2014年5月号 NO.7

  1. OCTによるNMOとMSの鑑別の可能性
  2. 国内での物価の高さ比較
  3. 視神経炎の既往のないRRMS患者でのOCT所見と大脳灰白質容量とは相関
  4. VEPでのP100頂点潜時は急性視神経炎3-6ヶ月後に回復
  5. 新・三大わざわざ行きたい山小屋メシ
  6. EMAによる2nd line薬剤(FTY or NTZ)の適応基準(July 2013)
  7. 前例のないエボラ出血熱の流行
  8. 小児MSと鑑別を要する大脳白質病変を呈する疾患
  9. 「恋するインターン」
  10. 睡眠時精神・行動障害
  11. 女性の下着の色で分かる性格と恋愛傾向
  12. 紀伊國屋書店の本棚「京都と医療と人権と」より
  1. OCTによるNMOとMSの鑑別の可能性
    NMOでは視神経炎が重篤なので(Neurology 1999;53:1107-14; Neurology 2003;60:848-53)、稀には1回の再発で失明することがあり、失明患者を診たらMSよりNMOの方が圧倒的に多いことを筆者らは報告しました(JNNP 2007;78:990-992)。壊死性病変を反映してか、MSより軸索変性が強いことによると考えられる、RNFLの非薄化が強いことも示されています(Invest Ophthalmol 2008;49:4412-7; Arch Neurol 2008;65:920-3; Neurology 2009;73:302-8; JNNP 2009;80:1002-5; Invest Ophthalmol 2012;53:3959-66; bouyon, collonigues, et al. Mult Scler 2013, in press)。NMOでは二次性進行型になることはほとんどないので、MSのように再発もないのにRNFLの薄さが進行することはありません(Neurology 2007;68:603-5)。

    ドイツからNMOsd17例を同数のMSと比較した報告があり、視神経炎後、MSに比してNMOsdではRNFLの薄さがより顕著で、ganglion cell layerもMSより薄いけれども、inner nuclear layerとouter retinal layersは視神経のないNMOsdに比して視神経炎を伴ったNMOsdでは、厚くなっていました。これはmicrocytic macular edemaによる者と思われたそうです(PLoS One 2013;8:e66151)。また、視神経炎の既往のあるMS患者では耳側のRNFLの方が鼻側より薄いけれども、NMOsdでは瀰漫性に傷害される傾向があるので、耳側も鼻側も同じように傷害されることが示されました。
  2. 国内での物価の高さ比較
    当然、消費税も違ってきますね。総務省が発表している、全国平均を100とした「平成25年消費者物価地域差指数」の上位と下位は・・・
    第1位 横浜市 107.1
    第2位 東京23区 106.3
    第3位 川崎市 105.9
    第4位 金沢市 102.9
    第5位 長崎市 102.6 ・・・
    第47位 秋田市 97.3
    第47位 奈良市 97.3
    第49位 前橋市 97.0
    第50位 宮崎市 96.7
    第51位 北九州市 96.6  
    都会と田舎がこれでよく判りますが、北九州市がどうして?新潟市は34位で指数は98.7。宮崎市と横浜市とで、国家公務員のように同じ給料ですと、生活の質が違ってきます。1Kとか1LDKの賃貸料は42200円と68500円、春キャベツの値段は100円と297円、美容院に至っては3000-3500円と5000-6000円と違います。ただ、入手できる商品の種類が圧倒的に違いますが、今の時代、必要なら通販も可能ですしねえ・・・金沢市や長崎市の物価が高いのは、観光地のせい?京都市は101.7で10位くらい。
  3. 視神経炎の既往のないRRMS患者でのOCT所見と大脳灰白質容量とは相関
    米国・Johns Hopkins Univから報告されました(JAMA Neurol 2013;70:34-43)。乳頭周囲RNFLとganglion cell layerおよびganglion cell layer + inner plexiform layerの厚さとMRIで評価した、大脳灰白質容量とそれぞれ相関し(p = 0.01, p= 0.04)、inner nuclear layerの厚さとFLAIR病変容量と相関し(p = 0.007)、normal-appearing white matter容量と逆相関するそうです(p = 0.007, p = 0.005)。計算はしていないのですが、Table 1を見る限り、視神経炎の既往の有無に関わらずMS患者全体(84例)では、乳頭周囲および黄斑部のRNFLの厚さは健康人(24例)とは有意差がないようですし、それらの厚さはRRMS(58例), SPMS(18例), PPMS(8例)患者群間で差はないようです。視神経炎の既往のない患者だけを選択することが、脳MRIでの萎縮との相関の証明にはneurodegenerationを比較する上では重要なのかもしれません。しかし、それぞれの病型群間で、たとえばRRMSとSPMS間やRRMSとPPMS間で差があっても良いような気がします。
  4. VEPでのP100頂点潜時は急性視神経炎3-6ヶ月後に回復
    英国のQueen Squareから報告されています(Brain 2001;124:468-79)。
  5. 新・三大わざわざ行きたい山小屋メシという紹介がありました(「マツコ有吉怒り新党」テレビ朝日系列 2014/4/9 24:30-)。
    1. 神奈川県丹沢鍋割山(1272 m)山頂の鍋割山荘。登山口から3時間半かかるそうです。富士山を見ながら外で食べる鍋焼きうどん(1000円)が絶品だそうな。ユニークな習慣があって、登山口には水の入った2L入りのペットボトルが山積みになっていて、義務ではありませんが、ボランティアで山小屋まで持参して欲しい、ということになっているそうで、ガイドブックを見ない初心者はいないでしょうが、非協力者(混んだエレベーター内で急速に太ってきた肥満児?意味不明の方は「紀伊國屋書店HPのトップ下にある本棚」で紹介している「自滅する中国」のコメントを参照下さい-みたいなヒト)もいるでしょうけどねえ。山に登るヒトは、皆、協力するのでしょう。ご主人は既に高齢者の領域ですが、毎日50-70 kgの食材を背負って登っているそうで、協力しないわけにはいきません。多い日で200杯出るそうな。
    2. 長野県と山梨県の境、南八ヶ岳の赤岳(2899 m)中腹にある赤岳鉱泉(2220 m)。夕食にしか出ないので、泊まらないと食べられません。信州ポークを使った豚肉しゃぶしゃぶが中心。1泊2食付きで9000円。山小屋っぽくない食事で、26歳の4代目が引き継いだ際に考案し、2年前から始めたメニュー。個室で普通のベットですから、宿泊スペースも北アルプスの山小屋とは別次元。
    3. 東京都の山楽荘。奥多摩の御岳山(929 m)山頂付近にありますが、ケーブルカーで登れ、終着から徒歩15分という気楽さ。元々、武蔵御嶽神社の参拝客のみを泊めていました宿坊ですが、ケーブルカー設置などで登山客が増加し、現在では一般客が山小屋として利用しています。骨まで食べられる川鱒の竹皮蒸しがメインで、これを目当てに来る常連客も。他に地元の野菜を使った薬膳料理なども並ぶ「神人の膳」(3800円)がお薦め。

