2014年9月号 NO.4

  1. Microglia/macrophageの分類とミエリン再生への関与
  2. NMO再発時にCSF内で抗AQP4抗体価が寛解期に比して大幅に増加
  3. コバエトラップ
  4. DMTのまとめ
  5. 治験の収支
  6. 脳や脊髄MRIはSPMS・PPMSのdisabilityの進行の指標になり得るか?
  7. 5000円を超えた料金は5割引
  8. リンパ球がBBBを超えるとき
  9. エンド・オブ・ホワイトハウス
  10. 年収と子供の数
  11. 脳MRIでのGd+造影は感度が低い
  12. 小児科領域で推奨されているnatalizumab容量
  13. 免疫抑制剤の使用歴は抗JCV抗体陽性率に影響しない
  14. Natalizumab投与による抗JCV抗体の年間陽転化率
  15. 靴を脱いで足を伸ばして、二人で見る映画
  16. 京都の陶器メーカーも参加した、対29爆撃機用有人ロケット戦闘機
  17. 「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませぬから」
  1. Microglia/macrophageの分類とミエリン再生への関与
    M1    pro-inflammatory
    M2    anti-inflammatory or immunoregulatory  
    CD68は両者のマーカーですが、M1, M2のマーカーも知られています。
    M1    iducible nitric oxide synthase (iNOS)
    M2    arginase-1 (Arg-1)  
    ミエリン再生が始まる際に、M1からM2へのswitchが認められることが報告されています(Miron, Boyd, Zhao, et al. Nat Neurosci, in press)。
  2. NMO再発時にCSF内で抗AQP4抗体価が寛解期に比して大幅に増加
    BBBが壊れていますから当然の結果ではあります。東北大からの報告(Ann Neurol 2014, in press)。抗NMDAR抗体関連脳炎とは異なり、NMOではCNS内で抗体産生はありません。ごくわずかの抗AQP4産生B細胞しかCNSからは誘導できません。
  3. コバエトラップ
    「コバエの生態から、割合身近な材料を使ってトラップを作成することが可能です。要は果汁、酒、酢、乳酸といった液体のニオイや味を好まれ、そのせいでこちらも迷惑を蒙るわけなので、逆にそれらに誘引し集らせることで捕獲すればいいという考えです。ビールや日本酒、果汁ジュース、乳酸飲料の飲み残し、桃、スイカ、グレープフルーツやバナナの皮、果物缶詰の残り汁、酢、味噌、醤油、めんつゆなどの残り(味噌は水で溶いておく)を使い捨てられるカップやペットボトルの底を切ったものに注ぎ、食器用洗剤を少量注入して液体の表面張力を壊しておくことがポイント。そうすることで、集ってきたコバエを溺死させます。」同志社女子大出身の当院の栄養管理室の責任者によりますと、めんつゆはYoutubeにも出ているそうな。(http://allabout.co.jp/aa/special/sp_insect/contents/10183/382764/p2/)
  4. DMTのまとめ
    コンパクトに様々な薬剤の特徴や治験結果が紹介されています(Loleit, Biberacher, Hemmer. Curr Pharmaceutical Biotechnol 2014, in press)。
  5. 治験の収支
    本来赤字になるようなら、とてもできません。でも赤字の場合(毎月、数百万円の赤字だったら、継続は難しいことになりますね、普通)、何が原因なのでしょうか?主に人件費が支出の大半を占めることになるはずで、この財源のために、医療機関によってはメーカーとの契約時に人件費を上乗せすることがあります。当然、この場合はメーカー側に負担が生じますから、医療機関側に強い態度をとれる場合であって、逆に医療機関側がお願いしてでも業績上、名前を乗せたい場合はそういうわけにはいかないでしょう。医師主導治験の場合は、これに関わる医師が診療行為に割く時間を取られることで、隠れた負担を医療機関側は強いられることになります。
  6. 脳や脊髄MRIはSPMS・PPMSのdisabilityの進行の指標になり得るか?
    ある一時期での障害度と相関する、というさまざまな所見が報告されていますが、進行と関連した指標ってあるんでしょうか?どなたか、ご存じの方がいらっしゃったら、教えて下さい。どちらの病型でも治験が行われていますが、厳密な意味で、MRI所見の進行抑制ではなくて、進行するEDSS (MSの再発による後遺症ではなくて、変性過程のみによる障害の推移) と相関したMRI所見って、あるんでしょうか?どこかのatrophyの進行の程度だけでなく、何年経過観察すれば有意差が出ると言えるのか、意外にSPMSやPPMSの治験をしている割に指標の研究が不充分な気がします。たとえば、以下の論文では
    Rocca MA1, Horsfield MA, Sala S, Copetti M, Valsasina P, Mesaros S, Martinelli V, Caputo D, Stosic-Opincal T, Drulovic J, Comi G, Filippi M. A multicenter assessment of cervical cord atrophy among MS clinical phenotypes. Neurology. 2011 Jun 14;76(24):2096-102.
    頸髄の萎縮が重要だと指摘していますが、これを定量的に経過観察して変化が判るものでしょうか?さらに、何年見れば?  あるメーカーの若手の薬学出身だったかの頑張り屋さんに問いかけている最中です。
  7. 5000円を超えた料金は5割引
