2014年2月号 NO.1
- 紀伊國屋書店HPの「本棚」がアクセス数16000超え!
- 警視庁がサンタクロースにtwitterで警告しました
- Natalizumab治療後に再発したNMO
- 自己免疫疾患へのRituximab治療の安全性
- 再発性視神経炎のMS/NMOへのconversion
- 「晴れた日は図書館へいこう」
- 抗AQP4抗体有無による再発性視神経炎のNMOへのconversionの違い
- FingolimodによりNMOで再発が誘導される理由
- HemopexinはTh17による免疫応答を抑制する
- Paraneoplastic NMO ついに報告されました!
- ニューヨーカーにRAMENとKUZUが流行
- MSでリンパ腫は多いか?
- Fingolimodとフマル酸の効果の比較
- Fingolimod治療中のリンパ球数と活動性
- 「恋しくて」
- Fingolimod投与によりリンパ節に「幽閉」されたリンパ球の運命
- 医学生は金持ちで実習にはwindowsが必要?
- MSと感染症の関係
- ExerciseはMSに良いか?
- Relapsing optic neuritis
- ジェームス・ボンドの酒量
- CD8陽性CTLがMS/EAEに関与する根拠について
- 一人当たりGDPランキング
- BCGワクチンによりCIS患者での脳MRIでの造影病変が減少し、IFNβ治療後のCDMSへのconversionも低下させる
- B型肝炎既感染RA患者でのウイルス再活性化のリスク
- 水道の蛇口を知らない大学生
- Copaxon治療後、造影病変抑制効果はいつから認められるか?
- 紀伊國屋書店HPの「本棚」がアクセス数16000超え!
紀伊國屋書店ウェブストアのトップページの「本棚」コーナーに掲載している、「京都と医療と人権と」への参照数がクリスマスに一挙に13000回を超え、第7位にランクされました。クリスマス関係の現在入手可能な代表的なCDやDVDをまとめて紹介したことが大きかったようです。年明けに、細川護煕元首相が小泉純一郎元首相の支持を得て東京都知事選挙に立候補することが示唆された時点で、脱原発に関連した書物を紹介しました。掲載順は自動的で、本棚への掲載順ではありませんし、発売日順でもなく、規則性が不明です。そのために、テーマ毎に整理できないもどかしさがありますので、順不同で見にくかったり、目的の本を発見しにくい欠点があります。京都のガイドや医事法制、MS関係の雑誌や内外の単行本(ただし、紀伊國屋書店取り扱いのみ)も紹介していますので、是非、お立ち寄りを。東京都知事選で細川護煕さんと小泉純一郎両元首相のタッグが話題になった際に原発に関する書物を紹介しましたら、一気にアクセス数が増加して、2014年1月15日には16000を超え、470余りの本棚中6位に躍進しました。これ以上はもう無理。第5位が32000以上です11月17日に紀伊國屋書店の「じんぶん大賞ノミネート」という本棚に超されて、7位に落ち着きました。
- 警視庁がサンタクロースにtwitterで警告しました
クリスマスイブの聖なる夜を前に、警視庁犯罪抑止対策本部がサンタクロースへの法適用について12月24日(2013年)にツイッターで警告して話題に。サンタの乗る「ソリ」は道路交通法上では「軽車両」の扱いになるため、「道路を通行しているときに違反があると警察官に赤切符を切られる可能性があります」という。「空を飛んでいれば交通違反にはなりませんが、航空法に違反するかもしれません」と忠告し、「日本を通るサンタクロースさんはお気をつけください…」と語ったそうです。後に、軽率だったと自己批判したそうですが、良いんじゃない?
