Medical Essay  NO.2

ずいぶん前のことなので不正確かもしれません。ボストンのハーヴァード大に留学されていた先生からお聞きした話。ボストン地区の日本人グループの間では、周囲に人がいる席で日本語で話をする場合、「11(じゅういち)」という言葉はJuishと誤解され、ユダヤ人について何か言っているのではないか、と思われる危険性があるので、「11(じゅういち)」と言う場合、十一と漢字を順に読んで「トイチ」と言うのだそうです。  

国内でも、業界用語で「トイチ」と言う場合があるそうで、呉服屋では上客のことを「トイチ」と言うんだそうですね。この用法は蕎麦屋でも使用されている、とか。この場合は「上」をばらばらにしてこう呼んでいるわけですね。後からできた造語で、さらに「ハイチ」と言う場合もあって、これは「下」をばらばらにしているわけですね。
(藤村和夫「蕎麦屋のしきたり」NHK生活人新書より)
診療録開示が始まって、改めて診療録の書き方、特に医師記録の書き方の不統一あるいはいいかげんさが指摘されています。電子カルテになれば、必然的に全国統一された様式にそのうちなるかもしれませんが、神経内科では神経学的所見の表記だけでも大学や地域によってばらばらで、近い将来での統一は困難でしょう。神経センター武蔵病院の川井先生のお話では、かの病院では多数の大学出身者がいるため、同じ病院に勤務していても、書き方が全く異なっているため、日常診療上問題になりうる、と。診療録開示になって、途中で主治医が交代したり、日当直医や回診医の所見が主治医と違っていたりすると、患者家族は混乱しますねえ。そう遠くない将来に、何とかしなければいけない問題でしょう。  

日本医師会雑誌の2001年7月1日号付録として、外来診療録の書き方マニュアルが出ています。  

その後、2008年1月の段階で、電子カルテが普及しても、この問題はいっこうに解決される目途がないようです。
昼だけで4万食を都内のサラリーマン・OLに出前で注文販売して、急速に業績を伸ばしている玉子屋というお弁当やさんが注目されているそうです。そこが掲げている、こういうことはするなという戒めの言葉。ここには国立の病院経営にも応用できそうな戒めが含まれていると思われます。
1). 旧来の方法が一番良いと信じていること。
2). もちはもち屋だとうぬぼれていること。
3). ひまがないといって本を読まぬこと。
4). どうにかなると考えていること。
5). 稼ぐに追いつく貧乏なしとむやみやたらと骨を折ること。
6). 食い物は黙っていても売れると安心していること。
7). 高い給料は出せないといって人を安く使うこと。
8). 支払いは延ばす方が得だとなるべく支払わぬ工夫をすること。
9). 機械は高いといって人を使うこと。
10). お客はわがまますぎると考えること。
11). 商売人は人情は禁物だと考えること。
12). そんなことは出来ないと改善せぬこと。
(2001年11月10日のTBS 「ブロードキャスター」より)
米国復員軍人省は、米国の湾岸戦争従事者ではALSが対照群の2倍の発症率であることを発表した、と新潟日報2001年12月12日朝刊は伝えています。湾岸戦争症候群の原因は、劣化ウラン弾の影響だという説もありますが、今回の疫学調査からは少なくともALSの原因は多彩であるという根拠の一つにはなるでしょう。
以前は、第二次大戦中のヨーロッパ戦線を描いた映画で、なぜかドイツ軍も英語を喋っているという変な映画が結構ありましたが・・・。実は、NYマジソンスクエア・ガーデンを本拠地とするWWFに、"TAJIRI" (田尻さんというのでしょうか?)というリングネームを持つ、native Japanese speakerのプロレスラーが時々登場するようです。きれいな女性をセコンドにつけて、先日は登場してました。小柄で強くはありません。本来はHeel役なのでしょうか。タランチェラというロープを使って、相当に相手選手からの協力がないとかからないような変な技を特技としているようなのですが、この得意技をかける直前に、「お待たせしましたあ!」と叫ぶんですね。アメリカ人はわからんだろうなあ。この選手がイギリス人で現役選手でもあるWWFのコミッショナーと会話しているのを見たことがありますが、一方が英語を喋り、片方が日本語を喋っている光景って、変ですよねえ?会話になってはいませんでしたが、でもねえ。
最近、患者さんを患者様と呼ぶ傾向が強くなり、外来で呼ぶ際にも都会では「田中様」などと呼ぶことが多いようです。地方ではまださん付けが多いようですが。  

