2013年1月号 NO.1

  1. EBウイルスがMSに関与している根拠
  2. キス病の原因であるEBVは性行為関連感染症らしい
  3. 緯度とMSの関連
  4. 今や泡洗顔が常識?
  5. MS病変を引き起こす細胞を同定?
  6. 11th ISNI (Boston)から
  7. 簡単皮むき手袋
  8. NMO末梢血からAQP4反応性T細胞を誘導したらTh17
  9. 国内外国人居住地
  10. NMO再発予防に抗C5モノクローナル・ハイブリッド抗体
  11. 「翔る合戦屋」
  12. カナダへの移民研究
  13. 関東関西の違い
  14. MSの国際共同治験での問題点
  15. 中国の米国化
  16. 「私はなぜ『中国』を捨てたか」
  17. 「魚釣島奪還作戦」
  18. 「尖閣を獲りに来る中国海軍の実力 自衛隊はいかに立ち向かうか」
  19. 「チャイナ・インベージョン 中国日本侵蝕」
  20. 「バトルシップ」
  21. ビタミンD不足がMSの原因の一部という根拠
  22. 日光照射の凄さ!
  23. LGBTってなに?
  24. HLAと喫煙とEBNA1抗体間のMS risk
  1. EBウイルスがMSに関与している根拠
    MSはEBV感染症との関連が強く示唆されていますが、特に伝染性単核症などの症状を伴ったエピソードとの関連が指摘されています。MSの病因として多くのウイルスが検討された。以前は麻疹ウイルスに対する免疫応答の異常がMSで注目されたが,次第にEBVの位置づけが大きくなってきました。
    1. 1979年,MS患者からはリンパ球ラインが樹立しやすい(Lancet 1979;2:175-6)ことから,EBVとの関連が示唆され,さらに患者のT細胞はEBVでトランスフォームした細胞を抑制できないこと(Clin Immunol Immunopathol 1983;29:86-93),EBVに対する抗体の陽性率が高いことが示されました(Arch Neurol 1980;37:94-6)。今日,EBVに対する免疫応答の亢進はbystander効果による自己免疫反応の亢進の原因になっている可能性も考えられています(Casiraghi A & Horwitz M. Epstein-Barr virus and multiple sclerosis. In “Multiple Sclerosis” ed by Scholz E & Müller, Nova, 2012, pp81-96)。脳にEBVが感染しているという報告もありましたが,確立してはおらず,ウイルス感染例は稀なケースと考えられ,ウイルスによる脳への直接感染によるのではないと考えられます。ただ,ヒト脳微小血管由来血管内皮細胞にEBVは感染することができ,感染後はRANTESやICAM-1といった細胞接着分子の発現が亢進し,リンパ球が接着しやすくなります(J Neuroimmunol 2011;230:173-7)。

    2. 発展途上国ではEBVは2歳までにほぼ感染するとされていて(Nature 978;274:756-6 これはウガンダからの報告)、かつては日本もそうでした。EBVはEBV1とEBV2とがあって、70-85%は構造が共通。EBV1のほうが広く分布していて、EBV2は欧米よりはアフリカに多いそうな。関連する疾患に相違はないそうです(Cancer Res 995;67:197-255)。成人以降に感染すると伝染性単核症を発症しますが、症状はT細胞依存性と考えられていて、感染当初のウイルス量はT細胞の反応と関連し、無症状に終わるのか、IMを発症するのかが分かれるのではないか、と想像されているようです(Clin Infect Dis 2006;43:276-82)。EBVワクチンが欧米ですでに市販されているかどうかは不明。平成18年2月時点で日薬連調べによりますと第2相試験の段階でした。

    3. 感染症との関連を示唆するように、小児の集団発生がデンマークの田舎で見いだされています。これらの患者ではEBV genotypeが同一であることが示されています(Acta Neurol Scand 1998;98:395-9)。

    4. EBV抗体は一般集団での陽性率がそもそも90%近いのですが、MSでは99%以上で認められ、抗体陰性群でのMS riskのオッズ比は0.06 (95%CI: 0.03-0.13, p<0.000000001) (Ann Neurol 2007;61:288-99)。小児例でも同様で、北米の137例のMS患者での陽性率は86%で、matched controlの64%より高率 (p=0.025) (Lancet Neurol 2007;6:773-81)。欧州の患者ではage-matched controlの72%に対して、147例では99%と有意に高率 (p=0.001) (Neurology 2006;67:2063-5)。

    5. 抗EBV抗体の力価が高い場合、低い集団よりMS発症のリスクが高いことが判っています(Ann Neurol 2007;61:288-99; Neurology 62:2277-82; JAMA 2005;293:2496-500)。しかも、cytomegalovirusに対する抗体価では同様な現象はなく、非特異的な免疫応答の亢進によるものではないとされています。EBNA-1に対する抗体価は20歳まではcontrolと差はないけれども,25歳以降に2-3倍に増加(JAMA 2005;293:2496-500)。matched controlと比較すると,抗EBNA-1抗体は発症15-20年前まで上昇し,発症するまで高力価を維持(Arch Neurol 2006;63:839-44)。

    6. 米軍兵士のデータベースを用いて、MS発症前のEBV抗体の力価とMS発症のリスクを検討した結果が報告されています(Mult Scler 2011;17:1185-93)。222例のMS患者と年齢や性、人種を一致させたcontrol 444例が対象。anti-EBNA complex IgGが320倍以上では20倍以下に比して、36倍以上のリスク(36.1; 95% CI: 9.6-136)。抗EBNA-1抗体では320倍以上では20倍以下より、8倍のリスク(7.7; 2.6-23.0)。いずれの場合でも抗体の力価とリスクは、力価が高くなるほどリスクが高くなる傾向がきれいに認められています。これらの傾向に性差はなく、民族差や血中ビタミンD値の影響はなし。

