併用することで、臓器移植の拒絶反応抑制や自己免疫疾患などの治療薬になると期待されている製剤だそうな。
(Med Wave, 2005/10/4 より)

進行期MS の本態

進行期MS の本態SPMSやPPMSの治療が問題となっています。脳障害の機序は再発と 進行期とでは異なっていると考えられています。その根拠は・・・

  1. 病初期での再発頻度が進行期の発症時期に影響するけれども、障害の進行は進行期の発症前後の再発に影響を受けない(Brain, 126:770-82,2003; Neurology, 62:601-6, 2004)。
  2. 免疫抑制剤や免疫調整剤は急性期や再発時では有効で、白質での新しい造影病変の形成を抑制できますが、進行期患者ではほとんど影響を与えません。

進行期患者、特にPPMSでは白質に新しい病変が形成されたり、造影病変が見いだされることは稀ですが、normal-appearing white matter (NAWM)でのsignal 異常や進行性の脳萎縮が認められています。Waller 変性による軸索変性だけでは、このような瀰漫性の変化は説明できません。また、上記の所見は巣状の白質病変では説明できないので、巣状白質病変では進行期の病変を説明できません。そこで、進行期MS患者で何が起こっているかをLassmann らが解析 しました。慢性期では全脳に及ぶ炎症性病変がおこり、これと関連してcortical demyelination とNAWM での緩徐進行性の軸索障害が重要で、これらが進行期の本態であることを報告しています(Brain, 128:2705-12, 2005)。

MSのMRI診断基準

MSのMRI診断基準として、Barkhof らの報告(Brain, 120:2059-69, 1997)が有名で、 McDonald の診断基準の元にもなっていますが、MS研究者以外には意外に知られてはいないようなので、ご紹介します。Dissemination in space の基準(three of four of the following)ですが、 欧米でMS のMRI 所見として何を重視しているかが良く判ります。

  1. At least one Gd-enhancing or nine T2 lesions
  2. At least one infratentorial lesion
  3. At least one juxtracortical lesion
  4. At least three periventricular lesions

    (Ann. Neurol., 52:47-53, 2002)

PLP1 遺伝子変異によるPPMS

PLP1 遺伝子変異によるPPMS という母・息子例の報告があります(Ann. Neurol., 58:470-3, 2005)。部位はLeu30Arg(c.89T>G)。臨床的にも放射線学的にも通常のPPMSとは区別が付かないそうな。自己抗体はおそらくは陰性なのでしょうが、記載はありません。しかし、 記載のある母親ではCSF のIgG 合成は亢進しており(5.9 mg/day; ref range は0-3)、IgG index も高値であり(0.79 mg/day; 0-0.6)、OCB も陽性です。この検査所見に関しては、考察の最後にふれられていて、”contrary”phenomenon で、PMD の病態に炎症が関与していることを示唆している、と。

PLP1遺伝子変異によるPelizaeus-Merzbacher disease (PMD)やspastic paraplegia type 2 (SPG2)は伴性劣性遺伝子形式をとりますが、heterozygous の女性が発症することがある のは他の遺伝子疾患と同じ。また、遺伝子変異により重症度が異なり、その程度は一般には、症状の強い順に、connatal PMD>classical PMD>complicated SPG2>pure SPG2 と言われています。

パーキンソニスムを呈したMS

基底核や視床下部が傷害される頻度の割には少ないと されていますが、MS ではあらゆる不随意運動を呈しうることが判っています(Movement Disord., 10:418-23, 1995)。2002 年までに8 例ですがパーキンソニスムを呈したMS が報告さ れています。9 例目がArgentina から報告されています(Movement Disord., 18:108-10, 2002)。 復視で発症した48 歳女性で、2 年後に歩行障害、静止時振戦、無動、軽度の固縮、hypophonic voice が出現。CSF のOCB は陰性。経口ステロイドにてパーキンソン症状は劇的に改善。文献的にはステロイドに反応することは一般的ですが、levodopa にはごく一部でしか反応しないようです。

