2014年6月号 NO.2

  1. 10ヶ国7724名のMS患者の国別抗JCV抗体陽性率比較
  2. ようやく日本人も欧米化?
  3. Natalizumab治療中のMS患者のCD4/8 in CSFは?
  4. TPP交渉が難航していますが、米国産牛肉から国内畜産農家を守る法?
  5. IRISとMS再発の臨床的区別
  6. フォーブスが発表した有名人の高額離婚慰謝料ベスト
  7. Natalizumab中止時に血漿交換するとIRIS発症が早まる
  8. CDCはこの20年で麻疹流行が最悪
  9. 家計での全国餃子支出金額ランキング
  10. 2014 AAN報告-2
  11. 乾燥地帯でも米作りが可能な品種の改良
  12. 鋼鉄より強い植物素材
  13. もう一つの修正
  1. 10ヶ国7724名のMS患者の国別抗JCV抗体陽性率比較
    (JEMS study)  
    抗JCV抗体の測定は第1世代ELISA (Ann Neurol 2010;68:295-303)によります。
    Australia     48.6%
    UK         48.8
    Irreland      51.0
    Belgium      54.4
    Switzerland   55.6
    Canada      56.3
    Germany     61.0
    Netherlands   66.2
    Austria      66.7
    Portugal     69.5
    国別の緯度とか移民の割合とか、一定の傾向はないのかもしれません。
  2. ようやく日本人も欧米化?
    久しぶりに成田からワシントンDC行きのANAに乗る機会がありました。乗客が全て乗り終わった時点で(そこで判明したわけでもないでしょうが)、CAの体調不良のため交代要員が到着するまでしばらくお待ち下さい、という機長からのアナウンス。30分ほどで慌ただしく小さなバックを抱えて(若いCA達が引っ張っている格好の良い車輪付きのバックではありません)入ってきたのは、アラフォーをはるかにお過ぎになった、超ベテランの管理職みたいな、あるいは研修の教育係のようなお方。さすがに圧倒的なプロで、テキパキと動くその姿は周囲のアラフォーも子供並み。で、気づいたのは、乗務する直前に発熱したり、GI tractの症状が突然出た可能性もありますが、むしろ何とかなると考えていたら、乗務出来る条件をとてもクリアできないことが直前に判明してしまったのではないか(条件を知りませんが、二日酔だったのかも?)・・・最近の若者は・・・なんて言いたくはありませんが、自分の子供の入学式に参加したくて、勤務先の学校の入学式に出席しなかった教師達(一部は中年です!)が関西で話題になりました。両親ともに教師だった筆者の入学式や卒業式、参観日に親の片方でも参加したことは、大学卒業まで一度もありませんでした。そのことで泣き叫んだ記憶もない、鍵っ子でしたが、当たり前だと思います。あるいは、通勤途中の事故だったのかもしれませんが、駆け込んできたおばさまの様子からして、それほど交代要員を探す時間の余裕はなかったようですから、「体調不良」でCAが抜けたのは本当に直前だったのではないでしょうか?ようやく、日本人も欧米人並みにええ加減になってきた?
  3. Natalizumab治療中のMS患者のCD4/8 in CSFは?
    低下するとされます(Homeopathy 2013;102:215-24u)。どちらの細胞も低下するにしても。
  4. TPP交渉が難航していますが、米国産牛肉から国内畜産農家を守る法? なんて言うと大げさですが、米国でステーキを食べる度に思います。やっぱり旨い!日本人がすき焼きがらみですり込まれている、牛脂のさしなんて全く入っていません。100%赤身だけなのに、本当に軟らかいのです。以前、TBS系列の「夢の扉」で牛肉の熟成法を独自に編み出した日本人が紹介されたことがあります。自分たちは牛肉の扱い方のプロで、絶対に真似はできないと欧米人たちが豪語していたことに立腹したある牛肉の流通業者の日本人が立ち上がったもの。そのヒトが開発した低温で風を当てる方法で、短時間で手間をかけずにしかも捨てる部分をなくした、熟成した土佐肉を都内でも食べることが出来ます。食べたこともありますが、残念なことに米国の100%赤身のステーキ(しかも安い)の軟らかさには歯が立ちません。この国内環境は畜産農家の責任ではありません。赤身の牛肉を軟らかくするために屠殺後に牛脂を注入するなんていう、お馬鹿な方法を編み出した流通業者に責任があります。牛肉の表面を捨てることもなく、熟成する方法を生み出せば、米国産には充分対抗できるのではありますまいか?