2014年4月号 NO.1
- 「免疫性神経疾患に関する調査研究班」に幕
- 竹鶴ピュアモルトの故郷
- サラリーマン川柳よりも女子会川柳の方が危ない感じですが・・・
- 平成25年度免疫性神経疾患に関する調査研究班班会議が開催
- 筋炎の分類
- 希少糖で町興し
- 化学発光免疫測定法によるタクロリムス血中濃度は代謝産物との交叉反応により高値を示すことがある
- タクロリムスの血中濃度をトラフで測定する根拠
- 「三匹のおっさん」
- Mast cellsとMS
- “Political Animals”
- フマル酸のBBBへの影響
- 振り込め詐欺撃退法
- Natalizumab中止後にCNS症状が増悪した時、PML、IRIS, MS再発の鑑別が難しい
- 欧州への移民制限が始まる?
- BiogenとNIHが論争
- 初代と第2世代の抗JCV抗体測定ELISAの比較
- 国によるニートの定義は34歳以下
- 小児の1/4は効果が不充分だったり、コンプライアンス不良でIFNβやCopaxon治療を中止
- 小児へのNatalizumab治療
- 「免疫性神経疾患に関する調査研究班」に幕
元々法律の裏付けのない難病研究制度だったのですが、難病新法成立を前に、実に40年間に及ぶ班会議の歴史に幕が下りました。班会議前日にお別れ会が赤坂の四川飯店で開かれました(日本人にエビチリなどの四川料理を紹介した陳建民さんが建てた店。現在は日本生まれの料理の鉄人で一世を風靡した息子の陳健一さんが引き継いでいます。麻婆豆腐はお祖母さんの作で、麻は辛いという意味ですが、唐辛子ではなくて山椒の辛みのこと。婆は祖母のことで、「祖母の辛い豆腐」という意味なんだと、TBS土曜日朝の「サワコの朝」で阿川佐和子さん相手に説明していました)。錫村名大教授や大原金沢医大教授らが思い出を語っていらっしゃいました。筆者がこの班会議に出席したのは1977年が最初で、当時はMSとMGが分離していました。椿 忠雄教授から発表内容が解らなくても良いから、研修医も聞きに行きなさいと言われて参加しました。勿論、発表の内容なんて、ほとんど理解はできませんでしたが、おそらく臨床的な内容が中心で、まだベンチワークが乏しかったので、現在の卒後3年目のレジデントが聞きに行くよりは抵抗は少なかったと思います。教授が急行の夜行で行かれるのですから、医局員も当然、夜行。朝の6時頃に上野駅について、一部の先輩は東京駅にあった、東京温泉という銭湯に行っていました。私は上野駅前の喫茶店でモーニングサービスを食べながら小説などを読んで9時頃まで時間をつぶしていました。当時、発表の時間の遅い先輩の中には、朝、東京へいらっしゃる人もいましたが、新幹線がまだなかったので雪で特急が遅れて発表時間に遅れた人もいました。
当時、都市センターは古い小さなビルで、現在の姿からは想像もできません。都市センターホテルは歴史があって、ホテルの向かいに文藝春秋社屋があったこともあり、笹川佐保さんや阿川弘之さん(タレント・エッセイイストの阿川佐和子さんの父君)などの作家の定宿だったそうで、森村誠一さんが作家になる前はホテルマンをしていました。
昔は班員がそれぞれの大学教授達で専門が神経免疫ではない方がほとんどのため、免疫学用語の定義から話さないといけないと言われ(筆者は新潟大学脳研究所在籍中の20年前でも医局内で言われました。T細胞のサブセットはまず説明を!)、講演後も免疫の議論がなかなかできないという、神経免疫の冬の時代が長かったですね。当時の若手の中から、Neuroimmunologists
Forumという勉強会が発足し、20年間、毎年各地で勉強会を開催していました。互いの刺激が良かったのか、発足当時のメンバーのほとんどが現在でも活動していて、多くが現在の班会議の班員ですし、10名ほどが教授にもなっています。最近、神経免疫を専門とする若手が教授になかなか就任しないので、再び氷河期が近づきつつあるのかもしれません。公式には神経免疫学会がこの班会議の研究活動から生まれたことも、特筆すべきことでしょうし、今や、独自の英文誌を抱えるまでに成長しています。
