2015年1月号 NO.3

  1. De-escalation therapy
  2. 義務投票制度
  3. Seronegative NMOでの抗MOG抗体陽性率
  4. NMO患者でのリンパ球のまとめ
  5. お米の分類
  6. NatalizumabではNMOは治療できない
  7. 今月のお言葉
  8. Natalizumab治療中の患者血清中にはAQP4非発現HEK細胞でも非特異的蛍光を発する
  9. 文化保育園(大阪・堺市)のしつけ教育
  10. Natalizumab治療中患者末梢血ではCD19陽性細胞%が増加
  11. マッスルスーツ
  12. Regulatory B cells?
  13. 慣れていないのか、いい加減なのか・・・
  14. アルツハイマー病発症前に早期診断が可能に
  15. Grapefruit juiceで体重増加抑制
  1. De-escalation therapy という概念があります。強力な薬剤から弱めの薬剤に切り替えることですが、充分に疾患活動性をコントロールしてからなら、あるいはそのような薬剤を用いた治療後に行うなら成立するでしょうが、そうでなければ押さえきれないのは当然。3から45ヶ月(平均: 26.3ヶ月) Natalizumab治療を行った13例のNTZ中止後、7例にCopaxonを6例には無治療でfollowするという報告がドイツから出ています(J Neurol 2011;258:1665-9)。NTZ中止12ヶ月以内にNTZ群5/7例、無治療群では全例に再発が認められています。最初の再発までの期間の平均は全群で5.5ヶ月。中止した理由は明確ではありませんが、PMLのriskのために24ヶ月を中心に中止する傾向があるようです。
  2. 義務投票制度 
    香港では民主主義的な投票制度を求めて主要道路や政庁前広場を占拠し、高校生や大学生たちが自分の未来をかけて政治活動をしていますが(逮捕された若者たちのその後を、国際的にきちんとfollowしないと彼らの生命も危険です。「尋問」のために大陸に移送されると、そのまま行方不明になる恐れがあります)、日本では若者たちの選挙離れが進んでいます。  
    日本人の若者達が香港の学生たちの声を取材し、Youtubeに掲載しました。日本で20代の投票率をあげるために活動を行っている、学生らの団体「ivote」関西支部の代表をつとめる京都大学1年の徐東輝さんや、香港に留学中の柴田奈々さんなど、4人の20代の若者達だそうです。投票前日に、既に所有している普通選挙への投票権をしっかり行使して欲しいと日本の若者たちに呼びかけました。このことは、TBS系列の「サンデーモーニング」(2014年12月14日)の冒頭で紹介されました。  
    一方で、投票は国民の義務だとして、罰則規定を設けている国があります。コレを義務投票制度と言います。たとえば・・・  
    シンガポールでは選挙人名簿から末梢されます。スイス、オーストラリア、ルクセンブルグ、キプロス、ウルグアイなど。うち、キプロス、フィジーでは入獄規定も。北朝鮮では無期限の入獄だそうな(スッゲー)。
  3. Seronegative NMOでの抗MOG抗体陽性率 
    4/27 (14.8%)で陽性。Oxford Univから。(Neurology 2012;79:1273-7)
  4. NMO患者でのリンパ球のまとめ が出ています。  
    Th1細胞はウイルスや細胞内細菌の制御に必要で、Th2は寄生虫、TH17はある種の細胞外細菌や真菌への免疫応答に重要。NMOのCSFではIL-6とIL-17が増加して、末梢血ではTh17やIL-17産生CD8陽性T細胞が増加しています。NMOはTh17介在性自己免疫疾患のモデルとも考えられます。Th17とB細胞との間には双方向性のcross talkがあるそうな。最も重要なのはB細胞が産生放出するIL-6がTh17を分化。一方で、Th17はB細胞をhelp (PNAS 2010;107:14292-7.)。 (Ann NY Acad Sci 2013;1283:57-66.)
  5. お米の分類 
    こんな分類があるんだそうな。
    粘り強い         中間      あっさり
    コシヒカリ      あきたこまち   ササニシキ
    ミルキークイーン    つや姫     ひとめぼれ
    ヒノヒカリ      こしいぶき    どまんなか
    おぼろづき      さかびより    夢しずく
    はえぬき       どんぴしゃり   ふさこがね   
    ほとんど知りませぬ。(日本テレビ系列「月曜から夜ふかし」2012年10月8日放映より) 筆者は多くが新潟県は魚沼産のコシヒカリですが、たまに北海道のゆめぴりか。前者は錦小路、後者は病院近くのちょっと高級なスーパーで。
  6. NatalizumabではNMOは治療できない という報告がありますが、add-onでなければ当然でしょう。add-onでも効くと予想する理由が判りません。
    Kitley J, Evangelou N, Küker W, Jacob A, Leite MI, Palace J. Catastrophic brain relapse in seronegative NMO after a single dose of natalizumab. J Neurol Sci 2014;339:223-5.
    Kleiter I, Hellwig K, Berthele A, Kümpfel T, Linker RA, Hartung HP, Paul F, Aktas O; Neuromyelitis Optica Study Group. Failure of natalizumab to prevent relapses in neuromyelitis optica. Arch Neurol 2012;69:239-45.
    Barnett MH, Prineas JW, Buckland ME, Parratt JD, Pollard JD. Massive astrocyte destruction in neuromyelitis optica despite natalizumab therapy. Mult Scler 2012;18:108-12.