    7. カナダのデータベースでの14362例のMS患者と7671例のcontrolとの比較では、伝染性単核症の既往歴を有する場合、OR 2.06 (95%CI: 1.71-2.48, p<0.001)でMS患者で有意に多いことが判明 (Neuroepidemiology 2009; 32:257-62)。

    8. 伝染性単核症後にMSを発症するリスクについて、18論文、19390名のMS患者と16007名のcontrolを対象にmeta-analysisした結果が報告されています(PLoSOne 2010;5(9):e12496)。relative riskは2.17で、95%CIは1.97-2.39。明らかに相関がありますね。

    9. 800万人以上の米軍兵士のDBから305例のMS患者と610例のcontrolを解析(Ann Neurol 2010;67:824-30)。10例のMS患者と32例のcontrolで当初EBV陰性。Controlでは28例中10例 (35.7%, p=0.0008)が陽転しましたが、後にMSを発症した群では10例全例が陽転化。EBV抗体陰性群でMS発症例もなし。陽転前にMS発症例はなし。EBV初回感染時からMS発症までの期間は5.6年 (2.3-9.4年)。ちなみに、このDBでの年間陽転化率は11.2%。US Military Academyでの以前の結果では12.3%で、大学生での従来の報告でも12.0-15%で、今回とほぼ同じ。両者の関係について、筆者らはpre-clinical MSの段階でEBVに感染しやすいか、共通の因子または交絡因子の可能性を挙げています。

    10. 抗EBNA-1 IgGと造影病変とは相関(r=0.33, p<0.001)(Neurology 2009;73:32-8)。抗EBV VCA IgG抗体は灰白質萎縮(p=0.002)や全脳皮質萎縮(p<0.001)と相関し,3年間の全脳皮質萎縮は抗EBV VCA IgG抗体価の増加と相関(p<0.001)(JNNP 2009;80:620-5)。

    11. 再発時にEBV再活性化 (replication)が認められるという報告(Neurology 2000;55:178-84)もありますが,追試で確認はされてはいません(Mult Scler 2009;15:153-8)。ウイルスのreplicationを意味するearly antigenに対する抗体は73例のRRMS中48%で陽性だったが,陽性率も抗体価も再発や寛解とは関連がなかった。抗VCA IgM抗体が3例で陽性だったけれども,疾患活動性と関係なし。3/51サンプルでPCRによりウイルスDNAが見出されたが,viraemiaは疾患活動性と関係がなかったという報告があります(JNNP 2005;76:1377-81)。EBNA-1に対する免疫応答はあるけれども,VCAやBZLF-1に対する免疫反応は欠如しているので,MSの病因にウイルスの再活性化の関与は限定的と考えられているのが一般的と思われます。

    12. 高緯度地域でMSの有病率が高いですが、北緯42度を境に、一般住民のEBウイルス抗体陽性率が変わります。それぞれの95%CIは・・・ 北緯42度以南 0.856-0.900 北緯42度以北 0.940-0.962

    13. MSと関係なく、緯度とEBウイルス既感染率の関係は、オッズ比1.06 (95%CI: 1.02-1.09, p=0.002) (MSJ, in press)

    14. Swedenの35病院の16-70歳のMS患者を対象にEBVとHLAによるMS riskを検討。EBNA1(385-420)と反応するIgG抗体があって、HLA A*02が陰性で、DRB1*15陽性群が最もORが高く、16.03 (95%CI: 9.42-27.30)。(Genes Immun 2012;13:14-20)

    15. EBVとの関連が知られているHodgkin病は、一般集団よりMS患者や患者家族で頻度が高い、と報告されています(J Natl Cancer Inst 2004;96:780-4)。

    16. MSとHLA DR15との関連が指摘されていますが,抗EBNA-1抗体がx320倍以上の群ではx89以下の群に比して,9倍MS riskが高いと言われています(Neurology 2008;70:1113-8)。

    17. MS患者脳脊髄液中のIgGを用いて、EBVのペプチドとhomologyのあるpeptideが抽出されていて、EBVに対する抗体産生が中枢神経内で認められることが4つもの研究で証明されています(J Neurol Sci 2000;173:32-9; Neurology 1992;42:1798-804; J Clin Invest 2005;115:1352-60; J Exp Med 2007;204:2899-912)。

    18. controlに比して、ex vivoでのEBVに関連した抗原刺激なしでリンパ球幼若化が亢進(Lancet 1979;2:175-6)。

    19. MBP 特異的T細胞はEBV 由来蛋白とも反応(Nat Immunol 2002;3:940-3)。

    20. MS患者ではcontrolに比して有意にEBVを認識するCD8陽性細胞傷害性T細胞が多く認められます(J Clin Invest 2005;115:1352-60; Clin Exp Immunol 2003;132:137-43)。

    21. MS患者ではEBNA-1反応性CD4陽性T細胞が認められますが、controlに比してより多くのEBNA-1 C末由来ペプチドと反応することが判っており、intra-molecular spreadが起きていることが示唆されています(Nature 1995;375:798-801)。EBNA-1 C末をカバーする50以上のオーバ−ラップしたペプチドで調べたら,MS患者ではEBNA-1特異的CD4 陽性memory T細胞の頻度が増加していることが判りました(Brain 2006;129:1493-506)。これらの細胞はミエリン蛋白とも交叉反応する頻度が高く,交叉反応を示す細胞はIFNγとIL-2を産生しますが,EBNA-1特異的でも交叉反応を示さないCD4陽性細胞はIFNγしか産生しません(J Exp Med 2008;205:1763-73)。IFNγとIL-2ともに産生する細胞の存在は,molecular mimicryとbystander activationの機序の理解の根拠になると考えられています。

