2014年9月号 NO.2

  1. Natalizumab 300 mg固定用量の根拠
  2. ゴジラを巡る日米の防衛温度差
  3. ヒトではCD4/CD8 ratioは遺伝的に規定
  4. 健康人では年を重ねるとCD8陽性細胞は減少してゆく
  5. 発症時に30日以内に視神経炎と横断性脊髄炎が発症したNMO
  6. 最高裁からの裁判員裁判への批判
  7. EBVやHHV6の再活性化はその後の再発や障害の進行と関連しない
  8. 赤身肉は女子力アップ?
  9. NMOでも稀にnatalizumabで再発しない
  10. 人は三度恋をする
  11. Idiopathic recurrent steroid-responsive CNS inflammatory disorders
  12. 関西人の避暑地は?
  13. 上越新幹線の中で発見したコピー
  14. Natalizumab治療中のリンパ球変化
  15. Natalizumab治療後の奇妙な現象
  16. ミシュラン星一つの京都のうなぎ屋さん
  17. Natalizumabの効果の指標としてのVLA4 saturationをどこに設定?
  18. 火傷しそうな珈琲
  19. 抗JCV抗体測定ELISA世代別相違
  20. シェアプロポーズ
  21. 結婚詐欺に騙されやすい女性の特徴
  1. Natalizumab 300 mg固定用量の根拠
    ベースライン時の体重が48-100 kgの外国人MS患者を対象とした試験AN100226-231で、3 mg/kgと6 mg/kgとの比較を行ったところ、有効性や安全性に差がなく、投与期間を通じて飽和度はそれぞれ70%および83%を超えていました。平均体重は72 kgと70 kgで、平均投与量はそれぞれ216 mgと420 mgに相当。300 mgを固定用量にしますと、50 kg以上では6 mg/mlを上回ることがなく、100mgでは3 mg/kgを下回ることがないため、300 mgが選択された、という背景があります。低用量と高用量のNTZを25ヶ月以上投与したときの抗JCV抗体のseroconversionの違いやPML発症リスクの違いも解るといいですが・・・
  2. ゴジラを巡る日米の防衛温度差
    東宝が制作した日本版ゴジラは、海底に眠っていたゴジラが水爆実験で眠りから目覚めた、という設定で、広島・長崎の被爆や第5福竜丸の被爆などの背景をもつ社会派ドラマでもありました。有名な映画音楽を担当した作曲家の被爆体験も知られています。米国のジャーナリストがオリジナル映画を見て、米国版との違いに驚くそうでありますね。噂によれば、米国製の「ゴジラ」では水爆実験は実はゴジラと闘う為だったという設定になっているそうですね。自分たちの歴史を否定しかねないので、日本版の設定をそのままハリウッドに移植するわけにはいかないでしょうから。2014年版の「Godzilla」はオリジナルの「ゴジラ」の精神に忠実なんだそうですが、さてどうでしょう?毎日新聞社の西山記者が絡んだ、「沖縄返還密約」事件 (当時の社会党衆議院議員・楢崎弥之助氏による国会質問で資料の出所がばれたこと、山崎豊子さんの小説『運命の人』は、本木雅弘さん主演でTBSの東芝日曜劇場でテレビ化されました。一応、東芝って原発企業ですけどね。東芝EMIで発売直前に忌野清司郎さんの反原発レコードが発売中止になったことがあります) の最終判決が出たばかりですが、これにも米軍による核兵器の持ち込みが絡んでいます。誤解があると困りますから念のために記述しておきますと、東芝は太陽光発電などにも営業範囲を拡大しています。
  3. ヒトではCD4/CD8 ratioは遺伝的に規定 (Nat Med 1995;1:1279-83)
  4. 健康人では年を重ねるとCD8陽性細胞は減少してゆく (Nat Med 1995;1:1279-83; Genes Immun 2000;1:423-7)
  5. 発症時に30日以内に視神経炎と横断性脊髄炎が発症したNMO
    Mayo Clinicのデータでは、抗AQP4抗体の有無で頻度が異なります。2005-2011年の期間中に163例のNMOが記録されていますが・・・  
    題名のような再発性Devic病の頻度は、
    seropositive例 (110例) 3.6%
    seronegative例 (49例) 32%  
    検査法はIIFなので抗体はNMO-IgG。
    (Neurology 2013;81:1197-204)
  6. 最高裁からの裁判員裁判への批判
    最高裁が裁判員裁判(検察側の懲役10年に対して1.5倍の量刑判決)での判決が重すぎ、他の裁判との公平性が保たれないとして、2014年7月24日、1歳8ヶ月の娘を虐待死させた両親の刑を大幅に軽減し、主犯の父親を懲役10年、直接には暴力をふるわなかった母親を懲役8年としました。裁判員裁判では特に性犯罪では以前より重罪になっているそうで、以前より重い判決が出る傾向が指摘されています。今回、感情に走るなと、最高裁が判断したと評価されました。しかし、そもそも市民感覚を反映させるために裁判員制度を始めたはずだという意見もあって、議論する必要があるように思われます。裁判官の判決が検察求刑の8割、という前例もおかしくないのでしょうか?これが常識だという裁判官の非常識が問題にされないことが不思議です。そもそも近代法では私刑が禁止された代わりに、国家が代行する制度のはずで、「仕返し」の程度の判断根拠が時代とともにあるいは社会背景とともに変わってゆくことは当然なのではありません?刑罰の存在自体に犯罪抑制効果を求めること自体がナンセンスでもあるように思われます、個人的には。
  7. EBVやHHV6の再活性化はその後の再発や障害の進行と関連しない
    南タスマニアの203例のMS患者さんを対象としたウイルスの研究から報告されました(Simpson, Taylor, Burrows, et al. Acta Neurol Scand 2014, in press)。
  8. 赤身肉は女子力アップ?
    京都市内でも(御所の西南の一角日本店があります)エイジングビーフを食べさせてくれるステーキハウスがありますが(米国国内で食べる「赤身肉」ステーキとは別物と思いますけどね)、東京周辺でも増えているそうですね。赤身肉は脂肪を燃焼させるL-カルニチンが圧倒的に他の食材より多く、45日後冷風熟成後にはアミノ酸が(だったかな?)60倍に増加するそうな。  

