Medical Essay  NO.10

従来の一卵性双生児の研究から、知能が遺伝することは疑いようもないことだそうです(うわっ!おっそろしい)。一卵性双生児を対象に、画像で脳のあちこちを調べて、IQと相関するかどうかを検討した論文が出ています(Neurology, 50:1246-1252, 1998)。相関せず。なんとなく、良かった。
看護婦さん、いや看護師さんのナースキャップが結構細菌などで汚染されていて、むしろ院内感染の原因にもなっている可能性が指摘されていて、次第に廃止する傾向にあります。これに伴って、女医さんとの見分けがつかなくなる可能性が出てきました。薄いピンクや黄色の看護婦さん(筆者はこっちの名称にやはり拘りたいと思います)ならば間違える可能性は少ないでしょうが、白ですと見分けが難しいようです。女医さんが診察に行ったら、医者を呼んでくれ、と患者さんに言われたり、逆に、交代で出た外来で丁寧に診察したら、いやあ、今日は看護婦さんに丁寧に見てもらった、と患者さんに言われたり、結構、女医さんの世界もおもろいようです。両者の見分けがつきにくくなることにより、大体は、看護婦さん側よりは女医側が苦労しているようです。区別を曖昧にすることによるメリットは余りないように思いますが、女医さんの数が少ないために、考慮されることが少ないのなら、これは差別でしょう。南北問題や少数民族問題にもつながる話。
沖縄で実際に20カ所以上の高校で沖縄の歴史の教科書として使用されている本。筆者が持っているのは1997年発行の改訂版で、300頁足らずの本ですが、琉球の王国体制が破壊される明治政府による「琉球処分」がちょうど真ん中なので、「内地」の歴史の教科書とは異なり、大部分が近代史に割かれています。米軍の基地問題や新石垣空港建設問題まで、つまり平成に入るまで記載されています。ユニークなのは、現役高校生のレポートがあったり、さまざまな資料からの引用が多いこと。  
子供のスポーツによる怪我は致し方ありません。National Safe Kids Campaignによりますと、米国の子供の30%は5-14歳の間に、なんらかのteam sportの最中に怪我をするそうです。ただ、スポーツ別頻度を比較しますと、
Football             28%
Soccer             22
Baseball/softball/T-ball   18
Basketball           15 (USA Today, 2000.5.4より)  
Footballで怪我が多いのは当然ですし、Soccerも格闘技的要素がありますから仕方ないでしょう。筆者はもっと頻度に差が出ると思ってましたので、FootballとBasketballの差がわずか2倍でしかないことに、意外な感じを受けました。  
亡くなった民俗学者の宮田 登さんとの対談が新書として再刊されています(網野善彦、宮田 登「歴史の中で語られてこなかったこと」洋泉社)。農民=百姓であると「正統」歴史学は教えてきましたが、これは間違いである、と。農民は土地に縛られていなかった人々の総称で、百姓はその一部でしかないこと、商人や回船問屋といった金持ちもいれば、林業・水産業従事者や漂白する多くの人々がいたことを強調しています。水呑百姓という言葉がありますが、この「水呑」という意味が良く解らないそうです。水しか飲めないから、という説明が一般的だと思われますが、必ずしもそうとも言えず、金持ちもいたらしいのですね。  

