2014年12月号 NO.2

  1. NTZ-associated PML
  2. “Time is money”
  3. 国別、治験別の抗JCV抗体陽性率の比較
  4. seroconversion of anti-JCV
  5. Natalizumab中止理由
  6. 「日々」
  7. NTZ治療によるPML発症は治療前抗体陰性ではリスクが低く、治療中の抗JCV indexが1.5以上はリスクが高い
  8. Natalizumab中止4週後のVLA-4飽和度低下の幅
  9. Natalizumab中止後のVLA-4飽和度の低下
  10. 女子会男子
  11. NTZ治療中および中止後にMSが増悪する機序-1
  12. NTZ治療中および中止後にMSが増悪する機序-2
  13. 瀬戸内海の小島の漂流郵便局
  14. NTZ治療中MS患者でのPML発症3大リスク
  15. NTZ drug holidayについての試みについての報告
  16. Extended (interval) dosing (or dose) of NTZ
  17. Extended interval dosing of NTZ
  18. 女性に生まれて良かったかも、と思えること・・・
  19. サルコイドーシスでもPML
  1. NTZ-associated PML はHIVで認められる古典的なPMLに比して死亡率は低いのですが、重篤な後遺症が残ることが知られています(Lancet Neurol 2010;9:438-46)。
  2. “Time is money”  
    この意味は国内外で異なります。国内では、「時間はお金に換えられない、貴重なものだ」と考えられていますが、ベンジャミン・フランクリンの言った、この言葉を現地では「時間とはお金に置き換えられるもの」あるいは「時間とお金は同一の価値があるので、労働に要した時間は換金できるもの」とされています。なんか、」ILOの精神そのまま、という感じです。どうして日本では誤解されるようになったのか?明治の教科書に「金より貴き時」と記されたことによるとされているそうです。これにより日本的サービスでは「時間は最大のサービス」と理解されることとなりました。(TBS系列「所さんの日本の土着!」2014/11/4放映より。面白い番組です)
  3. 国別、治験別の抗JCV抗体陽性率の比較
       患者数  陽性率(%)  出典
     ノルウェー   895  47.4  
     オーストラリア  247  48.6*  
     英国  650  48.8*  
     アイルランド  100  51.0*  
     デンマーク  1402  52.6  
     スイス  54  55.6  
     ベルギー  206  54.4*  
     カナダ  4198  56.3  2014 AAN P4.141
     イスラエル  495  56.6  
     フランス  288  57.6  
     イタリア  458  58.3  
     スウェーデン  2497  59.0  
     ドイツ  3415  59.1  
     オランダ  210  66.2  
     オーストリア  666  66.7  
     トルコ  164  67.7  
     ポルトガル  131  69.5  J Neurol Sci 2014;337:119-22
     TYGRIS-US  1480  47.5  NEJM 2012;366:1870-80
     STRATIFY-2  33451  53.5 2012 AAN S41.002 
      AFFIRM study  823  54.6  NEJM 2012;366:1870-80
     STRATIFY-1  1096  56.0 NEJM 2012;366:1870-80 
     Carruthers et al in USA  281  44.0  MSJ 2014;20:1381-90
     Bomprezzi et al in USA  379  52.3  Ther Adv Neurol Disord 2014;7:227-31

    マークがないのは、MSJ 2013;19:1533-8
    * JEMS study from J Neurol Sci 2014;337:119-22
  4. seroconversion of anti-JCV
    Natalizumab治療18ヶ月間で6/69例(8.7%)で認められ、治療中止の理由になっている、という報告があります。(MSJ 2014;20:1381-90)
  5. Natalizumab中止理由 
    25/69例(36.2%)で中止されていて(意外に多い?治験に参加した自験3例は2年以内に全例中止しましたけど・・・)、その理由は・・・ 抗JCV抗体陽性化 8.7% 中和抗体の出現 8.7% (MSJ 2014;20:1381-90)
  6. 「日々」 
    吉田山田、という男性デュオ。老夫婦の愛情を歌った自作の泣ける歌。
    「NHK みんなのうた」で繰り返して紹介されました。以前、紀伊國屋書店HPの本棚でも紹介しました。デビュー5年目の男の子がこんな歌詞を書けるものか・・・30代女性からの圧倒的な支持を受けたそうな。You Tubeでご覧下さい。
  7. NTZ治療によるPML発症は治療前抗体陰性ではリスクが低く、治療中の抗JCV indexが1.5以上はリスクが高い 
    Biogenの研究所のグループによる治験中のデータはすでに学会報告していて、ネットでは有名な図にもなっていた原著がようやくon lineになりました(Plavina, Subramanyam, et al. Ann Neurol, online)。indexは0.2以下が正常値で、0.4以上が異常という判定になります。indexが1.5およびそれ以下では、1000人当たりのPML riskは24ヶ月以内では0.1、25-48ヶ月では1.2、49-72ヶ月で1.3に過ぎません。ところが、1.5以上では、それぞれ1.0、8.1、8.5にアップ。  
    ただし、これは免疫抑制剤治療歴のない患者さんでのことで、治療歴がある場合は認められません。著者らは免疫機能の抑制により抗体産生に影響しているのではないか、と考察しています。不思議なのは、抗体価が高いと、なぜPML発症リスクが高くなるのか?ウイルス量と抗体価は相関しないとも言われていますし、この抗体って何してんだろ?  
