2013年4月号 NO.2

  1. SamiはLapps MSの疫学の論文
  2. 北海道でのMS有病率 
  3. ヌメロン
  4. NMO再発予防に抗C5モノクローナル・ハイブリッド抗体
  5. 「きみは心にジーンズをはいて」
  6. 「64 ロクヨン」
  7. Teriflunomide 新しいMSへの内服薬としてFDAが認可しました。
  8. ナポリタンは和製イタリアン
  9. NMOへの治療の比較
  10. 男雛と女雛の並べ方
  11. あくび (Yawning)
  12. 来年のために、ノロウイルスについて
  13. 結婚している方が幸せ、という女性は少なく・・・ 
  14. 重症熱性血小板減少症候群 (Severe fever with thrombocytopenia syndrome: SFTS)
  15. 恋愛の神経学的機序
  16. 小・中・高校生の男女に聞いたお母さんになって欲しい女性有名人ランキング
  17. 「米中冷戦と日本」
  18. 痴呆の予防に運動療法
  19. アルツハイマー病発症予防
  20. 皮膚表面からは見えない打撲傷の証明
  21. 適量なワインはAD発症を予防するがRCTは「倫理的」に困難?
  1. SamiはLapps MSの疫学の論文を読んでいますと,少数民族の政治的・民族学的な影響が影を落とします.MSは北欧の白人での病像が典型例で,北欧の疫学データは重要です.ただ,最近は移民が結構多くなってはいるようですが.  

    さて,サーミあるいはサーメ人は,かつて「ラップ人」と呼ばれた人々で,北部スカンジナビアに居住する少数民族.ラップランドは辺境という意味で,蔑称だったんですネ.自分たちはサーミあるいはサーメ人と呼んでいます.MSの疫学論文でもSamiという言葉が用いられています.  

    カナダの「エスキモー」が生肉を食う奴らという意味のために,イヌイットと呼ぶようになったことと同じで,MS Researchの世界ではジプシーもRomaと言います.民族が自称として用いていない限り,使うべきではないでしょう.ニガーとかジャップとかも同じです.
  2. 北海道でのMS有病率 
    個人的な印象としてはSPMSは近畿では5%程度と思いますが,北海道では20%だそうです.RRMSの半数がSPMSへ移行する欧米(最近は欧米のMS患者も日本と同じように軽症化しているようなので,SPMSへの移行率も変化しているかもしれません)ほどではないにしても,これは凄い数字です.帯広のDr Houzenからの報告がでています(J Neurol Sci 2012;323:117-22).Poserの診断基準で57例診断され,有病率は人口10万人当たり16.2.この数字は2004年の全国調査のNMOを含む結果,約8名の倍以上です.最近,F/M比の上昇が欧米で指摘されていて,有病率よりも変化を見る上ではより正確と考えられているようです.北海道のデータによれば,2001年,2006年と今回の2011年ではF/M比はそれぞれ2.63,2.75,3.38.欧米白人のMS患者の病態に近い対象で治験をするなら,北海道でやんなきゃ!
  3. ヌメロン なんていうゲームをご存じでありましょうか?アプリもあるそうです。フジテレビで月曜日の深夜に放映されています。二人で対戦する3桁の数字当てゲーム。推理する過程が面白いですが、スタジオでトークしながら考える芸能人たちは大変そうです。結構ドジを踏んでいるようです。
  4. NMO再発予防に抗C5モノクローナル・ハイブリッド抗体 
    以前から話題にはなっていた治療です。Mayo ClinicのDr Pittockらは、ステロイドや免疫抑制剤で治療困難で、6ヶ月で2回以上、あるいは1年間で3回以上再発する患者14例に対して、open studyを実施。その結果が2012年のANAで初めて発表され、Neurology Today (2012;12(21):1−27)でインタビューも含めて紹介されました。PittockはNMOの再発の重症度とCSF中のC5値が相関する、という東北大学のデータ(Kuroda H, et al. J Neuroimmunol, in press)もこの治療の根拠として挙げていました。しかし、CNS内には補体は本来存在せず。Spinal tapで得られたCSFで補体が測定できることはBBB破壊あるいは透過性亢進を意味しているに過ぎず、CSF内での炎症の直接的な指標とは言えません。分子量が違いますので、BBB破壊の指標としての鋭敏さが異なる可能性はありますが、CSFでのC5a測定は基本的にCSFでのアルブミンと意義は同一でしかありません。MSでの脳MRIのように、NMOでのsubclinicalな炎症病変の存在の指標にはなるかもしれませんし、脳MRIより鋭敏かもしれませんが、毎月spinal tapしますか?大体、脳MRIでのasymptomatic enhancing lesionsって、日本人MS患者では少ないのに、NMOはもっと稀です。治験を行う上では、指標に意味はないでしょう。結局、再発回数で判断するしかありませんから、定義が重要。Painだけでいいのか?しびれ感の増悪だけではまずいでしょう。EDSSの変化が必要でしょうねえ。  

