2015年3月号 NO.3

  1. 紀伊國屋書店HPに記載している本棚から
  2. VZV再活性化
  3. オリーブオイルと合う食品
  4. 国内5番目のAKB48グループ、NGT48誕生!
  5. 世の中、肉も魚も熟成がトレンド
  6. seronegative NMOの特徴
  7. seronegative LETMの特徴
  8. NMO phenotype成人例での抗MOG抗体
  9. Devic病の抗体
  10. Anti-AQP4 & anti-MOG double positive
  11. 抗MOG抗体陽性患者の特徴
  12. 抗MOG抗体陽性LETMの特徴
  13. 抗MOG抗体有無での小児ADEMの特徴の違い
  14. ジェネリックは血中濃度の保証はありません
  15. 子宮癌ワクチン
  16. 「意見には個人差があります」
  17. コンサート終了後に
  1. 紀伊國屋書店HPに記載している本棚から 
    HPのトップページの下の方に本棚一覧のコーナーがあり、「もっとみる」をクリックしますと、「更新が新しい順」で2015/1/16現在、845件掲載されています。右端の「参照数が多い順」をクリックして下さい。第6位に「京都と医療と人権と」と銘打った本棚があります。参照数63446件。開けますと、今日までで1352件登録されています。どうなっているのか不明ですが、発行日順ではありませんし、実は厳密には登録順でもなく、順序はこっちでは変更できないため、テーマ毎に分類もできません。今日のトップ3は、「イギリス流輝く年の重ね方」「ディーセント・ワーク・ガーディアン」「日本酒」。昔読んだ忘れられない本や書店で発見した本、京都新聞や金沢の北國新聞書評欄で面白そうな本、読んで面白かった本、今後、参考にしたい本など、筆者の考えていることとは真逆の本までリストに挙げていますが、そこそこ刺激的だと思います。CDも少し紹介しています。いずれにせよ、これが私の感性、ということで・・・コメントも少し書いていますので、最近のものをご紹介します。  
    山田昌弘中央大教授とともに「婚活」を提唱した白河桃子さんの「専業主婦になりたい女たち」には、「未だに専業主婦志向が強いんだそうで、短大生気質が特徴だった、小倉千加子さんの「結婚の条件」時代の頃から、ほとんど変化はないようです。一度、結婚や出産で離職すると、再就職が困難なことは、身近でも容易に経験すること。 労働者派遣法改正後、非正規労働者の固定化あるいは拡大、特定技術者が慣れた職場で働き続けることができなくなることが心配されています。専業主婦志向の女の子たちはごく一部の収入の多い男の子を奪い合っています。子育て家庭を増やす努力は、専業主婦志向の女の子たちを減少させる政策と同じです。かつて、米国も専業主婦志向が強かったですが、国民性の違い、などと安易に考えずに、男の子も含めた教育、保育所の整備など、きちんと考えるべきです。」  
    山下祐介さんの「地方消滅の罠」には、「増田 寛也【編著】「地方消滅―東京一極集中が招く人口急減」(中公新書)を自治体が消滅する不安をあおっていると批判。現実に地方紙ではその方向で増田レポートを1面で紹介していました。 筆者は大国経済を志向する成長優先から、「多様性の共生」へ転換するべきと主張されているそうです。 評者は筆者とは異なり、増田レポートは経済規模拡大を目指す政府の意向に沿っていると批判し、地方や農山村への回帰現象に注目しています。確かに、経験が全くない20代の若者の農業への参加が増えています。」  
    永江 朗さんの「そうだ、京都に住もう」には、「都会なのに街のサイズがちょうどいい、とおっしゃる著者の意見には賛成ですが、個人的には必要な買い物する店がもっとこじんまりとまとまっていて欲しいデス。ただ、地元では、二条の映画館へ行ってきたと錦市場で言うと、遠いところまで、と言われます。この距離感は大都市とは異なります。」  
    マキューン・グレッグの「エッセンシャル思考—最少の時間で成果を最大にする」には、「安請け合いした仕事に忙殺され、全てが中途半端なまますり減ってゆくヒトへの提案で、2014年に全米ベストセラーになったそうですが、翻訳版も発売1ヶ月で7万部のヒットに。大事なことを選択し、他は捨てる作業は必要です。時間に限りがある以上、仕事量を制限せざるをえません。選択することは当ったり前なのですが、断ったらどう思われるだろうか?どういう言い訳で断れば良いのだろう?ヒトからの評価に過剰なほど囚われてしまうヒトのために。訳者は京大卒。」  
    楊 海英「チベットに舞う日本刀―モンゴル騎兵の現代史」には、「若き日のダライ・ラマとの交流も描かれた、ブラット・ピット主演の映画『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(1997年)の最後には、チベットに流れ込んだ中国人民解放軍の凄まじい破壊と虐殺が描かれ、中国では公開禁止になりました。このチベット動乱では、侵略の先兵として旧日本軍から訓練された、日本刀を掲げたモンゴル族の騎兵部隊が送り込まれました。少数民族の虐殺を強いられた少数民族の悲劇を描いた歴史書」
  2. VZV再活性化 はFingolimod投与中の35例中7例で認められますが(Neurology 2013;81:174-81)、FTYだけではないようで、BG-12でも播種性VZVや髄膜脳炎の自発報告が出ています。意外に、BG-12はリンパ球に効果があるようで・・・
  3. オリーブオイルと合う食品 
    千原ジュニアの番組にゲスト出演した、モデルのSHIHOさん(秋山成勲夫人)は故郷・滋賀県近江八幡市の和菓子の「たねや」さんのオリーブ大福(通常の大福に「たねや」さんのオリーブオイルをたっぷりかけて食べます)が美味しいと紹介。番組スタッフは、他の食品にかけても美味しいのではないか、とスタジオで実験。ところが、バニラアイスクリーム、チョコレート、苺ショートケーキのどれにかけても、ジュニアさんもSHIHOさんも絶賛。ほんまかいな?(テレビ朝日「千原ジュニアのシュッとしょ!」2015年1月17日25時過ぎに) tryしてみます?