- Natalizumab治療後に再発したNMO
3例が以前、報告されています(Neurology 2012;79:1065-7)。再発が認められたのは、それぞれNatalizumab治療15回目(15ヶ月後)の点滴後、最初の点滴の10日後、2回目の点滴の2日後。Natalizumabは骨髄からのB-cell precursorsの放出を促進(Neurology 2008;71:1350-4)するので、抗体産生が亢進するのではないかとdiscussされています。ただ、抗体価自体は提示されていません。この論文ではリンパ球サブセットの変化がNMOでは増悪の一因になりうるのではないか、と言っていますが、根拠に乏しいと思います。リンパ節にリンパ球が閉じ込められたとしても抗体産生脳に影響はしないはずですし、CNS内での変化自体が再発のトリッガーになるという根拠もないと思われるからです。
- 自己免疫疾患へのRituximab治療の安全性
370例の解析が報告されています(Arth Res Ther 2011;13:R75)。11例(3.0%)が死亡していて、最多はANCA陽性肉芽腫性血管炎(4例)で、死亡原因の大半は感染症(7例)。死亡時期は最初の投与から平均11.6ヶ月後(0.8-31.3ヶ月後)。MGは1/5例で感染症により死亡しています。MS/NMOは原因不明で1/56例死亡。
- 再発性視神経炎のMS/NMOへのconversion
MS NMO 5年 14.4% 12.05% 10年 29% 12%
- 「晴れた日は図書館へいこう」
阪大出身の緑川聖司さんデビュー作で、小学生が図書館内で起きる日常的な謎に挑戦するミステリー(ポプラ文庫ピュアフル)。10年前に単行本が出ていて、第1回日本児童文学者協会長編児童文学新人賞佳作を受賞作。「晴れた日は図書館へいこう(ここから始まる物語)」という続編も出ています。ほっこりするミステリーです。
- 抗AQP4抗体有無による再発性視神経炎のNMOへのconversionの違い
5年で20-25%がconversionするが、抗体陰性例(10%)よち陽性例の方が多い(50%)そうな。(Neurology 2008;70:2197-200; Neurology 2008;70:2075-6)
- FingolimodによりNMOで再発が誘導される理由
が明らかになったように思われます(Nat Immunol 2013;14:1166-72)。ただ、この論文では少なくとも一部のMSではTh17-mediatedと考えているために、NMOでの現象を視野に入れていません。
- HemopexinはTh17による免疫応答を抑制する
proinflammatory cytokineであるIL-6やIL-β、TNF-αに反応して全身的に増加する急性期蛋白で、肝細胞で産生されます。小児MSでbiomarkerとして報告されています(Mult Scler 2009;15:455-64)。成人では無理なんだろうな?小児は免疫応答がNMOに近いのでしょうか?B6バックのノックアウトマウスでMOG-induced EAEを作製すると、発症が早まり重症化し、Th17 expansionが認められました。このマウスにヒトhemopexinを投与するとwild miceでのEAEのレベルにまで改善されています(完全に抑制されないことがNMOでの治療への応用に厳しさがあります)(Rolla et al. J Immunol 2013, in press)。
- Paraneoplastic NMO ついに報告されました!
(J Neuroimmunol 2013;263:145-7) 43歳女性で、卵巣奇形種にAQP4が異所性に発現していて、これが刺激になったと思われる抗AQP4抗体が出現しています。手術などの治療により完全寛解に。
- ニューヨーカーにRAMENとKUZUが流行
どちらも英語になっているそうな。前者はともかく、後者は葛ですよ。本物なのでしょうか?
- MSでリンパ腫は多いか?
Fingolimod投与MS患者は、全世界で8万人ほどに増えていて、20例近くのリンパ腫発症例が報告されています。そもそも、MSではリンパ腫が多いのでしょうか?3万人近いリンパ腫患者さんをまとめた報告(Blood 2008;111:4029-38)では、MS患者が9666例いて、non-Hodgkinリンパ腫(NHL))ではControl 12341名と有意差はなく、発症10年以上群でORは0,61 (95%CIは0.22-1.68)でした。極端な例はSjogren症候群で8万例余りの解析ではNHLのリスクは対照群の6.5倍で、parotid gland marginal zone lymphomaはOR 996で95% CIは216-4596。
米国生まれと外国生まれのアジア人でのリンパ腫の頻度の違いが検討されていて(MSとは無関係ですよ)、全ての地域ではありませんが、NHLでは米国生まれではない中国人、南アジア人(人数から言ってインド人が主体でしょうか?)とベトナム人では、男女を問わず米国生まれのそれぞれの人種より頻度が有意に低いそうです。つまり、発症には遺伝的背景よりは環境が重要ではないか、と(Canc Epidemiol Biomarkers Prev 2011;20:1064-77)。日系人では、男性(526例)では米国外生まれの方が多く(95%CI: 1.35-2.14)、女性(504例)では差がありませんでした(0.88-1.32)。