流通業者がやれないなら、畜産側で開発しましょう!欧米の白人に出来て、日本人に出来ないわけがありませぬ。何もできないなら、輸入する際の条件をつける?・・・必ず凍結で太平洋を船で輸送し、肉の熟成は日本の業者に限る・・・とか。ソーセージも美味しいですね。なにが違うんだろ?ところで、地元の複数のパンフレット (たとえば、Philadelphia Official Visitors Guideとか) に広告だけでなく本文中にも紹介されていますが、いずれもPhillyの市庁舎近くの”McCormick & Schmick’s”(1 South Broad Str)とか”Morton’s”(1411 Walnut Str)のステーキは柔らかな赤身で絶品(筆者は後者しか経験していませんが)。値段は12オンスで6000円近くします。
  5. IRISとMS再発の臨床的区別 はできないように思われます。もちろん、脳生検すれば脱髄主体の病変の有無で鑑別できるでしょうが・・・
  6. フォーブスが発表した有名人の高額離婚慰謝料ベスト
    第1位 マイケル・ジョーダン&ファニータ夫人(190億円超)
    第2位 ニール・ダイアモンド&マルシア・マーフィ(187億5000万円)
    第3位 スティーブン・スピルバーグ&エイミー・アーヴィング(125億円)
    第4位 ハリソン・フォード&メリッサ・マティソン(106億2500万円)
    第5位 ケヴィン・コスナー&シンディー・シルバ(100億円)
    第6位 ポール・マッカートニー&ヘザー・ミルズ(75億円)-調停中
    第7位 ジェームズ・キャメロン&リンダ・ハミルトン(62億5000万円)
    第8位 マイケル・ダグラス&ディアンドラ・ダグラス(56億2500万円)
    第9位 ライオネル・リッチー&ダイアン・アレクサンダー(25億円)
    第10位 ミック・ジャガー&ジェリー・ホール(18億8000万円)
    (http://www.tv-asahi.co.jp/ss/252/special/)  このHPでは番外編として、サッカーのチェルシーのオーナーでもあるロシア人富豪の慰謝料が1兆3500億円を離婚の際に最近支払ったことを追記しています。CNNでは総資産7兆円といわれるプーチン・ロシア大統領(元KGB長官ですが、もちろん、公務員の給料でこんな資産は作れません)の離婚慰謝料が5000億円(米国では折半が常識とされているので、ずいぶん少ないですね)と報じましたし、離婚間近といわれるオバマ大統領の資産が9億円と紹介しました。ファーストレディーはこの資産だけでなく、今後、元大統領としての講演や著作などによる収入の一部も要求するのでしょう。
  7. Natalizumab中止時に血漿交換するとIRIS発症が早まる
    中止したままではIRIS発症までの期間は2-12週(平均4.2週)ですが、血漿交換すると数日から8週へ短縮(Lancet Neurol 2011;10:745-58)。
  8. CDCはこの20年で麻疹流行が最悪 と4月26日のCNNが伝えました(http://edition.cnn.com/2014/04/24/health/measles-record-number/)。2014年1月1日から4月25日までにフィリピンでは20000名の疑わしい患者が報告されているそうですし、米国でも2014年4月までに14州から154例が報告されています。ワクチンはどうなったのでしょう?今後、SSPEが心配です。
  9. 家計での全国餃子支出金額ランキング
    第1位 浜松市    4379円
    第2位 宇都宮市   4341
    第3位 京都市    3023
    第4位 静岡市    2693
    第5位 大阪市    2370    総務省家計調査より  
    宇都宮市が浜松に抜かれたことでひどく残念がっていて、リベンジを狙っているそうですが、栃木県で他の都市は入っていないのに、静岡県は2都市も入っているので仕方ないような気がします。京都市は堂々の3位。「王将」発祥の地ですしね。「大阪王将」や一口餃子で本家争いしている店もありますから、大阪人が好きなのも判ります。
  10. 2014 AAN報告-2
    65例の小児例で血中の抗MOG抗体を検討した結果が報告されています(#241)。
       患者数    MS     non-MS   
    抗MOG抗体陰性、OCB陰性 21 3 18
    抗MOG抗体陰性、OCB陽性 14 11  3
    抗MOG抗体陽性、OCB陰性 15 0 15
     抗MOG抗体陽性、OCB陽性 1 0  1