さて、名字の下に様をつけて呼ぶことはともかく、一般の名詞としての患者に様をつけることに、どういう意味があるのでしょうか?本来、「わずらっている者」という意味なのですから、差別用語あるいは放送禁止用語ではないものの、あまり良い意味ではないことは確か。一人称単数で自嘲気味に言うなら、さして問題はないでしょうし、機械的な用語の多い、行政書類に「外来患者数」とか「入院患者の診断名」と使用されている分にはさして問題はないように思います。筆者が雑誌「神経内科」にletterを掲載する場合には、患者さんと記載していますし、うっかり「さん」をつけないと、編集委員会から付いてきます。お客様なのだから様をつけるべきだという主張なのでしょうが、そもそも違う表現を捜すべきではないでしょうか?呼びかける場合でしたら、「外来を受診された皆様へ」とか「入院中の皆様へ」とか・・・。  

外来受付では、銀行のように番号札を使用するという手もあると思います。ただ、銀行の受付番号発券機はお客さんのためというよりも、窓口のおねえさんの労務管理用なんだそうで、後で回収して均等に働いているかどうかを判断する資料にするんだそうな。この話を誰から聞いたかは、ここには書くなというので、3人だけのヒ・ミ・ツ。
ベートーヴェンが水銀中毒だったという説があるそうですが、Mozartも以前からその死因が良く解っておらず、様々な説が提出されています。映画「アマデウス」ではサリエリが死因に関与したような描き方がされていました。従来主張されてきた死因としては、
慢性砒素中毒
梅毒の治療に使用していた水銀の過量摂取
尿毒症
Henoch-Sch嗜lein purpura (昔は順序が逆でしたが、LEMSみたいですね。師匠が死亡したんで、順序を変えてしまったんでしょうか?)
急性リウマチ熱
感染性心内膜炎
があるんだそうですね。  

さて、Mozartが呈していた症状は、発熱、発疹、edema without dyspnea, 手足の炎症、死亡するまで知能は保持、epidemic illness。  

新しい説が出ました。Trichinosisなら全ての症状を説明できるそうです。20世紀後半でもフランスでは生あるいは軽く調理しただけの馬肉を食べて、ヒトのTrichinosisの流行があったそうです。知能は保持されますが、10-25%では脳血管の閉塞あるいは炎症により神経症状を呈することがあるんだそうですね。また、心血管が障害されて、不整脈や心不全になることも。発症2-3週後に、肺炎や神経症状あるいは心血管症状により死亡することがある、と。発症44日前の1791年10月7日、妻のConstanzeに宛てた手紙の中で、Mozartは豚肉を食べたことを知らせています。これで感染したのなら、潜伏期は50日以内と言うことになります。日本の馬刺ではどうなんでしょうか?(Arch. Intern. Med., 161:1381-1389, 2001)
2001年12月20日早朝、新潟中央署の留置場から、鍵をこじ開けるピッキング泥棒で逮捕された自称中国人が逃走しました。警察署では、マニュアルが守られていませんでした。鍵を所定の場所に保管していなかったり、常に監視しているはずが、1時間も警察官が交代要員もおかずに監視していなかったり、近くの小学校への連絡が大幅に送れて不評をかったり、検問を設置したのは良いのですが、逃亡してから5-6時間後だったり・・・。どうも鍵を開けて逃亡したようです。考えてみれば、鍵に関してはあちらが専門家だったわけで・・・。
イギリス労働党は保守党の敵失にも助けられ、また保守勢力をも取り込むことで、総選挙に大勝し、労働党としては史上初めて政権を2期連続で保持することになりました。ブレア首相が掲げる政策が「第三の道」で、社会学者アンソニー・ギデンズ教授による著作の翻訳が出ています。出版社はなんと! 日本経済新聞社。  

この本ではサッチャリズムで代表される新保守主義と対比させながら、新しい社会民主主義のありようを議論しています。全部読んでも要約することが容易ではないのですが、key wordsをご紹介しましょう。  

第三の道の政治が目指すのは、グローバリゼーション、個人生活の変貌、自然と人間との関わりなど、私たちが直面する大きな変化の中で、市民一人ひとりが自ら道を切り開いてゆく営みを支援することに他ならない。米国主導のグローバリゼーションをまず肯定しているところに注目するべきでしょうか。ただ、単なる経済のグローバル化にとどまらず、はるかに広範な現象を意味しているのだと強調しています。  

