2014年8月号 NO.1

3000ページ到達記念号 紀伊國屋書店HPでの「京都と医療と人権と」のアクセス数が 700以上あるプロアマの本棚の中で第6位!

*余り人権に関連した書物はないじゃないか、というご批判は甘んじて受けます。だって、気に入った本が眼に入らないんだもん。ヘイトスピーチやいじめ、パワハラ、セクハラは採り上げています。アジテーション類似本は採り上げません。きちんとしたデータや根拠に基づいた議論をしている書物のみ受理。  

本棚の総数はその後も増加していて、983。その後、抜かれてしまい、2015年7月現在、9位です。当分、これ以上、下がることはないはずです。アクセス数は2015年7月9日現在、74216。8位が83030、10位が47326。「京都と医療と人権と」に収録している本(ごく少数のCD/DVDを含みます)は、1586件。分類して掲載できないことが問題ではあります。京都新聞諸表論で紹介された本や京都ご当地小説の一部も紹介しています。

最近の論文  
ちょっと下品かもしれませんが、本誌の本来の宣伝目的という趣旨からも・・・すみません

原著
朴 貴瑛、小森美華、田中恵子、田中正美:多発性硬化症に典型的な脳MRI病変を呈した視神経脊髄炎関連疾患。神経内科 2013;78:477-479.

Tanaka M, Park K, Tanaka K. Reduced fingolimod dosage treatment for patients with multiple sclerosis and lymphopenia or neutropenia. Mult Scler. 2013;19:1244-5.

Kikuchi H, Mifune N, Niino M, Kira JI, Kohriyama T, Ota K, Tanaka M, Ochi H, Nakane S, Kikuchi S. Structural equation modeling of factors contributing to quality of life in Japanese patients with multiple sclerosis. BMC Neurol. 2013 Jan 22;13(1):10.

朴 貴瑛ほか. 視神経脊髄炎 (NMO)/NMO spectrum disorder-日本人患者における水平性半盲-。神経内科 2013;78:118-21.

Akiko Nagaishi, Takashi Tani, Mineo Takagi, Masami Tanaka, Kenji Sakimura, Makoto Matsui and Keiko Tanaka. Anti-aquaporin 4 antibody binding character in clinical subtypes of neuromyelitis optica. Clin Exp Neuroimmunol 2012;3:109-15.

田中正美:新島八重の実兄、山本覚馬の視神経脊髄障害。神経内科 2013;78:609.

大山 賢、尾原知行、松島勇人、鈴木理恵子、田中正美、豊田一則 : ステロイド治療中に発症した頸動脈巨大索状血栓に起因する若年性脳梗塞の1症例。脳と循環 2013;18:143-7.

Tanaka M, Oono M, Motoyama R, Tanaka K.. Longitudinally extensive spinal cord lesion after initiation and multiple extensive brain lesions after cessation of fingolimod treatment in a patient with recurrent myelitis and anti-aquaporin 4 antibodies. Clin Exp Neuroimmunol, 2013;4:239-40.

Jun-ichi Kira, Ryo Yamasaki, Satoshi Yoshimura, Toshiyuki Fukazawa, Kazumasa Yokoyama, Kazuo Fujihara, Mieko Ogino, Takanori Yokota, Katsuichi Miyamoto, Masaaki Niino, Kyoichi Nomura, Ryo Tomioka, Masami Tanaka, Izumi Kawachi, Takashi Ohashi, Kenichi Kaida, Makoto Matsui, Yuji Nakatsuji, Hirofumi Ochi, Hikoaki Fukaura, Takashi Kanda, Akiko Nagaishi, Kanae Togo, Hidehiro Mizusawa and Yuji Kawano. Efficacy of methylprednisolone pulse therapy for acute relapse in Japanese patients with multiple sclerosis and neuromyelitis optica: A multicenter retrospective analysis ? 1. Whole group analysis. Clin Exp Neuroimmunol 2013;4:305-17.

Park K, Tanaka K, Tanaka M. Uhthoff’s phenomenon in multiple sclerosis and neuromyelitis optica, Eur Neurol, in press.

Tsuburaya RS, Miki N, Tanaka K, Kageyama T, Irahara K, Mukaida S, Shiraishi K, Tanaka M. Anti-myelin oligodendrocyte glycoprotein (MOG) antibodies in a Japanese boy with recurrent optic neuritis. Brain Dev. 2014 Feb 28 on line.

Tanaka M, Tanaka K. Dose reduction therapy of fingolimod for Japanese patients with multiple sclerosis: 24-months experience. Clin Exp Neuroimmunol, in press.

Tanaka M, Tanaka K. Anti-MOG antibodies in adult patients with demyelinating disorders of the central nervous system. J Neuroimmunol. 2014; 270(1-2):98-9.

総説
田中正美:学会印象記 28th Congress of the European Committee for Treatment and Research in Multiple Sclerosis. BRAIN and NERVE 2013;65:216-7

田中正美:経口フマル酸ジメチルで再発寛解型多発性硬化症の発生率が低下。 MMJ 2013;9:74-5.