INFβaでneuropathy が出現

INFβ1a でneuropathy が出現、という6例の報告がIsrael からでています(Neurology, 65:456-8, 2005)。うち5 例では薬剤の中止で改善。ところが、1 例でIFNβ1b を再投与したとこ ろneuropathy が再び出現し、IFN のタイプによる特異性がないことが判明。今まで、IFNβによ るRaynaud 現象とか、亜急性の皮膚エリテマトーデス、自己免疫性肝炎、自己免疫性甲状腺炎が 報告されてきましたが、基本的には元々存在していた病態が表に出てきたもの、と考えられてきました。従来、IFNaによる副作用としてNeuropathy が知られてきましたが、機序はともかく、 IFNbでも出現しうること、国内で販売されているIFNβ1b でも起こり得ることが示唆されました。 奇妙な現象としては、IFNbはimmune-mediated neuropathies の治療にも使えることで、似たような現象として、cyclosporin がSLE を増悪することがある、ということが紹介されていました。

アレルギー増加の原因はMS を減少させるはずですが

アレルギー増加の原因はMS を減少させるはずですが・・・理化学研究所に移られた、谷口 克先生が「花粉症はなぜ増えたか」について、述べておられます(WEDGE 17(11):58-9, 2005)。東京都杉並区の住民で調査したところ、戦前生まれの人にはアレルギーがほとんどなく、 戦後生まれに多かったそうで、1970 年にはダニ・スギに対するIgE 抗体陽性率は10%だったのに、 2000 年には80%以上に達している、と。世代間調査でもこの傾向は顕著で、これらに対する抗体陽性率は20 代(80%)、40 代(70%)、50 代(40%)、60 代(30%)。

アレルギー増加の原因としては、

  1. 抗原量の増加―戦後の植林によるスギ面積の増大、住宅環境改善による家ダニの増加
  2. ディーゼル車からの大気汚染物質の増加

    アレルギー患者発生頻度は交通量の多い地区と少ない地区とで、15%、5%と差があり、旧東独 (6%)と旧西独(21%)でも差があるそうな。

  3. 感染症の激減

生後6 ヶ月までに感染症に罹患すると、アレルギーに罹患する頻度が減少するそうで、兄弟間 で相互に感染することでも違いが出てきて、第一子(6.3%)、第二子(4.9%)、第三子(3.1%)と順に アレルギー罹患率が減少。一人っ子や生後3 ヶ月以内に抗生物質を投与されると、アレルギーは 増加するそうです。

スギ花粉症を持つ成人10 名にBCG を3 ヶ月ごとに注射すると、2/3 ではスギ花粉に対するIgE が1/4 にまで低下し、花粉シーズンになっても抗体価が上昇しなかった、と。

これは、環境がきれいになって細菌感染の機械が減少することでTh1 細胞が刺激を受ける機会が少なくなって、Th2 優位となり、アレルギー罹患率が増大する、というもの。最近、世界中で MS 患者数が増加していますが、これでは説明が付きません。それにしても、MS の現象はなぜなのでしょうか?診断しやすくなったことは理由としては考えられてはいません。それだけでは説明がつかないからです。

MS 患者の予期せぬ死因

MS 患者の予期せぬ死因についての報告が米国メリーランド州から出ています(Am. J. Forensic Med. Pathol., 26:244-9, 2005)。なんで法医学雑誌なのかというと、刑法がらみの「危ない死」も含まれているからでしょうね。著者はなぜか、Johns Hopkins Univ.の方。1982 年 から2004 年までの50 例の剖検例を対象に検索。
うち、7 例は生前MS とは診断されていなく て、病理解剖で初めて診断されたケース。意外に多いものですね。
死因の42%は神経症状に関連したもので、9 例はMS に直接関連した原因で、視床下部や脳幹の病変が原因と考えられました。
残る12 例はMS による、たとえば運動機能障害により湯船に落ちたとか、positional asphyxia あるいは誤嚥によるもの。
28%は神経症状に関連していない原因、
たとえば動脈硬化 性心血管疾患や肺栓塞、代謝疾患によるもの。
30%は外傷、中毒などにより死亡。
50 例中24 例 は事故か殺人、自殺、あるいは原因不明による死亡。
組織学的には多くの場合は活動性はありま せんが、15.6%で慢性活動性脱髄病変が主に大脳半球に認められています。
心肺機能の中枢での 病変が死亡原因となっていることもあり得ることが示唆されました。

