2013 年6 月号 NO.2
- IFN responderとnon-responderを予め予測可能か?
- MSの発症リスクとしての喫煙歴
- 浮気を予測できる行動
- MSとNMOでの視神経炎のMRIによる比較
- 薬剤に混入した真菌によるepidural abscess
- サーファーで認められる非外傷性ミエロパチー (Surfers’ myelopathy)
- 神戸プリン
- BMJ Case Reports 症例報告
- Nonparaneoplastic cerebellitisでスクリーニングするべき抗体
- MSでのOCTの新しい試み
- 降圧剤でbeta blockersのみがAlzheimer病所見に乏しい
- Neurology Today 2013;13(5)はMS薬剤の広告が満載
- 「先生は言わはった」
- American IndiansとAlaska NativesではALSの頻度が低い
- 第110回内科学会総会で肺炎について
- 男性が結婚したい女性の職業
- 生物学的製剤による感染症のリスク
- ピロリ菌感染ルートはEBVと同じ?
- 日本人でのJC virus陽性率
- ワルファリンとマンゴー
- CISとMS患者でのCSF OCBのメタ解析
- 御池三条 こういう地名が京都市内に実在します
- カナダ原住民のMS進行は速い
- 制服向上委員会
- オーストラリアでは農場の家畜との接触はMSのリスクを高める
- 感度と特異性
- 治験での年間再発率は次第に低下している
- Anti-CD6 monoclonal abによるSjögren症候群治療へ
- Nasal delivery
- IFN responderとnon-responderを予め予測可能か?
さまざまな試みがなされていますが,今のところ,確実な方法はないと思います。治療開始時にPBMCからのサイトカイン産生を調べた報告がありますが,両群で差異は認められませんでした(Clin
Exp Immunol 2012;171:243-6)。
- MSの発症リスクとしての喫煙歴
WHOの統計では女性の社会進出の顕著な国ほど,女性の喫煙率が高く,F/M比は北欧やカナダなどでは0.8を越えます。日本たばこ産業の調査によれば,日本男性の平均喫煙率は平成24年で32.7%と,44年間で51%低下したが,20歳代の女性だけは昭和40年の6.6%から11.4%へ,2度の値上げでやや低下したけれども男女の年代別比較では唯一増加している年代(ピーク時の平成13-14年には24%を越えていました)。
カナダでは1935年以前のF/M比は0.5でしたが,以降増加し続け,1961年以降は0.95以上を維持。女性の喫煙率の高さとMSリスクは相関し,非喫煙者に比して喫煙者でのリスクは1.50
(95% CI 1.17-2.01) (Ann Eidemiol 2011 ; 21 :536-42.)。
発症リスクに及ぼすタバコの影響に関して,3000例を越える患者のメタ解析の結果では,リスクはconservative riskでは1.48 (95%
CI 1.35-1.63)で,non-conservative riskで1.52 (95% CI 1.39-1.66)。一方,SPMSではこのような現象は認められずMSの変性過程ではなく炎症性病変と喫煙との関連が示唆されました
(RR 1.88, 95% CI 0.98-3.61) (PLosOne 2011 ; 6 : e16149.)。妊娠中の受動喫煙も含めた母親の喫煙による児のMS発症リスクへの影響は否定的
(Rsmagopalan SV, et al. J Neurol in press.)。
タバコへの暴露の客観的指標としてニコチンの代謝産物であるcotinine血中濃度を192例の患者で測定しますと,10 ng/ml以上に増加しているとMSの発症リスクが高くなることが示されました(odds
ratio: OR 1.5, 95% CI 1.0-2.1)。この現象は26.4歳以下の若年者でのみ認められたそうです(OR 2.2, 95%CI
1.3-3.8) (Salzer J, et al. Mult Scler in press.)。
タバコがどのような作用でMS発症に関与しているのかは不明確ですが,呼吸器感染症のリスクが高くなることによる再発の危険性増加や一酸化窒素を介した機序,中枢神経に作用してACTHやエピネフリンを介した神経内分泌連関への作用やサイトカイン産生への影響などが想定されています
(J Neuroimmunol 1998 ; 83 : 148-56.)。