      抗MOG抗体陽性(n=23) 抗MOG抗体陰性(n=42)
    M/F 12/11 16/26
    Abnormal brain MRI at onset 13/23 (57%) 28/40 (70%)
    2010 McDonald criteria 8/23 (35%) 17/40 (43%)
    LCL 7/12 (58%) 7/27 (24%)
    OCB 1/16 (6%) 14/35 (40%)
    MS relapse 2 (9%) 16 (38%)

    英国ではNMO有病率が増加しているそうですが、その具体的な数値が報告されています(#265)。Annual prevalence per 100,000は・・・
    1998 0.22 (95%CI: 0.05-0.64)
    1999 0.36
    2000 0.53
    2001 0.67
    2002 0.78
    2003 1.04
    2004 1.12
    2005 1.47
    2006 1.66
    2007 1.57
    2008 1.92
    2009 2.08
    2010 2.33
    2011 2.56 (2.00-3.24)  
    Emerging Therapeutic Advancesof MSと題したシンポジウムで、Dr Chitnisは講演の中で、小児MSは成人発症MSと同一疾患か否かについてまとめ、    
    pros cons
    臨床経過が類似 より炎症性要素が強く、 再発頻度が高く、脳MRI病変が多い
    危険因子も同一 抗MOG抗体陽性率が高い、Th17の関与
    治療も同一 高次機能障害、身体障害の進行
     
    小児MSセンターは2003年には米国で一つしかなかったのが、2014年には15ヶ所に増加しているそうな。www.ipmssg.orgというHPも。  

    NMOのシンポジウムで小児についての報告があり、(S63.003)米国の9ヶ所のセンターから集計された、ADEM (皆さん、エイデムと発音していましたね)24例、RRMS150例、NMO38例などを対象に検討。
      ADEM NMO RRMS
    発症年齢(平均) 4.79 10.18 13.5歳
    10歳以下の割合 96% 43% 15%
    それぞれの人種を検討すると、NMOではアフリカ系が多く、他は白人優位。
    OCB 0% 31% 68%
    視神経炎が初発症状の割合 8.3% 44.7%; 24.0%

    70例RRMSを対象にsodium摂取量を尿から計算して、2年間経過観察した結果が報告されました(P6.150)。塩分摂取増加により再発リスクが高くなることが示唆されました。
      寛解期の脳MRIでのT2病変数 比較再発率
    sodium intake    
    < 2 gr/day 6.45 1
    2-4.8 7.14 2.75
    >4.8 14.3 3.95

    NMOをテーマとした教育コースでMayo ClinicのDr Pittockは、小児MSではLETMは稀ではないので、LETMの存在は成人発症例のようにMSを否定する根拠とはならないことを強調。今回、Wingerchuk教授からInternational PanelによるNMO spectrum disorders (今回、正式に複数になりました)の診断基準が発表されました。現在、Neurologyに投稿中だそうな。臨床的にはNMOsdという名称でまとめることになるでしょうが、学問的な位置づけとして、
    Autoimmune astrocytopathy (Lucchunetti, Brain Pathol 2014;24:83-97)
    Autoimmune AQP4 channelopathy という名称を紹介しました。  

    また、Lucchunetti教授は以下の症例を紹介して注意を喚起。
    1). 脳生検して脱髄病変があってもMSとは限らず、必ずAQP4の免疫染色をして、AQP4が消失していないかどうかを検索する必要がある、と。AQP4に抗体が結合すると、glutamateを介して脱髄病変が起こりうる、と。
    2). 脳梁をまたいで両側大脳半球に連続する病変をNMOで呈することがある。
    3). 視神経炎で発症し、髄膜炎を呈して、8ヶ月で死亡した28歳白人女性例のNMOもある、と。形質細胞が浸潤していたそうで、leptomeningitisが初発症状となった症例報告 (Wang, 2012) もあるそうです。  