    22. これらのEBNA-1と反応するT細胞の存在は 、MBPやαB-crystallinとのmolecular mimicryにより疾患活動性のトリッガーになっていることを示唆(Int MS J 2011;17:44-9)。

    23. EBV特異的CD8陽性細胞の免疫応答はCISで亢進していますが,経過とともに低下(Brain 2008;131:1712-21; Eur J Immunol 2010;40:878-87)。これらの現象はMSおよびEBVに特異的で,MSの発症初期にtriggerとして関与している可能性を示唆。一方,MS患者では自己transformed B cellsに対するCD8陽性T細胞の反応が低下していることが示されていますが,この現象はB細胞でのHLA発現やCD8陽性T細胞の機能低下ではないそうです(JNNP 2009;80:498-505)。MS患者でのEBV特異的CD8細胞の反応低下は別のグループからも報告されています(J Neuroimmunol 2010;229;238-42)。

    24. CIS患者ではEBNA-1に対する抗体(p<0.0001)や細胞性免疫応答(p=0.007)が亢進していますが,他のEBV由来蛋白に対する反応は認められませんし、anti-EBNA-1 IgGの存在はCISからMcDonald診断基準によるMSへのconversionのリスクとも相関(hazard ration: 2.2. 95% CI: 1.2-4.3, p=0.003)しています(Ann Neurol 2010;67:159-69)。

  2. キス病の原因であるEBVは性行為関連感染症らしい
    唾液腺からウイルスが分泌されるので、当然かと思いきや、ちょっと違うようです。そもそも学生たちのEBV抗体の陽転化を調べたフィールドワークから派生した問題と思われるのですが・・・  

    比較的最近のエジンバラ大学の1006名の新入生を対象とした研究が発表されています(J Infect Dis 2002;186:731-6)。男子学生(67.4%)より女子学生(79.2%)のほうが陽性率が高く(p<0.001)(エジンバラでは女子学生たちのほうが淫ら??)、性生活の活発な学生のほうがそうではない学生より高率でした(82.7% vs 63.7%, p<0.001)。セックス・パートナーの人数が多い方が少ない学生より高率。たとえば一人だと陽性率は76.6%ですが、5人以上では91.6% (relative risk: 5.89, p=0.002)。初体験が18歳以上では79.9%に対して、15歳以下では88.4% (relative risk: 5.31, p=0.02)。誤解していないと思うのですが、新入生を対象としたアンケート調査なので、「後方視的人数」のはずですよね?ということは、高校生の頃の実態調査?  

    1999年と2000年にEdinburgh Universityに入学した学生を4年以上追跡調査した結果も報告されています(Clin Infect Dis 2006;43:276-82)。25%に相当する510名が入学時にEBV抗体陰性。うち、110名(46%)が在学中に陽転化。27名は伝染性単核症を発症しました。陽転化するリスクは性行為を3段階のカテゴリー分類した場合、通常の(?)性行為まで行うとリスクが高いことが判明。在学中に性行為の経験が全くなかった学生はわずか9%のみ(でも存在しているのですよ!)。コンドームの使用の有無やoral sexの経験と陽転化リスクに相関なし。  

    同大学学生の伝染性単核症2000-2002年の学生を対象にした57例の臨床について、その後に報告されています(Clin Infect Dis 2010;50:699-706)。少し前の学生たちのデータでは女子学生の陽転率が有意に高い結果でしたが、IM自体はM/Fは26/30例と性差はありませんでしたが、授業を欠席した中間値が3/16時間と女子学生に長く(p=0.013)、学業を中断した人数は0/5と女子学生のみ(p=0.056)。おそらくfatigueの強さ(p=0.016)、期間(時間)の中間値(p=0.003)ともに女子学生群が強かったためと考えられます。  

    ところが、男性であれ、女性であれ、外性器からの分泌液中にEBVが存在しているんだそうですね(J Invest Dermatol 992;98:79-3; J Infect Dis 1991;163:1341-3; Lancet 1986;2:1122-4)。また、Swedenからの報告では、10代の女の子98名を調査した結果、EBV抗体陽性率は以前の性的接触と相関していたそうな(Scand J Infect Dis 1995;27:315-8)。
  3. 緯度とMSの関連
    通常は高緯度地域では紫外線照射量が減少するのでビタミンD不足になって、MS発症リスクが高くなるのだと言われていますが、なんとなく説得力に欠けるような気がするのは筆者だけでしょうか。ヨーロッパではきれいに緯度との相関が判っていますが、バイキングにより侵略された地域とも重なっています。北欧に多い疾患であり、バイキングの血を引いている、パレスチナ人ではアラブ人より有病率が高いことが判っています。HLAなどのMS susptability genesの関連もあるでしょう。ハンガリー国内でも、同じ地域に住んでいながらロマ人(旧ジプシー)たちのMS有病率はハンガリー人より極端に少ないことが判っています。サルジニア島のようにバイキングに侵略されたことが亡く、長い間、鎖国をしていて島内で遺伝子が濃縮され、同じ緯度の他の地域に比して、断トツに有病率が高いことは、単純な紫外線の影響ともいえません。もっとも、サルジニア島のMSは北欧のMSとはHLAが異なっていたり、1型糖尿病が合併していたり、特異な臨床像を呈してはいますが。というような背景も考慮した上で・・・
    1. 5月生まれにMS riskが高いことが北欧とカナダで確立しています。従来、生まれ月によるMS患者数を期待値と比較する研究が行われてきました(筆者らも日本人MS患者で検討し、発表しました)。胎児の頃の紫外線照射量が問題とされてきました。既報告の151978名のMS患者のデータを対象として緯度との関係についてmeta-analysisした結果が報告されています(JNNP, in press)。15万名の患者を解析すると、4月生まれが多く(1.05)、10、11月生まれが少ない(それぞれ0.95、0.92)ことが判明。Linear modelで緯度との関連を検討すると、緯度と12月生まれの関連は有意(p=0.039)でしたが、5月(p=0.093)や8月(p=0.076)生まれは傾向があったのみでした。線形モデルがよいかどうかは問題があるように思われます。