Carroll W, Saida T, Kim H, Kira J, Kermode A, Tsai C, Fujihara K, Kusunoki S, Tanaka M, Kim K, Bates D. A guide to facilitate the early treatment of patients with idiopathic demyelinating disease (multiple sclerosis and neuromyelitis optica). Mult Scler. 2013 Sep;19(10):1371-80.

田中正美:多発性硬化症とEpstein-Barrウイルス。神経内科 2013;78:251

田中正美 : フィンゴリモドは第一選択薬か 第一選択薬ではないという立場から。MS Frontier 2013 ; 2 : 42-4.

田中正美、新野正明、宮本勝一 : 多発性硬化症治療におけるフィンゴリモドの有効性とその位置づけ。PharmaMedica 2013;31(6):121-8.

Tanaka M. Topics of MS research presented at the 65th American Academy of Neurology Annual Meeting held at San Diego in 2013. Clin Exp Neuroimmunol, 2013;4:107-13.

田中正美:フィンゴリモドの多発性硬化症への治療の進歩-2013年。神経内科 2013;79:400-10.

日本神経治療学会治療指針作成委員会 標準的神経治療 : 視神経脊髄炎 (NMO) 神経治療 2013;30:777-94.

田中正美、田中恵子:多発性硬化症の治療。日内会誌 2013;102:1971-7.

田中正美:多発性硬化症の発症リスクとしての環境因子-ビタミンD、Epstein-Barrウイルス、喫煙歴に関する最近の疫学研究の進歩- 神経内科 2013;79:275-84.

田中正美: 第29回欧州多発性硬化症会議(ECTRIMS)報告?とくに抗JCウイルス抗体と抗MOG抗体を中心に?MS Frontier 2014;3:57-60.

田中正美: 多発性硬化症、視神経脊髄炎の診断と治療。神経治療 2014;31:127-9.

田中正美: 多発性硬化症におけるフィンゴリモドの使用. 日本臨床、印刷中。

田中惠子、田中正美:脱髄性疾患の自己抗体の意義と位置づけ。日本臨床、印刷中。

田中正美: 痙性対麻痺を主徴とする多発性硬化症?一次性進行型多発性硬化症(PPMS)を中心に。脊椎脊髄, 印刷中。

田中正美: 多発性硬化症の特徴と治療・看護。臨床老年看護、印刷中。

田中正美:視覚誘発電位(VEP)と光干渉断層計(OCT)。Clin Neurosci, 印刷中。

Tanaka M, Kinoshita M. Congress report of 2014 AAN annual meeting. Clin Exp Neuroimmunol, submitted/in press.?  


  1. 国会図書館関西館がすでに開館10周年
  2. 米国への出張が面倒になります
  3. Natalizumabと妊娠
  4. Natalizumabは意外に胎児には安全?
  5. 妊娠第3半期 (third trimester)でのNatalizumab暴露の影響
  6. はずれ値の取り扱い
  7. NMOではNatalizumab投与後に再発
  8. Natalizumab-associated PMLでのIRISの抗原は?
  9. PMLを伴わないIRIS?
  10. 「男ともだち」
  11. Natalizumab無効例
  12. 中国の学校で使用予定の新しい地図
  1. 国会図書館関西館がすでに開館10周年
    京都府相楽郡精華町精華台8?1?3という田舎にあります。最寄りのJR駅は祝園(ほうその)。ひところ話題になった、「私の仕事館」近くだそうで、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)も近く。
  2. 米国への出張が面倒になります
    ワシントン発CNNが七夕に伝えました。  
    「米運輸保安庁(TSA)は6日、米国行きの国際便の乗客が持ち込む電子機器について、爆弾ではないことを証明するため電源を入れるよう係員が要請する可能性があると発表。電池切れの電子機器は機内への持ち込みを認めず、場合によっては乗客に対する追加検査を行う。  