- 竹鶴ピュアモルトの故郷
ニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝さんは、すでに生産をしていた余市蒸留所のウイスキーとブレンドできる、モルトの生産地を探していました。理想的なウイスキーを作るために、複数の蒸留所で性格の異なるモルトを作る必要があると考えたからだそうです。仙台市の広瀬川上流の新川川(にっかかわがわ-「ニッカ」の名前が入っていますが、もちろん河の名が先)の水で水割りを飲んで、ここだと決めたのだ、と。仙台市青葉区の仙台ハイランド駅と仙台ハイランドウェイサーキットコースの間の作並街道脇にニッカウヰスキー宮城峡蒸留所があります。ここで「シングルモルト宮城峡」が生産され、シングルモルト「余市」とブレンドして竹鶴ピュアモルトが完成。(この話は2014年2月11日のBSジャパン「テレビ日経おとなのoff」で紹介されました。)
2001年、筆頭株主だったアサヒビールが100%株を取得して完全子会社化。竹鶴政孝とリタ夫妻をモデルに、2014年9月からNHKで「マッサン」という題名で、朝の連続テレビ小説の枠でドラマ化されるそうです。
- サラリーマン川柳よりも女子会川柳の方が危ない感じですが・・・
サラリーマン川柳
いい夫婦 今じゃどうでもいい夫婦
電話口 「何様ですか?」と聞く新人
「辞めてやる!」「会社に良いね!」と返される
すっぴんで プールに入り 子が迷子
すぐキレる 妻よ見習え LED
何をかね 忘れたことは 覚えてる
女子会川柳 赤
い糸 よく見えないから 縄にして
どうしよう 勝負パンツが Lサイズ
入社時は 腰掛け今は 命がけ
気がつけば 癒し系から 威圧系
今はもう そっとしといて 誕生日
ストレスは 仕事じゃないの あなたなの
ちゃん付けで 呼ばれた時は やな仕事
やっぱりね 残りものには 訳がある
ついにきた 新人社員と同じ干支
きつくなる 目つき性格 腰回り
- 平成25年度免疫性神経疾患に関する調査研究班班会議が開催
筆者は2013年のPACTRIMSや世界神経学会などで発表した、抗MOG抗体やUhthoff現象、CIS日本人患者でのオリゴクローナルバンドとMSへのconversionについて報告しました。
九大小児科からは、小児MS全国疫学調査の追加報告がありました。罹病期間が長くなるにつれて、年間再発率が減少してゆく傾向が認められました。一方で、ステロイド反応性は良好だけれども病初期に頻回に再発する”ステロイド依存性MS”と、発病初期から強い炎症を示して後遺症を残す”ステロイド抵抗性MS”の存在が示唆されました。
阪大の中辻先生は11C-酢酸PETを報告しました。既に実用化はされていて、心臓や前立腺癌、astrocytomaで臨床応用されているそうです。ただ、撮影しただけでは中枢神経での所見を拾えないので、CNSに限局してPETするとuptakeを検出できるそうな。MS患者さんでは灰白質と皮質下白質にuptakeが目立ち、脳室周囲には乏しかったことから、障害が強いとかえって低下するのか、部位によって代謝が異なるのか、疑問があるようです。白質への取り込みと病変数は相関する(R2=0.5059,
p<0.01)、と。
藤田保健衛生大の武藤教授は、Encephalomyeloradiculoneuropathy (EMRN)患者血清中に抗中性糖脂質抗体(4例全例でLactosylceramideに、2例でGalactosylceramideに対する抗体)を見いだした、と報告しました。治療後に消失。(Neurology
2014;82:114-8)
杏林大の千葉先生らは、PPMS患者の血清中に抗synapsin Iaに対する抗体を発見。抗体測定系間の整理と、抗体が確かならPPMSの病態との関連を詰める必要がありましょう。CSF中のOCBとは反応するのでしょうか?