- 浮気を予測できる行動
番組の最後に,登場している弁護士たちがコメントしています。
理由なく,急に優しくなる。相手に対して過剰な要求をしなくなる。 (北村弁護士)
浮気をしているヒトは常にばれたらどうしようと思っているので,浮気相手をホームパーティーに呼んだり,部下だと言って日常的に話題にして,こういう存在がいることをさりげなく伝える。
(大淵弁護士)
やたらと出張の予定を細かく伝える。これは浮気相手との旅行を隠すため。携帯電話を離さない。 (菊地弁護士)
車内に変化がある。走行距離が長くなる。ナビの走行メモリーが消されている。助手席のシートやバックミラーの位置が微妙に変わっている。長—い髪の毛が落ちている。テレビを見ていて,今回のように浮気がテーマになると,急にそわそわしたり,席を立ったり,チャンネルを変えようとする。
(本村弁護士)
(「行列のできる法律相談所」2013/4/21 日本テレビ系列より)
- MSとNMOでの視神経炎のMRIによる比較
NMOによる視神経炎で両側同時発症しやすく,視交叉を含めて視神経の後方で造影病変が認められることが多い,と(J Neuro-Ophthalmol
2012, in press)。ただし,MS11例,NMO6例での結果。視交叉が傷害されたのは,NMO3/6例に対して,MSではありませんでした。
スイスの自験20例の特発性視交叉炎をまとめたKawasakiによれば3ヶ月から3年の観察期間で40%がdefinite MSに進展。この論文ではNMOは抗体測定もされていませんし,除外されてはいません。1例でmyelopathyを伴っています(Arch
Ophthalmol 2009;127:76-81)。
427例のMS患者での検討では両側同時発症のONは2例 (0.42%) のみとされます(Acta Neurol Scand 2011;123:207-219)。
新潟大学眼科のTakagiらは,抗AQP4抗体陽性のON3例を報告し,その特徴を女性,両側性で重篤,回復不良,抗核抗体陽性が全例で認められ,2例では再発しやすく,頭蓋内の視神経に造影病変が認められた,と報告しています(Acta
ophthalmologica 2009;87:562-6)。
- 薬剤に混入した真菌によるepidural abscess
昨年Bostonで国際神経免疫学会が開催されたとき、ちょうど大統領選挙でしたが、地元の製薬会社が製造したステロイド剤が原因で真菌性髄膜炎をおこした、と地元のニュースで繰り返して放送されていました。その後の推移がまとめられています(Lancet
Neurol 2013;12:429-30)。
“It seemed like an average Tuesday afternoon in mid-September to Marion
Kainer, an epidemiologist at the Tennessee Department of Health, but an
email about a strange case of meningitis from Vanderbilt University physician
April Pettit in Nashville, Tennessee, changed that”なんていうドラマみたいな書き出しで始まります。2013年3月25日までに全米20州で730名が感染し、51名が死亡。硬膜外にMethylprednisolone
acetateを局注したことが原因と昨秋にはすでに判明していました。製造したのはNew England Compounding Centerという製薬会社。同じロットは既に14000名の患者に投与されています。しかし、FDAはすでに2006年からこの企業の無菌性には問題があることに気づいていたそうな(なんでやねん!)。臨床的な問題は、真菌性髄膜炎としては膿瘍という病変がなぜ生じるのか(局注した部位なのかもしれませんが)、smoldering
infectionも問題で、患者数はさらに拡大する可能性があるようです。”whether this outbreak is just the
tip of the iceberg”なんていう不気味な表現をしています。死因で多いのは、出血や梗塞で、髄膜炎が元々あるためにこの診断が意外に困難だそうな。くも膜炎や椎体炎も呈する複雑な病態を呈しうること、治療には数ヶ月、特に後者では1年以上必要であることも社会的な問題。もはや、犯罪。
- サーファーで認められる非外傷性ミエロパチー (Surfers’ myelopathy)
