Medical Essay  NO.8

前日の食事が問題だったようですが、North Carolinaの大学フットボールチームがフロリダの大学との試合中に、North Carolinaのチームの何人かに突然嘔吐と下痢が出現。ところが、試合は続行されました。出場していた罹患患者たちは試合中、フィールドの脇で吐きながら試合をしていたそうです。offense teamの63%、defense teamの47%が発症。接触する機会の多いスポーツでは感染症は危険です。相手チームにも感染者が出現。acute gastroenteritisを起こした病原体はNorwalk virusであることが判明したのですが、この論文の結論はこのウイルスはフットボ?ルの試合中に、人から人へと感染しうること、接触するようなスポーツでは急性胃腸炎に罹患した患者は試合から除外するべきだ、というもの。  

ただ、この事件には妙なことがあります。当然のことながら、試合はフロリダチームが圧勝したのですが(62対13)、ボール所有時間はほぼ同じ(29 vs. 31分)。にも関わらず、感染したフロリダチームでは発症者が偏っていて、offense teamは32%発症したのに対して、defense teamでは発症者なし。著者は、North Carolinaのdefense teamのほうがoffense teamより、理由は不明ですがウイルスをより相手側に感染させたと述べています。つまり、こういうことではないでしょうか?攻撃時間がほぼ等しいが点差は大差がついたということは、単位時間当たりの接触回数が多くなるラン攻撃ではなく、フロリダ側はパスを多用したか相手が嘔吐や下痢で体力を消耗している隙に、defenseの間隙を縫って長距離を走ったことになりますね。ならば、単位時間当たりの接触回数は少なくなるわけですから、フロリダチームのoffenseは感染する機会が少なくなるはずで、むしろ、defense teamのほうに犠牲者が多くなってしかるべきですよね?何が起きたのでしょうか?  

嫌なことが書かれていました。主には手を介した感染だろうが、フィールド脇での吐瀉物が乾燥して、その飛沫を吸い込んだために感染した可能性もあり得る、と。審判は発症しなかったのでしょうか?応援団、とりわけフィールドにより近いチアリーダーは?記載はありませんでしたが・・。
(N. Engl. J. Med., 343:1223-1227, 2000)
腓骨上部で腓骨神経が圧迫されてcompression neuropathyが起きますが、その原因として、habitual leg-crossers、長期の入院、しゃがんだ後など。ダイエットをして体重が減少した後で、一側のperoneal neuropathyが起きるそうです。スペインのvalenciaからの報告で、1988年から1997年までに1000例(!)のtraumatic mononeuropathiesを診療しているんだそうですが、うち150例がpeoneal mononeuropathyで、うち30例がダイエット後に発症。2週から12ヶ月間に5-30kgの体重減少後に発症。ただ、予後は良好で、29例は3週から3ヶ月で改善。これがきっかけで、hereditary neuropathy with liability to pressure palsies (HNPP)が発見されることも。
(J. Peripheral Nerv. Syst., 5:101-105, 2000)
大きな英和辞書を引きますと、最後のほうに「うそつき」という意味が出てくるそうです。うーん、ムンテラマイシンの起源なりしか?しかし、診療録は正確に。
「沈黙の艦隊」を書いた漫画家のかわぐちかいじさんによる、ご本人も該当する団塊の世代へのメッセージがワニブックスから出ています。  

団塊の世代とは、ご存じのように、当時通産官僚だった元経企庁長官・堺屋太一さんが命名したもので、昭和22年から24年にかけて生まれた戦後ベビーブーム世代で、800万人いるといわれます。26年生まれの筆者は厳密にはポスト団塊世代ということになりますが、かわぐちさんによる青春時代の映画リストを見ますと、ほとんど同じであることに驚かされます。さすがに、「卒業」はちょっと早いのでリアルタイムでは見てはいませんが(TBSのヤング720という朝の若者向けの情報番組で聞いたような・・)、「俺達に明日はない」「イージー・ライダー」「明日に向かって撃て」「真夜中のカウボーイ」なんて、もう俺っちの映画じゃないかい?これに、「いちご白書」とミュージカル映画「ジーザス・クライト・スーパースター」を加えれば完璧。うーん。精神構造は団塊の世代と変わらないのかもしれません。  