    6000円が3000円になると思ってしまいました。当然ですが、5000円を超えた部分だけが5割引。京都市内では、右京区や左京区の北のはずれ(もう、山です)まで行っても、5000円は超えないでしょう。税金を払っていない、神社仏閣の広大な敷地を排除すると、更に住宅地までは近いのです。
  8. リンパ球がBBBを超えるとき
    以前、電子顕微鏡写真でtranscellular migrationをみて、吃驚したことがあるのですが、学会で見ただけでしたので、掲載論文を長い間、探していました。山口大学の神田教授が発見されました。これしか該当しそうな論文はない、と。
    Wong D, Prameya R, Dorovini-Zis K. In vitro adhesion and migration of T lymphocytes across monolayers of human brain microvessel endothelial cells: regulation by ICAM-1, VCAM-1, E-selectin and PECAM-1. J Neuropathol Exp Neurol. 1999;58(2):138-52.
  9. エンド・オブ・ホワイトハウス
    米国の正副大統領だけでなく、女性の国防長官、国家安全保障会議議長など国家の枢要なメンバーが北朝鮮の40名のコマンドにより人質にされ、下院議長が大統領代行に。表敬訪問していた韓国の首相はあっさりと射殺されます。圧倒的な武力を持つ武装グループは人質を連れて地下の司令室に閉じ籠もるという、2013年制作の米国映画。財務省の通常のシークレットサービスは全滅してしまいますが、特殊部隊出身で事務仕事の閑職をしていたシークレットサービスである主人公が一人で立ち向かいます。よくあることですが、主人公だけは決して乱射戦でも銃弾が当たりません。CGとは言え、ワシントン上空を飛行してホワイトハウスに銃撃を加えた輸送機は後に、ワシントン記念塔にぶつかって観光客の頭にバラバラになった記念塔が降り注いだり、シールズ部隊を載せたヘリコプター部隊は全滅してホワイトハウスの庭に墜落したり、見たことのない映像を見せてくれます。
  10. 年収と子供の数
    食費や教育費だけでなく、共働きでも保育園に預けるにもお金がかかりますから、年収が多いほうが子供が多い、かというとそうでもないようです。統計が少し古いですが、2003年の総務省の「家計調査」を元にしたグラフがあって(http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h17/01_honpen/html/hm02010006. html)、子供を産み終わった妻が40-49歳を対象とした調査です。400万未満ではさすがに子供のいない世帯が20%を超えますが(経済的負担のため?)、それ以外は子供のいない割合は9.7-12.7%と余り差異がありません。1-3人の割合もほぼ同じ。ところが、4人いる世帯は逆に400万未満だけ多くて3.4%。他は1.1-2.2%とほぼ横並び。貧乏人の子沢山と言いたいところですが、発展途上国ではないので、子供が必ずしも生計を助けるわけではありませんから、別の理由でしょう。
  11. 脳MRIでのGd+造影は感度が低い
    1.5TのMRI機器を用いて造影剤を1A静注する通常の方法では、ある程度BBBが破綻しなければ造影病変としては検出できない、感度の低い方法であることを脳生検の結果から、ウイーン大学のLassmann教授は示しています。オリジナル報告は出ていませんが、この総説に記載されている、Fig 2の結果はきわめて貴重です(Neuroimag Clin N Am 2008;18:563-76)。以前から講演で紹介していた図ですが、どこに記載されていたのか不明でした。ようやく発見。長らく、単行本だと勘違いしておりました。
  12. 小児科領域で推奨されているnatalizumab容量
    体が小さいので、成人量(300 mg/15 ml/dose) を投与できません。文献的には3-5 mg/kg/doseが知られていますが(Ther Adv Neurol Disord 2010;3:293-9)、少し少なめのCrohn病で投与された容量(J Pediatr Gastroenterol Nutr 2007;44:185-91)がお薦めのようであります。
  13. 免疫抑制剤の使用歴は抗JCV抗体陽性率に影響しない
    すでに昨年、報告されていますが、フランスからも報告されました(Mult Scler 2014;20:822-9)。
  14. Natalizumab投与による抗JCV抗体の年間陽転化率
    3%        AFFIRM pivotal study, J Clin Virol 2013;57:141-6
    16% (54/328) for 18 months   Plavina et al, (S30.001) 2013 AAN*
    4.04% for 8-9 months     German cohort, Neurology 2012;78:1736-42
    14.5%    Outteryck et al. Mult Scler 2014;20:822-9
    * 以前はこのデータをメーカーはスライドや図で説明していました。
  15. 靴を脱いで足を伸ばして、二人で見る映画
    14個のカップル席しかない映画館に行ってきました。京都市内にあるマルチスクリーンの映画館。自由席のため、お早めにお入り下さいと説明されます。最初は理解困難でした。基本的に2人席ですが、一人でチケットを買った場合、隣の席には誰も座りません。間違って、席数分売ってしまったら?最大で28人しか見ない映画。ほとんど床の高さで、ボックス席の壁は高く、隣は見えません。見るヒトが少なくなった映画を日に2回ほど上映しますが、2回目が真夜中に終わる時間帯もあります。いえ、決してアダルトではないのですよ。カップルがやはり多かったですが、見たときは昼間だったので、おばさまの二人連れも。こんな席初めて、と笑っていました。見たのは「トランセンデンス」と「300」。  