    2. 北緯42度を境に、MS、一般住民集団でのEBV抗体陽性率が北部が南部より高いことが判っています(Mult Scle J, in press )。42度を境にした陽性率の違いは患者群よりControlで高く、MS発症前で抗体が陽転することを考えますと、42度以北ではEBV感染率が背景として高く、そもそも地域としてMS riskが高いことを示唆しています。

    3. 米国では1936年頃までは、北部州生まれと南部州生まれでは、前者を1とすると後者では0.25程度で、MS riskに随分差がありましたが、1947-1964年の看護協会の調査では南北差が消失しています(Lancet Neurol 2010;9:599-612)。



  4. 今や泡洗顔が常識?
    フェイス・ブラシを使うなんて、言語道断!とうちの皮膚科医に言われました。外来にいた人妻ナースは当然のように、泡洗顔していないんですか?ネットで調べましたら、いろいろあるようです。
    どろ豆乳石鹸 
    どろあわわ
    VCOマイルドソープ
    盛田屋の豆乳せっけん
    ヴァーナルの洗顔石鹸  
    などが有名なようですが、他にも
    エレクトーレ
    フラニー
    紫紺乃米   
    なんていうのもありました。何が違うんだろ?
  5. MS病変を引き起こす細胞を同定?
    MS患者のCSF中ではTh17は増加しておらず、CCR2+CCR5+ CCR6- Th1 memory cellsがMSの再発時にCSF中で認められ、これらの細胞はMM9やospeopontinを産生し、MBPと反応してIFNγを産生、という報告が神経センターから出ました(J Immunol 2012;189:5057-65)。また、この細胞はBBBを超えやすいそうです。CCR2やCCR5が結合する血管内皮細胞のCCL2やCCL5が最近、MS患者脳の血管内皮細胞で見出されています(J Neuropathol Exp Neurol 2009;68:227-40)。CCL2-CCR2の関係はCD4陽性細胞が内皮細胞を通過する際の重要な分子だそうな(Nat Immunol 2012;13:67-76)。ただし、CCR2+CCR5+は臨床経過10年以下の8例の患者で認められ、10年以上の4例では認められなかったことから、比較的早期に認められる現象、と。

    また、CCR2+CCR5+はapoptosisに強く、反復した刺激で長く生存する可能性があって、なにかあると素早く反応するサブセット、という報告もあるそうです(J Immunol 2010;185:6646-63)。  

    ケモカイン受容体をまとめますと・・・
    Th1 CCR5+CXCR3+
    Th2 CCR4+CRTh2
    Th17 CCR4+CCR6+, CCR2+CCR5-, CCR6+
  6. 11th ISNI (Boston)から 
    MS/EAEを中心に免疫性神経疾患の基礎的な研究が数多く発表されました。その中から臨床に近い発表をいつものスタイルでご報告します。  

    トルコからはStanfordのProf SteinmannらからNat Medに報告され,すでにSteinmannご自身で初期のStanford studyを否定する報告がNeurologyに出ています。ただ,基本的な情報を含んでいましたので,数値をご紹介します。未治療のMS患者の血中IL-17F値はその後のIFNβ治療の効果を予測できる,というのがNat Medの結論でした。MOGで誘導されたEAEで関与が指摘されるようになったのですが,そもそもTh17がMS患者全般の病態に普遍的に関与しているのかどうかが判らないと思っておりました。IFNβへの反応性以前に未治療時のIL-17自身の値と,再発時の変化の有無のデータ,特にCSFでの変化のデータを知りたいと思っていました。以前の九大のOptico-spinal MS(おそらくは大半は現在のNMOと思われます)患者のCSFを対象とした検討では,IL-17は高値を示していました。下記の表のようにIFNβ治療6-9ヶ月後に治療後に一時減少していた(表では削除)IL-26がreboundする,と。IL-17は低下。有意ではないようですね。IFNβに反応しない患者さんでは血中IL-17は高かったそうな。IL-17はIL-17FかIL-17Aか不明。ELISAのキットで測定したもの。Stanford Univ.の純粋な追試でもないようです。

      Pre-Tx Healthy IFNβ(6-9M) non-responder to IFNβ
    IL-17 34.9±39.1(23*) 25.2±35.1(8) 20.3±21.2(16) 102.3±15.1(13)
    IL-23 21±6.3(15) 26.8±5(8) 31.8±8.3(15) 29.2±5.5(11)
    IL-26 78±68.2(17) 32.6±25.1(8) 80.8±57.3(18) 76.5±61.5(11)
    * 患者数