    米国では8000-15000名のNMO患者さんが想定されていて、MSと鑑別を要する疾患として注目されています。

    C5 inhibitorというモノクローナル抗体はEculizumabといいますが、補体の活性部位に結合して補体活性をブロックするだけで、補体自体が消失するわけではありません。この薬剤は国内ではPNHですでに投与されています。国内で治験を行うとすると、適応拡大、ということとなりますので、全くの新薬よりはハードルが低いのではないでしょうか?PMDAの要求水準っていかほどのものか?  

    補体が全く働かなくても意外に問題はないらしいのですが、日本とは異なり、欧米では乳児の髄膜炎菌による髄膜炎が昔から問題で(欧米では日本と違って、環境にそもそも菌が一杯いるらしいのですネ)、補体がないとリスクが高くなるんだそうで、投与前にワクチンが投与されています(これで米国の乳児死亡率は下がったはずです)。  

    600 mg/weekを4週間、次いで900 mg、48週間に隔週で900 mgを投与するというスケジュール。初回投与以外は自宅で投与されます(具体的にどうやって点滴しているのかは不明)。  

    投与前に2週間の観察期間を設けていて、この間に3例が各1回ずつ重篤な再発を起こしています。投与中はわずか2回しか再発が認められていません。21例 (86%)では再発フリー。投与中止90日以内に2例が3回の再発を呈しました。中止12ヶ月後までに5例で8回の再発がありました。  

    治療前の年間再発率の中間値が3 (14例全員で40回)から治療12ヶ月後にはゼロに激減(p<0.001)。投与12ヶ月間でADLも改善したそうで、Hauser Ambulation Indexの改善(p=0.03)、視力の改善(p=0.02)があり、EDSSも4.3から3.5へ低下(これは凄いことですけどね)。  

    有害事象はやはり髄膜炎菌がらみで、ワクチンを投与していたにも関わらず、初回投与後に敗血症をていしたため、40日間中止した後に再開しています。頭痛や吐き気、めまい、外そう、下痢、腹痛、発疹が認められています。CSF中のC5は劇的に減少したそうですが、再発していなければ当たり前しょう。抗AQO4抗体を様々な方法で測定しているけれども、治療による変化は認められていないそうです(当たり前です)。ところが、Dr Pittickは次のような発言をしたそうで、ちょっと意味不明。”There was a siginificant drop in antibodies when patients atopped eculizumab.”  