子宮頸がんワクチン接種後の神経症状が世間で大騒ぎになっていて、厚労省が奨めていたワクチン接種が停止しています。近日中に桃井真理子前自治医大小児科教授を座長とする研究班は心因反応として結論づけるようです。確かに、TVで見る機会のあった一部の患者さんの不随意運動は奇妙でした。疼痛の病態解明はなかなか難しいのかもしれません。信州大の池田教授は、心因反応ではなく自律神経障害によるものであることを強調。皮膚生検で有髄・無髄とも末梢神経の形態学的異常所見が認められ、カテコラミン測定や起立試験では6/11名で異常所見が認められたそうです。ただ、ワクチン接種との因果関係があるとしますと、接種から発症まで15ヶ月もかかることが不思議です。
GBSにおけるIgM型抗糖脂質抗体の意義について、山口大・古賀先生が報告。IgM型抗糖脂質抗体はGBS発症を伴わない、キャンピロバクター腸炎のみでも誘導されるため、GBSの診断マーカーとしては有用性は低いことを述べました。徳島大・梶教授はMMNではIgMのままIgGへなぜswitchしないのか不明、と。近畿大・楠教授はGBSで認められるIgG抗体はクラスswitchに必要な期間としては、専攻感染からGBS発症までの期間が短すぎるので、人生のもっと前の段階ですでにIgM抗体が産生されていると考えられる、とコメント。先行感染の意味合いが変わってくるような気がしますね。
東大の清水先生らは病理所見で分類した筋炎患者の末梢血中サイトカインプロファイルを調べました。すると、DMや壊死性筋炎では10種類以上のサイトカインの上昇が認められる一方、PMやIBMではほとんど変化が認められず、前者での全身性液性免疫機序の変動が認められ、明らかに両者で病態が異なることが示唆されました。このことは、抗体で分類するリウマチ学派への反論にもなりましょう。
- 筋炎の分類
上記の東大・清水先生らの報告のベースになった組織学的分類は・・・
- DM: 典型的な皮疹(Gottoron兆候あるいはHeliotrope皮疹)を有し、または/かつ、筋病理所見でperifascicular atrophyを有する。
- PM: 典型的皮疹はなく、非壊死筋繊維にCD8陽性リンパ球が取り囲み、かつ侵入する像が認められる。
- IBM: 非壊死筋繊維への単核球の侵入像および縁取り空胞をもつ筋繊維を有し、細胞質内でアミロイド沈着またはfilamentous inclusionが認められる。
- NM (necrotic myositis): 多数の壊死筋繊維が認められるが、リンパ球の浸潤が乏しい、もしくは存在しない。
- UC (unclassified): 上記の特徴的所見を呈さない。残念ながら、東大患者の1/2はここに属してしまうそうです。
もっと解明する必要がありますね。
- 希少糖で町興し
希少糖は自然界に少量しか存在していませんが、40種類以上存在しているそうです。すでに2001年4月16日に四国新聞が、香川大学農学部の何森(いずもり)健教授により大量生産を可能とする酵素を発見したことを報じています。大学構内の土壌から分離された微生物から発見された酵素を利用することで、D-フラクトースから希少糖のD-プシコースに変換されることを見いだしました。甘さは砂糖の7-8割で、カロリーゼロ。ブドウ糖の吸収を抑制するだけでなく、デンプンからブドウ糖への分解も抑制するんだそうで、すでに30gr摂取することで体重減少や体脂肪率低下が証明されているそうな。香川大学には希少糖研究センターも設置されています。香川県はうどんの産地ですが、男性の42%がDM予備軍で、全国一。そのため、メタボ対策として、行政も希少糖を後押し。TVでも紹介されました。D-プシコースを含むシロップ、「レアシュガースウィート500gボトル」(レアズウィート社-