「アイヌの問題や漁民の問題を取り上げないで、日本の歴史が本当に語れるのか?」と。また、従来、女性の役割はほとんど無視されていましたが、近代になって女性が初めて社会進出したわけではなく、養蚕事業では女性が経済を支配していて、それゆえ社会との接点も男より多かったようです。(そう言えば、秩父事件の起きた埼玉県西部から信州にかけては養蚕が盛んでしたが、当時、絹は重要な輸出産業だったため、諸外国の情勢が身近だったという背景があったことが指摘されていましたね。経済は社会・政治制度にも自然に影響するするでしょう。)どうも、従来の歴史学が正統とされる書籍を中心としていたため、いわば権力者あるいはその近くにいた人々の書いたものが中心で、民衆の生活が描かれていなかったためのようであります。いわば、歴代首相の回想記だけに限定して、明治以降の歴史を構成したようなもので、ずいぶん捻れるでしょうねえ。
1997年3月19日から1年間、50冊のJAMAの表紙を飾った絵画を検討された方がいらっしゃいます(Jocalyn P. Clark: Babes and boobs ? Analysis of JAMA cover art. BMJ, 319:1603-1604, 1999)。34(68%)がヒトの絵で、うち25(74%)は男女がそれぞれ性分業されて描かれているそうです。ま、絵画、特に古いものであればあるほど当然とも言えるような気がしますが・・・。筆者(単独名)は納得しないのですね。女性が描かれている15のうち、12は赤ちゃんが描かれており、6はヌードである、と。JAMAは表紙を飾る絵画を選択する際に、考慮するべきである、と主張されていらっしゃいます。ところで、著者は女性なんでしょうねえ。名前がちょっと解りませんが。共著になってはいませんが、謝辞にボスの名前が記載されていて、Prof. Patricia McKeeverという女性の方。カナダのCentre for Resaerch in Women's Health所属の方。  babesとかboobsという単語に心当たりのない方は、Internetで検索してみてください。できましたら、image情報に限定するともっと解りやすいでしょう。ただし、出てくる情報の内容には責任は持ちません。検索ソフトによっては、随分違ったものが出てくるかもしれません。ちなみに、筆者は確認はしてませんので、あしからず。古典的ローマ・カトリック的あるいは儒教的、くそまじめな、いとかしこきお方、特に女性は試みることをお薦めしません。本誌を読むと、俗語にも強くなれ、Internetも楽しくなる?
1999年秋は久しぶりに毒キノコ中毒が大流行でしたね。で、ドクササコも県内で話題になりました。インターネットでもキノコ中毒の情報が入手できますが(http://www.sue.shiga-u.ac.jp/kinoko/kinokoO.htm; http://www.umin.u-tokyo.ac.jp/chudoku/index.htm)、今でも基本的な臨床情報は白川論文に依拠しているんですねえ(新潟医誌, 94:745-753, 1980)。ついでに、筆者も一つサーモグラフィーについて書いてます(神経内科, 26:204-206, 1987)。  

このキノコは東北から北陸地方に分布しており、第1例は京都山科での報告ですので、京都以西にお住みの方には必要はないかもしれません。肢端紅痛症を主症状とし、食後数時間から12日で発症し、数日から2-3週の経過で治癒。疼痛は激烈で、手足を冷水に浸けてないといられないそうです。手袋靴下型の感覚障害が認められ、副交感神経興奮による縮瞳を呈します。鎮痛剤は効果が乏しく、ニコチン酸大量点適療法(新潟大・神内ではATP・ニコチン酸大量療法は星先生のSMONでの効果で知られていて、マルトクと呼んでいました。ソリタT3 500 mlに30mgから始め、10mgずつ増加させて150mgまで増量し、このまま4週間続けるというもの。originalは200mgまでだったかもしれません。)、硫酸アトロピン皮下注、インドメサシン座薬・軟膏、硬膜外ブロックが知られ、最近ではプラスマフェレーシスが有効、と。
なる本が出ております(小林照幸、文芸春秋新書)。老人ホームでの男女問題は今後の大きな課題になりそうです。地元ではそこそこに経営者としても知られていた80過ぎの女性が、「妊娠の心配をしないでセックスできて、こんなに幸せなことはない」と語り、三角関係のもつれからセックスが絶たれたとき、それまでは生き生きとしていた男女3人が、そろって1年以内に静かに息を引き取ったというエピソードは、仕事で忙しくしていて忘れがちな男女間のえにしの大切さ、を思い出させます。セックスレスのほうが、男と女の人間関係の上からはより本質的であるようには思うのですが・・・(究極の愛人・恋人・夫婦関係は、同士的茶飲み友達ではないか、と筆者は考えておりますから)。Anyway. この女性はただではなかったのですね。「援助交際」をしていたわけで、この著者は無料にはしなかったのは、女のプライドによるものだろうし、300円と格安だったのは裕福とは言えなかった男たちへのいたわりだったのだろう、と言っています。本当のところは解りません。が、わが「神の国」では女子高校生の値段が最も高く、特に東京で高く地方で安いと言われ(筆者の経験ではありませんよ-為念。宮台真司さんのお言葉であります。)、30代後半の東電OLで一桁下がり、80歳代でまた一桁下がる、という現象が認められます。経済の法則には則ってはいるのかもしれませんが、この社会学的な意味は何なのでしょうか?
定年で一橋大をお辞めになり、関西学院大へ移られた海老坂 武さんの続編が出ました(「新・シングルライフ」集英社新書)。厚生白書によりますと、18歳から34歳までの独身者のうち、一生結婚するつもりがないと考えている女性は、1982年から1997年まで概ね5%弱と変化がないのに、男性では同期間で2.3から6.3%へ一貫して増加しています。これは何故でしょう?女性はまだ夢を持っているようですが、すっかり冷めた男が増えてきて、次第に結婚生活から遠ざかりつつあるようです。夢をまだ持っているのに、結婚できない女性が増えていったら、社会にとっては不健康ですね。(いやな女が増加する!)  