    大層高価な薬剤なので、疾患活動性の高い時期にだけ投与するとか、モノクローナル抗体治療後には通常の治療に戻るといった、intermittent therapyを考えているようです。  
  5. 「きみは心にジーンズをはいて」 (喜多嶋 隆,光文社文庫) 
    2012年6月に文庫オリジナルとして出版されました.すでに固定ファンを有するベテランの作家ですが,最近,完成度が高くなっています.主人公は相変わらず,頑張って生きている女性たちで,特にアラサー女性たちへの応援歌になっているように思われます.葉山を舞台に広告制作のディレクター・中川 凜を主人公にしたシリーズ第2作.「心にブラダのスーツを着るのではなく,洗いざらしのジーンズをはいた」,負けず嫌いだけれど,見栄を張ろうとはしない,葉山のボートを住居にしている女の子の広告業界で闘う物語.  
  6. 「64 ロクヨン」(横山秀夫、文藝春秋) 
    究極の警察小説と帯に書いているように、刑事部と警務部の権力闘争を丁寧に描いた小説。以前は県警と市警は別組織で、前者が米国のFBIに相当する国家警察だとしたら、後者は自治体警察という位置づけでした。現在は県警と所轄という表現で、たとえば湾岸署の織田裕二演じる青島俊作巡査部長(所轄刑事)が活躍する「踊る大捜査線」シリーズなどでもお馴染みの対立構造ですが、国家警察と自治体警察の対立の後遺症ともいえる状況であることを初めて知りました。県警の刑事部長は自治体警察の名残のトップであり、自治体警察の誇りでもありますが、県警本部長と警務部長という、県警の上位2名(キャリア)の人事を警察庁に押さえられているほか、首都圏の一部の地方警察の刑事部長ポストもすでにとられているようです。こんなこともこれで判ります。  
  7. Teriflunomide 新しいMSへの内服薬としてFDAが認可しました。
    本剤はDNA合成に関与するピリミジン合成のミトコンドリア酵素である、dihydroorotate dehydrogenaseを可逆的に阻害します。商品名はAubagio。7/14 mgの2種類。効果はほどほどですが有害事象が少ないので、新しい標準薬になる可能性があります。Phase III studyとして、RRMS患者を対象としたTEMSO, TENERE TOWER studyやCIS・early MSを対象としたTOPIC studyがあって、IFNβへのadjunct therapy (add-onのことでしょうか)のTERACLES studyとがあります。これらのうち、TEMSOが論文になっています(N Engl J Med 2011;365:1293-303)。  
  8. ナポリタンは和製イタリアン 
    最近、ナポリタンが復権しつつあるんだそうです(若い人にとっては不思議なヘンな食べ物でしょう)。新しいファンが拡大したというよりは、昭和世代が懐かしんでいるようで、今やナポリタン専門店まで登場しているそうでありますヨ。  

    実はナポリタンというスパゲッティ(パスタではありません!)はイタリアにはないんだそうで、日本が発祥の地。横浜のホテルグランドで68年前に入江総料理長が考案したもの。中世のナポリでは庶民的な食べ物としてスパゲッティが屋台で売られていたことから、スパゲッティ・ナポリタンと命名。オリジナルはケチャップは一滴も使用してはいなかったんだそうですが、廃れてしまって、今やケッチャップで味付けするのが定番。茹でた後で、ケチャップで炒めるのでベチャッとしているところが特徴。この辺が今どきの若者に受けるかどうか微妙なところ。筆者にとっては、丸谷才一さんが通っていらっしゃった、旧制新潟高等学校跡地(私たちの頃は新潟大学教養部、少し前は理学部、現在は養護学校)脇にあった、ちあきなおみさんの「四つのお願い」なんていう歌謡曲がジュークボックス(知ってますか?)から流れていた、マンションという喫茶店のナポリタン。ついでに、筆者が新潟大学の研修医の頃のスパゲッティの定番は、営所通りのキッチンVのVスパでした。粉チーズがかかってはいましたが、塩っぱかった!  

    2009年に40名が集まって、日本ナポリタン学会が設立され、世界へこの料理を発信していこう、としています。すでにナポリ市長にも食べてもらったんだそうな。(「朝ズバッ!」2013/2/1より)  
  9. NMOへの治療の比較 
    retrospective studyと2012年AANで報告されたprospective open eculizumab (anti-C5 humanized monoclonal antibody) study (Mayo Clinic)の比較.治療後のrelapse-freeの患者の割合は・・・
    治療薬 投与期間 % 文献
    rituximab 12 months 75% 1)
    rituximab 19 months 56% 2)
    azathioprine 24 months 37% 3)
    mycophenolate mofetil 28 months 60% 4)
    eculizumab 12 months 86%
    1). Neurology 2005;64:1270-2
    2). Arch Neurol 2008;65:1443-8
    3). Neurology 2011;77:659-66
    4). Arch Neurol 2009;66:1128-33  
  10. 男雛と女雛の並べ方 
    雛祭りの際に、通常は結婚式や披露宴の時の並び方と同じように男雛を向かって左側に並べることが現代では一般的です。ところが、江戸時代までは逆で、男雛を向かって右側に置いていました。これは以前は左大臣が右大臣より格上だったように、左側が高位とされていたため、向かって右側に男雛を置いていたのですね。大正天皇の即位時にヨーロッパにならって並び、ご真影も同じ並び方になったため、雛祭りの際の並べ方も皇室に倣った、とされています(以上は京都・高島屋でひな人形を展示していた業者の説明)。高島屋では一部のひな人形の並べ方を古式に倣って、男雛を向かって右側に並べる展示をしていました。京都ではまだ一部のセレブで雛人形を古式に倣って並べる風習が残っているため、とおっしゃっていました。あるHPでは、ヨーロッパで男性が女性の右側に立つのは右手で剣を抜いて女性を守るため、と説明していましたが、確かにそうなのかもしれませんけれど、右利きなら剣を抜く際には女性の左側に立っている方が抜きやすいですし(左側に女性がいたら、剣を抜く際に邪魔です)、抜いた後も剣を女性の前に出しやすいので(左側の女性がいたら、左側からの攻撃から女性を守りにくいですもんネ)、女性の左側に立っている方が女性を守りやすいような気がします。  

