Medical Essay  NO.6

以前、英国で車が左側通行になったいきさつをリンボウ先生の本からご紹介しました。その時、イギリスは左側なのに、フランスやドイツではなぜ逆なのか、判りませんでした。  目からウロコ。CS放送のどこかで外国の放送局制作の番組を流していて、判りました。イギリスでは複数の馬で荷車を引く際に、御者は荷車に乗りました。時には後方には高貴な方を乗せることもあったとか。御者は右利きが多いことから、ムチは右手で使用するでしょうが、荷車の左側に座っていると、間違って後方の人にムチが当たる危険性があります。ムチを自由に使えるように、御者は荷車の右側に座ることになりますね。すれ違う際に、お互いに左側による方が、互いの位置を確認しやすい、ということになります。  ところが、ヨーロッパ大陸では御者は荷車には乗らずに馬に乗ったんだそうで、複数の馬を扱う場合、2列なら左側の馬に乗った方が、右手でムチを使いやすいことになりますね。すれ違う際に、互いの位置を見極める、馬同士がぶつからないようにするには、右側通行した方が便利、ということになります。  つまりは、御者が左右どちらに座るかによって、違いが生じた、ということになりますね。
ある医学部の学生試験で、5つの組み合わせの中から正しいものを選択する問題が出たそうな。
a. Babinski徴候-錐体路障害
b. Jendrassikの手技-深部腱反射増強法
c. 足間代-Achilles腱反射の減弱
d. 下位運動ニューロンの障害-錐体外路障害
e. 上位運動ニューロンの障害-錐体路障害
(1) a, b, c
(2) a, b, d
(3) a, b, e
(4) a-eのすべて  
正解はどれでしょう?  
間違いが解りやすいので、multiple choiceに慣れていれば、消去法で悩む必要はないのですが、もし専門医試験で一問づつ口頭試問されたら、神経内科医はどう答えるのでしょうか?問題はaですよね?上記の選択枝から考えますと、この問題作成者の頭の中では、錐体路障害の際には上位運動ニューロンの障害とBabinski徴候が認められると考えているようです。が、はたしてそうでしょうか?ALSでは教科書的にもBabinski徴候が認められるのは25%程度のはず。両者は同格ではないはずです。ちなみに、この問題の正答率は66.3%だったとか。
佐渡汽船の売店で「新潟市のハッピーホテル」なるガイドブックを発見 (2001年の頃のこと)。これ、なんのことかお解りですか?筆者はびつくりしました(工藤静香のCFみたいに、「つ」は小さくせずに、そのままで)。新潟市内にずいぶんあるんですねえ。こんなにあるとは!  おそらく、一般的にはファッションホテルとか言っているように思います。もう少し前までは、ラブホテル(「ラブホ」と言ったりしてもいるようでありますね)でしたね。もっと前は、温泉マークだの、逆さクラゲだのと言ってました。ここまで遡ると、もう戦争直後の闇市世代?あなたは、どの世代ですか?  
としてHIV感染症は有名ですが、職業病としての危険性は、なにもfemale sex workersに限らないのは考えてみれば当然のこと。ただ、余り考慮されてはいないのは、少数なのとagencyのコントロール下にはなっていないことが多いためなのでしょう。そう言えば、有名なカウンターテナーが自宅へ呼んだデリバリーヘルスの男性を気に入らないと警察沙汰を起こしたことがありましたが、日本ではそういう方面のagencyもあるのでしょうか。この方面で働くmale sex workersでのsexual health educationの必要性が強調されています(Lancet, 357:1148, 2001)。
1916-1917年にかけて、ウイーンに突然流行した原因不明の急性あるいは亜急性脳炎で、1930年代には消失したと考えられました。最近、嗜眠性脳炎と考えられたという報告が出ていて、福島医大からも報告がありました(神経内科, 55:65-70, 2001)。  

Howard & Leesの診断基準が紹介されています。
1). 基底核障害の徴候
2). 眼球回転発作
3). 眼球運動障害
4). 強迫的行動
5). 無言・無動
6). 中枢性呼吸リズムの障害
7). 嗜眠あるいは逆転睡眠
のうち、少なくとも3徴を満たすもの。  

基軸となる所見は、Schlafkrankheitと呼ばれる特異な意識障害、精神症状と運動障害。Schlafkrankheitは無言・無動状態と見なされる疼痛など外界刺激への無反応状態と興奮・譫妄状態が間歇的に錯綜して認められる状態、だそうです。カタレプシーが4/6例に認められ、けいれんは乏しく、半数では脊髄液は正常。  