  6. EMAによる2nd line薬剤(FTY or NTZ)の適応基準(July 2013)
    EMAのHPでは以下で、Fingolimodの資料2ページ目Therapeutic indicationsに記載されています。
    (http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library
    /EPAR_-_Product_Information/human/002202/WC500104528.pdf
    )          
    。引用もあります(Mult Scler 2014;20:566-76)。
    「先行1年間に再発が1回以上、かつ 脳MRIでT2高信号病変が9 個あるいはそれ以上、もしくは1個以上の造影病変」 が存在する場合は、疾患活動性をコントロールできていないのでIFNβなどからFingolimodあるいはNatalizumabへ治療法を変更するべきである、と。  

    これは、かつてFingolimodの適応条件としてEMAが提示した条件の一部と同じです(MS Frontier 2013 ; 2 : 42-4; PharmaMedica 2013;31(6):121-8.)。
  7. 前例のないエボラ出血熱の流行
    ギニアを中心に、シエラレオネやリベリアにも拡大し、従来は僻地で散発していたのが、ギニアの首都でも確認され、流行を食い止めることが困難、と。航空機に乗って、拡散するリスクが出てきました。流行しているのは特に致死性の高い、ザイール株だそうです。(CNN 2014/4/1電子版より) ProMEDによりますと、3月31日現在、少なくとも82例が既に死亡し、他に56例が感染の疑い。4月4日ではそれぞれ86例、54例。致死率は60%。PCRで診断される感染例の増加が少し鈍ってきたようです。仏系通信社のAFPによれば、ウイルスがどこから来たのか、感染の範囲がどの程度なのか、誰にも答えられないと専門家が語っているそうですし、リベリアの患者は猟師ですが、他のエボラ患者との接触が知られていません。病院に運び込まれて30分後に死亡。AFP日本版(http://www.afpbb.com/)でも情報は見られます。緊張感は薄れますが。以前の臨床報告は・・・ Bull World Health Organ 1978; 56(2): 271-293. Ebola haemorrhagic fever in Zaire
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2395567
  8. 小児MSと鑑別を要する大脳白質病変を呈する疾患
    ADEM, NMO, Primary and secondary hemophagocytic lymphohistiocytosis, Hashimoto encephalopathy, Acute encephalitis with anti-NMDA receptor antibody, vasculitis, Lymphoma, Malignant lymphohistiocytosis, Mitochondrial respiratory chain deficits (Leigh, Leber disease, OPA mutations), Lysosomal diseases (ALD etc), CADASIL, Migraine, Alcardi-Goutieres, PANSET2 mutation, oligodendrocytoma, astrocytomaなど。(Neuropediatrics 2013;44:302-8)
  9. 「恋するインターン」
    ”EMILY OWENS MD”という主人公の名前そのままの原題の2012年CBS制作のTVドラマが2014年4月からWOWOWで放送が開始されました。主人公を演じるのは、メリル・ストリープ(誰もが認める名優。Yale演劇大学院のクラスメートには、シガニーウィーバーがいるんだそうで、えらく濃いクラス。彫刻家のダンカン・ガマーとの間に4人も子供がいるそうな。こんなでかい娘がいたなんて!)の長女、メイミー・ガマー(1983年生まれ)。Denver Memorial Hospitalを舞台に医学部を卒業した直後のインターンたちの物語。外科部長の娘の同期のアフリカ系インターンが院内の特徴を主人公に説明します。  