    高島屋で説明して下さった方のお話では、五人囃子まで飾ることは現代ではきわめて稀で、多くの場合は三人官女までで、商品としての売れ筋は男雛と女雛だけなんだそうな。展示する上でも片付けるにも場所がないためだそうです。昔からの風習も並べ方と同じように少しずつ変わりつつあり、そのうち三人官女の存在も忘れられてしまうのかもしれません。
  11. あくび (Yawning)
    幼児や動物では必ず強い伸びを伴うことが知られているので,「欠伸」という文字の由来が気になります.また,欠伸の際に麻痺した腕が動くのは病気の時に幼児期の現象が再現するのか,という指摘も(神経内科 1989;30:638).  病的な欠伸は貧血,低血糖,内分泌疾患,脳炎,脳腫瘍,てんかん,頭部外傷が知られています(神経内科 1987;27:95-6; 臨床神経 1985;25:1007).薬理学的にはdopaminergicな場合(臨床神経 1985;25:1007; 神経内科 1987;27:95-6; Pharmacol Biochem Behav 1977;7:303)もcholinergicな病態(神経内科 1986;24:630-1; Ann NY Acad Sci 1963;104:330)も報告されています.

    ACTH分泌過多と関連してAdrenoleukodystrophyの一徴候(日本医事新報 1980;2929:69)とも言われています.「あくびの伝染と共感の脳構造」という記事もあります(有田秀穂 Clin Neurosci 2005;23:1344-5).  
  12. 来年のために、ノロウイルスについて 
    世の中、まだノロとインフルエンザが蔓延していますが、本誌が発行される頃には収束しているかもしれませんので、来年のために、ということになるかもしれません。  

    急性胃腸炎症状を呈するウイルス性食中毒は冬に多く、ノロ、サポ、ロタ、アストロ、アデノウイルスが知られていて、これらの中ではノロウイルスが中心(99%を占めています)。ノロウイルスによる食中毒件数はGBSでお馴染みのカンピロバクターと双璧。患者数では最多で、全食中毒患者の半数を占めているそうな。  

    ノロウイルス抗体は数ヶ月持続するものの、中和抗体は型特異性が強く、他の型への反応が弱いことが公衆衛生では問題で、繰り返して感染する危険性があります。もちろん、細胞性免疫も感染防御には関与しています。型が多い上、交差反応が少ないことからワクチン作成が困難と言われています。  

    潜伏期は12時間から2日で、症状は1-2日持続。15%では3日以上に長引くことも。吐気、嘔吐、下痢が60-80%に認められ、腹痛が50%に、頭痛や発熱、寒気が20-30%に。筋痛や咽頭痛が出現することもあり、30-60%は不顕性感染。東京都内で発生した67食中毒のうち、10事例での非発症調理従事者28名を対象とした調査では、糞便からPCRでウイルスが検出されなくなるまでの期間は平均21.9日で、4週間以上持続していたのが5名いたそうです。  

    病院内での集団感染例で、不顕性が2/3だったという報告があり、食中毒(汚染された牡蛎などの生殖または加熱不充分、感染した調理従事者から)の集団発生では30%が不顕性だったという報告があるそうです。15%で末梢血中にわずかですがウイルス遺伝子が見いだされており、ウイルス血症を起こしていると考えられています。  

    遺伝子工学的手法で作成したウイルス様粒子によって作製した抗体を用いて、イムノクロマト法による迅速診断法が開発されています(PCRに比して、感度は81%、特異度は100%)。RT-PCRも可能。  