- Fingolimodとフマル酸の効果の比較 という将来、我が国でも実地診療には役立ちそうな報告がありました(#1105, 2013 ECTRIMS)。1500名余りと2300名強の患者を対象としたそれぞれ2つずつの第3相試験を用い、どちらもplacebo対照なので比較しやすいだろうというのが発端のようで、それぞれのplaceboに対する優位性を図に表しますと、どうみてもFingolimodが優位です。両者の薬剤の効果を間接比較しますと、relative
riskと95%CIは・・・
1). 再発と3ヶ月間進行のない患者の割合で評価しますと、1.21 [1.06-1.39]
2). MRI disease activityのfreeの患者の割合では、1.40 [1.03-1.93] といずれもわずかですが、Fingolimodの効果が認められました。
ところが、両者のbaselineでの患者背景を見ますと、両者で異なっていました。それぞれの試験では実薬群とプラセボ群とで差はなかったのですが、直前1年間の平均再発回数は1.5と1.3ですが、平均造影病変数は1.4と1.9で平均T2病変数も5.9と10.8でした。一概にフマル酸群の方で活動性が高いとも言い切れませんが、プラセボ対照であっても、患者背景が異なる場合、間接比較は難しいでしょう。
疾患活動性が高い患者さん達を対象にした場合、試験結果にどのような影響を及ぼす可能性があるでしょうか?薬剤の性格にもよるかもしれません。FNβ non-responder (break through disease)患者が登録者の中にどの位いるか、も治験結果に影響するでしょう。疾患活動性が高かったり、non-responder患者が多いほど、薬剤の効果を証明するには一般的にはハードルが高くなる可能性が高いことが予想されます。
- Fingolimod治療中のリンパ球数と活動性
Fingolimodはリンパ節にある種のリンパ球をトラップして閉じ込めることで、CNSへの浸潤を予防できる、というのが想定されている主たる作用機序です(一応は)。ですから、リンパ球が減少するほどに治療効果が発揮するように思われます。イタリアのMilanのProf Comiのグループから報告がありました(#1074, Zaffaroni et al, 2013 ECTRIMS)。結果は想定とは逆で、治療中でも活動性が高かった患者群でリンパ球数が低下していました(p=0.05)。この理由として、抑制性リンパ球なども減少したためか?と。
- 「恋しくて」
村上春樹さんの新しい翻訳小説(中央公論新社)。”A boy meats a girl” storyだけではなくて、中年男女の別れやヒンデンブルク号のナチス党員のホモセクシュアル乗務員などの物語。映画や帯ドラマの原作にできそうな苦みも加味された短編集。
- Fingolimod投与によりリンパ節に「幽閉」されたリンパ球の運命
一般的にはapoptosisを起こさないとされています。その根拠とされる実験は、FTY720をマウスに1mg/kg1回経口投与した後、72時間まで血中濃度をみますと、12時間ほどでピーク(0.2μM)となった後、徐々に減少して72時間後にはほぼ消失するという推移をたどります。この最高血中濃度でマウスの脾リンパ球を24時間培養した後のcell viabilityを検索するとほとんど減少していません。脾リンパ球を様々な濃度のFTY720で5時間培養後のapoptosis細胞をAnnexin V+Pl- cellsで評価しますと、上記の最高血中濃度より5倍ほど高い濃度(1μM)でもFTY非添加群と比べて有意差はありませんでした(Inflam Regen 2010;30:186-92)。ただ、経口投与した後に、リンパ節でcell viabilityがどうなっているのか不明です。臨床的にはリンパ節腫脹は認められませんので、リンパ節内でapoptosisを起こしているのではないかと推測されます。結果的に、長期投与した場合、投与前からtrapされていた炎症惹起性T細胞が順次殺されてゆくのではないか、とも考えられます。
- 医学生は金持ちで実習にはwindowsが必要?
最近の国内のMicrosoftのCFでこんなことを表現しています。「実習にOfficeの入っているwondowsが必要だなんて知らなかった。でもお金なら持っている。」こんなことを女子学生らしき女の子が言っています。その上、ポケベルが鳴って「あっ行かなきゃ」 東京の私立大ではこれが常識なのでしょうか?レジデントと医学生を混同してないでしょうか?これを制作した広告会社は。年間12000円の授業料だった、旧国立大学の卒業生としては違和感大あり。
- MSと感染症の関係
- 感染症はMS患者には有害であることが以前から示されています。感染症により、発熱や”oseudo-excerbations”、再発増加が知られています(Neurology2006;67:562-9)。
- 若い頃に特定の感染症に罹患することで防御免疫が誘導され、自己免疫疾患発症のリスクが軽減することがあります(Ann Neurol 2007;61:85-9)。
- 腸への寄生虫感染により、疾患活動性が減少することが知られています
- ExerciseはMSに良いか?