結婚しないことに対してさまざまな偏見・差別があるようですが、これに対しては様々な反論する言葉が引用されています。筆者に最もうけたのは、「ミルクがたやすく手にはいるときに、どうして牛を買う必要があるでしょう?」(シンシア・S・スミス)  たとえ年をとったとしても、恋愛の悦楽は人生を明るく楽しくさせるでしょうが(良くは解りませんが・・・ん?)、著者の友人でもある詩人(多分、フランス人)が自分の71歳の誕生日に50歳以上が多い客に向かっておこなった、「今晩この集まりで、たくさんの恋愛の出会いがありますように」というあいさつに著者は拍手を送っています。  

エロスと友情について、こんな言葉を紹介しています。「私が男との関係に求めているのは、経済力でも、安心でも、庇護されることでもない。エロスと友情だけだ。」(田嶋陽子教授)著者は「エロスと友情とは恋愛の渦中にあっては未分化であり、ときには矛盾する。その結びつき方は恋愛の過程で変化してゆく」と述べています。「確かなことは、エロスの寿命は短い」「愛は4年で終わる」といっている人もいるそうです。やっぱ、長続きする友情が男女間でも最も重要なような気がしますが・・・。
1882年1月1日から1974年6月30日までに生まれた813人の音楽家を調査(BMJ, 319:1612-1613, 1999)。John "Trane" ColtraneやCharlie "Bird" Parkerといったサックス奏者は、他の楽器奏者よりrelative mortalityが高いんだそうです。最も低いのがVocalist、次いでPercussion。なぜ、サックスがやばいのかというと、頬部を膨らませて息継ぎをしないで演奏しますね。力むために頸部で循環障害が起き、脳への血流が低下し、静脈潅流が悪くなって静脈血栓症を起こすからだそうです。
本誌でもすでにドフトエフスキーやゴッホ、南方熊楠にてんかん発作症状があったこと、それらの症状がこれらの人々の人生に多大な影響を及ぼしたことを紹介しました。西新潟中央病院てんかんセンター小児科の金澤 治先生により、上記の題名で歴史上の有名人たちに見られるてんかんについてまとめられ、小冊子として協和発酵から出ています。ジアンヌ・ダルクの発作は単純部分発作と複雑発作の中間位の意識状態か、とかてんかん専門医らしい記述も見られます。また、「ガリバー旅行記」を書いたスウィフトにもてんかんがあったようですが、宮崎アニメ「天空の城ラピュタ」やInternetのサーチ・エンジン「Yahoo」もオリジナルはガリバー旅行記にあるんだそうですね。 筆者が驚いたのは昔の人ばかりではなく、現代人も取り上げられていて、米国陸上短距離の女王、ジョイナーは37歳で亡くなりましたが、ドーピング疑惑がついてまわり、突然死したときにも薬物との関連が噂されました。彼女には左前頭葉に血管腫があって、頭部が右へ旋回するてんかん発作があったんだそうですね。俯せで寝ている時に発作が起こり、顔面が右旋回して枕やシーツに押しつけられて窒息死したんだそうです。痛ましいことです。合掌。エリザベス・テーラーにも側頭葉に脳腫瘍があって、複雑部分発作を起こしていたんだそうですね。  