  4. 国内5番目のAKB48グループ、NGT48誕生! 
    なにも、ビックリマークを付ける必要もないんでありますが・・・2015年10月には新潟市に劇場がオープンするそうな。オリンピックに合わせて、各地からの選抜メンバーから構成されるJapan48を結成?なんちゅう企画もあるんだそうですが、ま、ご勝手に。姉妹グループにはAKB48・SKE48・NMB48・HKT48があるようで。
  5. 世の中、肉も魚も熟成がトレンド 
    牛肉の表面にカビが生えるまで1ヶ月間、冷蔵庫に寝かせることはよく知られていますし、冷蔵庫内で冷風を当てる方法も開発されています。肉だけではなく、最近では魚さえ、腐る寸前まで「熟成」(魚で熟成なんて言って良いのでしょうか?)させるお店が出てきています。アミノ酸にまで分解されることで、旨味が増すようです。そう言えば、佐渡療養所に応援に行っていたとき、港から病院へ行く途中のタクシーの中で運転手さんに言われたことでありますよ。「お客さん、女、紹介しましょうか?40前の腐る寸前が一番美味しいんですよ!」絶句したことでありましたです、はい。この流行に乗り遅れるな、とばかりに金沢市には「熟成マカロン」なんていう商品もあります。
  6. seronegative NMOの特徴 
    anti-AQP4抗体陽性NMOとの比較がトルコから報告されています(J Neurol 2011;258:464-70)。21/35例(60%)が抗体陽性。seropositiveNMOと比較しますと・・・
    1). seropositive NMOでは女性が圧倒的に多いですが、seronegative NMOでは性差はありません。
    2). disabilityは軽度で、EDSSは3.5 ± 1.7 vs 5.1 ± 2.2 (p < 0.01)。
    3). 有意ではありませんが、monophasicの傾向あり (4/14 vs 1/21例)。
  7. seronegative LETMの特徴 
    抗AQP4抗体は55/108例(50.9%と低いのです)で陽性で、LETMを呈した脊髄炎韓国人患者で解析した結果がHo Jin Kimのグループが報告(Hyun J-W, et al. Mult Scler, in press)。陰性患者のうち、7例は後にseronegative NMOに進展し、4例は抗MOG抗体陽性(つまり、4/53例7.5%のLETMで抗MOG抗体陽性)。残りの42例のseronegative LETMをseropositiveと比較して解析。
    1). 男性優位(33/42例 79.6% vs 11/55例 20%, p < 0.001)
    2). 発症年齢が高め (43.1 ± 9.8 vs 37.4 ± 10.1, p = 0.006)
    3). 病極期での障害度が軽症で、EDSSの中間値は3.0 vs 8.0 (p < 0.001)
    4). transverse myelitisの頻度が低い (10例 23.8% vs 35例 63.6%, p < 0.001)
    5). MRIでは延髄まで病変が伸張することは稀 (1/20例 5% vs 19/36例 52.8%, p < 0.001)
    6). 脳MRIでの白質病変が少ない (3/37例 8.1% vs 31/55例 56.4 %, p < 0.001)
    7). 脳MRIでのNMOに特徴的な所見 (0/3例 vs 23/31例 74.2%, p < 0.001)
    8). 他の自己抗体は見出されない (0/37例 vs 18/50例 36%, p < 0.001)
    9). CSF GFAP値がMSより高めだが、seropositiveより圧倒的に低い (1.4 ± 1.7 vs 0.5 ± 0.6 vs 172078.0 ±3805.1 ng/mL)。  
    GFAPの値から考えますと、他の臨床像は必ずしもNMOとは異なりますが、MSとNMOの中間値なので抗AQP4陰性、抗MOG抗体陰性LETMはNMOの軽症型(軽症型は男性優位とか?)が主体なのかもしれません。さらに、抗MOG抗体陽性患者の特徴も持っているようなので、両者の混合群なのでしょうか?抗MOG抗体を発症時の血清で測定したかどうかも問題ですね。同じように、抗AQP4抗体陽性率が低いことも気になります。
  8. NMO phenotype成人例での抗MOG抗体 