どきっとする言葉が出てきます。「友達のように何でもフラットであるということは、目上の者から目下の者へ『話さなければならないこと』の消滅につながるとは思ってもいなかった。すべての『権威』の否定が、この後のモラルの崩壊へとつながると想像し得た団塊の世代の人間が、この時いただろうか?」大学とか病院でのお医者さんのモラルを考えますと、どきっとしますね。  

自分史を書きつづった後、「沈黙の団塊へ」と題した最終章は、団塊世代の中間総括としては、現時点で最良のものと思われます。戦争へ進んだ上の世代に対する批判を通して、闇雲に否定することから始まった「アンチ全体主義」が、実は「全体主義」とはコインの裏表の関係でしかなかった。護送船団方式からはずれるものは、指弾し傷つける・・ここに大人社会の「いじめ」構造があり、いつのまにか、理想を追い求めるうちに病理の根源となってしまった・・・。「衆をたのまず、個の力を信じることが大切」だそうです。
最近、学校ではすっかり歌われなくなりましたが、戦前は3番まであったんだそうで、戦後2番が消えて、3番が2番に。さて、その幻の2番とは・・・  

互いに睦みし日頃の恩  
別るる後にもやよ忘るな  
身を立て名をあげやよはげめよ  
今こそ別れめいざさらば
(http://www.p.u-tokyo.ac.jp/~oosima/edub200.html)  

特に、最初の1行は、なんでしょうか!謝恩会で女子学生が合唱したら面白いけど、やばいんでないかい?そのつもりで最後まで歌うと、セクハラ教官賛美の歌?  