また、第三の道が重視する価値として、以下を挙げています。
平等
弱者保護
自主性としての自由
責任を伴う権利
民主主義なくして権威なし
世界に開かれた多元主義
哲学的保守主義  

民主主義を民主化するための改革の要点として、以下を挙げています。
中央から地方への権限委譲
公共部門の刷新ー透明性の確保
行政の効率化
直接民主制の導入
リスクを管理する政府
上下双方向の民主化  
新自由主義者が唱道する能力主義社会は、深刻な不平等をもたらし、社会的結束を揺るがすばかりか、「能力主義社会で特権を手に入れた人は、必ずや自分の得た特権を子供に贈与しようとする。こうして能力主義そのものが途絶えてしまう。」という自己矛盾を内包している、と批判しています。  

市場原理主義の限界を露わにすることでサッチャリズムの重みがなくなり、オイルショック後の持続的経済成長の停止と社会主義の崩壊が旧左派を無い物ねだりのアナクロニズムにおとしめたことで、第三の道が求められるようになった、と訳者が説明しています。(このあとがきが解りやすいです)足して二で割ったのではなく、時代文脈に適応した新しい政治潮流が第三の道なのだ、と。
どちらも同じ洋なしですが、どこが違うのか、よく判りません。もちろん、DNAが違うといえば、それまでですが。味がどう違うのかまでは、一緒に食べたことがないので良くは判りません。後者が山形で生産されているのに対して、前者は新潟市のお隣の白根市で頑張っていて、今年あたりから生産が軌道に乗り始めたようです。11月下旬から販売されています。大きくて甘くて美味しいです。新潟県外の読者の皆様も、是非、ご賞味を!(販売範囲は知りませんが)  
TBSの世界遺産を紹介する番組をそれとなく横目で眺めていましたら、妙なことに気づきました。たまたま視線がいった時にちらっと見えただけなので、違うかもしれませんが、ローマ時代みたいなローブをまとった女性の腹部のあたりが何やらポコッとしているような・・・。なんか、ウルトラの母みたいです。女神が若い女性でなければならない理由はなく、三段腹の中年女性であってはいけない理由はないとは思いますが・・・でも、フランス人が送った像でしょ?それとも、妊婦なんだろうか?  
Naziが政治的権力を握った1933年頃のドイツでは、生物学研究は世界をリードしていました。Dr. Josef Mengeleは1930年代の後半、結核に感染しやすさに遺伝的背景がどのようにあるかをtwin studyで研究をしていました。32歳になった彼は1943年にcamp doctorとしてAuschwitzに赴任。ここで彼は、新たに到着したユダヤ人を労働に適しているか、ガス室へ送るべきかを選択していました。双子は他の囚人とは区別して、別棟に収容していました。ここでは、様々な刺激や死菌を注射して反応を比較すると行った実験が1000組以上の双生児を対象に行われ、1945年に解放された時点ではわずか200組しか生存していなかったと言われています。  

1909年にスイスの生化学者Emil Abderhaldenによって提唱されていた、外部からの蛋白に反応する"defence enzyme"についても研究されていました。AuschwitzからBerlinへ200以上の血液サンプルが送られ、BerlinではDr. von Verschuerが死んだ結核菌やチフス菌に対するこの酵素活性の測定をしていたそうですが、どうもこの酵素の測定は困難だったようで、Abderhaldenは1939年にノーベル賞を受賞したDr. Butenandtのラボにいた、若くて優秀なDr. Hillmannが助けていたようです。Dr. Butenandtは戦後この共同研究を知らなかったと主張しましたが、後に嘘だったことがばれてしまいました。1944年11月16日、Berlinで開催された科学アカデミーでDr. von Verschuerは、結核に抵抗した人々の血清中に存在した物質を分離したことを報告しました。  

さて、戦後、Dr. Hillmannは1962年にT喘ingen大学の助教授となり、German Society of Clinical Biochemistryの初代会長に就任。また、Dr. Butenandtは1960年から1972年にかけて、Max-Planck-Gesellschaftの所長に。1962年イスラエルの諜報機関であるMossadはMengele追求を諦めましたが、彼は1979年に南米で死亡したと考えられています。Max-Planck-Gesellschaftでは2001年6月7-8日に、twin studyの生存している被害者を招待して、正式にわびました。研究所は公式に過去を向き合ったことになる、と報告は伝えています(Nature Rev. Genet., 2:631-634, 2001)。
ミトコンドリアDNAの解析から、全ての現代人はアフリカの祖先集団に起源することが解っていますが、「イブ仮説」というネーミングから20万年前のたった1人の女性に由来するという誤解を生んでしまいました。系統樹を作製し、人類の起源と拡散が少しづつ解ってきています。総合研究大学院大学の宝来教授による総説が出ています(蛋白質核酸酵素, 45:2579-2587, 2000)。  

