2014年5月号 NO.2

  1. カレー談義
  2. カレールウ消費量ベスト3
  3. カレーは辛口派?それとも甘口派?
  4. 福神漬けあれこれ
  5. 20年間の英国でのMS有病率の変化と理由
  6. SPMSの定義
  7. RISからCIS発症までの期間
  8. 共働きの夫婦は一緒に入浴したいか?
  9. Natalizumaによるerythroblastaemia
  10. Natalizumab治療中に発症したPML/IRISへの新治療
  11. Natalizuma中止30日以降に発症したPMLについてFDAから
  12. CD8陽性T細胞はJCV感染オリゴデンドログリアを攻撃する
  13. ステロイドパルスによるJCV特異的CD8陽性T細胞機能抑制
  14. 18歳以下で発症したNMO
  15. 一人者のための商品
  16. Fingolimod関連無月経
  1. カレー談義
    沖縄県民はカレーが大好きだそうですが、カレールウ消費量は全国最下位。自宅では作らないんですね。沖縄でカレーと言えば「初代ボンカレー」。これは沖縄でしか販売されていません。本土で売っているのは「ボンカレーゴールド」。台風が多く、非常食としても重宝されているそうでありますよ。沖縄県民の県民性として、初物が大好きで、世界で初めて作られたレトルトカレーにrespectしていて、カレーと言ったらレトルトで、しかも初代のボンカレー。(日本テレビ系「月曜から夜ふかし」2014/3/24より)
  2. カレールウ消費量ベスト3
    第1位 青森市
    第2位 鳥取市 (以前、1位でしたが、奪還を目指して、市長以下奮闘中)
    第3位 佐賀市                      総務省家計調査より
  3. カレーは辛口派?それとも甘口派?
    番組で100人に聞いたそうです。結果は、56 vs 44人で辛口派の勝利!そりゃそうでしょ!  
    味は不詳ですが、番組で紹介していたお店は・・・
    東京・目黒      こんぴら茶屋    牛かれーうどん 1050円
    江戸川区・船堀   ゴヴィングス  南インドのマサラドーサセット  950円
    横浜中華街・保昌 牛バラカレーご飯    850円
  4. 福神漬けあれこれ
    東京・上野の創業は350年前という漬け物店「酒悦」の15代目野田清右衛門さんという方が1885年に考案。茄子、レンコン、なた豆、カブ、大根、瓜、シソの7種の野菜を用いたことから七福神に因んで命名されたもの。ここで売っているのは「元祖福神漬け」。さいたま市にある、創業130年の河村屋の「大福神漬け」は野菜が巨大で、1年漬け込んだもの。
  5. 20年間の英国でのMS有病率の変化と理由
    1990-2010年まで、毎年2.4%ずつ増加し、毎年10万人当たり9.64ずつ増加しているんだそうですね。英国での現在の有病率は人口10万人当たり203.4人 (男女別にすると、女性では285.8で男性は113.1人)。年齢別に解析しますと、50歳以下では変わらないのに、60歳以上では毎年4%ずつ増加しているんだそうで、これはMS患者さんの生存期間の延長によると考えられています(英国では15%しかDMT治療を受けていない、というOxford Univのデータがあることを考えますと、15%でも以前よりは増加しているのかもしれないけれども、軽症化している可能性もあるかもしれません)。患者さん自体は女性では毎年10万人当たり11.52人ずつ、男性では4.84人ずつ減少しているそうな。F/M比はこの20年間では2.4と一定で、変化していない、と(JNNP 2014;85:76-84)。日本は異様ですね。新潟県と京都府での紹介患者さんの経験から、特定疾患所有者のほぼ全員がMS以外の疾患なのに、書類をごまかしている、という例がきわめて少ないと思うからです。個人的に、そのような書類を見たのは1例だけですね。数年で明らかに違うことを家人も理解できるようになった頃に説明して、書類の更新をしなかったことはあります。いざという時には生活保護制度があるためかもしれませんが、意外に(?)日本の神経内科医たちは真面目だと思います。
  6. SPMSの定義
    それほどたくさんあるわけではありませんが、SPMSの診断はきちんとしましょう!英国からの報告です(JNNP 2014;85:67-75)。原文のまま “at least 1 year of continuous deterioration, regardless of the rate of worsening. Transitory plateaus and small temporary improvement in the relentlessly progressive course were recorded in the long term, although steady progression was the rule” (Brain 2006;129:584-94; Brain 1999;122:1941-50)  