    予後は一般に良好で、発症した患者に対しては全身管理、感染拡大を防ぐ対策が重要、ということになります。  

    生の10-100個/gr(18-1000個のウイルスが体内に入った程度)のウイルス*でも発症しうるそうで、おむつの交換時やトイレの汚染、食物や食品の汚染などで感染。吐瀉物が乾燥するとエアロゾールになって空気感染しうるので要注意。便には3-4週間はウイルスが排出する可能性があり、手を介したヒトーヒト感染が起こりえます。困ったことに、このウイルスはエンベロープを持たないためポリオウイルスやエンテロウイルスと同様に、石鹸やアルコール(厳密にはアルコールで本当に死なないかどうかは不確かのようですが)では死にませんから、流水で物理的に洗い流すつもり、のほうがよいようです。ちなみに、60°Cで10分処理やpH3で3時間あるいはpH12で30分暴露、4°Cで1-2週間、凍結でも感染性は保持されます。消毒薬を使用するなら、塩素系が推奨されています。具体的な濃度は便や嘔吐物の中に有機物質が多いため推奨されてはいませんが、1000ppmが一応の目安とされているようです。  

    厚労省のHPでのQ & Aではウイルス陽性になった調理従事者は最低1週間、長いときでは1ヶ月以上ウイルスを排泄すると記載されています。CDCが2011年に作製したガイドラインでは食品取扱者、保育・介護・医療従事者は症状回復後48-72時間の勤務制限を提示。
    * 糞便中では104-1010コピー/gr、嘔吐物中では104-107コピー/mlのウイルス量が含まれているそうですから、本当に微量で感染が成立してしまいます。
    * (臨床とウイルス 2011;39:155-160; 日本食品微生物学会誌 2012;29:108-113; 小児内科 2012;44:1150-55より)  
  13. 結婚している方が幸せ、という女性は少なく・・・ 
    NHK放送文化研究所が2012年11-12月に16歳以上(この年齢設定に違和感がありますが)の男女1800名を対象に回収法で調査し、1212名から回答 (67%)を得ました。  

    結婚している人の方がしていない人より幸せか?という設問に対して、 「そう思う」と「どちらかと言えばそう思う」が28%であったのに対して、「そう思わない」と「どちらかと言えば思わない」が29%を占めました。しかもNHKのニュース(2013/1/31)では具体的な数字を示しませんでしたが、前者のグループでは「そう思う」という方が圧倒的に少ないのに対して、後者のグループでは「そう思わない」の方が圧倒的に多いことから、結婚していない方が幸せだと感じている人が最も多いことが円グラフからは判ります。前者の結婚を肯定的に評価しているグループの男女比を見ると、男性が35%、女性が23%であり、この女性の内訳を見ると独身が26%で既婚者が21%、と既婚者にとっては男女ともにがっかりする結果。結婚に希望を見いだせない女性が多いのでしょうなあ。今の若い男性が結婚に何を求めているのかも未婚率が高いことの原因のような気がします。おそらく、男女で意識のすれ違いがあるように思われるからです。ますます高齢化社会が進んでしまいます。  
  14. 重症熱性血小板減少症候群 (Severe fever with thrombocytopenia syndrome: SFTS)
    2009年、中国で初めて発生したダニ媒介の新型ウイルス感染症が2012年秋、国内で初めての患者が確認されたと、厚労省が2013年1月30日に発表しました。有効な治療法はありません。この患者さんは山口県の成人女性で発熱、嘔吐、血尿、血小板数減少をきたし、発症から1週間後に死亡しました。この方は海外渡航歴はなく、国内で感染したと考えられます。また、血中からSFTS virusが見いだされましたが、遺伝子が中国で分離されたウイルス (novel bunyavirus)とは異なるので、以前から国内で定住していたウイルスと考えられています。発見した医師たちに脱帽。  

    国内ではマダニが媒介すると考えられていますが、マダニは森林や草地などで全国的に生息しています。体長が3-4 mmと肉眼で見える大きさで、山間部だけでなく都市部でも発見されていて、イヌの散歩後に室内に持ち込まれる危険性が指摘されています。ヒトや動物の血液を吸うそうです。中国でも特定の地域(海岸部の7省のみで、少なくとも170例)でしか発見されてはいないようなので、山口県の女性がどこで感染したのかが不明ですが、地元なら中国地方は危険性が高いのかもしれません。厚労省は草むらなどに入る場合は肌の露出を少なくするように呼びかけています。冬は比較的安全でしょうが、春の山菜採りの季節は危険性が高くなるかもしれません。咬まれた場合、無理にはがそうとすると口が残ってしまうので、病院の皮膚科でとってもらうように厚労省は勧告しています(どうやってとるんだろ?蛭じゃないんだから、煙草の火をつけるわけにも・・・ちっちゃいもんネ)。  