ところで、この研究の対象となった患者さんたちの民族的背景は、African-American が21 例、白人は29 例で、白人に圧倒的に多い疾患であることを考えますと、いくら黒人にNMO が多く、ADL が悪いとしても、この数字は奇妙な印象を与えます。ちなみに、Maryland 州での比率は、African-American が64%、白人は28%。黒人の方が貧しいでしょうから、病理解剖をする対象自体にそもそもバイアスがかかっているのかもしれません。 このグループは、この期間に2 例のNMO 女性例を経験していますが、NMO はMS ではないとして、今回の研究対象から外しています。

新しいhelper T 細胞のmodel

従来、IFN-γを産生するTH1 細胞とIL-17 を産生するTH17 細胞は共通の前駆細胞に由来すると考えられてきましたが、TH17 細胞は独自の前駆細胞由来であり、この分化にTH1 細胞とTH2 細胞由来のIFN-γとIL-4 とが両者ともTH17 細胞の分化を抑制する、という新しいモデルが提出されました。
一方、成熟したTH17 細胞はIFN-γやIL-4 による 抑制を受けにくくなるそうな。それゆえ、自己免疫疾患や炎症性疾患の治療の標的としては、TH1 細胞やTH2 細胞ではなくて、TH17 細胞そのものでなければならない、ということになります。

TH17 細胞の分化を誘導するIL-23 と抗IL-4 と抗IFN-γのcombination は、TH17 細胞を誘導する有効 なcocktail ということになります。逆に、抗IL-17 抗体を投与することで、病気が成立した後 でもEAE を抑制できることが示されています(Nat. Immunol., 6:1069-70, 2005)。

IL-17 は好中球の増殖や分化、chemotaxis に関与しているのでproinflammatory cytokine と言われていて、活性化されたCD4 陽性あるいはCD8 陽性細胞から分泌されます。多発性硬化症では、末梢血や脊髄液中(Mult. Scler., 5:101-4, 1999)の単核細胞やgene-microarray で脳組織 (Nat. Med., 8:500-8, 2002)でIL-17 の発現が増加していることが示されています。脊髄液中の IL-17 は、CMS よりOSMS で増加していることが九大から報告されています(Brain, 128:988-1002, 2005)。

さらに、病理学的にOSMS の脊髄では壊死組織にmyeloperoxidase 陽性の好中球が浸潤していることが示され、CMS で認められるようなTh1 細胞の活性化に加えて、OSMS ではIL-17/IL-8 系がとりわけ脊髄病変形成に重要であると強調されています(Brain, 128:988-1002, 2005)。

また、ラットでのEAE の経過に影響を与えると言われています(Exp. Neurol., 163:165-72, 2000)。

免疫調整剤を投与されたMS で癌は増加しているか?

SLE やRA, PSS で癌の頻度が高いという報告があり、免疫抑制剤の使用により悪性腫瘍の頻度が高くなる危険性が指摘されている一方で、自己免疫反応は癌を予防するという逆の報告もあります。そこで、イスラエルのグループは、Glatiramer acetate (国内未発売)やIFNβ、IVIg を投与されたMS 患者での癌の頻度を調査(Breast Canc. Res. Treat., 89:265-70, 2005)。これには、米国のNCI や筆者が住んでいた街、Rockville のInformation Management Services も調査に協力。女性のMS 患者では むしろ一般住民での頻度より低いこが判明。一方、Glatiramer acetate を投与された女性患者では、乳癌の頻度が高いことが判りました。

アフリカ系アメリカ人MS 患者のIFN への反応性

アフリカ系アメリカ人MS 患者は一般に重篤であると言われています(Neurology, 63:2039-45, 2004)。IFN beta 1a の週1 回 筋注と週3 回の皮下注を比較した、randomized controlled trial であるEVIDENCE study で解析されました。48 週語の時点で、アフリカ系では白人に比して、より再発し、再発していない時間がより短い傾向が認められました。MRI でもT2 強調画像でより多くの新しい病変が認められ、IFN への反応性が白人とは異なる可能性が示唆されました(Arch. Neurol., 62:1681-3, 2005)。我が国でのIFN の治験では、CMS とOSMS とで差異はなかったそうですが、この時点でのCMS 患者群に、3 椎体以上の脊髄病変を有し脳病変を伴う、従来はOSMS の典型患者が入ってはいないかどうかが問題になるかもしれません。アフリカ系MS 患者にNMO が入っていない保証もありません。その理由は、NMO IgG が検出できるようになって、概念が変わってきたため。それについては、Mayo Clinic のDr. Weinshenker が次のようなletter を発表しています。