72もの報告からplacebo対照でランダム化されている11報告を抽出し、591例を解析してリハビリの有用性が証明されています(José Sá M J Neurol, in press)。現在、前向き研究も行われているそうな。
- Relapsing optic neuritis
フランスでの多施設共同研究で62例が対象(Benoilid et al, Mult Scler, in press)。R IONは非進行性で、CRIONは進行性。cases steroid dependence Relapsing inflammatory ON 42例 (68%) 10% Chronic relapsing inflammatory ON 20 (32%) 42%
- ジェームス・ボンドの酒量
英国のロイヤルダービー病院などのグループはイアン・フレミング原作の007シリーズ14冊を調べ、アルコール摂取量を計算し医学雑誌に報告したことをCNN日本語版の電子版が伝えました(2013/12/13)。それによりますと、1週間に92 unitのアルコールを摂取していたと考えられるそうです。ワインボトル1本で9 unit、ビールジョッキ1杯で3 unitに相当するそうな。1日の消費量が最も多かったのは、「ロシアから愛をこめて」の最初の3日目で、1日でなんと50 unit。よく殺されないもの。原作者は酒と煙草の愛好家だったそうで、56歳で心疾患により亡くなっていることから、ボンドも早死の可能性を指摘しているそうです。
- CD8陽性CTLがMS/EAEに関与する根拠について
J Exp Med 2001;194:669-76
J Immunol 2001;166:7579-87 B
rain 2005;128:1747-63
J Immunol 2007;179:5090-8
Nat Med 2008;14:1227-35
Brain 2008;131:2353-65
Hum Immunol 2008;69:797-804
J Immunol 2008;181:1617-21
Am J Pathol 2009;175:1160-6
Biochim Biophys Acta 2011;1812:151-61 J
Neuroinflamm 2013;10:154
- 一人当たりGDPランキング
内閣府が2012年のデータをクリスマスに発表し、OECD発表データとの比較が報道されました(京都新聞 2013年12月26日付け朝刊)。日本はOECD加盟国34ヶ国中10位で、2011年の14位からベストテン入りを果たしました。景気が上昇気味の2013年にはもう少し上がるかもしれません。さて、順位と額は・・・
ルクセンブルグ 103751USドル
ノルウェー 99555
オーストラリア 67942
デンマーク 56380
スウェーデン 55050
USA 51689
カナダ 51024
オーストリア 46813
日本 46537
ちなみに、韓国は22590ドルで、非加盟の中国はわずか6089ドル。北欧はさすがです。スイスやスウェーデンはともかく、巨大な国際的な企業のない国でもずいぶん高いです。デンマークが入っていて、オランダが入っていないのはなぜでしょう?フィリップスがあるのに。豊かな国とは何か?考えさせられる数字です。
- BCGワクチンによりCIS患者での脳MRIでの造影病変が減少し、IFNβ治療後のCDMSへのconversionも低下させるという論文が出ています(Neurology 2014;82:1-2; 41-8)。機序は不明。免疫担当細胞への影響はあるでしょう。膀胱癌(Cancer
Sci 2013;104:22-7)や1型糖尿病(PLoS One 2012;7:e41756)への治療効果が報告されています。
- B型肝炎既感染RA患者でのウイルス再活性化のリスク
国内で127例集めたところ、9例(7.8%)でB型肝炎ウイルスの再活性化が認められ、うち4例は生物学的製剤使用者だったそうです。ちなみに、Rituximabによる再活性化はよく知られています。初期に日本からの報告が目立ったことは重要な仕事。
Prophylaxis of hepatitis B reactivation using lamivudine in a patient receiving rituximab.
Hamaki T, Kami M, Kusumi E, Ueyama J, Miyakoshi S, Morinaga S, Mutou Y. Am J Hematol. 2001 Dec;68(4):292-4.
Possible efficacy of lamivudine treatment to prevent hepatitis B virus reactivation due to rituximab therapy in a patient with non-Hodgkin's lymphoma.
Tsutsumi Y, Tanaka J, Kawamura T, Miura T, Kanamori H, Obara S, Asaka M, Imamura M, Masauzi N.
Ann Hematol. 2004 Jan;83(1):58-60
- 水道の蛇口を知らない大学生
嘘のような話ですが、蛇口をひねると水道が出る、ということを知らない若者がいるんだそうです。そもそも蛇口を見たことがない、と。最近、自動の蛇口もありますが、家庭でも蛇口がレバーに変わっている、と。阪神・淡路大震災を契機に変わったそうです。震災時に何かの拍子にレバーが下がってしまって水道が出しっ放しになることがあったそうで、震災以降、レバーが逆になって、上げないと水道水が出なくなったそうです。さださんのコメント。(NHK「今夜も生でさだまさし」2013年11月23日24時過ぎ。新潟放送局からの生放送でした。)
- Copaxon治療後、造影病変抑制効果はいつから認められるか?
これに答える報告があります。他にもあるかもしれませんが・・・
1). 20例について検討し、治療開始4ヶ月目から造影病変数が減少 (Neurology 2002;59:1429-32)。
2). ヨーロッパとカナダで239例のRRMS患者を治療群とプラセボ群とにランダム化して2群に分けて検討したところ、治療開始6ヶ月目にプラセボ群と有意差(p < 0.01)が認められています(Ann Neurol 2001;49:290-7)。