Medical Essay  NO.16

ガムシロップをどのように作っておられますか?通常はお湯を沸かして砂糖を溶かす、という方法ではないでしょうか?信濃町にある「絹之房」から教わったやり方(元は、県の医師会館の前にあった「万茶亭」の女将のオリジナルか、どこかから仕入れてきたもの)。炭酸ガスの溶けている炭酸飲料を利用する方法で、CANADA DRY CLUB SODA SPARKLING WATER 1本207ml入りですが、330grの砂糖を広口瓶に用意してソーダを入れてかき混ぜ、しばらく放置。15分もしますと、すっかり溶けてしまいます。これだと加熱する必要もなく、とても便利。
外来語の中国語訳ですが、音訳そのもの。いやあ、漢字って文化ですねえ。外国の文化も大切に!Coca-Colaのことだそうです。  お坊さんのお布施の金額を仲間内で話す際の業界用語。一がテンムダイ。天という字から大をとるという意。二がテンムジン(天無人)。五がワレムコウ(吾無口)。九がハトムチョウ(鳩無鳥)。優雅ですねえ。文化だ!  フーテンの寅さんこと、車 寅次郎の稼業は香具師ですが、弾左衛門配下で非人頭、車 善七からきている可能性があるそうですね。「男東大どこへゆく 背中の銀杏が泣いている」なんていうコピーがありましたが、寅さんの背中のルサンチマンの重さを感じないといけないんだそうで・・・。(そう言えば、昔「姉さんまちまちルサンチマン」なんていう評論集がありましたが)  メロディーラインが優先している現状からしますと、日本の歌謡曲の多くは曲づくりが先行して、後で言葉を当てはめることが多いのではないかと筆者は思いますが、曲が先行する場合を「作詞」、曲に関係なく言葉だけを作ることを「作詩」といって、分けているそうです。(こんなことが五木寛之さんの「ハオハオ忘憂録」角川書店に出ています)
Phenytoinはさまざまな副作用を示しますが(しかし、最も薬理が解っている薬剤でもありますが)、筋炎を呈し得るそうで、5例報告があるそうです。アラビア人のLafora病のてんかんにphenytoinが投与され、その後筋炎を発症したという報告が米国から(J. Child Neurol., 13:577-580, 1998)。  
Drug-induced myositisの原因薬剤としては、
D-penicillamine
cimetidine
chloroquine
carbimazole
3-hydroxyl-3-methylglutaryl-coenzyme A (HMG-coenzyme A) reductase
inhibitors
NSAID
sulphacetamide
carbamazepine
phenytoin  
Phenytoin-induced myositisの特徴は、投与3-7週後から発熱、皮膚炎,次いでリンパ節腫脹、好酸球増多酵素増加が出現し、薬剤開始2-10週後に筋痛や筋力低下が出現。
2002年3月28日朝日新聞夕刊に英国喜劇俳優ダドリー・ムーア氏がPSPで死亡したとの記事が載っていたそうです。これはNHO兵庫中央病院の舟川先生からの情報。筆者はコメディ映画はほとんど見ませんのでこの俳優は知りませんが。PSPも一般的になったものです。
という疾患概念がまだ存在するのか、と思いきや、意外に論文が出ています。  
10例の報告が出ています(JNNP, 71:615-620, 2001)。性差はなく、6-35年の経過とゆっくりで、症状としては、痙性が主体で、下肢の弱い筋力低下をきたし、やがては偽球症状(dysarthria, compulsive lauphing or crying)を。4例でCK上昇があり、MRIでは皮質の萎縮、特にprecentral gyrusとparietal-occipital regionへの萎縮の拡大が認められる、と。ALSとは経過が緩徐であること、MEPが著明に延長していること、focal cortical atrophyの存在で鑑別できる、と。脊髄液は正常で、白質病変のないことでchronic spinal MSと鑑別できる、と。  
鑑別疾患としては、
HAM
Neuroborreliosis
Nerosyphilis
Subacute combined degeneration
ALD
Hexosaminidase deficiency
Cerebrotendinous xanthomatosis
Foramen magnum lesions or compression of the cord
Hereditary spastic paralysis  
PLSでは時に悪性腫瘍の合併が知られているそうで、paraneoplastic PLSという病態もあり得るかもしれません。  