    医療従事者にとっても他人事ではないのは、感染ルートとしては、ダニに咬まれる他、患者の血液や体液との接触で感染した、という報告例があるそうです。(以上はNHK、日本テレビ、フジテレビ、TBSのニュースで放映された情報をまとめました。ソースはおそらく厚労省なのでしょう。)  

    臨床的には白血球数減少や肝機能障害を呈するそうな (Emerg Infect Dis J 2012;18:963-5)。Cytokine stormを呈するそうで、特に、死亡例ではIL-1β、IL-8、MIP-1α、MIP-1βの上昇が著明、と (J Infect Dis 2012;206:1085-94)。最終的には重症例では多臓器不全を呈するのでしょうか。SFTSの致死率は12%。Promedの2012年8月3日付けのメールによりますと、中国国内でoutbreakの報告はないそうです。  まとめますと、潜伏期間は6日から2週間で、致死率は12%、38℃以上の発熱、嘔吐、下痢、食欲低下が出現。重症例では頭痛、咳嗽、筋痛、痙攣、下血が出現。有効なワクチンはなく、治療法は対症療法のみ。予防法などのQ & Aは厚労省のHPに、ウイルスに関する情報は国立感染研のHPに記載されているそうです(朝日新聞 2013/2/20)。

    Emerg Infect Dis J という知らない雑誌でしたが、IFが6.169もある雑誌(2012;18:963-5)によれば、Yiyuan County, located in eastern China (117°48′– 118°31′E, 35°55′–36°23′N, Shandong Province)では健康人の2/237 (0.8%)やヤギ 111/134 (83%)でSFTS virusに対する抗体が血中に見いだされたそうです。  

    N Engl J Med 2011; 364: 1523-32.に中国から報告されています。  

    その後、愛媛県と宮崎県で成人男性が2012年秋にSFTSで死亡していることが判明しました(2013/2/13厚労省発表)。国立感染症研究所が保存血清で診断したもので、これらの患者も海外渡航歴はありません。他にSFTSが疑われる死亡・重篤例が5例あるそうです。2月19日には広島県でも成人男性の死亡例が確認され、4人目の死者となり、他に9例の疑い例の存在が報道されました(朝日新聞 2013/2/20)。  
  15. 恋愛の神経学的機序
     ニューヨーク・ラトガーズ大学人類学のDr.ヘレン・フィッシャー女史 (専門は恋愛の進化。脳の構造とはたらきから恋愛の正体を探っているそうです)による解説。激しい恋に落ちた時、ドーパミンが大量に分泌されます。ドーパミンにより「恋した相手をパートナーにしたい (判りやすくいうと、早く押し倒したい!)」という強い欲望を引き起こすんだそうですネ。(バイアグラとL-dopaを飲んだら、どないなるんや?)  

    しかし、ドーパミンの過剰分泌は体に負担なので、いずれ分泌は終息し、恋も終息します。かわって活動を始めるのが前帯状回皮質 (感情や記憶の整理や価値判断を行う部位)。本当にこのヒトで良かったのかと脳は冷静にジャッジを始めるのだ、とか。この時期が恋の賞味期限。番組が実施した1000人のアンケートでは700日以内に終わるそうでありますヨ(恋人と別れるまでの日数のピークは1-2年で、過半数が2年以内に別れます)。  

    ドイツ・ボン大学神経科学のルネ・ハーレマン博士は、浮気を防止する脳内ホルモンを研究中で、オキシトシンに注目しているそうであります。これは男女の結びつきを強める絆ホルモン。男性でもオキシトシンは分泌され、キスや性的刺激で過剰に分泌され、パートナーとの絆が深まります。パートナーのいる、20−30代の男性にオキシトシンを点鼻しますと、初対面の女性と会う際の距離がプラセボ点鼻群より離れることが判明 (71 vs 57cm)。J Neurosci 2010に発表されました。つまり、パートナーへの愛情をオキシトシンが高めた結果だ、というのです。  