    この報告はカナダのOntarioにあるデータベースを使用していて、806名のRRMSを対象にして解析しています。SPMSへ移行するリスクは、男性のほうが高く(HR=1.41, p<0.001)、発症年齢が30歳以上より30歳未満(20歳以下ではHR=0.52, p<0.001、21-30歳ではHR=0.65, p<0.001)。罹病期間が長くなればリスクが高くなるのは当然で(OR=1.07 fpr each additional year)、Kaplan-Meier解析では50%のRRMS患者がSPMSへ以降するのは15年 (OR=2.81)。25年で69% (OR=5.61)。
  7. RISからCIS発症までの期間
    Dr Okudaらの5ヶ国、22ものデータベースを使用した、retrospective解析が報告されています(PLoS One 2014;9:e90509)。この論文のeditorはTSPやHHV6のNIH・Dr. Steven Jacobson。なぜ、カレが?興味のある数字ではありますが、実際にはRISが発見されたMRI撮影は頭痛などの理由はあるにせよ、たまたまなので、この数字自体に科学的な理由はありません。でも、practicalには欲しい情報。ただ、日本人CIS患者ですらBerkhof基準の4項目の過半数を満足することがきわめて稀なので (臨床神経 2012;52:725-9.)、厳密にRISを定義すると対象患者さんは国内ではきわめて少ないでしょう。451例の後方視的研究。観察期間の範囲は0.01-21.1年で、平均4.4年、中間値が2.8年と比較的短め。5年以内に34%が発症し、15年で70%程に。臨床症状を呈するリスクを検討しています。Clinical eventと呼んでいて、CISとは記載してはいません。一応、神経学的所見や血液検査はクリアしてはいます。RIS時の0.7以上のIgG indexやOCB陽性、脳MRIでの造影病変の存在は予告因子にはなりませんでした。16.2% (73/451例)ではMSで投与されるIFNβなどのDMT治療を受けていますが、5年後の発症率に差はありませんでした (45% vs 31%)。37歳以下、男性、脊髄MRIでの頸髄あるいは胸髄の無症候性病変はリスクで、これら3者がそろうと、相加的にリスクが高くなります。
  8. 共働きの夫婦は一緒に入浴したいか?
    なんでこんな調査をしたのかは不明ですが、パナソニックおふろウキウキ研究会というところが調査。20代では男性が66%、女性では54%が希望していますが、40代ではそれぞれ48%、19%と低下していて、特に女性の落ち込みが顕著。20代はイケイケなのは解りますが、30代は逆転していることはないのか・・・な?専業主婦じゃなくて「共働き」というのがミソかもしれませぬ。40代の妻は一緒には入りたくはないのです。ま、理解はできますので、逆に2割もいることに正直驚きましたですネ、ハイ。(2014/3/16 読売テレビ「クギズケ」より)
  9. Natalizumaによるerythroblastaemia
    14例中13例で認められ、対照のIFNβ投与群の14例では認められなかった、と。従来の報告は一過性とされていたけれども、3ヶ月間、毎月チェックして、この間、再現性があり、一過性ではない、と。通常、erythropoiesisの亢進によるerythroblastaemiaであれば成熟したerythroblatsだけだけれど、Natalizumabで誘導される場合は全ての成熟段階が認められるようになる、と。Natalizumabでは血中の幹細胞のhomingが阻害されるため、末梢血中のCD34陽性細胞が増加するそうです(Blood 2008;111:3439-441; Blood 2008;111:3893-5; Bone Marrow transplant 2010;45:1489-96; Arch Neurol 2011;68:1428-31)。
  10. Natalizumab治療中に発症したPML/IRISへの新治療 がMcGill UnivのDr Bar-Orから報告されました (N Engl J Med 2014;370:486-8)。通常、NatalizumabをPMLにより中止する際、急速に薬剤の血中濃度を下げるために血漿交換を行いますが、リンパ球がCNSへ急速に流入するためにIRIS(Neurology 2011;77:1061-7)がほぼ必発します。そこで、多くの場合、ステロイドパルスと引き続いて経口PSLを投与するのですが、ステロイドによりJCVのクリアランスが悪化するとされてきました (Neurology 2012;79:2258-64)。  