  7. 簡単皮むき手袋
    世の中には奇妙な商品があるものです。ジャガイモや里芋、にんじん、ゴボウの皮をむくのは大変です。特に、前2者は凸凹していますし、ピーラーが使えないので、本当に面倒。北九州市の学会会場近くの電気屋さんのアイディア商品コーナーで発見!テレビで話題なんだそうです。「ムッキー」という商品(ファインという千葉県・船橋市の会社が発売)。手袋でこするだけ。きれいに剥けます。便利。
  8. NMO末梢血からAQP4反応性T細胞を誘導したらTh17
    すでにしばしば国内外で引用されていますが、意義は判りませんねえ。UCSFのScott S ZamvilやBruce Creeらの報告なのですが、NMO患者末梢血から得られた単核球のさまざまなヒトAQP4由来ペプチドへの反応性を検討したところ、p61-80に最も反応することが判明し、これがTh17。P61-80のうち63-76のうちの10アミノ酸配列が腸内細菌であるClostridium perfringensのadenosine triphosphate-binding cassette (ABC) trabsporter permeaseと交叉反応があることが判明。腸内細菌がtriggerになっている可能性は興味深いですが、そもそもTh17が抗AQP4抗体がすでに証明されているNMOの病態に関与するとして、どのような可能性があるでしょうか??
    1. 直接中枢神経に病変を形成?
    2. 抗AQP4抗体はT依存性抗原でしょうから、抗体産生時にCD4細胞の関与は必要でしょうけれど、Th17である必要はありませんねえ。非特異的CD4でも部分的にはsupportできるようですし・・・
    3. マウスへの受け身免疫の実験から、BBBを開けるT細胞の関与が必要であることは判っています。Th17がBBBを開けるのでしょうか?

  9. 国内外国人居住地
    意外に知りませんでした。これらの土地に行けば、当然それぞれの食文化と出会えます。同じ地域に複数のタウンも存在します。
    新宿区大久保          イスラム通り
    池袋、横浜、神戸        チャイナタウン
    西葛西             インド人街
    高田馬場、鶴橋         ソウルタウン、コリアタウン
    愛知県豊田市保奥団地      日系ブラジル人
    新潟県南魚沼郡         中国などアジアから嫁いできた女性が多い
  10. NMO再発予防に抗C5モノクローナル・ハイブリッド抗体
    以前から話題にはなっていた治療です。Mayo ClinicのDr Pittockらは、ステロイドや免疫抑制剤で治療困難で、6ヶ月で2回以上、あるいは1年間で3回以上再発する患者14例に対して、open studyを実施。その結果が2012年のANAで初めて発表され、Neurology Today (2012;12(21):1−27)でインタビューも含めて紹介されました。

    PittockはNMOの再発の重症度とCSF中のC5値が相関する、という東北大学のデータ(Kuroda H, et al. J Neuroimmunol, in press)もこの治療の根拠として挙げていました。しかし、CNS内には補体は本来存在せず。Spinal tapで得られたCSFで補体が測定できることはBBB破壊あるいは透過性亢進を意味しているに過ぎず、CSF内での炎症の直接的な指標とは言えません。分子量が違いますので、BBB破壊の指標としての鋭敏さが異なる可能性はありますが、CSFでのC5a測定は基本的にCSFでのアルブミンと意義は同一でしかありません。MSでの脳MRIのように、NMOでのsubclinicalな炎症病変の存在の指標にはなるかもしれませんし、脳MRIより鋭敏かもしれませんが、毎月spinal tapしますか?大体、脳MRIでのasymptomatic enhancing lesionsって、日本人MS患者では少ないのに、NMOはもっと稀です。治験を行う上では、指標に意味はないでしょう。結局、再発回数で判断するしかありませんから、定義が重要。Painだけでいいのか?しびれ感の増悪だけではまずいでしょう。EDSSの変化が必要でしょうねえ。  

    米国では8000-15000名のNMO患者さんが想定されていて、MSと鑑別を要する疾患として注目されています。  

    C5 inhibitorというモノクローナル抗体はEculizumabといいますが、補体の活性部位に結合して補体活性をブロックするだけで、補体自体が消失するわけではありません。この薬剤は国内ではPNHですでに投与されています。国内で治験を行うとすると、適応拡大、ということとなりますので、全くの新薬よりはハードルが低いのではないでしょうか?PMDAの要求水準っていかほどのものか?  

    補体が全く働かなくても意外に問題はないらしいのですが、日本とは異なり、欧米では乳児の髄膜炎菌による髄膜炎が昔から問題で(欧米では日本と違って、環境にそもそも菌が一杯いるらしいのですネ)、補体がないとリスクが高くなるんだそうで、投与前にワクチンが投与されています(これで米国の乳児死亡率は下がったはずです)。  

    600 mg/weekを4週間、次いで900 mg、48週間に隔週で900 mgを投与するというスケジュール。初回投与以外は自宅で投与されます(具体的にどうやって点滴しているのかは不明)。  

    投与前に2週間の観察期間を設けていて、この間に3例が各1回ずつ重篤な再発を起こしています。投与中はわずか2回しか再発が認められていません。21例 (86%)では再発フリー。投与中止90日以内に2例が3回の再発を呈しました。中止12ヶ月後までに5例で8回の再発がありました。  

    治療前の年間再発率の中間値が3 (14例全員で40回)から治療12ヶ月後にはゼロに激減(p<0.001)。投与12ヶ月間でADLも改善したそうで、Hauser Ambulation Indexの改善(p=0.03)、視力の改善(p=0.02)があり、EDSSも4.3から3.5へ低下(これは凄いことですけどね)。  

    有害事象はやはり髄膜炎菌がらみで、ワクチンを投与していたにも関わらず、初回投与後に敗血症をていしたため、40日間中止した後に再開しています。頭痛や吐き気、めまい、外そう、下痢、腹痛、発疹が認められています。CSF中のC5は劇的に減少したそうですが、再発していなければ当たり前しょう。抗AQO4抗体を様々な方法で測定しているけれども、治療による変化は認められていないそうです(当たり前です)。ところが、Dr Pittickは次のような発言をしたそうで、ちょっと意味不明。”There was a siginificant drop in antibodies when patients atopped eculizumab.”  