臨床型としては、
1). 睡眠-眼球運動障害型
2). 運動過多-舞踏病型
3). 無動型
があると言われ、流行時にはどれかの症候が優勢になるそうです。  

最近、本邦で話題の若年女性に好発する辺縁系脳炎と一部オーバーラップしているのではないか、と。また、インフルエンザ脳症とは、意識障害、頻発するけいれん発作、パーキンソニズムに乏しいことから異なると考えていらっしゃるようです。  で、精神症状、基底核・上位脳幹を主座とする症候を呈する急性脳炎が一つの症候群として存在しうるのではないか、と。
久しぶりに新潟大学の保健管理センターへ行ってきました。学生の頃、医学部付属看護学校学生寮のあった建物。門限が過ぎた後で学生たちを送りに来た際、1階の窓をたたいて、中から鍵を開けてもらいましたなあ。一緒に行った仲間の一人は、某国立大学の外科教授になりました。あの頃はもちろん中には入れませんでしたので、こうして黙って入れると感慨もひとしお(?)。  

さて、保健管理センターのトイレの入り口には、男女のマークが一つのドアについています。つまり、入り口は違うけれども、中は一つという混浴とは逆。そういえば、むかーし学生講義室に一番近いトイレの左端のドアは女性専用と書いてありましたね。でも、女性は少し離れた女性専用トイレを使っていたように思います。並んで用を足した覚えはありませんもの。で、思い出しましたが、国会のトイレは女性が少ないせいか男女兼用なんだそうで(さすがにもう変わったかもしれません。社民党の辻元議員が黙っているとは思えん)、ノックをした際に、「どうぞ」と中から声をかけられ、思わずとってに手を伸ばしたという女性職員の話をどこかで聞いたことがあります。  

やはり、男女別の方がよろしいように思われます。ここまで男女一緒にしなくとも良い。ゆえに、ここから飛躍しますが・・・理由には問題はあるにしても、土俵に女性をあげたくないという相撲協会の抵抗には拍手を送りたくなりますな。なんでも、一緒にしようとするな!たまには別行動を!
以前から気になることがあるのです。多くの病院ではハウスキーピング関係の作業には院外の業者を入れていると思いますが、当然のことながら(?)要員のほとんどは女性ですよね。男子トイレで用を足しているときでも、女性清掃員が入ってきて作業をすることがありますが、逆の場合だったら、つまり女子トイレに男性作業員が入って清掃を始めたら大変でしょ?男湯に(若い)女性が入ってきても、誰も文句を言わないことと同じでしょうか?でも・・・なんか、男女平等じゃないっていう気がしません?この変だと思う気持ちの基礎にはあるものは・・社会学的に、哲学的に、どう考えればいいのでありましょうか?・・なんていうことを考えていますと、夜も眠れないんですよオ・・「地下鉄ってどこから入れるんでしょうねえ」同じではありませんが・・・。  
幸田真音さんの出世作が新潮社文庫で読めます。作者の分身のような債券トレーダー出身の作家が、取材のために訪れたニューヨークで、邦銀のでたらめな業務の犠牲になった夫婦を救うミステリー。邦銀の無責任体制の告発にもなっている小説ですが、以前にも紹介しましたように、単なる非難だけでなく、処方箋も用意されていますし、なにより女性総合職たちが主人公である点が従来の経済小説にはないユニークさ。  

さて、面白い記載がありました。筆者はNYに住んだことはないのですが、「マンハッタン周辺では一戸建てにでも住まない限り、水道代や冬の暖房費を払う必要がない。百年以上前にできた、巨大な都市スチームシステムにより、地下に張り巡らしたパイプで街ごと暖房と給湯をまかなうシステム」なんだそうで、うらやましいと言うよりは呆れます。冬にNYへ行って道路を歩いていますと、地下から湯気が上がってきますが、おっそろしくもエネルギーの無駄使い。  

こんな記載もありました。「お互いを尊敬しあったうえで十分に議論を戦わすことを、感情的な口論と混同してはいけない。」感情的になって言い負かすことを議論・討論だと勘違いしている日本人が、エリートだと自負しているような人々でさえ、周囲に見る機会が少なくないのではありませんか?  