西澤教授によれば、最後の「こそ・・め」が係り結びになっていて、別れ目ではなくて、別れむの已然形で、「さあ、もう別れよう」という意味だそうな。どっちから別れようと言ってるのかしらん?
今どき高血圧の薬剤としては余り人気がなく、 β-blockerなんて何に使うんだ、と内科医が言うので、振戦!と答えたら、若い内科医がshootingやarchery specialistは手の震えを抑えるために使うんですよ、と。振戦を抑えるためかどうかは不明ですが、確かにこれらの競技者は服用するようですね(J. Forensic Sci., 45:170-174, 2000-ただし、以下の論文ともabstractしか読んでません)。運動選手で服用することで心拍数や血圧が低下することが知られていますが(Wien. Med. Wochensch., 140:184-188, 1990)、もちろんdopingの対象薬です。尿(J. Analyt. Toxicol., 22:127-134, 1998)や毛髪(J. Forensic Sci., 45:170-174, 2000)で検出できますが、ELISAがスクリーニングには便利、と。ただ、antagonistとagonistの間でcross reactivityがあるんだそうです(J. Analyt. Toxicol., 22:127-134, 1998)。gas chromatographyでスクリーニングするのは大変だから、高い検体だけガスクロで確認するということなのでしょう。
  1. TONGA TOASTなるものを初めて食してみました。厚さ5 cm程にもなり、甘いのなんのって!英語での説明は、"Our famous thick French Toast stuffed with ripe bananas and rolled in cinnamon sugar, served with your choice of ham, sausage or bacon" 想像つきます?
  2. Orlando Sentinelという地元紙で、3月31日号で紹介されていました。米国以外では初のUniversal Studiosが30日にOsaka Castleでopen。Organizersは、140-acre parkに年間8 millionが訪れ、$654 millionの売り上げのあることを期待しているとか。このtheme parkの建設には$1.4 billionかかっているんだそうですね。ticket informationを見ていた52歳の奈良の男性は、"Some people are worried the economic boost will be temporary. I'm definitely going-its looks so American"とか。
  3. Orlandoは時ならぬT-stormに襲われ、36-44 mphの強風のため、Walt Disney Worldでlarge tentが倒れ、7人が怪我をしたそうです。ふーっ、居なくて良かった。いえ、怪我をしなくて良かったというわけではなくて・・・。
  4. Jet-lagが気にならなくなるのは・・・幼児化?今回も全く気にならず、夕方になっても全く眠くならず、現地時間に同化。これは一体・・?物忘れが多くなったと、気になっている団塊の世代の皆様、そりゃあ、二十歳の頃よりはneruonの数は減ってはいるでしょうが、学生の頃と違って、忘れてはいけない日常生活上の項目が増加したため、とも言えるようにも思います。学生の頃は、覚えておかなきゃいけないことって、勉強以外にはそうはありませんでしたもんネ。若い頃は忘れることが少なく感じたのは、一日に一つか二つ覚えておけば済んだmonocultureな生活をしていたためではないかと思われます。それに引き替え、仕事、家庭、その他と多項目について、忘れてはいけない約束とか、頼みごと、頼まれごとが目白押し。受験生の頃の赤尾の豆単みたいに、「忘れる以上に覚えればよい」領域とは違います。故に、記憶力は多少は落ちているかもしれませんが、物忘れをそう気にしなくとも良いようにも・・ヤブヘビでした・・か?
  5. 夏時間って英語で何というのでしょう?summer timeって多分イギリス英語なんですね。spring timeと米語では言います。Spring Timeという見出しのもと、"Daylight-saving time starts Sunday morning (April 1, 2001) for most of USA. Turn clocks ahead one hour."とUSA Today紙に書かれていました。  3月31日付けOrlando Sentinel紙では、"Daylight-saving time goes into effect at 2 a.m. Sunday, Clocks should be moved forward one hour, which means you'll lose an hour's sleep." 疑問が。たとえば、夜勤の看護婦さんの勤務時間も1時間短くなるわけですよね。希望者が多いのでしょうか?それとも、この日だけは給料が安いのでしょうか?
  6. ローラーゲームというのでしょうか、ローラースケートを履いて小さなスケート場をそれこそ前長野県知事ではありませんが、ミズスマシのように回りながら2組みのチームが相手側を倒してゆく(らしい)ゲーム。肘うちやラリアートなどで相手の選手を倒したり、外へはじき出すことで勝負を決するゲームのようです。30年以上昔、日本でもTVで放映されていたことがありますが、今でもUSAではESPNで深夜ではありましたが流してるんですねえ・・・。
  7. TV局の数はどんどん増えていっているようです。いつのまにか、ESPNはESPN, ESPN Classic, ESPN2と3局に、HBOもHBO1, HBO SIG, HBO PLUSとこれも3局になり、CNNはCNN, CNN Headline Newsと2局に。大体は、TV欄は映画とスポーツ番組になってしまうようです。
  8. 3月31日、ESPNでVancouverで開催されていたWorld Championshipsが放映されていましたが、Michelle Kwanがまだ現役で頑張っていて、さすがに美しいスケート。ロシアのnational championを抑えて、涙の第1位。米国は独占こそ逃しましたが、1, 3, 5位に。  ビートルズの曲にもありますが、Michelleという名前は、ベトナムがかつて仏領だったことを思い起こさせます。彼女の両親がいつ渡米したかは知りませんが、Michelleの年齢から考えて、第一次インドシナ戦争との関連は想像しにくく、米国が関与したベトナム戦争後に渡米したのでしょう。Kwan自身は米国籍のはずですが、ベトナム戦争終結の副産物として(?)美しいスケーターが誕生したことになるようです。少なくとも、亡命していなければ、亜熱帯のベトナムでアイススケートをしかも趣味で始める機会はなかったでしょうから。
FAXやメールでの紹介あるいは臨床情報のやりとりを行う機会がありますが、皆さんはどうしてますか?患者さんの名前を入れて書く場合が多いのではないでしょうか?FAXは基本的には電話ですから間違ってよそへゆく危険性が否定できませんし、FAX machineが相手方の机上に置いてあることは稀でしょう。おそらくは事務系のセクションにあることが多いと考えられます。とすると、誰が見るか判らない、ということになりますね。Internetを介したメールでの紹介も大変に便利ではあるのですが、これも途中で誰に見られるか判らない、という危険性があります。若い人たちには繰り返して指摘していますが、これらの伝達法を用いる場合、せめて氏名は伏せましょう。それでも、厳密にはプライバシー保護にはならないのですが、現状よりは良いと思われますので。
アメリカ大陸生まれの甘い飲み物、チョコトラルは欲望を呼び起こす悪魔の飲み物と見なされていて、修道士たちに飲まないよう指示されていたそうです。アステカ帝国の皇帝、Montezumaはハーレムを訪れる前に、50杯以上のチョコトラルを飲んだと伝えられています。チョコレートの成分の一つである、フェネチルアミンは恋愛化学物質とも言われ、ヒトが性的に刺激された時に脳から放出され、心拍数や血圧を上昇させる、と。ただ、経口摂取した場合、これは消化器系で分解されるので、生体内では作用しないだろうと主張する学者もいるそうです。チョコレートの香りが、ペニスの血流をわずかですが増加させるという研究結果も出ています。うーん、恐るべし!  