遺跡捏造事件で古代史は混乱していますが、日本人の起源については、mtDNAでも重要なテーマです。縄文人の系統と考えられているアイヌと南西諸島の人々を比較すると、両者で共通する塩基配列のタイプが一つもないんだそうですね。遺伝的には遠い関係。アイヌは東アジアの集団では最初に枝分かれすることから、独自の系統と考えられていますが、遺伝的起源は不明。当然と言えるでしょうが、本土日本人と韓国人とでは共通するタイプが多く見出され、朝鮮半島からの移住があったと考えられます。  
ある大都市のさる大学医学部付属病院で統計をとったんだそうです。「過去1年以内に同院を受診した患者数(アクティブ患者数;延べではない)は60,466名。このうち,漢字表記が全く一致した患者は3,845名(1,692種類)存在した。ちなみに,漢字氏名一致患者が最も多かったのは「鈴木和子」さんで12名。次いで「佐藤幸子」さんと「鈴木幸子」さんの11名。4名以上漢字表記が一致する患者がいる氏名は79種類あった。一方,仮名の読みが一致した患者は10,784名(4,245種類)存在した。かな氏名一致患者は「すずきよしこ」さんの19名が最も多く,次いで「すずきけいこ」さんの16名。4名以上かな表記が一致する患者がいる氏名は490種類であった。」ある医師会報12月号に掲載された論文から。同姓同名患者の注意喚起をするために、マークをするとすると、なんと6冊に1冊もマークが付いてしまい、あまり意味がなくなってしまうそうです。当院(注:西新潟中央病院)での状況は不明ですが、当科入院患者さんについては、コンピューターでデータベースを作製していて、そんなに同姓同名患者さんがいて困ることはありません。地域差もあるんでしょうか?この街には同姓同名が多い!? (医師会報なので会員に配布されるclosed journalですが、公開されている雑誌でもあるので-多分、国会図書館に収められるはず-、こういう患者氏名を掲載せざるを得ない場合、個人情報の取り扱いはどうなるのでしょうか?オリジナルのニュースレターでは、著者名、大学名、出典も明かしましたが、ここではHPという性格上不特定多数の方がご覧になると思われるため、曖昧にしました。)  
1). 不貞な行為があった時
2). 悪意で遺棄された時
3). 生死が3年以上明らかでない時
4). 強度の精神病にかかり、回復の見込みがない時
5). 婚姻を継続しがたい重大な事由がある時
(岡野あつこ「それでもやり直したい二人のためのマニュアル」生活人新書より)  
2)が理解できませんが、深夜山中に車で連れて行って遺棄する、なんてことを言うのでしょうか?4)は差別と言うしかありませんが、とっても面倒を見きれない、ということでなら、治療法がほとんどないという意味ではもっと深刻な神経難病も理由になりかねません。自傷他害で危険というなら措置入院の対象になるわけですから、ここでの理由はそれ以前ということになります。ということは、痴呆などでも対象になってもおかしくはない、ということになりそうです。そうはなってはいないのは差別でしょうから、近い将来、なんらかの形で「改正」されるでしょう。対象があいまいになって、かえって対象が拡大される可能性があります。5)はもうその他で、なんでも入りうる余地が残されているようです。  
(Anthrax)というreviewが出ています(JAMA, 281:1735-1745, 1999)。歴史の中で、テロリストの行動として、次のような記載がありました。"Aum Shinrikyo responsible for the release of sarin in a Tokyo, Japan, subway station in 1995, dispersed aerosols of anthrax and botulism throughout Tokyo on at least 8 occasions." オーム真理教って英語ではこう書くのね。8回も撒いてたのか!
CDCはBrentwood郵便施設での炭疽菌汚染の評価に現場でのPCR法を基にした検査法と、細菌培養の両方を用いて検討し、107検体中、95検体(89%)は両方の方法で陰性。培養法で陽性となった6検体のうち 、PCR法で陽性となったのは2例。ということで、培養法とPCR法の結果があまりよく一致しなかったことが判明。 こうした迅速法の精度評価が完了するまでは、迅速法のみに依存した検査体制を取るべきではない、と。(ProMED, 2001.12.9より)なーんか、結核と同じみたいですね。
が日本でも発売されました(SONY, SICP57)。冒頭、JFKも好きだった米国の第二の国歌ともいわれる"God Bless America"を歌っているのは、フランス系カナダ人、セリーヌ・ディオン。復帰第1作をこの歌にしたのは、マネージャーである夫の意向も反映しているのでしょう。このマネージャーは、イスラム教徒のレバノン人のはず。このCDにはFrank Sinatraによる"America the Beautiful"やPete Seegerの"This Land is Your Land"、さらには米国国家などが収められています。国家主義的ではありますが、ジーンときますね。思わず、米国籍でもないのに、右手掌を左胸に当てたくなります。Bab Dylanの"Blowin' in the Wind"やSimon & Garfunkelの"Bridge Over Troubled Water"も入っているのは、左右のバランスをとるため?あるいは、共和党員だけでなく、民主党系の歌手も入れて、幅広く売りたいという戦略?  
病院もホテルも宿泊スペースを提供するサービス業としては同じですが、根本的に異なるのは、病院はあくまでも治療が目的で、通院治療が困難な場合に宿泊していただくわけで、あくまでも治療が主目的です。それゆえ、ホテルではチェックインもチェックアウトもゲストの希望により、対価さえ支払えば自由に選択できます。しかし、病院の場合、入退院は必ずしも患者の自由意志には基づきません。平均在院日数で縛られている一般病棟では、問題になります。「社会的入院」の場合、病院側と患者・家族側とで意志が一致しないことがあります。神経難病を扱っている病棟では、その特殊性から条件が緩くなる場合もありますが、一般病棟であるという条件は変わりません。  