「日本っていうヤツは・・脳みそにあたる部分は、幼稚なエリートとか官僚とか、政治家っていう名札をつけた選挙屋とかの腐った細胞でできてるの。内側に向かってはふんぞりかえって、外側に向かってはおどおどして、身体だけは栄養が行き届いて脂肪ばっかりだけど、成長の後れた化け物。ものすごい偏食で、たった一つの価値観だけを食べて生きている。いろいろな価値観を受け入れられるほど、まだ大人になっていないのよ。」
広瀬 隆さんのこれもお得意の親族探しシリーズ。この集英社新書は本自体が小さいためか、膨大な家系図は登場しませんが、米国のエスタブリッシュメントたちとその取り巻きたちの歴史的な姿が浮かび上がってきます。  

第二次大戦前に空母レンジャーの司令官で、大戦中は南太平洋部隊の航空司令官だった、ジョン・シドニー・マケインは海軍のグラマン支持者として有名だった人だそうで、海軍とグラマンとの関係を密接にした功労者なんだそうですね。その孫がベトナムの英雄として上院議員となり、大統領選挙でも善戦したヒト。  

拳銃としてすぐに思い浮かぶのは、筆者にとってはコルト45ですが、コルト家創業者の甥が実業界の大物となり、その息子が女優と結婚し、その女優はハリウッドの俳優一家なのですが、その女優の弟の孫が「ET」でデビューしたドリュー・バリモア。  

面白いことが書いてありました。ユーゴでNATOが爆撃した際に、自国から爆撃機が飛び立っていたイタリアの憲法には、その11条で「他の人民の自由を侵害する手段および国際紛争を解決する方法としての戦争を否認する。」ん?なんか、どっかで聞いたような憲法ですねえ。出撃2万回を超える攻撃に参加しながら、イタリア政府は「宣戦布告していないから、これは戦争ではない」として継続していたんだそうで。憲法解釈にはどこも苦労しているようで・・・。が、なら戦争やろうよ、と記載することが良いかどうか・・。近代史で単純な領土拡張を目的に戦争をした国家はないわけで、どこもが自国の防衛を理由に戦争をしてきたわけですね。集団的自衛権というのは、一つの回答ではありましょうが、それしかないのか・・・。
「スピカ -原発占拠-」高嶋哲夫さん初期の小説が文庫化されています(宝島文庫)。

ロシア解放戦線と日本赤軍を名乗るテロリストに原発を占拠され、メルトダウンを武器に日本政府を脅します。富山県警機動隊400名が10分で壊滅してしまいます。政府の危機管理は・・・。世界最大のこの原発を設計した核物理の教授と環境保護団体の広報担当女性(元フリーカメラマン)のラブストーリーも絡んで、物語は進行します。一気呵成に読ませる本でありますね。ただ、本来の物語のテーマとも言える最後の教授と教授が尊敬するロシアの学者との会話は良いとしても、なら何故結果としてロシアの学者は死を選ぶのか・・よく解りません。いっそ、原発が暴走して地球が滅ぶというとんでもない結末でも良かったような気もします。で、続編としては、放射能汚染でもなんとか生き残ったゴキブリが、乏しい食糧に苦しみながらも少しづつ仲間を増やしながら、環境に適応しつつ生長してゆく、涙と感動の物語・・。
人工呼吸器装着中の鎮静を目的とした静脈麻酔の方法としては、いずれもshort actingですが、
  1. ドルミカム(本剤を10A=20mlとNS 30mlを混ぜて、50mlのシリンジに詰めます。これで2mg/mlの溶液ができます。2 ml/hrから点滴を始め、0.2 mlづつ徐々に増量。どこまでupさせるかの限度を筆者は調べてみましたが、推奨安全域は不明。)
  2. ディプリバン(1%溶液として、20mlと50mlが市販されており、そのままシリンジポンプで0.03-0.3ml/kg/hrの速度で投与。ダイズ油や精製卵黄レシチンを含み防腐剤が入っていない脂肪乳剤なので、点滴ラインが汚染し感染し易いため、12時間ごとにラインを交換するべきだといわれますし、7日を超えて連続投与する場合は要注意。)があります。後者は一般名をプロポフォールといって、てんかん重積発作にも使用します。ただ、paroxysmal seizureを起こす可能性があって、drug-induced seizureの原因薬剤になりうる可能性のある薬剤の一つ。
筆者はニトラゼパムやジアゼパムを大量に投与したこともありますが、メジャー・トランキライザーとして最も鎮静効果の大きい薬剤は、ヒルナミン(レボトミンと同じ)だそうで、今まで服用経験がない患者なら、50-75mgでもぐったりするはず、と当院の精神科医のお話でした。

神経治療学会である方から、静注用ケタラールを少量経口投与するというてもあるとお聞きしましたが、ま、飲んでも大丈夫だとは思いますが・・・。