また、チョコレートをたくさん食べるヒトでは血液中の抗酸化剤濃度が高くなるので、細胞はフリーラジカルに傷つけられにくい、と主張する学者も。ここでいう抗酸化剤は、もちろん添加剤ではなくて、成分の一つ、フラボノイドのせいのようです。  

一方、チョコレート100gには50gの砂糖と37gの飽和脂肪が含まれているので、決して健康食品ではないという意見もあることを付記しておくべきでしょう。
(Nature News Service, 2000.4.26より)  
レクイエムと名が付く曲の作曲家はどの位いるのでしょうか?1997年1月以降に国内で発売されたクラシックCDの中で捜してみました。武満 徹さんなど日本人作曲家もいますが、除きます。
モーツアルト
フォーレ
ブラームス
ヴェルディ
デュリュフレ
カンプラ
ライリー
ロッティ
セレロールス
ベルリオーズ
シューマン
ノイコム
ラハバリ
ケルビーニ
ブリテン
ドヴォルザーク
ロイド・ウェッパー
パレストリーナ
ツァイスル
ロッシーニ
グライアーズ
メンデルスゾーン
ブリン・ターフェル
ラーリュー
チマローザ
ダヴナー
(こんなにいるとは思いませんでした!さすが、キリスト教文化圏!)
モーツアルトの3種類の「魔笛」を見る機会がありました。メスト/チューリッヒ国立歌劇場管弦楽団、サバリッシュ/バイエルン国立歌劇場管弦楽団、レヴァイン/メトロポリタン歌劇場管弦楽団の3つ。最初はNHK BS2で、あとはDVD。演出はさまざまで面白かったですが、度肝を抜いたのは、NHKで、大蛇が登場する冒頭のシ?ンで、いきなり大蛇を体に巻き付けた全裸の女性が登場したこと。DVD版(同じ内容ですでにLDでも出てますが)では、かぶり物だっただけに、びっくりしました。ただ、この女性は歌わなかったのでオペラ歌手ではないのかもしれません。(ついでに言えば、オペラ歌手が舞台でオールヌードになったことがあって、R・シュトラウスの「サロメ」の「7つのヴェールの踊り」で、通常は薄い布をまとうのですが、本当に全部脱いじゃったソプラノ歌手がいます。その時の演出は夫だったそうですが・・・)  

夜の女王が娘に剣を渡して、殺人教唆をする有名なアリアがありますが、NHK版は声が出ず音程も外していてお粗末。ソプラノ歌手の体を壊しそうなアリアですが、他のコロラトゥーラ・ソプラノのお二人は有名な公演だったとおり、さすが。  

それにしても、この物語は一体何なのでしょう?連れ去られた娘を救い出してくれ、と頼まれた主人公が助けに行きますが、第2幕では善悪が入れ替わって、最後は夜の女王が滅んでめでたしめでたし。好きな男と一緒になれたとはいえ、母親が滅んだのに娘も一緒に喜んでいるのはなぜか?娘が女に生まれ変わるには、母親を裏切る必要があるということでしょうか?  

題名の元になった、笛は確かに役割を部分的に果たしていますが、主人公を補佐するに当たって、最も重要な役割を果たしたのは3人のボーイソプラノの少年たち。本当なら、題名は「魔笛」ではなくて、「ジャニーズ」?いや、3人なので、「少年隊」・・んーん、ちょっと老け過ぎか?