また、医療保険の要因がこれに加わります。ホテルでは設備やサービス内容により対価は異なりますが、病院では差額ベットを除きますと、医療や看護といったサービス内容や病院設備の差で料金が異なることはありません。逆に言えば、ゲストは対価に応じたサービスを要求することはできません。この点を誤解して、看護婦を奴隷のように使役する患者さんがいらっしゃいます。  

サービス業には違いないものの、ホテルとは異なり、多くの場合、集団生活を強いられ、プライバシーを奪われることから(聖路加病院のように全病室個室化した病院もありますが、保険医療を行うことを考えれば、今後これが常識になるとは思えません)、他患との協調性も要求されるでしょう。これらの点に対する理解を患者側も必要なのではないか、という事例に時に遭遇します。  
深作欣二監督の藤原竜也主演「バトル・ロワイアル」をようやく見る機会がありました。「今日はみんなにちょっと殺し合いをしてもらいます。」というビート・たけしの台詞で始まり、武器を渡された中学生42名が最後の一人になるまで級友を殺し合うという物語。公開時、残酷な殺人シーンを非難され、国会でも話題になった映画。  

R-15指定は正しいと個人的には思いますが、中高年が見てもあまり面白くはないかもしれません。国会議員の先生方と同じように、残酷すぎると目を背けるだけで終わってしまうような気がします。それまで多少のいじめはあったにせよ、表面的には何となく一緒に人生の一部を共有していた級友たちに向かって、なぜ発砲しなければいけなくなるのか、そのテーマを際立たせるためには残酷な殺し合いのシーンが必要だったのでしょう。  

突然、武器を渡され、プロレスのようなバトル・ロワイアルをやりなさい、と言われた時、仲間でありながら、ほんのちょっとした行き違いで疑心暗鬼に駆られて発砲してしまったり、初めから武器を受け取ることを拒否する女の子がいたり(この子は非武装なのです。社民党みたいでしょ?)、殺し合いなんて止めて助け合おうよ、と拡声器で丘の上から呼びかけていた女の子二人は武器マニアのような転校生に無言で小銃を乱射されたり(社民党への批判?)、前から気に入らなかったんだと言って発砲したり・・・。  

普段からの友情が如何に大切か、更に言えば極限状態であっても如何に信じあえるか、という重いテーマが貫いています。この映画は中学生が主人公ですし、監督は若い人たちへのメッセージとして、この映画を制作したのでしょうが、一人一人の中学生を国家に、クラスを地球に置き換えることも可能でしょう。「平時」からの付き合いが如何に大切か。危機管理と緊急時での対話の重要性。外務省の重要性を指摘している映画、とも言えるようにも思うのです。