2002年6月から2011年11月までにHawaii大学関連病院を受診したサーファー患者のうち3年間経過観察し得た患者19例を抽出。15-46歳、14例が男性で、全例がサーファー中に突然の下部背部痛で発症し、10-60分で進行する両下肢のしびれと対麻痺が認められています。5例は完全に運動感覚脱失しており、8例は感覚が保持されているだけ。10例でステロイドパルスを施行されていますが、2例のみで5段階の脊髄障害スケールで2段階改善したのみで、症状はあまり改善していません。CSFは蛋白増加と軽度の赤血球数と白血球数増加が有り。17/19例がサーファーが初めて。虚血性病変と考えられますが、原因は不明。(Neurology
2012;79:2171-6)
- 神戸プリン
1993年に発売された濃厚でなめらかなプリン。材料が良いからだ、という意見もありますが、それだけなのか?トーラク株式会社から発売。新幹線新神戸駅で入手可能。
- BMJ Case Reports 症例報告は内外とも掲載が難しいですが、BMJ groupで新しいopen journalができました。Medlineにも掲載されているそうですし、探しやすいのでIFがそこそこ上がるでしょう。
- Nonparaneoplastic cerebellitisでスクリーニングするべき抗体
Glutamic acid decarboxylase (GAD)
Metabotropic glutamate receptor type 1 (mGluR1)
Contacyin-associated protein 2 (Caspr 2)
Homer-3 (
JAMA Neurol 2013;70:506-9) BarcelonaのDr Graus & Dalmauのラボから世界で2例目となる,抗Homer-3抗体が見出された38歳男性例が報告されました。Homer-3はmGluR1のC末に特異的に結合します。両者はPurkinje細胞のdendritic
spinesに主に局在。Homer-3はintracellularでmGluR1はsynaptic cell surface proteinと局在は異なっていますが,両者の関係から想像しやすいように,傷害された場合の臨床像は類似しています。
- MSでのOCTの新しい試み
ジョンズホプキンス大の Calabresi医師らは新しい解析ソフトを開発したそうです。MS患者10/164例に通常は高齢の糖尿患者の多くで認められる、嚢胞様黄斑浮腫を見いだしたそうです(Lancet
Neurol 2012;11:963-72)。MS診断に利用できるような主張をしているようですが、事実だとしても頻度がねえ・・・
また、網膜の神経節細胞層+内網状層と乳頭周囲網膜神経線維層の厚さが脳の灰白質の萎縮度と強く相関することを見いだしたそうでありますよ(Arch
Neurol 2013;70:34-43)。
いずれも原著は見ていません。Medical tribune (2013/2/21)での記述。従来のRNFLと大脳萎縮との相関より明白なのでしょうか?同じ機種で比較したのかどうかは未確認です。
- 降圧剤でbeta blockersのみがAlzheimer病所見に乏しい
Honolulu-Asia Aging Studyで774名の男性剖検脳を検索した結果。beta blockersのみが降圧剤として投与された患者は40例。病理所見だけでなく,実際に死亡前1年間の知的レベルも保たれていました。同様の結果は2011年にすでに中国から報告されているそうな(Brain
Res 2011;84:111-7)。beta blockersの一つであるpropranololが高容量で脳血流を増加することが知られているそうでありますよ。また,beta
blockersは小血管でのstressを減少させ,microinfarctsのリスクを減少させることも示唆する研究者も。そこで,amyloidのクリアランスを増加させる作用があるのではないか,そうな。(Neurology
Today 2013;13(5))
- Neurology Today 2013;13(5)はMS薬剤の広告が満載
発行日が2013年3月7日なので,3月27日にFDAが認可したBG-12の広告も掲載されていますが,”coming soon”と表示されています。FDAが認可している。IFNβ1a,
Natalizumab, Fingolimod, Glatiramer acetate, TeriflunomideとIFNβ1b以外の全ての再発抑制のために使用する薬剤の広告が一部は4頁にも渡って掲載されています。バイエルン!頑張れ!