OSMS はNMO でありMS ではないという挑発的な題名のletter をDr. Weinshenker は、東 北大の藤原助教授らとともに発表しています(Lancet Neurol., 5:110-1, 2006)。NMO IgG の陽性率だけでなく、臨床症状や病理学的所見に両者で差はなく、脳病変が典型的なNMO の60% で認められ、10%ではMS 様の所見を呈し、8%でMS としては非典型的な所見を呈するそうな。 ゆえに、脳病変を呈さない、という従来のNMO の診断基準は修正する必要がある、と。もちろん、これはMS の定義によるわけで、OSMS と通常のMS の病態が異なることは確かでも、 MS 自体もheterogenous ですから、言葉の定義に過ぎないともいえます。重要なのは、欧米でも、従来は彼らもMS と呼んでいた患者群、特に有色人種のMS 患者の中にNMO が入ってい た可能性が高い、ということもあるかもしれません。

MS のMRI 所見

MS のMRI 所見「大脳白質病変と拡散テンソルtractography について」と題して、京大 放射線医学・三木幸雄先生によるご講演が2006 年3 月7 日に宇多野病院臨床研究部セミナーとして開催されました。内容は、画像診断,26:222-33, 2006 に発表されています。

black hole の定義は、急性期病変でも浮腫のために一過性にT1 低信号になるため、少なくと も6 ヶ月以上続く場合を言う、と(AJNR, 27:455-61, 2006)。

FLAIR はテント下の診断には不向き。PD が良い。 slice は幅は3mm 以下で撮るべきで、造影する場合は、注射開始5 分は待ってから撮影するべき。注射後何分がよいかは疾患により異なり、MS では15 分後くらいか。

tumefactive MS では、リング状に造影されるが、リングの一部がとぎれる。これをopen-ring sign と呼ぶ。glioblastoma ではとぎれる事は少なく、鑑別の要点となる。

MS では脳室に接する脳梁が前方から後方まで線状に高信号となるが、機序は不明。

ステロイドパルスで難治性hiccup

ステロイドパルスで難治性hiccup が誘導された、という症例報告が国内から出ています(Eur. J. Neurol., 13:201-2, 2006)。56 歳男性のRRMS で、C1-3 レベルに病変があり、再発 時に1g/day for 3 days という通常のパルスを点滴したら、投与開始12 時間後にしゃっくりが出現し、4 日間持続。同様のエピソードを3 回反復。従来からこのような報告があるようで、最初 の点滴から4-5 時間後に出現し、3-7 日間持続する特徴があります。動物実験では、中脳の神経伝達をglucocorticoids は促進するそうで、C1-3 の脱髄病変単独ではしゃっくりが起きないのに、 ステロイドが入いることで閾値が下がることが考えられます(この論文では逆の言い方になって いますが・・・)。

脳梁は脳梗塞を起こしにくい

脳梁は垂直に血管が分布しているためだそうですが、脳梁内高信号は、年齢、leukoaraiosis、高血圧と相関するそうな。

hnRNPs に対する抗体

hnRNPs に対する抗体がMS 患者のCSF 中で、91.4%と高率に見いだされることが佐賀医大から報告されています(Ann. Neurol., 56:778-786, 2004)。hnRNPs は、heterogenous nuclear ribonucleoproteins のことで、paraneoplastic で見いだされる抗体の対応抗原の一つで あるRi はhnRNPs family の一つ。今回の抗原は、hnRNPs のB1 蛋白で、IgG 抗体は血中には見いだされていません。hnRNP B1 はoligodendroglia で発現。MS で最近話題のEB virus と関連があり、hnRNPs A2/B1 蛋白のC 末のglycin-rich portion はEB virus nuclear antigen 1 とhomology があるそうです。In vivo でoligo を傷害しうるでしょうか?