http://www.raresweet.co.jp/、1260円)が一部のスーパーでも発売されています(当院近くの”フレンズ”で売ってました)。企業のHPにはレシピも紹介されています。また、希少糖を使用したスイーツが健康志向を追い風に相次いで登場しているそうで、2014年2月4日、ミニストップというコンビニではショートケーキやパフェを200円前後で発売を始めたそうです。
- 化学発光免疫測定法によるタクロリムス血中濃度は代謝産物との交叉反応により高値を示すことがある
抗体を用いていることから類似しているとは思うのですが、ELISAよりも交叉しやすい、という記載もあります(兵庫県臨床検査研究所)。CLIA (Chemiluminescent
immunoassay)法では31位O脱メチル体がタクロリムスと120%の交叉反応を示すために、HPLCで測定した時よりも測定値が高めに出るようです。いずれにせよ、少ない容量で高い値が出た場合は要注意。意外に論文が少ないのです。
Hirano K, Maruyama S, Mino Y, Naito T, Kawakami J. Suitability of chemiluminescent
enzyme immunoassay for the measurement of blood tacrolimus concentrations
in rheumatoid arthritis. Clin Biochem 2011;44(5-6):397-402.
また、上記の交叉反応には代謝に関与する酵素であるCYP3A5の遺伝子型による、という日本人を対象とした研究も同グループから出ています。CYP3A5*1/*3
genotypeでは、3 μg/L以下での低値域で交叉反応が強く反映されるそうです(Clin Chim Acta 2012;414:120-4)。
- タクロリムスの血中濃度をトラフで測定する根拠
タクロリムス内服後12時間までの血中濃度の面積(12-hour area under the concentration tome curve
AUC0-12)は腎移植の移植片生存率と相関し(Transplant Proc 2003;35:2445-8)、トラフ値はAUC0-12と相関することから(Biol
Pharm Bull 2008;31:90-4)。決して腎障害予防のための中毒濃度のチェックだけではないのです。腎移植で低容量で用いる歳のTrough値の目安は3-7
ng/mLとされます(N Engl J Med 2007;357:2562-75)。腎移植患者に比して、RA患者では化学発光免疫測定法と液体クロマトとの相関が悪いそうなので、評価には注意が必要なようです(Clin
Biochem 2011;44:397-402)。
- 「三匹のおっさん」
(有川 浩、文春文庫)
テレビ東京で2014年1月17日から放映される連続ドラマの原作。官邸周辺のデモも団塊の世代が中心でしたが、若者たちはどないしたん?町内の悪を懲らしめる、「三匹の侍」!