    Wingerchuk教授は年単位で脊髄に造影病変が持続するLETMがサルコイドーシスで起こりうることを紹介。
  11. 乾燥地帯でも米作りが可能な品種の改良
    今や、日本は米の品種改良では世界の最先端だそうで、コシヒカリの田んぼの中で突然変異で生まれた「龍の瞳」という品種をご存じでしょうか?4年連続で「全国米・食味分析鑑定コンクール」金賞受賞、「あなたが選ぶ日本一おいしい米コンテスト」最優秀受賞の品種。コシヒカリの1.5倍大きい粒。また、脂肪の吸収を抑制するタンニンを多く含む「赤むすび」という品種は、メタボ対策に期待されているそうです。別名、赤いコシヒカリ。東大が開発中の「TAWAWA1」は、コシヒカリが150粒なのに対して、240粒も実る品種で、完成すれば米の値段の低下が期待されています。  

    1ヶ月も水なしでも生育できる品種の開発をしている日本人がいます。農業生物資源研究所・主任研究員の宇賀優作さん。乾燥地帯でも育つ稲を開発中。DRO1(ドロワン)遺伝子を組み込んだ品種。Nat Genetにも掲載されました。地中深い水分を吸収できるように、長く真下に根が伸びる性質を選択して見出した科学者。(TBS系列「夢の扉」2014/4/27放映より)  

    世界では米を食べている人々は大勢います。日本のように炊きたてのお米を食べるヒトが少ないだけ。多くは炒める目的なので長粒種(インデカ米)が主流。しかも、水を張った田んぼも日本だけで、世界の主流は畑に直まきする陸稲。以前、クボタが開発した鉄をまぶした種籾を本誌でも紹介しましたが、自然に沈む水田にも向きますが、直まきしても風に飛ばされにくいでしょうから、輸出にも良いのでしょう。
  12. 鋼鉄より強い植物素材を開発している教授がいます。京大生存圏研究所・矢野浩之教授。セルロースを減量にしたこの素材は鋼鉄より軽い(半分)にもかかわらず、強度は鋼鉄より上で、170℃でも変形せず熱にも強い。この素材で車を作ることを夢見ているそうな。セルロースナノファイバー(髪の毛の太さが東京山手線の直径だとすると、電車の窓枠の横の長さに相当)を混ぜたラーメンはのびにくくなるので、食材にも応用可能。ワンタンに混ぜれば、いつまでもコシのある皮に。セルロースが変形を防いでくれるため。ソフトクリームに混ぜると溶けにくくなるので、介護の場面でも嚥下障害のある患者さんにアイスクリームを食べさせる上でも好都合でしょう。京大の民間企業との新素材の共同研究プロジェクトには、NTT、パイオニア、日立、三菱化学、ローム(やらなくなりましたが、京都では本社周辺のクリスマスの電飾で有名)が参加。この素材を透明にする技術も開発したため、ガラスあるいはディスプレイの替わりの可能性も。これは光の屈折率を変える樹脂を混入させることで、透明に。厚さが1/50 mmなので折りたためることも可能に。光を集めるパネルにも応用できるため、宇宙での太陽光発電開発にも役立つそうです。  

    教授は28歳の時に、バイオリンの木枠を構成している繊維を薬剤で整える技術を開発して反響をよくし、人工的にストラディバリウス並みの音色の名器を作製したことがあるそうです。(TBS系列「夢の扉」2014/4/13放映より)日本の技術力って、凄い!
  13. もう一つの修正
    大阪弁がおかしいと、生粋の大阪人2人に修正されました。前号の「下着」に関する記述を以下のように修正いたします。 元の文 「うちなんて、旦那と私と娘の下着の色の区別なんてできへん。今どきの女子高校生なんて、下着は黒やで!それにいろんなの付けるんや。」 修正後 「家(うち)は、旦那と私と娘、息子の下着の色の区別ができんくなっている。今どきの女子高校生なんて、下着は黒やで!それにいろんなの付けてるわ。」