    27例の成人NMO/NMOsd患者のうち4例で、抗MOG抗体が陽性 (14.8%)という報告がOxfordから出ています(Neurology 2012;79:1273-7)。Seronegative患者での抗MOG抗体陽性率は、やはり低いのですネ。うち3例は男性。3例はclassic Devic病。ほぼ同時に発現する視神経炎と脊髄炎で発症する、古典的なDevic病患者で抗MOG抗体が見出されたという報告が東北大からもありますので、Devic病は抗MOG抗体による脱髄疾患の可能性が高いようです。しかもmonophasicが主体であることから、IgG抗体ですが1次免疫応答のようにミエリン蛋白への免疫応答は一峰性で、AIDP類似の病態のように思われます。  
    このシリーズでは、抗AQP4抗体と抗MOG抗体double positive例はありません。
  9. Devic病の抗体 
    古典的なDevic病の日本人31歳男性例で、脳脊髄液中のglial fibrillary acidic protein (GFAP)が上昇せずにmyelin basic proteinが上昇した、MOG-EAEのような患者で抗MOG抗体が見出されました(Ikeda K, et al : Mult Scler, in press)。同様の患者は既にOxfordからも3例報告されていますし(Kitley J, et al : Neurology 79 : 1273-1277)、
    スペインからは抗AQP4および抗MOG抗体陽性のDevic病が2例報告されています(Höftberger R, et al. Mult Scler, in press)。
    再発性NMOとは異なり、Devic病は抗MOG抗体陽性の脱髄疾患のようでありますね。
  10. Anti-AQP4 & anti-MOG double positive 
    抗MOG抗体の一部ではCBA assayで抗AQP4抗体が認められ、稀ですが(少なくとも世界で4例-うち1例は未発表)抗MOG抗体と抗AQP4抗体のdouble positive (Kezuka論文は誤解される記述ですが、両抗体とも測定はCBA。立体構造を認識しないペプチドを抗原としたELISAは非特異的反応です)( Nat Rev Neurol 9 : 455-461, 2013)が存在し、それぞれが完全に独立して存在しない場合もあります(Neurology 83 : 475, 2014; Martinez-Hernandez E, et al JAMA Neurol, in press; Höftberger R, et al. Mult Scler, in press)。後2編はDalmauの論文ですが、2例は同一患者かもしれません。
  11. 抗MOG抗体陽性患者の特徴 について、48例のNMO、84例のLETM、39例の視神経炎などスペイン患者でのデータがDalmauらにより報告されました(Höftberger R, et al. Mult Scler, in press)。抗AQP4抗体陽性患者との比較で、
    1). 若年(27 vs 40.5歳)
    2). 女性優位性はない(53% vs 90%)
    3). 単峰性が多い(41% vs 7%)
    4). 身体障害度が軽い(EDSSが1.5 vs 4.0)
  12. 抗MOG抗体陽性LETMの特徴 
    抗MOG抗体陽性患者の特徴について、抗AQP4抗体陽性LETMと比較して、
    1). より若年(35 vs 46歳, p = 0.05)
    2). 単峰性が多い(80% vs 14%, p = 0.017)
    3). conusまでの全ての脊髄部位が傷害される(40% vs 3%, p = 0.029)
    4). 身体障害度が軽い(EDSSが2.0 vs 4.0, p = 0.043) (Höftberger R, et al. Mult Scler, in press)
  13. 抗MOG抗体有無での小児ADEMの特徴の違い  
    2009-2013年にドイツ、オーストリア、イタリアから抗体測定を依頼された患者のデータをまとめた結果が報告されています(Baumann, et al. JNNP, in press)。231例のinflammatory demyelinating diseaseのfirst episodeを呈した小児例を対象とし、MS/CIS、NMO、optic neuritis、transverse myelitis、acute cerebellitisなどを除外してADEMと診断された39から、経過観察でADEMではないと判断された6例も除外し、残った33例のADEMが対象。興味深いのは、この6例は全て抗MOG抗体が陰性であるだけでなく、うち5例では脳MRIで2つ以上の非典型的所見があり、病変は消失しなかったそうな。多くの患者で抗MOG抗体価は経過で低下。このことから、病初期での測定の重要性が示唆されますね。
      抗MOG抗体陽性   陰性 
    CSF細胞数  53  10  0.038