- 「先生は言わはった」
関西弁で「論語」を言うとどうなるか,本が出ています。「関西弁超訳 論語」(八田真太,アールズ出版)。たとえば・・・
「子曰く,道に聴きて途(みち-ダジャレ?)に説くは,徳(ダジャレ?)をこれ棄つるなり」がどうなるかというと,
先生は言わはった。「その辺の道端で聞いたような何の根拠もない話を人にするんは自分の信用に傷をつけるようなもんや」 これをさらに関西風に意訳しますと,噂話が好きな奴で出世した奴なんかおらんのや。そんな奴の相手なんかしとったら時間の無駄やで。そんなんほっといたらええねん。(噂話が好きな奴で出世した奴はおるけどなあ・・・)
- American IndiansとAlaska NativesではALSの頻度が低い
2002-2009年のIndian Health Serviceの外来・入院記録からALSを抽出した結果,住民10万人当たり0.63の頻度は0.63。ほとんどの研究では白人の頻度は10万人当たり1.2から4.0と比較すると低いことが判明。Serviceの7ヶ所の地区別数値は0.44から1.61とばらつきがありました。4ヶ所が0.4-0.5でむしろ高い方である,1,53のNorthern
Plains Eastと1,61のEastという米国の東側1/3が例外的。何か理由があるのでしょう。頻度が低い理由は不明。(JAMA Neurol
2013;70:476-80)
- 第110回内科学会総会で肺炎について
講演された長崎大・河野教授によりますと,乳酸菌は免疫機能を増加させますが,特にb240は強力だそうでありますよ。この乳酸菌は2006年に大塚製薬と熊本大学の共同研究で発見されたL.plantarum
b0240と同じもののようです。2013年にもなって未だに商品化はされていないようです。 肺炎の死亡患者の96%は65歳以上なんだそうで,高齢者の終末期肺炎に対しては倫理的配慮が必要である,と強調されました。ウイリアム・オスラーは「肺炎は老人の友である」と言っていたそうであります。初めからこう言っていたわけではもちろんなくて,長年の臨床医としての経験の結果,「肺炎は安らかな死に誘う老人の友」という思いに至ったんだそうな。もちろん,呼吸困難で絶叫して亡くなったり,訳の判らぬ未熟な医師に意識清明なのに筋弛緩剤を安楽死と称して注射されて,絶叫さえ出来ずに「殺されてしまう」ような状況はとても「老人の友」とは言えません。それなりの技術的配慮が必要ではあります。
長崎大学では多剤耐性菌による院内感染で数名の患者さんが亡くなった事件を契機に院内感染対策チームを立ち上げて,対応したんだそうで,職員の手洗い励行はもちろんですが,院内で普通に行われていた畜尿を可能な限り避ける努力をしたんだそうでありますね。24時間尿中の糖や蛋白定量が大学内でそれほど多かったのでしょうか?特殊な検査項目がそれほど必要だったとは思えませんが・・・ともかく,30%から15%へ畜尿率を下げて,多剤耐性菌や緑膿菌などの院内感染のリスク軽減に成功したそうでありますよ。
また,メーカーにとって,抗菌剤開発のメリットは今や少なくなってきており,主な標的病原菌は耐性菌で,広域なスペクトラムを有する抗菌剤の開発はもはや行われなくなってきたそうであります。医療保険制度が変わったら,また,変化するのかもしれませんが。
- 男性が結婚したい女性の職業 というアンケート結果があるんだそうで・・・
第1位 保育士 26.6%
第2位 看護師 16.5%
第3位 医師 1 4.7%
第4位 パティシエ・料理人 12.8%
第5位 事務職 12.4%
第6位 キャビンアテンダント 10.1%
女医さんが意外に上位です。優しいと思われているのか,収入が多そうだから,ヒモになれると思われているのか・・・概ね,気の強いヒトが多いですし(第2位の職業も),時間が不規則の上,デートの約束も当てにできません。若いときは年齢に比して収入は確かに多いですが,その割に支出の方も半端じゃありません。わかっとらんなあ。
生まれ変わったら今の相手と結婚したいですか? というアンケートの結果では・・・同じ相手と結婚したいという割合は,
男性 (夫) 50.2%
女性 (妻) 38.4%
(博報堂 新しい大人文化研究所調べ)
既婚者にとって,今考えるとどうでも良かった結婚相手の条件は,
第1位 顔が良い
第2位 背が高い
第3位 家柄が良い
第4位 若く見える
第5位 スタイルが良い ま,外見ですね。やはり,本当は性格や生き方でしょうか? (以上,3点は2013年4月28日日本テレビ系列放映「行列のできる法律相談所」から)
- 生物学的製剤による感染症のリスク
東京医科歯科大・針谷教授による教育講演がありました。患者数の多い関節リウマチを例に説明されました。有害事象としては重症度は異なるものの,頻度では注射局所の症状と同程度だそうな。国内でRA患者に対するTNF阻害剤による重篤な感染症を調査するREAL
studyというのがあるんだそうで,発現率(/100患者・年)は発現率比で2.4 (95%CI: 1.2-4.6)。ただし,投与患者の方が若く,RA活動性が高く,ステロイド投与量が多く,合併症率が高い傾向があるため,Poisspn回帰分析すると2.43
(1.13-5.22)にアップ(p = 0.022)。
TNF阻害剤やトシリツマブを投与されたRAでの全例PMS調査(2万例以上)では,細菌性肺炎が1.3-2.2%で認められています。結核も認められていますが,20-50%で肺外結核が認めら
れることが特異。潜在性結核を検査して陽性ならINHを6-9ヶ月間投与することで結核発症のriskを下げられることがガイドラインで記載されています。
HIVはニューモシスティス肺炎の発症リスクとして有名ですが,TNF阻害剤でも起こりうることが強調されました。半年以内に発症することが多いそうです。特に①
65歳以上,② 糖尿病,③ PSL 5mg/day以上,④ 既往症としての肺病変の存在,がリスク因子。境界が鮮明あるいは不鮮明な磨りガラス状として胸部CTで認められます。
B型肝炎ウイルスの再活性化はRituximabで注目されましたが,生物学的製剤を投与されたRAでも認められることが台湾から報告されていることが紹介されました。
- ピロリ菌感染ルートはEBVと同じ?