  7. 今月のお言葉  
    「都会はヒトが一杯いるんじゃない。一人一人が大勢いるのだ」(都会では一人ぼっちが大勢いるってことですね)(「生さだ」 NHK総合TV 2014年11月30日より。さだまさしさんの知人のお言葉だそうな)  
    「政治が国民にしなきゃいけないことは、2つしかありません。一つは国民を飢えさせないこと。もう一つは、絶対に戦争をしないこと」(2014年11月、亡くなる直前に、沖縄県知事選挙での応援演説で、菅原文太さん。東日本大震災を契機に俳優を引退し、反原発や有機農業の活動をされていました。)
  8. Natalizumab治療中の患者血清中にはAQP4非発現HEK細胞でも非特異的蛍光を発する ので注意が必要だという報告が出ています(BMC Neurol 2014;14:139)。事の真偽は不明です。そんなことがあり得るでしょうか?スペインのSeville (セビリアあるはセビージャ、原語ではどう発音するのでしょうか?今度、スペイン人に聞いてみよ!)からの報告。
  9. 文化保育園(大阪・堺市)のしつけ教育 
    園児は玄関前で立ち止まって挨拶し、深々と頭を下げます。脱いだ靴は正座をして汚れを払います。フローリングの床に正座もします。毎朝、自転車や車の通る保育園の周りの道路300mを子供達は2周かけっこをします。危ないとよけたり、立ち止まったりします。自立心が芽生えます。たくましいです。自分で俳句を作って、みんなの前で発表します。自己表現の手段として俳句を使っているので、俳句のできの善し悪しは評価の対象外。発表すること自体が目的。音読コンクールでは、4年連続日本一に。論語を声を上げて読みます。この年齢なら暗記は得意ではあるでしょうが、都道府県の形をみて、即答します。浅田三雄園長が到達した、しつけを基本とした教育方針。(日本TV系列「未来シアター」2014/11/28にて放映)
  10. Natalizumab治療中患者末梢血ではCD19陽性細胞%が増加 という報告があります(Warnke, Stettner, et al. MSJ, in press)。ただし、%なので絶対数は不明。残念ながら今ひとつの論文。ドイツから。EUからの投稿受理基準は甘くないかえ?OCBは消失してはいません。但し経時的に検索できたのは、OCB陽性の49/52例中のわずか6例。CSF中のIgG産生量や麻疹、風疹、帯状疱疹ウイルスに対するIgGは減少。ま、B細胞はCNSへ入らないわけですから。
  11. マッスルスーツ 
    東京理科大・小林教授が13年かけて開発。7 kgしかありません。まだ、個人には販売していませんが、一般企業向けに販売を開始。介護現場では腰痛による離職者を防ぐことが期待されています。他にも、物流や高齢化が問題になっている農業への応用も期待されています。もちろん、筋力低下をきたす神経疾患患者さんの期待も大きいでしょう。菊池製作所から。(TBS系列「News23」 2014/11/11より)  
    NHO新潟病院の中島医師らのロボットスーツHAL(つくば市・サイバーダインが制作)は別物。こっちは、すでに2013年にEUで医療機器として承認されていて、ドイツでは脊髄損傷で公的労災保険の適応対象に(西日本新聞 2014年9月22日付け電子版より)。
  12. Regulatory B cells?  
    B細胞系統にも免疫応答を制御する細胞が存在しているらしいことが判ってきました(Eur J Immunol 2014;44:1251-7)。抗体を産生する形質細胞にも機能があるようですが、Tregとは独立した存在らしいBregの細胞表面マーカーはまだよく判ってはいないようですし、IL-10だけでは現象の全てを説明できないようです。
  13. 慣れていないのか、いい加減なのか・・・ 
    4月からはずいぶん日が経過した、11月半ば、大阪府内のある役所の窓口に「多発性硬化症」なんだけれど、身体障害者の申請をしたいので書類を下さい、と家族が依頼したら、その窓口はなぜか、重心用の「脳原性運動機能障害」の書類を渡しました。大変ですなあ、松井大阪府知事も。
  14. アルツハイマー病発症前に早期診断が可能に 
    治療薬がまだありませんから、発症前に診断されても時限爆弾をセットされるような気分になりますが・・・2014年11月11日の23時のNHKニュースに国立長寿研の柳沢勝彦センター長が出演して、長寿研と島津製作所の田中耕一さんとの共同研究を紹介していました。わずか0.5 mLの末梢血中の微量のβアミロイドを検出する機器を開発したもの。  
    番組中、柳沢「クン」は「バイリンガルはADを発症しにくい、とされている」と解説し、ヒトの脳の大半は使用されていないので、より多くの脳を使用していると、それだけAD発症の閾値が高くなって、同じようにβアミロイドが沈着しても症状が出にくくなるのだ、と。高学歴だったり、定年後もactiveに仕事をしていると発症しにくいとは言いますね。いつまでも、ギラギラしているとええのだろうか?女性相手でも・・・?政治家を見ていますと、80歳でもギラギラしていますし、呆けませんなあ。
  15. Grapefruit juiceで体重増加抑制 
    但し、マウスの話で、しかも高脂肪食を食べさせた場合、体重増加を抑制できるだけでなく、血糖増加も抑制できることが報告されました(PLoS One 2014;9:e108408)。生ジュースにした場合の量がよく判りませんが、効果の中心はnaringinという物質であることが解っていますので、そのうち内服薬ができるかもしれません。4週齢のマウスに6週間、高脂肪食を食べさせた後から治療を開始しても体重増加抑制効果があり(予防ではなくて治療効果、デス)、血糖は治療前より明らかに低下します。