    大層高価な薬剤なので、疾患活動性の高い時期にだけ投与するとか、モノクローナル抗体治療後には通常の治療に戻るといった、intermittent therapyを考えているようです。
  11. 「翔る合戦屋」
    歴史をねじ曲げないように、架空の人物を活写した、3部作の最終作(北沢 秋、双葉社)。劇画調に戦国時代を描いた、新しいタイプの歴史小説ではないでしょうか?
  12. カナダへの移民研究 
    1901から2006年までカナダは1300万人を移民として受け入れてきたそうで、うち19.6%が外国生まれ。カナダは人口10万人当たりのMS有病率が240名で、世界でもトップクラスのMS多発地帯です。疫学研究では北欧とともに重要な研究対象地域でありますし、ブリティッシュ・コロンビア州ではデータベース化が進んでいて、これを用いた研究も盛んです。今回はCanadian Collaborative Project on Genetic Susceptibility to MS (CCPGSMS)での研究(JNNP 2010;81:31-7)。今回のMS有病率の指標はユニークで、性差を用いていること。時代を超えて、頻度の差異をfollowしてゆく際の内部指標として使える、と著者らは考えました。対象者は2531名の移民後に発症したMS患者(移民前に発症したMS例は除外されています)。その結果は・・・
    1. 移民患者のF/M比は2.17で平均MS発症年齢は35歳。移民から発症までの期間は19.6年(フェロー諸島でのsmall pandemicの波の間隔に近いことに注目したいですね)

    2. 患者さんの生まれ年で変化が激しく、10年ごとに増加しています。若いMS患者ほどF/M比が高くなっていて、移民グループでもカナダ生まれの患者群でも同じ傾向で、前者での増加率は3.13%/10年、後者では2.82%/年。勿論、際限なく上昇するわけではないわけで、グラフでは1976年が上限に。

    3. 移民元では半数が北部欧州で、さらにその4割相当が南部欧州、3割相当が米国。遺伝子あるいは紫外線の影響なのか、同じヨーロッパでも本来の地域での南北間の有病率の相違と同じように、北部からの移民のほうが南部より有意に高いことが判明(OR 1.30, 95CI: 1.042-1.61, p=0.019)。

    4. カナダへ移民してきた年齢も問題で、ここでは15歳ではなくて、21歳で分けています。F/M比は21歳以前に移民してきた群では2.79で、21歳以降では1.96と有意(p=0.004)。しかも、現在の患者年齢ではなくて、1950年代や1940年代生まれの患者でもF/M比は2.27と2.09と同じ傾向で、生まれた年に関係なく、移民年齢が重要。

    5. 文献的には・・・F/M比の高い地域は有病率の高い地域でもあり、第1グループは米国、北部欧州、オーストラリア(NZも)、第2グループは南部欧州、第3グループは南アメリカ、アフリカ、中東。ん?アジアは?カナダへ行きますと、中国系が目立ちますが・・・

    移民後も生まれた地域の影響を受けるのは、F/M比の低い地域には女性に対してprotectiveに作用するものがあることを示唆、と著者は言っています。むしろ、HLAなどのMS susceptibility geneの差のためにF/M比が高い地域があるというほうが理にかなっているでしょうがねえ。  

    移民たちはカナダへ来てから、経済状態の改善、日光照射量減少、都市的生活、教育レベルの高学歴化というMSのリスクが高くなる要素に満ちた生活へ変わったことがF/M比に影響しているのだろう、と。21歳を境に変化することについては、子供の時代に感染症に暴露される時期が問題で、生活環境の改善により幼児期での暴露の機会が減少し、初感染が高年齢化(たとえば思春期とか)している可能性が高いこと、カナダを含めて高F/M比地域では女性にリスクの高い要因があるのだろう、と。
  13. 関東関西の違い
    味付けの濃さだけでなく(コンビニの商品の味付けも関東と関西で商品が異なります)、正月のお雑煮に入れる角餅と丸餅の違い、エスカレーターで並ぶ際に関東は左だが関西は右とか、違いがあります。概ね、不思議なことに関ヶ原付近で東西が変わることが多いようですが、味付けは三重県内で変わるようですね。三重県自体が奇妙な位置づけで、行政も近畿圏内には入らないことが多いようです。学会の地方会も三重県は愛知県とともに東海地方に多くの場合は属していますね。美容院も関東では火曜日、関西では月曜日が定休日なんだと、いつも行っているお店で教えて下さいました。やはり、名古屋付近で分かれるようです。理由があるんでしょうか?
  14. MSの国際共同治験での問題点
    Phase II studyから参加できますと、Drug-lagがなくなるので、市場で使用できるようになるまでの欧米との時間差が少なくなる利点は確かにあります。PMDAもメーカーには参加するように勧めているようです。うまくいけばいいのですけどね!Globalは当然のことですが、欧米白人のMS患者さんを基準に対象患者やfirst endpointを設定します。前者はほぼ同じことが多いのですが、後者が問題。脳MRIの造影病変数の減少で評価すると、もともと活動性がそれほど高くはなく、1年以内に再発のある患者さんでも造影病変数が0.4以下という患者さんが対象になるのです。これらの患者さんを治験に入れた場合、半年間でplaceboと有意差が出なくなる危険性があります。メーカーの治験担当者に神経免疫学会の治験推進グループの会合でお聞きしましたら、First endpointで有意差が出ないと、PMDAは認可しない可能性があるそうなので、問題です。できるだけ活動性の高い患者さん、あるいは造影病変が見出しやすい、半年以内に再発のあった患者さんを短期間(1年間とか-国際共同治験でも組み入れ期間の期限を延長しないわけではないようですが)に組み入れる努力が必要でしょう。