    家庭で赤身肉を焼くときのコツは、何度もひっくり返さないこと(肉汁がなくなってしまうそうですよ)、キツネ色になるまでじっくりと焼きますが、焼き上がっても1-2分置いてから切るべきナンだそうです。肉汁が出てしまうので。蓋をして少し余熱で蒸すような感じになるのでしょうか?料理の専門家の意見です。(TBS系列「朝チャン」2014/8/4放映より)
  9. NMOでも稀にnatalizumabで再発しない
    題名も”Is it too early to predict the failure of natalizumab in NMO?” (Arch Neurol 2012;69:1083-4)。60歳女性で、GA開始2ヶ月(効いていない時期)で、重篤な再発が起き、INFβ1aでは1年間再発がなく、その後natalizumabを投与して、3年後に完全回復した軽度の再発があったのみで、合計6年間安定。脳MRIで進行した所見があって、臨床的にも進行したので(NMOできわめて稀なSP type?)抗natalizumab抗体を測定したら陰性。この時に初めてNMO IgGを測定して陽性。これまでの経過でNMOを疑うポイントは、抗IFNβ抗体が著明に高値(結果は記載していません)だったこと。当院でも日本最高値の抗IFNβ抗体(以前、SRLで測定していた方法)を呈した患者さんは、LCLを有する、seronegative NMOでした。抗体は産生しやすいのでしょう。FloridaのCleveland Clinicからの報告。
  10. 人は三度恋をする
    初恋と結婚とアラフォーみたいです。さて、このドラマでの会話。中学校の同窓会で久しぶりに会った、かつての同級生のバーでの会話。
    A: 松岡昌宏 B: 井浦 新 (主人公) それぞれが気になる同級生(稲森いずみさんと板谷由夏さんが演じています)がいます。
    A 「人は三度恋をするって話、聞いたことある?」
    B 「四度じゃなかったっけ」
    A 「ん?ああ、春夏秋冬の話か?」
    B (うなづく)
    A 「うーん、初々しい春の恋、激しく燃える夏の恋、しみじみ味わう秋の恋、静かに枯れた冬の恋だっけ?でも、俺は、それは信用しない。誰かを好きになるんなら、今のうちだ。夏が終わるまでだ。俺はなあ、三度目の人生を変えるような恋がしたい。それがリセットの本当の意味なのかもしれない。」
    B 「勝手だな。」
    A 「ん?」
    B 「それ、端から見たら、ただの不倫じゃないか」 (TBS系列「同窓生?人は三度恋をする」より)
     久しぶりに稲森さんを見ましたが、ちょっと雰囲気が変わってましたね。
  11. Idiopathic recurrent steroid-responsive CNS inflammatory disorders
    ややこしい病名ですが、これが最も正確でしょう。NMOあるいは2014年版NMO spectrum disordersの診断基準にも該当せず、抗AQP4抗体や抗MOG抗体は陰性で、NMOに特徴的な症状や検査所見(神経内科 2012;76:531-6)も厳密には存在しないのだけれど、OCBはもちろん陰性で、脳MRIでもMS的病変がなく、ステロイドを投与していると再発は予防できている患者さんをどう呼ぶか、が少し問題。atypical MSといってしまうと、本来、MS自体がheterogenousですし、本来、定義自体が不明確なので、問題をこじらせてしまいかねません。MSとNMOの鑑別が困難な患者さんは少数いらっしゃいます。こういう場合は、ステロイドを投与するべきです。Prof Wingerchukも同じ意見。seronegative NMO類似の病態なのかもしれないのですが・・・定義が難しい。OCB陰性だからといって、全例がステロイドの適応にはなりません。OCBの陽性率と緯度とに相関関係があることは欧米のデータから明らか。欧米の患者さん自身が全例、OCB陽性ではありません。日本は主に北緯30度台ですから、欧州から見れば南の国です。気候も今や亜熱帯モンスーン。
  12. 関西人の避暑地は?
    以前から不思議なのです。神戸は少し涼しいですが、大阪や京都はメチャ暑い!東京なら、那須高原、上高地、箱根、八ヶ岳高原・蓼科高原、清里、軽井沢、上毛高原など枚挙にいとまがありません。「避暑地の出来事」なんていう米国映画がありましたねえ(トロイ・ドナヒューなんて、誰も知らんなあ)。もちろん、1959年制作なのでreal timeでは見ていませんが、思春期の性を真面目に取り上げた映画。テーマ曲「夏の日の恋」は良いです!  