不思議な気がするのは、欧米ではてんかん患者は魔女狩りにあったり、社会から追放される運命にあったように思うのですが、我が国ではほとんど知られていないように思われます。てんかん患者は一定の比率でいるはずですが、日本では歴史上の有名人でも発作らしき記載はほとんど残されてはいないように思われます。天皇家の家系でも余り聞きませんものねえ。あるいは、てんかん患者が嫌われるようになったのは、明治以降の近代社会だけなのでしょうか?明治以降、民謡は管制的に作り替えられましたが、それまではおおらかであったとされ、比較的最近まで田舎では「夜這い」もあって、セックスに関しては現代社会の常識とはずいぶんかけ離れていたようです。近代以前の日本では、様々なことに対してずいぶん寛容だったのかもしれません。神経学の歴史が大切であるとしたら、先人の業績を掘り起こすだけではなく、現代と社会学的・民俗学的に比較しつつ、今日的問題の解決にも役立つような切り口があっても良さそうな気がします。
結婚している女性が配偶者のことを、他人に対して何と呼ぶかは、女性の思想性を問うことにもなります。男女平等を主張される女性が「ウチの旦那が」などと言っているのを聞いてしまいますと、大げさに言えばその方の生き方を問わねばなりません。旦那という以上、妻は使用人としての立場をわきまえている明治女であることを想像してしまいます。落合恵子さんや沢村貞子さんは母親や配偶者のことを「家人」と表現していらっしゃいます。一般的には、こう言っても「家人」が誰を指すかが聞く方にも限定されている場合が多いはずですが、特に、主語を制限する必要がなければ、これでも言いように思います。  

男の場合も同様です。「かみさん」というのも便利な言葉ではありますが、民族学的には「山の神」などとの関連が指摘されていたように思います。言葉の由来がその言葉の思想性を支えています。「家内」というのも専業主婦でないなら何となく変な感じがします。最近、筆者の場合はこれらの言葉も避けるよう注意しています。むしろ、ことさらに第三者に言う場合、フルネームで表現しています。言葉は歴史や社会性とは無縁ではあり得ませんから、言葉を無頓着に使用することに鈍感であってはならないと思うからです。
こんなメールが流れてきました。筆者には著作権はありません。一応、直接の出典先にはお断りをしましたが、オリジナル作者は不詳。
> ソフトのことでちょっとおたずねします。
> 昨年、ガールフレンド7.0からワイフ1.0にアップグレードしたところ、 思いがけないことが次々と起こり、困っています。
> アップグレードして間もなく、チャイルドという名前のプログラムが いくつもでき、容量をすごくとるので、お金をつぎこんで環境を変えざるを得なくなりました。
> さらにワイフ1.0は、他のプログラムに勝手に自分をインストールし、全プログラムの監視をしています。
> たとえばゴルフ3.1や飲み会5.0といったアプリケーションは、動きが悪くなっています。キャバクラ6.2に至っては、まったく動きません。 選択するだけでクラッシュしてしまいます。
> そこで、ワイフ1.0をガールフレンド7.0に戻したいんですが、このワイフ1.0のアンインストールがうまくできません。
> 強引にアンインストールしようとすると、システム全体を巻き込んでしまいそうです。
> いい方法を教えてください。 =================================================================
> [ こちらサポートセンター --- 返信メール ]
> 件名 : Re: ソフトの不具合について
> 送信者 : サポートセンター
> お世話になります。
> ワイフ1.0の件ですが、同様のご質問をよくいただきます。 たいていの場合、原因は大きな誤解にあります。
> ガールフレンド7.0からワイフ1.0にアップグレードするとき、単なるユーティリティソフトと考えて何となくアップグレードする方が多くいらっしゃいます。しかし、ワイフ1.0はユーティリティソフトではなく、 OSです。ガールフレンド7.0とは根本的に異なると考えてよいでしょう。
> ですから、いったんワイフ1.0をインストールしてしまうと、アンインストールしたりガールフレンド7.0に戻すというようなことは、 ほとんど不可能です。ここで無理に、ワイフ2.0やガールフレンド8.0をインストールするようなことがあれば、問題がいっそう大きくなり、回復不可能になります。
> このあたりのことは、ヘルプファイルの「養育費」「財産分与」に詳しく 書かれていますのでご一読ください。
> ですから、ワイフ1.0はそのままさわらずに、周りの環境 ワイフ1.0に合わせていくべきです。
> 何度もクラッシュしたり、他のプログラムへの影響が大きいときは、
>
> C:\gomen_ne
>
>と打ち込んでみてください。これでたいていの場合、回復するはずです。
> 新しいソフトを買うときは、ワイフ1.0との相性を考える必要があります。
> 現在わかっている中では、ケーキ4.0や花束5.2などは、非常に相性がいいよう です。
> ご健闘をお祈りします。またなにかありましたら、お知らせください。