2010年4月号 NO.3

  1. 高齢者での抗コリン剤の短期的リスク
  2. 抗コリン剤投与により痴呆になるか?
  3. Kuru発病抑制遺伝子の発見           
  4. BBBを超えてGlioma進行例を治療
  5. 米国プロフットボール (NFL)選手での記憶障害
  6. Tolosa-Hunt症候群の診断基準
  7. 平成21年度免疫性神経疾患調査研究班班会議
  8. 慢性頚部疼痛と呼吸機能は関連
  9. コードブルーでのALS
  10. Meningeal enhancementをきたす疾患
  11. 京大病院と所轄の川端署
  12. 大きな瞳孔径は扁桃を刺激
  13. 主なプロ野球選手と女子アナの結婚
  1. 高齢者での抗コリン剤の短期的リスクということがあらかじめ痴呆の有無にかかわらず知られていて、Beers List of “potentially inappropriate medications”というのがあるそうです(Arch Intern Med 2003;163:2716)。

  2. 抗コリン剤投与により痴呆になるか?
    高齢者で振戦が強い場合、抗コリン剤を使いたいですが、知能低下を引き起こすのではないか、アルツハイマー病のリスクを高めるのではないかと想像されています。6912名の住民を対象に、平均3.5年経過観察した結果が報告されています(Arch Intern Med 2009;169:1317)。一般の神経内科医が見る機会の少ない雑誌ですね。一般の内科医にとっては(正確には筆者が内科レジデントだった頃)、Ann Intern Medとともに基準となる雑誌でしたが、今はどうなのでしょう?  

    さて、65歳以上の6912名の中で86.4%が全く抗コリン剤の投与を受けたことがなく、4.6%が最初から観察期間中ずーっと服用していました。この持続内服群では、男女を問わず、内服しなかった群に比して知的レベルの低下が認められました。痴呆を呈するリスクとして、hazard ratioは1.65 (p=0.05)だったそうな。臨床的には有意なデータですが、意外に差が少ないんですね。これは観察期間が短いことも原因かもしれません。しかし、抗コリン剤を服用している割合がえらく多い集団ですねえ。(J Watch Neurol 2010;12:1-2より)

  3. Kuru発病抑制遺伝子の発見
    Univ College Londonのグループが2000人以上のNew Guineaの住民などを調査し、G127V alleleを有する人に死亡者がいないこと、人肉を食べる習慣 (cannibalism)がなくなった後に、当時は少なかったこれらの人が現地で急速に増えたことが判明(N Engl J Med 2009;3612056-65)。(Neurology Today 2010;10:1, 8より)ということは、この遺伝子変異は最近起きたことなのでしょう。変異型CJDでも同じことが起きる可能性はあるかもしれません。鋳型となる蛋白が増殖の元にならないなら、プリオン蛋白は血球にまで存在しているユビキタスな蛋白なので難しいでしょうが、将来的には遺伝子治療への可能性に道を開くことになるのかもしれません。

  4. BBBを超えてGlioma進行例を治療
    腫瘍細胞で発現が増強している、low-density lipoprotein receptor-related protein (LRP)に結合することで腫瘍細胞に取り込まれる、ANG1005という物質を利用するという治療法が研究されています。BBBを超えて薬剤をCNSへ入れるこの治療法の安全性がすでにヒトで試みられています(Nat Cell Biol, in press)。(Neurology Today 2010;10:12-3より)

  5. 米国プロフットボール (NFL)選手での記憶障害が話題になっているようです(Neurology Today 2009;9:1, 13より)。引退した選手たちを対象とした調査では50歳以下では記憶障害が同年代の20倍にまで達しているようです。プロの選手となれば、高校生の頃から頭部への外傷に頻回にさらされていますから、ボクサー脳に近いリスクがあるのかもしれません。

  6. Tolosa-Hunt症候群の診断基準International Headache Societyによる診断基準が出ています(Cephalalgia 2004;24Suppl 1:9)。

  7. 平成21年度免疫性神経疾患調査研究班班会議が2010年1月27-28日、東京・都市センターで開催されました。(この班会議は非公開というわけではなく、患者団体の方も参加されていますが、びっくりするようなさまざまな価値観のある方が世の中にはいらっしゃいますので、この班会議に関する記述は個人で主催しているHPなど、ネット上では公開する予定はありません。より公開されている学会とは区別します。)  

  8. 慢性頚部疼痛と呼吸機能は関連しているという不思議な論文が出ています(Cephalalgia 2009;29:701)。疼痛のある人とない人の呼吸機能を比較したものですが、maximal voluntary ventilation, maximal inspiratory pressure, maximal expiratory pressureが低下しているそうな。(J Watch Neurol 2010;12:8) 本当に解剖や生理学的に説明可能なのでしょうか?頭痛や腰痛など他の部位に痛みのある人を対照にしたら差がなかったりして・・・

  9. コードブルーでのALS
    フジテレビ系列で放映中の「コードブルー」は、ドクターヘリにも搭乗する大学付属病院ER室のレジデントたちの物語。良くできています。フライトドクター候補生・戸田恵梨香とフライトナースの比嘉愛未がええです。  

    このナースの恋人がALSという設定。両手はいかにも筋萎縮がありそうな形態を示し、車椅子介助のレベルですから、典型的なAran-Duchenne型の遠位型のようです。しかも、ナルコーシスにもなっていますので球症状もあります。しかし、台詞を喋る都合からか、speechは全く正常で、恋人と普通に会話が可能。子細にまでこだわるなら、ちょっと無理があるように思われますネ。  