    Anyway 隣の治験管理室で聞きましたら、軽井沢なんて知らんと言い、高野山は涼しいですよ、と。写経しにゆくん?ネットで「関西の避暑地」で検索しますと、高野山も出てきます。吉野の洞川温泉、兵庫の神鍋高原、京都の貴船(近いし涼しいのは確かですが、開放感はありません)、三重県伊賀の青山高原。貴船以外は聞いたことがありませぬ。他は長野県や岡山県などは遠いですねえ。
  13. 上越新幹線の中で発見したコピー
    「初めて、東京の人を連れて行くなら、夏がいいと決めていた」  
    清酒「??乃川」のポスターに記載されていたコピー。8月に見たので違和感はありませんが、いつまでこのポスターは有効なのでしょう?季節を入れてしまったので、賞味期限が生じてしまいました。ここで言う「人」は男性なのか、女性なのか・・・新潟ですから、夏に連れて行くなら男性かな・・・決して紫外線は少なくないし・・・素潜りの良い岩場はありますし・・・ネ。別の清酒ですが、「久保田」生酒は期間限定で、夏に入手可。
  14. Natalizumab治療中のリンパ球変化
    25例のまとめがオーストリアから出ています(Clin Exp Immunol 2014;176:320-6)。リンパ球数が投与前より増加し(p < 0.0001)、subset解析では特にCd19がT cell subsetやNK細胞、CD4/8比が変化がないことに比して、治療開始3ヶ月以降から顕著に増加し(p < 0.0001)、16-48ヶ月の期間中も増加傾向は変わらず(p = 0.005)。
  15. Natalizumab治療後の奇妙な現象  
    18ヶ所のフランスのMSセンターで少なくとも2年間治療した793例の患者さんを対象としたpost-marketingの研究(BIONAT cohort)結果が報告されています(Eur J Neurol 2014;21:40-8)。下記の結果は133例でのデータ。
      治療開始時 2年後 有意差
    IgG 1007 ± 253 910 ± 224 p = 0.024
    IgA 205 ± 76 192 ± 81 NS
    IgM 127 ± 70 75 ± 48 p < 0.001
    CD3 1389 ± 535 2263 ± 727 p < 0.001
    CD4 921 ± 373 1468 ± 471 p < 0.001
    CD8 457 ± 213 886 ± 334 p < 0.001
    CD19 271 ± 131 776 ± 327 p < 0.001

    もちろん、機序は不明、としています。従来、このような報告はありませんでしたが、natalizumabには意外な部位にも作用しているのかもしれません。まさか、CNSへの進入をブロックしたことで、リンパ球数が増加したわけじゃないですよね?CNS内でたくさんapoptosis起こしているなんて・・・わけないと思うけれども・・・
    793例中17.78%で2年以内に中止されていますが、その理由は他でも報告されていることと同じで、妊娠、妊娠の計画、PMLなどの有害事象を心配して患者自身の希望。  