    前者はジョニー・デップ主演で、テロリストに銃撃され死亡した科学者の妻が彼の頭脳をコンピューターに移植したことにより生じた世界。夫を愛する妻が選択した方法は・・・狂気のごとく描かれますが、結果として科学者の行動は・・・。  

    後者は巨大なペルシャ軍を迎え撃つ、ギリシャ軍300人の死闘を描いた海戦。前作もペルシャの大軍を相手に、狭い渓谷を背に(背水の陣ではなくて、背谷の陣?)スパルタ軍300人が全滅する物語でした。今回の海戦は、その1ヶ月後の史実を元にした映画のようで・・・スパルタの王妃は王が戦死したことで泣き悲しんでいるだけかと思いきや、剣を持ったらやたらと強く、真っ先に突っ込んで行き、屈強なペルシャ兵をなぎ倒してゆきます。中森明菜だと思っていたら、実はアジャコングか北斗だったみたいなアテナイには強い味方。  

    この映画はR15に指定されていましたが、敵役のペルシャ軍司令官を演じていた、エヴァ・グリーン(元ボンドガールだったようです)が上半身裸になるためではなくて、やたらと首や手足がぶっ飛ぶためと思われます。しかし、出血はするのですが、軟らかめの血糊 (少し凝固しかけた-そんな状態になるかどうかは判りませんが-200 ml入りの輸血パック位をまき散らす感じ) がスクリーンにぶち撒かれます。CGでは難しいのでしょうねえ・・・動脈性出血が全くありませんでした。
  16. 京都の陶器メーカーも参加した、対29爆撃機用有人ロケット戦闘機
    終戦末期にドイツから設計図をもらい受けて、高度1万メートルに急上昇して(数分飛べば良い、良いという発想で開発。軽くするために、離陸後はゴム車輪を捨て、燃料がつきた後は滑空してソリで着陸)、B29を迎撃するために「秋水」が開発され、現在1機のモデル機が残っているそうです。燃料が腐食性のために金属製のタンクが使用できず、陶器製が使われました。7機が完成したそうですが、実戦には使用されませんでした。開発の過程で、事故により大勢の犠牲者が出たようです。清水焼の陶器製手榴弾も開発されました。京都市内には陶器製の秋水用の燃料製造装置や手榴弾が保存されています。
  17. 「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませぬから」
    これは広島の原爆死没者慰霊碑に刻まれた有名な碑文の一節です。これに対して、日本が過ちを起こしたのか、という批判 (ABCD包囲網があったから仕方ないじゃんというのは、もちろん日本政府の「公式見解」とは異なりますが)に対する、広島市の回答は・・・  

    「悲惨な出来事を体験した広島市並びに広島市民は『核兵器は人類滅亡を引き起こす"絶対悪"である』という人類にとって最も重要な真実を直観し、『二度とヒロシマを繰り返してはならない』と決意しました。そして、原爆犠牲者の冥福を祈るとともに、戦争や核兵器の使用という過ちを繰り返さず人類の明るい未来を切り拓いていくことを誓う言葉として、広島平和都市記念碑(原爆死没者慰霊碑)に『安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから』と刻みました。碑文の趣旨は、原爆の犠牲者は、単に一国・一民族の犠牲者ではなく、人類全体の平和のいしずえとなって祀られており、その原爆の犠牲者に対して反核の平和を誓うのは、全世界の人々でなくてはならないというものです。つまり、碑文の中の『過ち』とは一個人や一国の行為を指すものではなく、人類全体が犯した戦争や核兵器使用などを指しています。    

    碑が完成した昭和27年(1952年)から今日まで、碑文は被爆者や広島市民だけではなく核兵器廃絶と世界平和実現を求める全世界の人々にとって祈りと誓いの原点であり続けています。」