    この措置は、テロ防止を目的とした保安対策強化の一環となる。米国土安全保障省は先週、テロ組織が空港の保安検査で見つかりにくい爆弾を開発しているとの情報が入った・・・」ことが理由。でも、プラスティック爆弾で自爆されたら、防ぎようがないように思うのですが・・・
  3. Natalizumabと妊娠
    原則としては避妊ですが、大きな問題はないため、妊娠が判った時点で中止、という意見があります(Semin Neurol 2013;33:26-36)。
  4. Natalizumabは意外に胎児には安全?
    胎児の初期はBBBの発達が未熟なので、CNS内へ薬剤が入る危険がありますし、妊娠後期であっても安全性を証明することは困難です。妊娠全期間中、Natalizumabが投与された妊婦が2例いて、いずれも新生児には奇形などはなかったことがメーカーからネット上で発表されています。同じ患者さんかどうかは不明ですが、2例目の症例報告が出ています(Acta Neurol Scand 2014;129:e27-9)。
  5. 妊娠第3半期 (third trimester)でのNatalizumab暴露の影響
    妊娠28週以降の時期に投与された12例のhighly active MS患者での13妊娠、13例の新生児中10例で血小板減少(6例)と貧血(8例)が認められ、5例の臍帯血を調べたところ全例でNatalizumabが検出されています(Haghikia, Langer-Gould, et al. JAMA Neurol, 2014 in press)。機序は不明ですが、サルではin vitroで胎児での造血機能への影響が報告されているそうです(Birth Defects Res B Dev Reprod Toxicol 2009;86:117-30)。また、新生児では抗体の代謝が弱いので、一旦体内に入った抗体の除去には時間がかかり、他のモノクローナル抗体(anti-TNF)ですが、6ヶ月後も検出された例があるそうです(Clin Gastroenterol Hepatol 2013;11:286-92)。
  6. はずれ値の取り扱い
    病院の検査室で検査法を変更する場合(たとえば、GOTやALPなど)、両者の測定結果の相関係数を出すことがあります。日常的な検査では試薬が変更される程度の違いでは相関係数は極めて高いので、ほとんど問題にはなりません。仮に著しいはずれ値が一方の検査法で見出された場合、相関係数だけでは無意味でしょう。はずれる理由があるはずで、そのことが重要でしょう。データが綺麗でないから、きっと何かの間違いだと、はずれ値を削除することは科学的ではありません。この程度なら良いよね、という行為がやがては世界を巻き込む騒動へ発展する危険性をも秘めているかもしれないのですから。
  7. NMOではNatalizumab投与後に再発 という報告が7例存在します。 Mult Scler 2012;18:108-12; Arch Neurol 2012;69:239-45; Neurology 2012;79:1065-66; J Neurol 2013;260:1919-21; J Med Case Reports 2014;8:155  

    NMOでNatalizumabが増悪をきたす要因について、最後の論文では以下の2点を挙げています。
    1). NMO病変で多数浸潤している好中球のCNSへの進入に影響しない
    2). Natalizumab治療後にB cell precursorsが増加することが知られている (Neurology 2008;71:1350-4; Arch Neurol 2011;68:1412-20)
  8. Natalizumab-associated PMLでのIRISの抗原は?
    HIVでのIRISではリンパ球はHIVウイルスに対して反応しますが、この場合はJCVに対する過剰な免疫応答と考えられています(Brain and Nerve 2013;65:1363-74)。いや、実はMSだ、なんていうことはないですよね?IRISと再発の区別は病理学的にはできるでしょうが、それでも、MSは病態自体がheterogenousなので、通常の再発とは異なる病理像を呈する可能性は本当にないのでしょうか?
  9. PMLを伴わないIRIS?
    Natalizumab治療中のMS患者さんで、PMLが発症したわけではないのですがNTZ中止後に脳MRI所見やCSFでのpleocytosisから、IRISを発症したのではないか、と疑われた症例報告が米国から出ています(Arch Neurol 2011;68:186-91)。JCV PCRはもちろん陰性。3例中2例は進行性同名性半盲や疲労を伴う認知障害を呈していますので、無症候性ではありませんが、今日のasymptomatic PMLに近い病態の可能性はあるかもしれません。もう少ししたら、PCRでひっかかる?
  10. 「男ともだち」
    立命館大出身の千早 茜さんの新作(文藝春秋)。イラストレーターとして漸く自立しつつある主人公には、同棲相手のほかに大学付属病院の妻子持ちの勤務医という愛人(セックスパートナー)がいます。大学時代からの決してセックスはしないけれどもベタッと一緒にいることが多かった、男ともだちから電話が来ます。「失いたくなかったら絶対にセックスしちゃだめよ。しない限り、特別でいられるんだから」それからのドタバタを描いた恋愛小説ですが、作者が女性のせいか(たぶん)、ずいぶん女性にとって都合の良い「男友達」です。こいつが外資系製薬会社の富山営業所に勤務しているMRという設定で、主人公が住んでいる京都に時々訪れます。結末はあるようなないような・・・こういうアラサーの男女ばっかりになると、日本は確実に滅びます。
  11. Natalizumab無効例 に対して、Rituximabが有効という報告があります(J Neurol 2008;255:1436-8)。無効例の特徴を知りたいですね。その後、2015年7月9日現在、Pubmedには類似例の報告はありません。やはり、何か特殊な患者さんだったのでしょうか?国内でのnatalizumab治験中に再発したのはわずか2例で、うち1例は自験例です(神経内科 2014;81:582-4)。その後、fingolimodで再発は完全にコントロールできています。
  12. 中国の学校で使用予定の新しい地図
    「中国湖南省地図出版社が、去る6月25日に発行した新しい地図の中で、中国はベトナムのホアンサ、チュオンサ両群島、フィリピンのルソン島、パラワン島、スカボロー礁、マレーシア、ブルネイ、及びインドのアルナチャル・プラデシュ州までを含む「10段線」を」記入していました。「他国の幾つかの島を自国のものにすることを一方的に容認しただけでなく、中国は『南シナ海が中国の領土だという立場を変えることなく、今回の地図発行はこれを大衆に知らせるための目的である』と発表しました。さらに、この地図は中国の学校で使用される予定です。」と、ベトナムの声放送局(VOV5)が伝えました。その上、インドが実行支配している州もチベットの一部として(つまり、中国領土)記載。