原作に登場する女子高生、早苗さんはキュートで、作者の女子高生の理想像?ドラマでは三根 梓さんが演じています。
文庫版の解説を書いているのは、最近では脚本家と紹介されている、中江有里さん。元々は女優さんですが、正統派日本美女の上、TV番組でコメンテーターも勤めているきわめて知的なヒト。公式HPに掲載されている写真をご覧下さい。
驚きました。本編を読んだ後で、巻末に児玉清さんがこの小説を紹介したラジオ番組が添付されていて、冒頭に「三匹の侍」という言葉が登場していました。ここでは五社英雄さんの演出によりフジテレビで放映された初期のモノクロシリーズでなくてはいけません。丹波哲郎さんが出ていた最初のシリーズはみていませんが、平幹二朗さん、長門勇さん、加藤剛さんは懐かしいですねえ。
- Mast cellsとMS
20年以上前に、NIHのMAGをやっていたDr Quarlesのラボにいた、Dr. Richard Johnsonが移動先でreviewを書いたことがありました。この領域の歴史はずいぶん古いのですが、最近、再び脚光を浴びようとしています。
- 最近ではIL-17の主な産生源とされる (J Immunol 2010;184;3336-40; J Immunol 2011;187:490-500)
- IL-23とIL-1βによる刺激によりmast cellから脱顆粒が起きる (J Immunol 2011;187:490-500)
- MSの脱髄病変ではmast cell特異的な遺伝子の発現が増強している (J Neuroimmunol 2008;195:176-85)
- Mast cell欠損マウスでEAEを誘導すると、発症までの日数が延長し、重症度が低下する (J Exp Med 2000;191;813-22;
J Immunol 2011;186:3294-8)
- MS治療に使用され、国内で治験中のフマル酸はヒトmast cellのapoptosisを起こす (Exp Dermatol 2013;22:719-24)
これはmitochondrial apoptotic pathwayを介した機序。
- “Political Animals”
シガニー・ウイーバー主演によりWOWOWで連続TVドラマとして放映。大統領選の党予備選で敗北後に国務長官となった、元ファーストレディーでもう一度大統領選に打って出ようとする役ですが、現実と類似した設定。違うのは、プレイボーイの元大統領とは離婚することとふたりいる息子の片方が薬物中毒。「ホワイトハウスを舞台に政治の裏側と家族の葛藤を描いた」そうで、主人公は移動中の飛行機の中で新聞記者の独占インタビューに答えて、こう言います。
「この世は地獄よ。失敗と敗北で一杯。ヒトには背かれ、夢は破れ、心は引き裂かれ、無実の記者は死ぬ。人生最高の瞬間なんて、全部合わせてもほんの一瞬。でも、次の最高を味わうには、歩み続けるしかない。だから、私は歩み続ける
(I’ll keep going!)。」
- フマル酸のBBBへの影響
- in vitroでヒト血管内皮細胞のTNF-αにより誘導される、E-selectinやICAM-1, VCAM-1発現を抑制する (I Immunol
2002;168:4781-7; Exp Dermatol 2011;20:980-5)
- BBB機能には影響しない (Neurosci Lett 2013;555:165-70)
- 振り込め詐欺撃退法
関西で増加しているんだそうで、道頓堀の「くいだおれ太郎」と女将さんが出演するCFが流れています。親子で合い言葉を決めておきましょう、というキャンペーンの一環で、ラジオのCMでは「お母ちゃんが今まで付き合ってきた人数とかいいんちゃう?」「えーっと、4人ぐらいかなあ」(ふすまを開けて父が入る)というのがあるんだそうですが、TVでは「お母さんの好きなギャグは?」「(太郎人形の眉毛を上げて)眉毛ボーン」
ネットで話題になっている合い言葉は「プリキュア37人言える?」というもの。実際にあった話で、お金が必要になったという電話に、母親がオタクの息子なら全員の名前を言えるはずと言って、撃退。このエピソードを1月3日にTwitterに書き込みました。Twitter上の引用は同日中に1万件を突破。これを警視庁犯罪防止対策本部の公式アカウントがツイートし、オタク文化を指示したことでネット上で盛り上がったそうな。1月24日、産経新聞などで報じられました。
- Natalizumab中止後にCNS症状が増悪した時、PML、IRIS, MS再発の鑑別が難しい
Natalizumab中止後に神経症状が増悪した場合にPMLなのか再発なのかが難しい(Arch Neurol 2011;68:186-91)ですが、PML+IRISの可能性があるかどうかは難しいのでしょう(Mult
Scler 2013;19:1226-9)。IRISを起こすとPMLに気づきにくくもなるようです。retrospectiveに脳MRIをチェックして、asymptomatic
PMLらしき期間があるかどうかを検討する必要もあるようです。NTZ中止後にPMLが発症した場合、JCVに対する免疫反応も抑えてしまう可能性はありますが(Mult
Scler 2013;19:1226-9)、ステロイドパルスをやるべきなようですね(Neurology 2012;79:2258-64)。IRISを起こさずにNTZを継続していると、PMLで死亡する危険性も(Mult
Scler 2013;19:1226-9)。
- 欧州への移民制限が始まる?