    「病院は高校みたいなもの。整形外科医、またの名を体育会系、高飛車女史は形成外科、気さくな隣のお姉さん系は産科、真性オタクは神経科(Neurology!)、反逆児はER、トリップ族は麻酔科、信心深く教会通いしているのは小児科、私たち外科はごちゃ混ぜ、ひとくくりにできないからみーんなバラバラ」
  10. 睡眠時精神・行動障害
    実に様々な病態が知られています(医事新報 2010;4521:54-9)。ノンレム睡眠からの覚醒時には錯乱やwalking、驚愕症が知られていますし、レム睡眠に関連してREM sleep behavior disorder (RBD) やrecurrent islolated sleep paralysis、nightmare disorderが知られています。前頭葉や側頭葉てんかんやrestless legs syndrome、SASのほか、exploding head syndrome、sleep related eating disorderなんていう奇妙な病態も。RBDでは刺激で速やかに覚醒しますが、錯乱性覚醒や睡眠時遊行症、睡眠時驚愕症では覚醒が困難なんだそうな。
  11. 女性の下着の色で分かる性格と恋愛傾向 なんていうHPがあります(http://allabout.co.jp/gm/gc/223635/2/)。読売テレビ「クギズケ」で紹介していました(MCが上沼恵美子さんと高田純次さんなので、膳場貴子アナ司会の番組とは自ずと違います)。工藤祐子さんという方によりますと・・・
    1). 白やパステルカラー  女の子らしく大抵の男性に受けるそうです。
    2). ベージュ  保守的で控えめ。誠実で情に厚い男性がぴったりだそうな。
    3). 黒やグレー  身につけているご本人と同じく、情熱的な男性が良いそうでありますよ。
    4). 赤や青、緑といった原色  積極的なあなたは、神秘的な男性向き。     
    意外性のない答えが多いような気がしますが・・・この記事を見た、あるナースが言ってました。これは今どきの女の子を知らへん年いったヒトや。うちなんて、旦那と私と娘の下着の色の区別なんてできへん。今どきの女子高校生なんて、下着は黒やで!それにいろんなの付けるんや。
  12. 紀伊國屋書店の本棚「京都と医療と人権と」より
    高瀬 毅 ナガサキ 消えたもう一つの「原爆ドーム」 文春文庫  本HPの森一郎(東京女子大学(哲学))さんによる書評(「書評空間」2014年2月20日)が秀逸、と申し上げては失礼でしょうが、一読に値します。書評自身も。まさに、「戦後レジウム」の一角ではありましょう。ノンフィクション力作。

    シュピッツァー,マンフレド【著】〈Spipitzer,Manfred〉/小林 敏明【訳】/村井 俊哉【監修】 デジタル・デメンチア―子どもの思考力を奪うデジタル認知障害 講談社 そのうち認知症も概念が「認知」されるようになったら差別用語?dementiaは痴呆と言うべきです。題名の意味が通じ難いとは思いませんか?   

    数多 久遠【著】 黎明の笛 祥伝社 陸自最強の特殊部隊が突然、竹島を占拠します。さあ、日本政府はどうするのか?元航空自衛隊員の手による情報小説。 

    ルトワック,エドワード【著】〈Luttwak,Edward N.〉/奥山 真司【監訳】 自滅する中国―なぜ世界帝国になれないのか (改訂) 芙蓉書房出版 「混雑したエレベーターの中に中国という肥満児が乗り込んできて、しかもその肥満児がその場で急速に肥り続けているとすれば」という例えは分かりやすいですね。

    伊香 俊哉【著】 戦争はどう記憶されるのか―日中両国の共鳴と相剋 柏書房  

    軍事ジャーナリストの前田哲男さんが書評をお書きになっています。「人間の条件」(長?い小説デス)の作者、五味川純平さんは、「日本人の戦争体験は手柄話と苦労話だけ。本当のことが語られていない」とおっしゃたそうです。もういい加減に止めようよ、と言いたいけれど、被害者には忘れられないということはあるでしょうが・・・尾ひれをドンドン付けるのは止めて欲しいデス。戦後処理について、ドイツとの違いは国内で検証されたことはあるのでしょうか?京都新聞書評欄で紹介されました。