    さて、このALS患者はDNRを意思表示しています。俺らしく生きたいから、というのがその理由・・・何故そうなるのか、どこかで描かれていたのか、全て見ていないので何とも言えませんが、この場面で回想シーンは出てこなかったので、どうも理由はそれ以上明らかではないように思われます。安易にALS患者さんがDNRを選択することは悲劇的なドラマの設定に都合は良いのかもしれませんが、一般の方に、さらに今後のドラマ制作者にも誤解を与えると思われます。

  10. Meningeal enhancementをきたす疾患健康人
    Meningitis (細菌、ウイルス、真菌、腫瘍、薬剤など)
    Neuro-Lyme disease
    Early cerebral infarction
    Leptomeningeal dissemination of brain tumors
    Primary leptomeningeal gliomatosis
    Primary leptomeningeal sarcomatosis
    Meningioangiomatosis
    SLE
    Primary CNS vasculitis
    Granulomatous angiitis
    Sturge-Weber syndrome
    Neurosarcoidosis
    Wegener肉芽腫
    Hypertrophic cranial pachymeningitis
    Idiopathic
    Meningeal inflammatory myofibroblastic tumor
    Others
    Multiple sclerosis
    Intracranial hypotension (idiopathic, cerebrospinal fluid leakage, after shunt)

  11. 京大病院と所轄の川端署
    仲が良いわけではないでしょうが、旧国立大学としては警察ネタが目立ちます。
    1. インスリン殺人未遂事件?病棟で管理されていた本数は減っていないそうで、外部から持ち込まれたようです。これは事故ではありません。意図的です。 (2010年2月)
    2. 眼科医が気を引こうとして、好きな女子大学院生に睡眠薬を飲ませる。 (2009年4月)
    3. 呼吸異常に気づかずナースがモニターを中断し、80代の入院患者が死亡。この間の事情を川端署に報告。 (2009年3月)
    4. 小児科に入院していた娘の点滴に腐った水を混入させた母親を逮捕。病院を舞台とした児童虐待とも言える、代理ミュンヒハウゼン症候群の典型例として有名に。(2008年12月)
    5. 移植手術例の死亡事故に対して、業務上過失致死の疑いで前院長送検 (2008年4月) これ以前に、京大病院側が米田心臓血管外科教授の手術を止め、教授側が大学相手に仮処分を申請し、大学側が教授を解任し、当時の副院長だった脳外科教授が兼任したり、復職を認めた次の日に教授職を辞職することで最終的には両者は和解。
    6. 患者情報入りの9台ものノートパソコンの盗難で被害届 (2005年2月)
    警察と接触回数の多い病院というのもなんですが、それほどに病院も世間並みに危険な場所になっているということでしょうか?

  12. 大きな瞳孔径は扁桃を刺激
    大きな瞳は被験者の扁桃体の活動を有意に増大させることがfMRIの結果でわかっているそうな。扁桃体は刺激が自己にとって有益か有害かという生物学的価値評価を行い、情動発現に重要な役割を果たしているからなんだそうな。ただし、女性顔写真の魅力を主観的に評定した値と扁桃体の活動には相関はなかったそうです(神経内科 2010 72:77-84)。しかし、柔道着姿の森三中と水着姿の長沢まさみや安めぐみとで比較したら、差が出るかも・・・?

  13. 主なプロ野球選手と女子アナの結婚
    (所属、年齢は結婚当時)という一覧表が日刊スポーツ(2009/10/6)に掲載されたそうです。ま、どうでも良いですが、この組み合わせに、内川聖一(27=横浜) - 長野 翼(28=フジテレビ)が2010年3月に加わります。球場での取材がきっかけになることが多いそうで、意外に多いこの組み合わせは、なんということはない、職場結婚のようでありますよ。姉さん女房が多いのが特徴ですかね。野球選手は金の草鞋を履いている人が多いようであります。
    イチロー(26=オリックス)-福島弓子(33=TBS)
    松坂大輔(24=西武)-柴田倫世(29=日本テレビ)
    古田敦也(30=ヤクルト)-中井美穂(30=フジテレビ)
    石井一久(26=ヤクルト)-木佐彩子(28=フジテレビ)
    青木宣親(27=ヤクルト)-大竹佐知(26=テレビ東京)
    井端弘和(33=中日)-河野明子(30=テレビ朝日)
    高橋由伸(30=巨人)-小野寺麻衣(30=日本テレビ)
    田口壮(31=オリックス)-香川恵美子(35=TBS)
    岡島秀樹(25=巨人)-栗原由佳(25=フリー)
    二岡智宏(29=巨人)-用稲千春(31=フリー)
    林昌範(24=巨人)-亀井京子(25=テレビ東京)
    元木大介(29=巨人)-大神いずみ(30=日本テレビ)
    金子誠(24=日本ハム)-白木清か(25=テレビ朝日)
    松中信彦(26=ダイエー)-林恵子(27=フリー)
    関川浩一(33=中日)-家森幸子(30=テレビ東京)
    与田剛(26=中日)-木場弘子(27=TBS)
    石井琢朗(31=横浜)-荒瀬詩織(25=フジテレビ)
    福盛和男(27=近鉄)-福元英恵(27=フジテレビ)
    城石憲之(33=ヤクルト)-大橋未歩(28=テレビ東京)