2013年2月9日のスイス国民投票で、滞在する外国人の上限と割当数を毎年決めるという条文を憲法に追加することが50.3 vs 29.7%の僅差で賛成されました。州別でも12/20州と5/6準州で賛成され、拘束力をもつこととなりました。知り合いがブラジル系スイス人と結婚した日本人がいますが・・・今後、オーストリアやEUへも広がるのではないでしょうか?欧州各国経済の底辺を支えているのは移民達ですが、観光客とは思えないアフリカ系やイスラム系が最近、都市部で目立ちます。文化への影響の懸念は出てくるでしょうねえ・・・その土地に住む権利は誰にあるのか・・・日本も人ごとではありませぬ。
- BiogenとNIHが論争
Natalizumab治療中のMS患者でPMLが発症しますが、Biogenが開発した第2世代のELISAによる抗JCV抗体とNIHが以前から測定しているPCRによるDNA検出と、どちらが感度が良いか、論争になっています(N
Engl J Med 2013;369:1279-80)。前者ではseronegative例でのPML発症があり、false negativeがあり得ることをHPでも認めています(Carruthers
et al. Mult Scler J, in press)。PMLの診断の8および9ヶ月前の検査で陰性例が2例報告されているそうです。ちなみに、Harvard
Univでの計算では、25364例でseronegative PMLが5-10例検出される可能性があるそうな(Carruthers et al.
Mult Scler J, in press)。直接比較したデータがない以上、Majorらが主張しているように(N Engl J Med 2013;369:1279-80)両方測定すれば良いのではないでしょうか?Biogenの第1世代のELISAとDNAを比較したNIHの報告はあって(N
Engl J Med 2013;368:2240-1)、17/49 (35%)でviremiaが認められ、DNA陽性患者のうち治療開始時で4/10例、24ヶ月後で2/7例で抗体が陰性だった、と。日本人患者に対しては両方可能なようにしたいなあ。
- 初代と第2世代の抗JCV抗体測定ELISAの比較 の表が出ています(Outteryck et al. Mult Scler J, in press)。方法がそもそも異なります。検査法は2012年3月末を境に変更されています。モノクローナル抗体を用いた感度の比較では、350
ng/ml vs 60 ng/mlと約6倍感度が向上しています。第2世代のELISAの報告は、J Clin Virol 2013;57:141-6.
- 国によるニートの定義は34歳以下
東京新聞や日経新聞、読売新聞によりますと35歳以上の中年ニートが60-70万人もいて、社会的な支援が必要な状態なんだそうですね。単なる無職という括りになるようです。2005年の労働経済白書にこの言葉が登場したそうですが、そもそも15から34歳までという理由は何でしょう。35歳以上は自己責任?ならば、えらく年いっているけども・・・対人恐怖症とか多くは病気のようですが、単に経済的に支援するだけでなく、減少させる努力が必要でしょう。親の年金を当てにして生活しているニートが少なくないようですが、親が亡くなったら資産を食いつぶした後に全員生活保護になりますね。社会復帰プログラムが必要。
- 小児の1/4は効果が不充分だったり、コンプライアンス不良でIFNβやCopaxon治療を中止 しているという報告がでています(Arch Neurol 2011;68:437-44)。
- 小児へのNatalizumab治療
スペインの7施設から9例が報告されました(Eur J Paediatr Neurol 2013;17:50-4)。小児への投与量には議論がある(J
Pediatr Gastroenterol Nutr 2007;44:185-91)ようですが、ここでは成人と同じ方法が採用されました。小児Crohn病では3
mg/kgが採用されました。ARRは治療前が3.88だったのが治療開始1年後には0.38と低下し、脳MRIでの造影病変を有する割合は75.0%から0%へと著減。