    この薬剤はキメラ抗体なので、中和抗体が2つの治験ではいずれでも6%に出現していました。今回は、わずか2例のみ。測定時期にも問題があったようで、治療開始1年ごとのほかに再発や有害事象発生時に測定していますので、遅すぎたのかもしれません。しかし、逆に言えば、持続的には出現していないのかもしれず、3-4ヶ月後に持続的に見出されたとしても、再発したり、皮膚反応がでなければ治療を継続していても問題はないことを示唆しているとも言えます。
  16. ミシュラン星一つの京都のうなぎ屋さん へ行ってきました。「まえはら」両替町通二条上ル、なのですぐに判るかと思いきや、3回も前を素通りしてしまい、電話で教えていただきました。店の前が駐車場になっていて、看板も目立たず、判りにくいです。大井川のウナギがご自慢なので、それを頂きましたが、大井川の天然ではなくて、大井川の水で養殖されたウナギとのこと。個人的には丸谷才一さんの元祖美味しんぼとも言える1975年に出た「食通知ったかぶり」で紹介された、新潟市県庁裏(当時、現在は県庁が引っ越して、市役所が移ってきました)の「瓢亭」が好きですねえ。三越新潟店の中にもありますが、白山浦の本店の方が良いです。
  17. Natalizumabの効果の指標としてのVLA4 saturationをどこに設定?
    治験では70%以上あれば効果が認められるとされていました。NTZ中止からFTY開始までのwashout期間は通常3ヶ月とされていますが、指標としてsaturationが重要ではないかという報告が出ています(Acta Neurol Scand 2014;129:e12-5)。残念なことに、対象がnatalizumabを中止した5例でしかないことですが、再発あるいはMRIで疾患活動性が認められた2例でのCD4およびCD8陽性細胞のsaturationは30%以下だったのに対して、疾患活動性のなかった3例ではCD4が中間値70% (59-79%)、CD8が66% (52-68%)でした。最低どれだけあれば良いのでしょうか?  

    Natalizumab治療中のVLA4 saturationが治療の指標になりそうだという報告は他にもあって、
    Wipfler P, Harrer A, Pilz G, Oppermann K, Afazel S, Haschke-Becher E, Sellner J, Trinka E, Kraus J. Natalizumab saturation: biomarker for individual treatment holiday after natalizumab withdrawal? Acta Neurol Scand 2014;129:e12-5.

    Harrer A, Pilz G, Einhaeupl M, Oppermann K, Hitzl W, Wipfler P, Sellner J, Golaszewski S, Afazel S, Haschke-Becher E, Trinka E, Kraus J. Lymphocyte subsets show different response patterns to in vivo bound natalizumab--a flow cytometric study on patients with multiple sclerosis. PLoS One 2012;7:e31784.

    Khatri BO, Man S, Giovannoni G, Koo AP, Lee JC, Tucky B, Lynn F, Jurgensen S, Woodworth J, Goelz S, Duda PW, Panzara MA, Ransohoff RM, Fox RJ. Effect of plasma exchange in accelerating natalizumab clearance and restoring leukocyte function. Neurology 2009;72:402-9.
  18. 火傷しそうな珈琲

    新潟市の中心部、古町通りに面して60年前から営業していて、そのことを入り口に大きく掲げて宣伝文句にしている喫茶店があります。古くからの住民なら誰でも知っている喫茶店、○十○。久しぶりに珈琲を飲んでみました。ところが・・・熱くて飲めない。いえ、筆者が急に猫舌になったわけではありません。どうも、あらかじめ抽出していた珈琲を1杯分、沸騰させて出したようなのですね。で、色のついた熱湯になるわけで、味も風味もありません。もう、二度と行くか!伝統に胡座をかいた典型例。


  19. 抗JCV抗体測定ELISA世代別相違
    第一世代          第二世代
    抗原       リコンビナントVP1      リコンビナントVP1 (抗原の純度が上昇)
    正常でも異常値とも 言えない範囲
              0.1-0.25            0.2-0.4 この範囲では要再検*
    * BK virusとの交叉反応を除外するために、ELISA前処理として溶液中でVLPにより血清を吸収しておき、その後にELISAを施行する。これがstep 2で、Gen 1もGen2も同一。
  20. シェアプロポーズ がはやっているんだそうな。家族の前でとか、皆で一緒に雰囲気作りをするシステムで、番組で詳細に紹介していたのは結婚式場のスタッフが企画から演出まで指導し、男性からのプロポーズを指導・協力して下さるサービスが受けているんだそうでありますよ。他人の協力が必要なん?ヒト様を批判できる立場ではございませんが・・・ちなみに、英語でいうと3Sがプロポーズのポイントなんだそうで、ストレート、特別、驚き、だそうであります。(TBS「朝チャン」2014/7/17 祇園祭の山鉾巡行の日でありました)
  21. 結婚詐欺に騙されやすい女性の特徴
    ①. 人が良くて
    ②. ストレスを抱えていて
    ③. 何かを待っている女 は結婚詐欺に騙されやすいんだそうな (なっとく)。といっても、これはドラマの中の台詞。2014年7月からTBSで始まった「東京スカーレット?警視庁NS係」で、100万円を騙された水川あさみさん演じる所轄の刑事をCAと信じていた結婚詐欺犯が水川さんに言い放つ言葉。「NS」(なんでもする?)という、単に女性の中間管理職を作るための新しい部署、という設定で、係長役がキムラ緑子さん、主人公の先輩が生瀬勝久さんという個性的な俳優さんたち。