    そこで彼らはIRIS発症に間接的に関与する(Mult Scler 2012;18:335-44)とされる、CCR5陽性細胞に対する治療を行いました。CCR5拮抗薬である、内服剤maravirocを投与。Natalizumabを43回投与された、49歳女性が失語と痙攣を呈し、脳MRIで多巣性病変があり、CSFでJCVが130000 copies/ml見いだされ、重篤なIRISの危険性も考慮されました。血漿交換の直後、ステロイドを投与せずにmaraviroc を投与。すると、CSFのCCR5陽性細胞が選択的に減少し、IRISと思われる脳MRI所見や症状は消失。2ヶ月後に一旦、maravirocを中止したところ知的レベルの低下と行動異常が出現したため再開。7ヶ月後に内服を中止。MRI所見は造影病変は出現せず、所見は安定し、10ヶ月後にはJCVも消失。  

    以上のことから、CCR5陽性細胞のCNSへの流入を抑制すればIRISは予防できること、JCVは正常の免疫機能があれば自然淘汰しうることが示唆された、と言えるのではないでしょうか?
  11. Natalizuma中止30日以降に発症したPMLについてFDAから 報告されています(Ann Neurol 2014;75:108-15)。17例が集められ、全例が中止6ヶ月以内に発症しています。この理由はNatalizumabによる末梢血中のCD4陽性T細胞の減少は、Natalizumab中止後6ヶ月間は続くからと思われます(Ann Neurol 2006;59:743-7)。IRISが11例で認められています。  

    この論文で筆者が興味を引いたのは、患者の報告地域で、14/17例 (82.4%) とやはり欧州が圧倒的に多いこと。17例全体でも、16例で知られているPML発症危険3因子を1つ以上持っていることですが、欧州患者では、投与回数が24回以上(2年間以上の治療期間)だったのが10/14例、免疫抑制剤使用歴が7/13例で認められ、血中の抗JCV抗体は検索した全例、11/11例で認められました。最後は当たり前として、前2者とも認められたのは5例のみ。Natalizumabが投与された欧州に患者でPML発症率が高いのは、免疫抑制剤使用歴を有する患者の割合が北米より圧倒的に高いためと考えられてきました。これを否定する根拠になるわけではありませんが、それ程、過去の免疫抑制剤の投与歴が時間が経過した後でのPML発症にどれだけ影響するものか、不思議な気はします。
  12. CD8陽性T細胞はJCV感染オリゴデンドログリアを攻撃する という報告が出ていますが(J Neurovirol 2006;12:116-28)、抗原特異的に攻撃しているわけではなくて、bystander damageによるものという意見も(Neurology 2012;79:2258-64)。
  13. ステロイドパルスによるJCV特異的CD8陽性T細胞機能抑制
    インフルエンザやEBVに対しては変化がないのに、パルス後にJCVに対するIFNγやTNFα分泌能(p=0.02)が低下することが示されています。特に前者は激減(p=0.003)。このことは、IRIS予防のためにパルスを投与することによるPMLへの免疫機能が著しく抑制されてしまうことを示しています。できたらやらない方がええ、という根拠にもなっています。(Neurology 2012;79:2258-64)
  14. 18歳以下で発症したNMO
    ブラジルから29例 (21例が女児)が報告されています(Pediatr Neurol 2014;50:66-8)。発症年齢は5-17歳 (13 ± 3.4歳)、白人が12例、混血が15例、純粋アフリカ系が2例、脊髄炎初発が12例で視神経炎は8例、両者が9例。抗AQP4抗体陽性が22例 (75.9%)で、年間再発率は0.74。
  15. 一人者のための商品 が多く開発されているようです。単独生活をしている高齢者だけでなく、単身赴任者や草食系男子多発による、特に都会での独身者の急増がこの領域の商品開発を刺激しているようです。  

    「味噌汁自動作成機」なんていうものがあります。従来は味噌汁フリーズドライまででしたが、珈琲マシンのような本格的な商品が家庭用に開発され、マルコメ味噌から味噌サーバー、「椀ショット」として発売されました。  

    「ひとりでペッタンコ」一人では張りにくい湿布などを背中に貼る道具。背中を爪で軽く引っ掻くように掻いてくれる、道具も開発して欲しいなあ・・・
  16. Fingolimod関連無月経
    Kuwaitから3例報告がありました(Alroughani R. Mult Scler, in press)。従来報告はありませんでしたが・・・特徴は
    1). FDAからの報告を元にしたeHealthMeでは、2013年10月13日までに16/8745例(0.18%)あるそうです。
    2). 治療開始6ヶ月以内に出現
    3). 薬剤中止で2?3ヶ月後には元に。気がつかないで継続していた場合どうなるかは、不明です。