MS の病型別のeffector

CMS Th1 IL-12 が関与
OSMS Th17 IL-6, TGFb
(第26 回京都神経フォーラム-2006/4/7 にて神経センター山村部長のご講演から)

MAIT 細胞

腸管細胞に多く、自己免疫疾患を制御していると考えられています。無菌マウ スでは欠如していますが、腸内細菌を再構築することで回復すると言われています。第二のNKT 細胞と言われているそうです。Va19-Ja33T cell。細菌が減少するなどの生活環境の変化により CMS が増加しているのではないか、と言われていますが、この細胞が関与しているのではないか、と山村先生。この細胞をノックアウトさせるとIFNg産生が亢進し、EAE が増悪し、この細胞を投与するとEAE が軽減すると言われます。また、MAIT (mucosal-associated invariant T) cell のligand であるL1b はEAE を抑制するそうです。最近、話題の細胞だそうな。
(第26 回 京都神経フォーラム-2006/4/7 にて神経センター山村部長のご講演から)

MS での制御細胞

CD25+ immunoregulatory T cells
NK*
CD122+CD8+
NKT
  Classical NKT*
  Non-classical NKT*
MAIT cells*
* 腸管に多い細胞。このことから、腸内細菌叢の重要性と環境内の清潔さの影響の可能性が示唆 されますね。(第26 回京都神経フォーラム-2006/4/7 にて神経センター山村部長のご講演から)

MS の予後判定の指標

MS の予後判定の指標CD11c という細胞があります。これはMS のNK 細胞に強く発現 しています(CD95+CD11c+)。CD11c が少ないと再発頻度が低く(再発するのは1/10 例)、CD11c が多いと4/8 例で再発。
(第26 回京都神経フォーラム-2006/4/7 にて神経センター山村部長のご講演から)

EB ウイルスはMS の発症や再発と関連している

EB ウイルスはMS の発症や再発と関連しているという結果が、現代の技術で蓄積 されています。MS では過去に様々な病原体が調査され、最近では、Chlamydia penumoniae やHHV-6 がよく知られています。EB ウイルスは25 年前からMS の原因ウイルスではないか と言われてきましたが、最近になって、見直されています。面白いことに、MS と同じように伝 染性単核症は高緯度地域に多いそうですし、EB ウイルスの抗体の陽性率が高いこと、伝染性単核症罹患者ではMS のリスクが高いことが判っています。11 のcase-control studies と3 つの cohort studies をmeta-analysis した調査結果が報告されています(Ann. Neurol., 59:499-503, 2006)。このことからEB ウイルスのワクチンによりMS の発症を予防できるのではないか、と考えられています。SLE ではlupus autoantigen と抗EB ウイルス抗体が交差反応することが示されていますし、MS でもmolecular mimicry が報告されています。DRB5*0101 と結合する EB ウイルスの627-641 のペプチドと、DRB*1501 拘束性のMBP の85-99 のペプチドと反応するT 細胞受容体が存在していることが報告されています(Nature Immunol., 3:940-3, 2002)。EB virus についてのまとめを、環境因子を中心としたMS の疫学についてのreview として今年発売される神経進歩で紹介しましたので、お楽しみに。

BBB/BNB を通過しやすい条件

  1. 分子量の小さいもの
  2. 脂溶性であること
  3. プラスにチャージされていること
  4. 特殊なinflux 系を持っているもの

(第26 回京都神経フォーラム-2006/4/7 にて神田・山口大学教授のご講演から)

ロペミンは麻薬?

止痢剤であるロペミンの構造は合成麻薬に似ているんだそうです。脂溶性の部分が水溶性になっているためにBBB を通らないけれども、仮にロペミンをCSF 中に入れられれば麻薬と同じ効果が期待できるのではないか、と神田教授。
(第26 回京都神経フォーラ ム-2006/4/7 にて神田・山口大学教授のご講演から)

Tc1 はEDSS score と関連

Tc1 はEDSS score と関連RRMS 患者末梢血リンパ球の産生するサイトカインをFACS で解析し、IFNg産生CD8 陽性細胞(Tc1)%がEDSS が高くなると増加するという相関関係が見いだされたと、報告されました(Cytokine, 32:111-116, 2005)。この関係は、IFNb治療患者では認められませんでした。