    18ヶ月で74/553例(13%)がseroconversionを起こしています。ただ、29例は陰性化もしているので、低力価ということなのでしょう。陽性を維持している患者でもindexは低いまま維持しているようですから、PML発症率は低いと思われますが、治療前陰性患者で治療中に陽転化した患者でのPML発症リスクの記載はありません。治療前に陰性だった患者が陽転化してもPML発症リスクが低いのなら、それはそれで有益な情報ではないかと思うのですが・・・  
    PMLを発症した25例では、18ヶ月間に2回以上抗体を測定し、21例(84%)はindexが1.5以上。  
    Biogen groupは抗体陰性例でも検出されることがあるので末梢血でのJCV DNAも測定するべき、という米国NIHのDr Major (NEJM 2013;368:2240-1)とも論争中ですが、この論文ではPML発症前の検体で232/234例で抗体を検出しているので、抗体のみで充分可能と言っています。ん、2例は?
  8. Natalizumab中止4週後のVLA-4飽和度低下の幅
    80%に低下     NEJM 2003;348:15-23
    40%以下にまで   J Pediatr Gastroenterol Nutr 2007;44:185-91
  9. Natalizumab中止後のVLA-4飽和度の低下 
    6ヶ月で治療を中止した後に、飽和度が毎月どの程度に低下するかをPhase II studyで測定した結果をBiogenは所有しています。このデータはdrug holidayの議論には重要で、3ヶ月以上投与間隔を開けると再発をするけれども、2ヶ月までなら一般的には大丈夫とされてきました (Neurology 2014;2:1204-11; Nat Rev Neurol 2014;10:1-2)。治療効果としては、飽和度では70%以上がキープされることが重要とされ、投与直前の最も低値となる時で30%を切ると再発の危険が出てくるとされています(造影病変が検出されるようになるため)。Phase IIの時のデータでは中止2ヶ月目でsaturationは35-80% (それぞれ、3 mg/kgと6 mg/kg投与時) にまで低下していました。この結果は、6-8週後には70%をキープするという報告(JAMA Neurol 2014;E1-8) とは矛盾します。後者を基準に6-8週毎のtrialが行われていますが (Extended Natalizumab Dosing-EXTEND REGISTRY 2014 ECTRIMS P218)、患者さんによっては(BWが大きいとか)再発の危険があるでしょう。
  10. 女子会男子 という概念があるんだそうな。女の子だけで飲み会をすることを(食事だけでも良いのかもしれません)女子会と言いますが、この女だらけの会合に男性がたった一人だけ参加している参加者を「女子会男子」と呼んでいるんだそうでありますよ。筆者が病棟の飲み会で時折陥る状態でもありますが・・・参加している女性たちが挙げる「女子会男子」の条件とは・・・
    1). イケメンではなく、ブサイクでもない。(勝手にすれば)
    2). ガツガツせず、温和。(4とも関連してますな)
    3). 細かい気遣いができる。(これは違うなあ。番組では女性たちに料理を取り分けてました)
    4). 恋愛感情がない。(ま、お互いさま)
    5). 女子の意見を否定しない。(否定してたら、めんどくさいけど・・・時にやっちゃいますな)
    6). 女子の秘密を守る、口の堅さ。(これは常識。危ない話も出てくるので)
    7). 清潔感がある。(ちょっぴり、自信がない?)
    (TBS系列「大阪ワイドショー」ナル深夜番組で、復活したメッセンジャー黒田さんがMC。この時は元スクールメイツ-意味の分かる人が何人いることやら-の森口博子さんがひな壇にお笑い芸人さんたちと並んでいましたが、芸風を変えつつあるようです。以前も、黒田さんと深夜番組でやり合ってました。歌手や女優からどんどん遠ざかって、お笑いに近づいていますが、合ってるみたい?)
  11. NTZ治療中および中止後にMSが増悪する機序-1   
    NTZ治療により末梢血のCD19陽性の成熟B細胞の数が2-3倍に増加することが報告されています(Neurology 2008;71:1350-4)。
  12. NTZ治療中および中止後にMSが増悪する機序-2 
    NTZ治療6ヶ月後には、anti-CD3刺激後のIFN-γ、TNF、IL-17産生細胞の数が増加することが報告されています(Neurology 2009;72:1922-30)。
  13. 瀬戸内海の小島の漂流郵便局 
    かつては正規の郵便局だったそうですが、香川県沖の粟島の郵便局に宛先のない、届けられない思いを綴った手紙が毎日届いているそうです。2013年10月に瀬戸内国際芸術祭に出品した作品でしたが、その後、亡くなった人や動物、失った歯などへの便りが届くようになり、常設に。差出人の了解をとれた手紙は芸術作品の一部として展示されているそうです。
  14. NTZ治療中MS患者でのPML発症3大リスク (抗JCV抗体陽性、24ヶ月以上の治療期間、免疫抑制剤治療歴の有無)については、以下の論文で報告されています。
    Lancet Neurol 2011;10:745-58
    NEJM 2012;366:1870-80
  15. NTZ drug holidayについての試みについての報告
    Arch Neurol 2011;68:186-91
    Mult Scler 2011;17:372-5
    Neurology. 2011 May 31;76(22):1858-65
    Neurology. 2011 May 31;76(22):1854-5.