これとは逆に、病理学的にALSとは区別できなかったり、central motor systemだけに変性が限局していないなど、他の変性疾患との関係もあって、独立したentityとはいえない、という20例を検討した報告もあります(Brain, 124:1989-1999, 2001)。
「慈悲」という言葉がありますね。どちらも古代サンスクリット語の中国語訳なんだそうです。慈の サンスクリット語は「マイトリー」といって、英訳ではフレンドシップとかヒューマニズムという明るいイメージがあるんだそうです。一方、悲のほうはサンスクリット語でカルナーと言いますが少し複雑で、「思わず知らず体の深いところからもれてくるため息のような感情」とか、「励ましの言葉さえかけることもはばかられるような場面で、こちらの体の深いところからもれ出てくるため息、呻き声」のようなもの。明治以来、日本人が切り捨ててきた「情の世界」かもしれないとおっしゃっておられます。五木文学の核心かもしれません。痛みに苦しんでいる患部をさすってやると、痛みが和らぐことがありますね。psychoneuroimmunologyの立場から科学的なevidenceが必要ですが、意味があるのかもしれません。さすらなくともただそばにいるだけでも、苦しんでいる人には支えになるでしょう。がんばれと叫ぶのではなく、じっと見つめたり、手を握っている、その感情の基礎にあるのがカルナーのように思われます。看護の原点にある思想は「悲」のようでありますね。  

ボランティアというのは、「相手に何かしてあげる、といった素朴なヒューマニズムではできません。たぶん石もて追われるのがボランティアの本当の姿なのかもしれません。ボランティアは『布施行』なのです。それによって自分自身が『行』を積つむ機会を与えられるのです。・・『熱伝導の法則』みたいなもので、熱が高いほうから少ないほうへ伝わってゆく。熱を持っていたほうから少ないほうへ熱が伝わってゆき、高かったほうの熱が下がる。下がった方が損をしたかというと、そうはならないのが精神的なボランティアの意味だ。」
我が国でも経口避妊薬が認可され、てんかん患者さんも服用する可能性が出てきました。抗痙攣薬を服用しますと、γ-GTPなどが上昇することが少なくありませんが、肝機能障害によるものではなく酵素誘導によるものですね。それ故、抗痙攣薬を服用している患者さんが通常量の経口避妊薬を服用しますと、血中濃度が期待するようには増加せず、避妊に失敗する可能性があります。避妊効果を減少させる薬剤には特に注意を!

Reduces effectiveness
 Barbiturates
 Carbamazepine
 Oxcarbazepine
 Phenytoin
 Topiramate
No change
 Felbamate
 Gabapentin
 Lamotrigine
 Vigabatrin
 Valproate
(Epilepsia, 39(Suppl.8): S17-S25, 1998)
女性の運動選手はX脚気味になりやすく、膝の靱帯断裂を起こし易いんだそうで、膝の前十字靱帯(ACL)損傷は、バスケやサッカー、バレーボールでは女性が男性の8倍にもなっているそうな。女性は飛び上がったり回転したりする際に、Hamstring、よりもQuadricepsをより使用する傾向があるため、膝に余計な力が加わるためで、着地の際に膝をもっと曲げるようにすることで損傷を予防できるそうです。この理論に基づいてトレーニングをして、女性選手の怪我を著明に減少させたチームもあるんだそうです(Nature News日本語版より)。元(このニュースレターのオリジナルのでた2002年当時)長岡日赤のN先生、断裂した部位は異なりますが、お気をつけ下さい。
通貨まで統一して、いよいよEUは新しい段階へ進んでいますが、政治的にはばらばらで、ヨーロッパの誰と話せば良いのか不透明になったまま(8年経過しますと、通貨を統一したことがギリシャ問題の解決を遠ざけています)。ヨーロッパへ行った人のお土産で流行っている漫画入りポスターがあるんだそうで、i-nsider 3月8日号(2002年)から引用します。訳は高野編集長によるもの。
イギリス人のように料理上手で
フランス人のように運転マナーがよく
ベルギー人のように気が利いて
フィンランド人のようにおしゃべりで
ドイツ人のようにユーモラスで
ポルトガル人のようにメカに強く
スウェーデン人のように融通性に富み
ルクセンブルク人のように世界中で有名で
オーストリア人のように我慢強く
アイルランド人のように酒嫌いで
スペイン人のように謙虚で
オランダ人のように気前よく
ギリシャ人のように整理整頓好きで
デンマーク人のように思慮深く
というもの。