胃がんの原因と考えられていますが,5歳までに感染すると言われています。感染ルートとしては幼小児期にピロリ菌のいる河で水遊びをしたり,井戸水を飲んだ経験があったり,親から離乳食を噛み砕いて与えられたりすると危険なんだそうな。(TBS「ゲンキの時間」2013/5/19放映より)最後はMSでも問題になっているEBVと同じ。九大からもMS患者さんのピロリ菌感染との関連が報告されています。関連の最新の報告は,Yoshimura
S, Isobe N, Yonekawa T, Matsushita T, Masaki K, Sato S, Kawano Y, Yamamoto
K, Kira J; South Japan Multiple Sclerosis Genetics Consortium. Genetic
and infectious profiles of Japanese multiple sclerosis patients. PLoS One
2012;7(11):e48592.
- 日本人でのJC virus陽性率
Biogenが開発したELISAによる血中抗JCV抗体陽性率のNatalizumabの治験での公式な発表はありませんが,概ね2/3程度と言われていて,欧米の50%前後に比して日本人での陽性率の高さが今後,市場に登場してくる際に気になるところではあります。
昔はどうだったか,東大の余郷先生のデータしかないかもしれませんが・・・東大の泌尿器科を受診した一般の患者さんでの尿中のJCV DNA検出率は39/120例(29%)で(感度の問題があるかもしれません),60-90歳では12/23例(52%)と高齢者での陽性率の高さが指摘されていました(J
Infect Dis 1990;16:1128-33)。
阪大からの報告では,尿中のDNAをPCRで検出。37例のage-matchedのコントロールでは24.3%が陽性で,45例の腎移植患者では33.3%で陽性だった,と。また,BKウイルスについてはそれぞれ13.5%と33.3%とやはり差があるのですが,ステロイド投与例の患者では55.6%と高率であったことが強調されていました。ただ,これらはabstractしか見ていないのでステロイド投与例でのJCVのデータは不明。(Clin
Exp Nephrol 2005;9:132-7)
- ワルファリンとマンゴー
ワルファリンとグレープフルーツ,納豆の関係は有名ですが・・・マンゴーを連日のように摂食しますと,ワルファリンの作用が増強して出血しやすくなるんだそうな(「総合診療医 ドクターG」2013/5/17放映より)。昔はワーファリンと言っていたのに・・・ 最近はなぜ「ワルファリン」と呼ぶようになったのでしょうか?