    Eur J Neurol. 2012 May;19(5):783-7.
    Neurology. 2014 Apr 29;82(17):1491-8.
    Eur J Neurol. 2014 Jul 3. doi: 10.1111/ene.12487. [Epub ahead of print]
  16. Extended (interval) dosing (or dose) of NTZ
    通常は4週間隔で投与しますが、6-8週間隔で投与する方法の報告が出ています。 T
    her Adv Neurol Disord 2014;7:227-31.*
    2014 ECTRIMS P218
    2014 ECTRIMS P287*
    2012 AAN PD5.003
    * このポスターの投与方法の表現法が少し分かりにくいのですが、投与間隔を4weeks3daysから8weeks5days(32日から62日)間あけて3回以上連続で投与した場合をextended dosing (ED)と定義しています。例えばナタリズマブを51日間隔で3回以上連続投与した場合はEDです。
    さらにその投与間隔を
    4w3d-6w6dの間隔で3回以上連続投与した場合をEED
    7w0d-8w5dの間隔で3回以上連続投与した場合をLEDとしています。例えばナタリズマブを35日間隔で3回以上投与した場合はEEDで、ナタリズマブを51日間隔で3回以上投与した場合は、LEDとなります。
  17. Extended interval dosing of NTZ 
       4週毎  6-8週毎
     例数  361  96
     年齢  33-49 (41 ± 11)  34-48 (41 ± 10)
     median  40  41
     anti-JCV陽性  51%  59%
     再発  13%  13%
     New MRI activity  36/340 (11%)  8/87 (9%)
     最低6ヶ月間、治療して。
    (*Ther Adv Neurol Disord 2014;7:227-31.)
  18. 女性に生まれて良かったかも、と思えること・・・  
    ネット上で「何でも調査団」がアンケート調査を行い、生まれ変わるなら男?女?という設問に対する解答は、69 vs 31%で圧倒的に男性。理由は、世界は男社会で、現代の女性は出産、育児に加え、労働も・・・と。「やってられっか」という声が聞こえてきそうです。さて、番組が集めた女性に有利なこととは・・・
    1). サメに食べられて死ぬのが多いのは男性。オーストラリアで鮫に襲われ死亡した男女比は、89 vs 11%と圧倒的な差。もちろん、男の方が美味しいというわけではなく、男の方が危険を冒しやすいため。
    2). 落雷で死亡するのは8割が男。これは米国国立気象局のデータ。これも、男の方が雷への思慮が足りないため。女性は怖がるので、それなりの対応をするから。
    3). 色の識別能力が優れているのは女性。男がブルーと一括りにする一群でも、女性はブルー、ターコイズ、エメラルドと細かく識別できる能力があるんだそうな。番組では幼稚園児男女6名を使ってわずかな青色の濃淡を識別する実験を行ったところ、この年齢でさえ、女児は5/6名が判別できたのに、男児は全滅。ニューヨーク市立大・エイブラモフ淳教授によれば、眼の構造・機能に男女差はないけれども、脳の男女差によるそうな。
    4). 引きこもりは男が女の2倍。さらに、自殺者数の7割が男。経営失敗や借金苦で自殺、ということも男の多い理由でもあるでしょうが、慶応大理工学部・満倉靖恵准教授によりますと、女性は脳梁が太いので、右脳で感じたことを左脳に伝達させやすく、すぐにしゃべってしまうんだそうな。女性のお喋りは脳の解剖に由来するんだ、と (ほんまかいな?) 歴史上、有名な女性のスパイもいますけどね。そのため、女性の方がお喋りでストレスを発散しやすく、男は内に籠もりやすいんだそうな。
    5). 絶叫マシンを楽しめるのは女性に多い。男は概ね無言で恐怖に耐えますが、女性は絶叫するのが定番。満倉靖恵准教授によりますと、大声を出すことで恐怖心が軽減され、ドーパミンが放出されて快楽さえ感じるのだ、と。 (日本テレビ系列「月曜から夜ふかし」2014/10/27より)
  19. サルコイドーシスでもPML という報告があります(Neurology 2014;82:1307-13)。その後に寄せられたLetter (Neurology 2014;83:1301-2) の追加例はCSFでのPCRが4回とも陰性だったので、診断は疑問。最初の著者らもそう考えています。IVIgも治療効果がないだろうとも指摘。そもそも抗JCV抗体さえ、防御的作用はないようですもんね。