  15. 中国の米国化
    最近、米国で出産する中国人が増えていて、彼らをサポートする中国系企業がNYなど全米で乱立状態。もちろん、出産するのは在米中の中国系アメリカ人ではありません。わざわざmainland (以前はred chinaと呼ばれていた北京政府の国)から7-8ヶ月の妊婦が渡米し、施設が契約している病院で出産し、その後も一定期間施設に留まった後に帰国。この間、施設は居住空間だけでなく、食事も提供します。まるで、下宿です。その結果、米国籍の子供たちが中国国内に大勢誕生することとなります。一人っ子政策から逃れるためだけでなく、万一の場合、「米国人保護」を目的に米軍の介入も期待しているそうです。なにせ、アメリカ人ですから。これに米国のある下院議員が噛み付いています。いいとこ取りだ、と。そのうち、大統領選挙の際には中国大陸に国外滞在者用の投票所が設置されることになるのでしょうか?米国政府にとっては悪夢ですね。経費は一人160万円。小金持ちなら行くでしょうね。危機管理の上からも。
  16. 「私はなぜ『中国』を捨てたか」 
    知人が天安門事件で大勢犠牲になった、日本国籍を取得した、中国から来た元日本留学生、石平さんの新作(出版元:ワック)。半日の犠牲になった、有名な女優のエピソードや西安以東の全ての都市を失う覚悟で米国と戦争する覚悟がある、と外国人記者との公式会見で発言した、人民解放軍の現役少将の話など(この地域には北京、上海、南京などの大都市が含まれ、2億5千万人以上が住んでいます。お馬鹿な話)。後半は日本で再開した「論語」など、少し日本を過大評価しているのではないかと、恥ずかしい思いもする本ではあります。新書ですし、日本語がうますぎ。

  17. 「魚釣島奪還作戦」 
    大石英司さん、中公文庫。自衛隊特殊部隊と中国系武装集団との死闘を描いた本作は、面白いです。
  18. 「尖閣を獲りに来る中国海軍の実力 自衛隊はいかに立ち向かうか」 
    元統幕学校副校長、川村純彦さんによる本書(小学館101新書)はさすがに具体的な記述に溢れています。最後の第7章は尖閣沖海戦のシュミレーション。自衛隊の潜水艦は原潜ではなく通常型動力ですが、米軍関係者からは米軍の原潜よりも静かと言われているそうです。一方、中国の潜水艦は銅鑼を鳴らしながら潜航しているようなモノなんだそうな。エンジンの性能の違い。技術力の差。  

    中国がらみでないことにも触れていて、中国海軍は空母を契約違反して獲得しましたが、当分、飛行機は乗せられないでしょう。大体、空母の先端がせり上がっている奇妙な形をしています。もともとのウクライナもまともにはジェット機を離発着できなかったため。米軍って凄いな、ということになりますが、犠牲が半端じゃなかったようなのですね。「失った海軍機が12000機、死亡した搭乗員は8500人」
  19. 「チャイナ・インベージョン 中国日本侵蝕」 
    下山事件などの戦後の謀略事件のノンフィクションで売り出した、柴田哲孝さんの新作(講談社)。どこからフィクションなのか判りにくい、realな現在進行形の物語。一部の政治家は実名で登場しますし、尖閣諸島や国家主席の代替わりに関連した権力闘争なども盛り込んでいて、近未来ではないところが不気味。国内で水資源や自衛隊基地周辺の土地が中国人に買われていることや新潟県庁脇の信濃川の川岸に5000坪もの土地が中国総領事館用地(現在はJALのビルの一角に。新潟にそんなに広い土地が必要?)としてすでに購入されている(ウイーン条約により、こういった土地は治外法権なので、もはや日本の土地ではありません。中国が北朝鮮内に建設した港湾から中国が保有しているヘリコプターの航続距離で飛んでこられる距離に新潟市は位置しています!当院の軍事オタクによりますと、完全武装の兵士を満載して1000キロは飛べないとのこと。でもね、脅威でないうちに土地を購入しておいて、空中空輸できるようになったら・・・)ことなど。この小説は連載されていたのですが、現実が平行して進行している不気味な小説です。
  20. 「バトルシップ」 
    10ヶ国以上が参加した、Rimpac (環太平洋合同演習-現実に存在している米軍を中心とした軍事演習で、1980年からは海上自衛隊が参加しており、2012年にはロシア海軍も初参加。もちろん、中国は参加していません)の最中、突然、海中から巨大な船が飛び出してきます。当院の医局では、このエイリアンの乗った宇宙船が龍に似ていると評判でしたが(見たこともない船を見たときに、中国か、という台詞はありますが)、中国をかつての西部劇のインディアンやナチスの代わりの敵役にしているわけではないように見えます(人民解放軍によるチベット人僧侶たちの虐殺が描かれた「セブンイヤーズ・イン・チベット」とは異なり、中国国内で上映禁止になったという話も聞きません)。主人公の悪ガキ将校と浅野忠信扮する海上自衛隊の艦長との友情をベースに、科学で劣っている地球の軍隊が如何に闘うか、という物語。ストーリーや脚本の細かな台詞は荒っぽいですが、それほど気持ち悪くもありませんし、荒唐無稽でそれなりに楽しめます。題名の意味は最後に判明しますが、アイディアは秀逸ですが、あり得ない話。1992年に退役し博物館として公開されている軍艦になんで実弾が掲載されているのか、いろんなところが錆びているはずだし・・・映画では砲弾の重量が1トンと紹介され、4-5人で運ぶシーンがありますが、ネットでの議論では2トンの筈で、とても手では運べないそうな。
  21. ビタミンD不足がMSの原因の一部という根拠
    1. 主なビタミンD供給源である紫外線照射量の少ない高緯度地域でMS患者が多いが、ビタミンDが豊富な魚脂を多く摂取している住民では高緯度地域でもMSリスクが低い(N Engl J Med 1952;246:721-8; Acta Neurol Scand 1970;46:455-83)。