    脳MRI所見  large, hazy, & bilateral lesions    100%  57.1%  0.003
    no atypical features*  0  1  0.032
    病変完全消失  58.8%  21.4%  0.036
    LETM    92.9%  33.3%  0.003
    症状の完全消失  78.9%  64.3%  0.038
        * small lesions, well-defined lesions
  14. ジェネリックは血中濃度の保証はありません 
    主成分が先発品と同一でも安定剤などは異なりますから、吸収などの薬理は異なります。測定をしていないので安価なわけですね。ビタミン剤などのように充分な量が配合されていたり(それでも不充分な場合は点滴でグラム単位で投与しますし・・・)、薬理動態の詳細までは拘らなくても充分な薬剤はともかく、Tacrolimusのような薬剤は困ります。院外薬局の多くも後でトラブルになることは嫌がりますから、多くは指示がなくても先発品を出すところが多いです。では、本当に濃度に差があるのか?実は、確認したかったのですが、後発品を出している薬局がほとんどありませんでした。もしかすると、先発品でも傾向はあるのですが、ジェネリックの場合、同一の用量を継続していても、次第に血中濃度が下がる可能性はあるかもしれません。何かあると困りますから、患者に不利益が生じることがあらかじめ判っている治療に関する臨床研究のprospective studyはとても筆者にはできません。平気で実行している神経内科医もいますけどねえ・・・
  15. 子宮癌ワクチン は世界50ヶ国以上で推奨されているそうな。「副反応」が出ているのは日本だけ、という意見があるそうで、TBS「news 23」では2009年から12歳以上の女性に接種を推奨してきたデンマークの実態を取材(2015年1月12日)。これまでに50万人以上が接種。取材したのはサラ・ヘレス・ニールセン(14)さん。毎朝、立ち上がるまでに30分以上かかることも。激痛、易疲労性、倦怠感、痙攣、歩行障害、短期記憶障害も。通学不可。12歳で接種し、2回目の接種後に発症。主治医は神経内科医ですが、多くの医師は心の問題と考えているので、「患者であるということは必要以上に大変なんだ。信じてもらえないから。」と。デンマーク政府はワクチンとの因果関係は証明されていないので、接種は継続しているそうです。これは日本とは異なります。TBS取材班の取材申し込みは保健省に拒否されました。  
    デンマークでは副反応を訴える患者が急速に増加している、と。保健省は2014年9月までに1159例あり、2割が激しい疼痛や運動障害があるそうです。比較しますと・・・
     日本  デンマーク
     約340万人接種  約50万人接種
     2475例(2014年3月まで)  1159例(2014年9月まで)
    診断基準など医学的根拠はありませんので、単純な比較はできませんが、意外に頻度はデンマークの方が多いんですね。  
    デンマークでは”HPV Vaccine Info”というHPが2014年4月に立ち上がって、幅広い情報を発信。日本・デンマーク共同研究が始まっているそうです。デンマーク側は患者80人が通院している、デンマークでの副反応治療の拠点、国立フレデリスクベア病院。TVで紹介された日本側代表は、東京医大医学総合研究所・西岡久寿樹教授。両国の患者の症状はほぼ同じで、西岡教授は「線維筋痛症と同じような症状で、自律神経の障害の様々な症状が全部出ている。」共同研究の結果はWHOにも提出される予定だそうです。  
    実は、デンマーク以外からも報告があって、イギリスからは2012年7月までに6213例、フランスからは2013年9月までに2092例報告されているそうであります。  
    ワクチンと様々な症状との因果関係は不明確で、WHOは「安全性に問題はなく、疼痛も短い期間のもので、自然に治る」とコメントしています。明らかなpsychogenicな症状を呈している患者さんが少数混じってはいるようですが・・・有害事象自体が心因反応だけなのか否かは、血液や生理検査などの他覚的所見がなくても、判断可能とは思いますけどねえ、診察したことがないので個人的な発言はできませんが。 (TBS「NEWS 23」2015年1月12日放映より)
  16. 「意見には個人差があります」 
    (NHK「今夜も『生で』さだまさし」での常套句。NHKですから!)
  17. コンサート終了後に 
    みんなで「お疲れ様でした」って言うところ、「激しい夜を!」っていう奴がいますけどネ。よく判りませんけどネ。 (NHK「今夜も『生で』さだまさし」2014年2月1日より、さださんのお言葉)