似たジョークは今までもありましたが、これは徹底しています。実際はこれとは逆なわけで、狭い地域でこれだけ独自性があるという「歴史性」に感心します。日本人の中でも県別で似たようなことは言えるかもしれません。怖くてここでは書けませんが。
昔、授業に出てきた「最後の授業」に面白い裏話があることが判りました(2002年当時)。
この小説は、1870年にプロシアとフランスの戦争、普仏戦争で勝利したプロシアが敗戦国のフランスに賠償金50億フランとアルザス、ロレーヌ地方の割譲を要求した(フランクフルト本条約)を背景とします。「月曜物語」という短編の中の一つで、アルフォンス・ドーデ(1840-1897)作。  

ドイツ領になってしまった元フランス領のアルザス地方の学校が舞台です。フランス語による最後の授業がアメル先生により始められます。町の人々も大勢学校へやってきます。今まで勉強しなかったことを悔やみながら・・・。  

アメル先生は、「たとえ民族が奴隷の身にさらされようとも、自分の国の言葉を守っていれば、牢屋のカギを握っているようなもの」という、有名な言葉を引用します。そして、最後に黒板に「フランス万歳」と書きます。筆者は、子供ながらに、この崇高なナショナリズムに目頭が熱くなった記憶があります。(何を隠そう、筆者はナショナリストです!)  

ところが、本当はちょっと違うようなのですね。そもそも、アルザス地方の言語はドイツ語系で、アメル先生のほうがむしろ言語を強要していた立場。昭和20年8月15日に、朝鮮で日本語の「最後の授業」を行うようなもの。先の有名な台詞も、南仏プロヴァンスの言葉を守る闘士だったミストラルの言葉ですが、南仏出身のドーデは「プロヴァンス語=味方」「フランス語=敵」という設定を、「フランス語=味方」「ドイツ語=敵」にすり替え、パリ政府にゴマをするために、アルザス地方の実状を無視して、フランス政府に都合がよいように変えてしまった、という批判があります。  

この物語は、背景を無視されて、日本でも戦争中に「国語愛の昂揚のために格好の教材として用いられていた」ようで、1927年に教材として採用されてから、戦後も長く教科書に用いられてきました。ところが、田中克彦さんの「ことばと国家」(岩波新書)で指摘され、文部省にも大変に大きな衝撃を与えたようで、1986年以降、この物語は教科書から完全に消えています。  