    前出のDr. .ヘレン・フィッシャーは「失恋の痛さは大切」だそうでありますヨ。彼女は失恋が脳にどのような影響を与えるかをNew York Univ. Center for Brain ImagingのfMRIで解析。失恋した男性を被験者に、恋人の写真を見ることと4桁の数字から7を引く計算を反復する作業を繰り返します。すると、失恋により前部島皮質が活性化し、実際に肉体の痛みを感じさせていることが判明。失恋は愛するヒトだけでなく、遺伝子を残すチャンスも失うことだから、人類にとって痛みを感じさせるほどのことなのだそうな。失恋で激しく体が痛むのは、悲劇を繰り返さないよう学んで欲しいから、と。また、眼窩前頭皮質も活動が活発化していて、これはnegativeな経験をpositiveに再評価する部分が元気に動いていることを意味している、と。失恋から何かを学んで成長しようとしている現象。(フジテレビ「恋愛の科学」第3夜, 2013/2/27放映)  
  16. 小・中・高校生の男女に聞いたお母さんになって欲しい女性有名人ランキング  なんていうのがあるんだそうな。多分に営業上のイメージが先行してます。

    第1位 松嶋菜々子
    第2位 天海祐希 (独身ですが、この人はおすすめ、という感じはしますね)
    第3位 北川景子
    第4位 ベッキー (なぜ?)
    第5位 黒木 瞳 (学校では怖いぜい)
    第6位 前田敦子 (6位と7位は母親のイメージが湧きませぬ)
    第7位 堀北真希
    第8位 真矢みき (家庭内で怖い、配偶者が一番の犠牲者になる?)
    第9位 澤 穂希
    第10位 マツコ・デラックス  (ミヤネ調べ 「月曜から夜ふかし」2013/2/4 日本TV系列放映より)  
    恐ろしいことに、これらの有名人は一発で漢字変換できました。ATOKってすごい!マツコがどうしてここに入るのかが理解できません。生物学的に無理ですし、そもそも性転換手術すらしてないでしょうに。手術しても妊娠はできませんが。ちなみに、性転換手術後に卵巣を移植した男っているんでしょうか?ホルモンを注射すればよいことで、臓器移植のリスクを冒してまですることではありませんが・・・  
  17. 「米中冷戦と日本」 
    共同通信社にいらっしゃった春名幹男さんの新刊(PHP)。旧聞に属することもありますが、インテリジェンス関係の情報をまとめた本で、新聞には書かれない世の中の裏側を覗ける本でしょうか。その中から・・・  東シナ海では尖閣諸島だけでなく日中境界線が曖昧にされていて(というか、一方的に恣意的に自国領を拡大する国が存在していて)、中国はすでに20数回も試掘作業を繰り返しています。沖縄の事業家が自力で調査して尖閣諸島周辺海域の鉱業権を申請し、1969年に受理されていますが、それ以来、日本政府は試掘を許可していません。一方で、東シナ海から上海までの天然ガス・パイプライン敷設事業に、日本の政府系銀行が中国に融資を行っています。ええのか!これで。  

    かつて国際石油メジャーはセブン・シスターズと呼ばれ、大きな政治力さえ持っていました。今や石油埋蔵量の80%を握っているのはサウジアラビア、ロシア、中国、イラン、ブラジル、マレーシア、ベネズエラの7ヶ国の国営石油会社(新しいメジャーですが、かつてのグループと違って、バラバラ)。かつてのメジャーは再編されてしまいました。
    1). エクソン・モービルに統合 (エクソン、モービル)
    2). ロイヤル・ダッチ・シェル
    3). ブリティッシュ・ペトロリアム
    4). シェブロン (スタンダード・オイル・・オブ・カリフォルニア、ガルフオイル、テキサコ)

    沖縄・普天間基地の辺野古への移転が宙に浮いていますが、純軍事的には普天間は不要という意見が米政府内では強く、すでにグアムへの移転費用について予算が計上されていますね。朝鮮半島有事の際に必要なのは、嘉手納基地の空軍戦力だといわれています。ただ、海兵隊は普天間から完全には撤退しないのだ、と。撤退することで北朝鮮や中国に誤ったシグナルを与えてしまう危険があることと、海兵隊の政治力が強いんだそうな。ま、米海兵隊の兵力を1000人程度に縮小して、佐賀にいる日本版海兵隊である西普通科連隊を師団規模に格上げして沖縄に派遣した方が沖縄の女性たちには優しいでしょう。  