- CISとMS患者でのCSF OCBのメタ解析
12253名のMS患者の87.7%,2685例のCIS患者の68.6%でOCBが陽性で,13論文をまとめた結果,OCB陽性のCISがMSへconversionした割合は973/1584例(61.4%)でOCB陰性では173/927例(18.7%)であり,OR
0.88 (95%CI 5.44-17.94, p<0.00001)という報告が出ています。コレラの論文でOCB検出法の違いはありますが有意差はありません。また,OCB陽性患者でMSへconversionするまでの年数とconversionした割合との間にはばらつきは大きいのですが,大雑把にはlinearに相関する傾向が認められています(R2
= 0.1833)。OCB陽性患者の50%がCDMSへ3年後にはconversion (Dobson R, Ramagopalan S, et
al. JNNP, in press)
- 御池三条 こういう地名が京都市内に実在します
市内に住んでいないと,この名称の不思議さは判りにくいと思いますが、実に奇妙なのです。周知のごとく、京都中心部は碁盤の目のようになっていて、交差点を東西南北の通りで表現します。ただ、どちらが先にくるかは一定した方式がなく、言いやすさが優先するようです。たとえば、「四条河原町」「四条烏丸」「丸太町智恵光院」(東西に走る通りが先)「河原町三条」「烏丸御池」「烏丸三条」「堀川五条」(南北を走る通りが先)と言い、「四条河原町上ル」といえば探しやすいわけですネ。御池も三条も東西に走っている通りなので、本来なら「御池三条」なんていう交差点は存在し得ないはずです。ところが、地下鉄東西線の太秦天神川駅から地上に出たビルに入っている右京区図書館前の交差点の名称が、実にこれなのです。御池通りの地下を地下鉄が真っ直ぐに走っていますので、「三条」がおかしいことに気づくはずです。三条通りは有名な三条大橋さえ小さな橋ですが、河原町から烏丸通りまでのこじゃれたお店の多い一画などは本当に狭く、もう少し西へ行くとバスが走る区間もありますが、四条や五条に比べると寂しい道。西へ行くに従って北へ向かって弧を描いてゆき、遥か北を平行して走っていたはずの御池通りと直角に交わってしまうのです。そのかわり、ここから西は三条通りが優先。御池は消滅。三条は牛若丸と弁慶の頃はmain
streetだったのかな?
- カナダ原住民のMS進行は速い
カナダのブリティッシュ・コロンビア州からの報告で,カナダの原住民にはInuit, Métis, First Nationsが含まれるそうです。Inuit
(かつてのエスキモー)以外は知りません。米国のNative American (MSの機構的予後が不良なことは確立)に相当するはずのCanadian
Indianは,なんて呼ぶんでしょう?EDSS 6.0に達するまでより速いことが,26 aboriginalsを対象とした今回の調査から判明(Saeedi
J et al. Mult Scler in press)。
- 制服向上委員会
こういう奇妙な名前のB級アイドルが存在します。Wikipediaによりますと,短縮すると「制向委」になってしまうのでSKiという英語表記も使用しています。最後が小文字なのはスキーと区別するためだそうな。公式HPによりますと現在は7名が所属していて,会長は橋本美香さん
(1980年生まれ)。1992年創設だそうですからグループの名称自体は息が長いのですが、モーニング娘。やAKB48のように出入りが激しく、メンバーは一定していません。しかも、「反原発」を旗印にしていて(なにせロックバンド,頭脳警察と同じ所属事務所)、芸能界で働けるなら、と妥協してデビューしても,やはり「無理」と辞めるメンバーもいるようです。3/11以降,メンバーは若いけれどきちんと考えていて、言わされているのではない、と元気です。意見の多様性を否定する輩が,ネットの匿名性の陰で乱暴な意見を舞き散らしているのは,ネットの健全性を脅かします。頑張れ!B級アイドル!
- オーストラリアでは農場の家畜との接触はMSのリスクを高める
2003-2006年のオーストラリアでの276例の患者を対象とした職業調査では,6年以上,専門職に就いたヒトのリスクが低いことが判明(OR 0.60,
95%CI 0.37-0.96)。MSって社会的に恵まれたヒトに発症しやすいんじゃなかったでしたっけ?さらに不思議なのは,オーストラリアではウマなどの家畜に10年以上接触した女性でのリスクが高いことが判明(OR
2.78. 95%CI 1.22-6.33)。家畜の種類は同定できなかったそうです。オーストラリアだからなあ・・・(Valery PC, et
al. Am J Epidemiol, in press)
- 感度と特異性
抗体を測定する際に、時にこの両者は逆相関することがあります。つまり、感度を高くすると非特異的反応が高くなる、というような。たとえば,抗AQP4抗体の測定法やラボによる感度の違い,とか。ただ,きちんと調べた報告は少ないです。以下の論文はOxfordとMayo
Clinicで同一のサンプルを複数の方法で抗AQP4抗体を測定して比較した結果ですが,複数の方法での比較を2ヶ所で結果を出すことが目的で,両者の感度の違いそのものを比較することが目的ではないので(当然のことながら,少し曖昧にしています),同一のサンプルを同一の方法で測定した際の異なるラボでの感度がどの程度違う可能性があるかは,実際は不明です。
Waters PJ, McKeon A, Leite MI, Rajasekharan S, Lennon VA, Villalobos A,