つまり、学校でこの物語を習った記憶のある世代は限定されていることになります。多分、20歳代前半で線引きされるのではないでしょうか?新潟大学の神経内科にいる、テクニシャンに聞きましたら、大人になってから聞いたような気がするけども、学校では習っていない、とのこと。本誌の読者は、習ってますよネ!!!
最近、知った比較的ありふれた世代間格差について。  
みなさんは「相合い傘」マークをどういうふうに書きますか?名前を左右に分ける縦線は、傘の三角の頂点まで届いていますか?筆者の頃は、傘の頂点まで縦線は貫いていましたが(一筆書きでしたから、これは当然ですよね?)、こういう書き方は30歳代前半より上の世代なんだそうで、これより若い世代では縦線は傘の三角形の横線までで、傘の下縁で止まっているんだそうです。さらに、20歳代前半より若いと、傘のてっぺんにハートマークが付くんだそうな。妙な話ですが、こういう世間で流布しているマークに世代間格差があるのは不思議です。一体、誰が変更しているのでしょうか?(昼休みの西新潟中央病院医局で聞き込んだ話)
(文春新書)によりますと、スペインのバスク人の起源ははっきりとはしないようなのですが、クロマニヨン人の子孫ではないか、と言われているそうです。んーん、誇り高き民族・・か。もう武装闘争はしていないのでしょうか?  
今、話題のイスラエルですが、不思議なことにユダヤ教を国教には定めてはいません。シリアはイスラム強硬派ですが、同じくイスラム教を国教にはしていないそうです。理由はそれぞれあるようですが、書いてありませんでした。  
カレーのCMに出てくる、髭とターバンがトレードマークなのは、ヒンズー教徒のインド人ではなく、カーストを否定しているパンジャブ州の分離独立を主張しているシーク教徒。  
欧米で流浪の民として良く知られている被差別民族はジプシーですが、その語源はエジプシャンで、エジプト出身だと誤解されたため。現在はロムと呼ばれています。遺伝子を研究した学術論文でも、ジプシーではなくてロムという言葉が用いられています。このロムの出身ははっきりとはしていないようですが、シーク教徒のいるパンジャブ州にいたアーリア系民族が原郷になっているというのが定説だそうです。  
麺の原料である小麦の原産は西アジアで、パンのように焼かずに麺状にのばしたのは後漢の頃の華北の人々で、2千年近くの歴史はある、と。
バッグパイプはスコットランド独自の楽器かと思っていましたら、フランスやスペイン、イタリア、西アジアに広く分布しているんだそうですね。固定したイメージというのはおそろしいものです。
昨秋(2001年)出版された、別冊醫學のあゆみ「21世紀の神経免疫学-展望」が国会図書館に2002年3月に納入されました。その際に、私の生年月日を聞かれましたが・・・。必要な情報なんでしょうか?本来関係ないはずですが・・・。以前、本誌でもご紹介しましたが、飛行機事故などで被害者を発表する場合、日本のメディアでは年齢を付けるのが常識ですが、国際的には付けないことが常識のように思います。理由は聞きませんでしたが、なんか変。
が出ています。「料理のコツを科学する」(プレイブックス インテリジェンスシリーズ、青春出版社)  
血の滴るステーキという言葉がありますが、あれは正しくはないんだそうで、あの赤い色はヘモグロビンではなくて、ミオグロビンなんだそうですね。確かに、血液が出すぎだ、という感じはありましたが。  
最近では無洗米というのもありますが、米を洗う場合でも、大量の水で2回ほどさっと洗うだけで良いんだそうで、少量の水で洗うと、ぬかの臭いがしみこんでしまうんだそうですね。最近の米は精白の度合いが強いので、とがなくて良いんだそうです。でもなあ、結構白濁するけどなあ。  
すき焼きの際は、牛肉としらたきや豆腐は接触させてはいけないんだそうですね。しらたきや豆腐には水酸化カルシウム(石灰)が含まれているので、牛肉が硬くなってしまうんだそうです。そんなに違うんでしょうか?どういう状態で含有されているかでも違うでしょうが。溶けたりはしないでしょうけどねえ。  
旨味というのはすでに英語になっている、ということを本誌でもご紹介したことがありますが、旨味成分の発見には多くの日本人が関与しています。最初に1908年に池田博士は昆布からグルタミン酸を分離。さらにはグルタミン酸ナトリウムを分離。1913年にはその高弟、小玉博士が鰹節の旨味成分、イノシン酸を、1957年には國中博士が椎茸の旨味成分、グアニル酸を分離。この3成分が代表的ですが、他にアスパラギン酸、イポテン酸、トリコロミン酸、アデニル酸、コハク酸が代表的な旨味成分だそうです。