    2. 一般に、高緯度地域から低緯度地域へ移民すると、MS riskは減少する(Prog neurobiol 1995;47:425-48)。北部州生まれの米軍兵士が南部州に転勤すると、男女ともMS riskは半減する(Neurology 1985:35:672-8)。米軍を構成する5つの部門のうち、海兵隊が最もMS riskが低い(Brain 2012;135:1778-85)ことも部隊が展開している地域が他の部隊に比して、炎天下での過酷な訓練が多いことと関連しているのでしょう。

    3. 屋外活動について。Tasmaniaからの報告では、6-10歳時に休日や週末に屋外で少なくとも1日2時間、屋外活動すると、冬の場合はオッズ比が0.47 (95%CI: 0.26-0.84)、夏では0.50 (0.24-1.02)。また、ノルウェーからの報告では、年齢や性、生まれた場所をコントロールとマッチさせた対象群で、16-20歳時、夏に屋外活動を増やすとMS riskが減少(OR 0.55, 0.39-0.78: p=0.001)。ただし、MS発症後は体温上昇による症状増悪を避けるために、長時間の屋外での活動を避ける傾向はあります。屋外での作業を中心とした職業を有するMS患者の死亡率が高いかどうかを検討した報告もありますが、判断が難しいところ。

    4. EAEに対して、Calcitriolは予防だけでなく、治療効果も示されている(J Clin Invest 1991;87:1103-7; J Neuroimmunol 1995;61:151-60; PNAS 1996;93:7861-64; J Immunol 2006;177:6030-7; J Neuropathol Exp Neurol 1996;55:904-14; J Nutr 1998;128:68-72; J Neuroimmunol 2000;103:171-9)。Th1やTh2の機能にCalcitriolは影響しないが、regulatory T cell機能に影響すると考えられている(Lancet Neurol 2010;9:599-612)。

    5. 女の子を妊娠した妊婦が妊娠中に高用量のビタミンDを摂取すると、MS riskが低い(Ann Neurol 2011;70:30-40)。

    6. オーストラリア(BMJ 2003;327:316-21)、ノルウェー(J Neurol 2007;254:471-7)、米国(Neurology 2007;69:381-8)でのcase-control studyで小児期や青年期に太陽を多く浴びるとMS riskが低い。

    7. 健康なnon-Hispanic白人を対象としたprospective studyで血中25(OH)D値とMS riskは逆相関(JAMA 2006;296:2832-8)

    8. オーストラリアでの145例のRRMSを対象に平均2.3年間、血中25(OH)D値と再発の関係を観察。血中25(OH)D値が10 nmol/L増加すると再発が9%減少(Ann Neurol 2010;68:193-203)  

    SOLAR studyやCHOLINE studyといった治験が進行中ですが(Mult Scle J 2011;17:1405-11)、Wingerchukら(JNNP 2005;76:1294-6)の15例のuncontrolled trialでは4例の高Ca血症を呈し、うち2例は症候性だったことに留意。
  22. 日光照射の凄さ! 
    ビタミンDをサプリとして服用していた女性ではMS発症率が低い、という結果が米国看護協会の協力で得られています。補助療法の可能性について、複数の治験が進行中ですが、大体は4000から始めて40000IU/dayまでCholecalciferolを漸増する方法がとられます(Mult Scler J 2011;17:1405-11)。夏期に全身で太陽を20分浴びると少なくとも10000IU産生されるんだそうです(Am J Clin Nutr 1995;61(suppl):S638-45; Am J Clin Nutr 2004;80(suppl):S1678-88)。もちろん、強烈な日の光は、後でシミやしわ、皮膚癌の発生などのリスクはありますが。
  23. LGBTってなに?
    LGBTとは、レズビアン(女性の同性愛者)、ゲイ(男性の同性愛者)、バイ(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障害者)の頭文字を取った、性的マイノリティを表す総称。証券大手のゴールドマン・サックスの本社にはレズビアンであることをカミングアウトしている女性役員がいるそうです。ベルギーのエリオ・ディルボ首相は同性愛者であることを認めていますし、先日の米国の上院議員選挙ではゲイを公表している、一見、女性のような共和党候補が当選しました!
  24. HLAと喫煙とEBNA1抗体間のMS risk
    Swedenからの報告(Neurology 2012;79:1363-8)。EBNA1 IgGと喫煙との間には相関なし。EBNA1 IgGとDRB1*15との間には相関があり(AP=0.34, 95% CI: 0.11-1.57)、EBNA1 IgGとA*02がないことの間にも相関がありました(AP=0.36, 0.13-0.59)。