Palace J, Mandrekar JN, Vincent A, Bar-Or A, Pittock SJ. Serologic diagnosis
of NMO: a multicenter comparison of aquaporin-4-IgG assays. Neurology 2012;78(9):665-71
抗AQP4抗体の特異性は100%といわれ,他の疾患では認められないとされていますが,これはまだまだ今後の課題。他の疾患で見出される可能性はきわめて低いでしょうが・・・
- 治験での年間再発率は次第に低下している
すでにRCTでのプラセボ群での治験終了時の年間再発率(ARR)(疾患活動性を意味しています)が年々低下していることが判っています(Mult Scler
2010;16:1414-21; Mult Scler 2011;17:1211-7)。治験開始時に比して,ARRの改善度が年々上昇していることも指摘されています(Mult
Scler 2012;18:1290-6)。
56のplacebo-controlled RCT治験論文(14792名の治療群,5380例のプラセボ群)を解析した結果が報告されています(Steinvorth
SM, Röver C, et al. Mult Scler , in press)。観察期間は平均12ヶ月(3-60ヶ月)。治験中のプラセボ群のARRは治験報告論文の雑誌掲載年が新しくなるほど,次第に低下していて(過去30年間,0.8
relapses/year),その低下率は4.5%/year (95%CI 3.2-5.7, p < 0.001)。これは治験に入る患者さんたちのARRが低下していることが判明し,過去30年間の治験前のARRが2.0%/yearの割で低下していることが判明(95%CI
1.3-2.6, p < 0.001)。日本のFTY720治験(Saida, 2012)を含む7つの論文治験前の1年間と2年間とが比較できるデータがあるのですが,2年間の2年目のARRの方が49%低下していました(95%CI
44-54%, p < 0.001)。この原因として,著者らは治験に入る患者さんたちの年齢や罹病期間の長さが上昇していることとの関連を指摘しています。治験前のEDSSスコアやsteroid
free期間との関連はなし。
TremletらはMS罹病期間を5年ずつに分けると,17%ずつARRが低下していることを報告しています(JNNP 2008;79:1368-74)。上記のメタ解析では3.6年ずつに罹病期間を分けると,13%ずつARRは低下。
- Anti-CD6 monoclonal abによるSjögren症候群治療へ
CD6はmemory T cellsの大半やB細胞の一部に発現。adhesionやcellular migration (BBB関係としては,Nat
Immunol 2008;9:137-45)に関係するextracellular scavenger receptor cysteine-rich
domain (SRCR-D)-3 of CD6と活性化に関与するSRCR-D1とがあり,今回の報告はSRCR-D1に対するヒト化IgG1抗体,Itolizumab。(Le
Dantec C, et al. Immunol Res, in press)
- Nasal delivery
miceのEAEに対する治療が報告されています(Duchi S, et al. J Neuroimmunol 2013, in press)。点鼻は投与ルートとしてはnon-invasiveであることとCNSへ到達しやすいために注目されています。免疫担当細胞の分布からワクチン接種のルートとしても将来は希望が持てるのかもしれません。分子量としてはさすがに150
kDaの全長IgGは脳内には到達できないようですが、45 kDaのOvalbuminは脳内に入ることが証明されています。
臨床との関連では、arginine-vasopressin、angiotensin、insulin、oxytocinのnasal administrationの試みあるいは開発の報告があります。
最近のreviewは・・・
Landis MS, Boyden T, Pegg S. Nasal-to-CNS drug delivery: where are we now
and where are we heading? An industrial perspective. Ther Deliv 2012;3:195-208
Lochhead JJ, Thorne RG. Intranasal delivery of biologics to the central
nervous system.
Adv Drug Deliv Rev 2012;64:614-28
Malerba F, Paoletti F, Capsoni S, Cattaneo A. Intranasal delivery of therapeutic
proteins for neurological diseases. Expert Opin Drug Deliv 2011;8:1277-96
Rajadhyaksha M, Boyden T, Liras J, El-Kattan A, Brodfuehrer J. Current
advances in delivery of biotherapeutics across the blood-brain barrier.
Curr Drug Discov Technol 2011;8:87-101