    NHKで放映されていたERの第12シーズンの第15回で、カーターがボランティアでスーダンのダルフールで活動する様子が描かれました。その後、以前、ERの小児科医として出演していたジョージ・クルーニーらがダルフール問題を訴えました。詳しいことを筆者は知りませんでしたが、春名幹男さんによりますとアラブ系の中央政府に反発する黒人武装組織が結成されたダルフール地方では住民700万人のうち200万人が国内難民化し、英議会調査では推定30万人が死亡。武器援助などで政府軍を支援していたのは中国。2011年7月にスーダンから長年米国から支援を受けてきた南スーダンが分離独立を果たし、翌年にはスーダンから中国への石油輸出が全面的に停止。資源豊富な南スーダン油田地帯からの1600キロに及ぶパイプラインを建設したのは中国。労働者の中には囚人もいたそうな。日産50万バレルの原油の大半を中国が輸入していました。  
  18. 痴呆の予防に運動療法 
    「認知症」という言葉が気に入りません.「痴呆」が差別用語としての歴史があるためかもしれませんが,「認知症」だって,「惚け」のイメージが固定化すれば同じでしょう.

    それはさておいて・・・国立長寿医療センターは地元大府市の65歳以上の軽度認識脳障害患者を対象にランダム化試験を実施.介入群は週2回,1回につき90分の運動教室に6ヶ月間通い,同じ時間と頻度で介護や疾病予防に関する健康講座を聴くコントロール群とを比較.わずか6ヶ月間ですが,さすがにMMSEは変化しませんが,WFTやWMSなどで有意に改善(医学のあゆみ 2011;239:392-9).  

    結構,きつい条件だとは思いますが,凄い結果です.50歳を過ぎたら運動しよう,という医師たちが増えているそうな.  
  19. アルツハイマー病発症予防 
    古くから痩せとADとの関連(Neurology 1984 34:939-449が指摘されているそうで,体重減少は痴呆発症の2-4年前から始まり,進行とともに早まるそうな(Expert Rev neurother 2008;8:691-3).SwedenのKungsholmen研究によりますと75歳以上ではBMIが25以上のほうがAD発症リスクが低いことが判明しています(J Am Geriatr Soc 2008;56:111-6).  

    野菜や果物がADを予防することは確立しています(JAMA 2002;287:3223-37, 3230-7).ビタミンCやEは食物から摂取しなければ効果がなく,サプリメントでは効果がないことも示されています.野菜ジュースでも効果があるそうな.  

    魚がADを予防するという報告が多数ありますが,15の前方視研究の解析では充分な証拠はないそうです.EPAそのものを摂取したらどうなのでしょうか?虚血性脳血管障害のように,グリーンランドではAD患者が少ないのでしょうか?農村と漁村とでAD有病率に差があるのでしょうか?(日本予防医学会雑誌 2011;6:117-23)  
  20. 皮膚表面からは見えない打撲傷の証明 
    TVも馬鹿にできません。体の痣は皮膚表面がきれいになっても皮下組織のダメージは数ヶ月も残るんだそうですネ。皮膚を見て打撲傷の痕がなくても、紫外線写真を撮りますと痣の痕がきれいに写ります。テレビ朝日で放映された、京都府警科学捜査研究所を舞台にした「科捜研の女」(2013/3/7)で夫のDVを証明する方法として紹介されていました。筆者はこの番組で初めて京都市水族館の内部を知りました。内陸にあるので、海水は人工を使用しています。なんと、イルカもいます!  

    ネットで紫外線写真を調べてみましたら、警察で虐待の証明や文章鑑定で利用されているほか、絵画の修復や下絵の鑑定にも利用されていました。秋田大学の法医学教授だと思いますが、美作宗太郎教授は紫外線撮影により陳旧性打撲傷診断と受傷時間推定の研究をしていらっしゃいます(秋田医学 2010;37:67-70)。  

    PS: この番組で水族館のイルカの調教師として杉本有美(ゆみ)さんという眼の大きな女優さんが登場。NHK大河ドラマの「江〜姫たちの戦国〜」にも出ていたのですね。綾瀬はるかさんに続けるか?グラドル出身の女優さん。  
  21. 適量なワインはAD発症を予防するがRCTは「倫理的」に困難? 痴呆のない2950人を8年間追跡し,ワインを250-500 ml引用する群はnon-drinker群や500 ml以上引用する群に比して,痴呆あるいはADになりにくいことが判っています(J Nutr Health Aging 2004;8:150-4).ところが,ワインの効用のエビデンスを証明するためのRCTは倫理的に困難だというのです(日本予防医学会雑誌 2011;6:117-23).ほんまでっか? プラセボが技術的に無理だからでしょ?