2009年12月号 NO.1

  1. MSの再発について
  2. CISの診断基準
  3. CISからMSへの移行におけるOCBの重要性
  4. 日米の経済格差
  5. Extavia?という新しいIFNβ1b
  6. MS双生児研究での同胞発症率いろいろ
  7. アトピー関連神経障害全国調査
  8. カレントテラピー9月号がわずか2ヶ月で完売
  9. 相国寺ってご存じですか?
  10. 遠忌って?
  11. IFNβ治療に関連して皮膚血管炎
  12. 古典型MSでも抗体と補体が沈着
  13. NMO再発時のCSF中IL-6が増加
  14. NMO患者の脳MRIの造影病変”はCloud-like”
  15. 出産時に母体が死亡する確率はMS有病率と同じ
  16. 阪大医学部卒の作家、霧村悠康
  17. 脂肪萎縮症と筋疾患を主症状とするPTRF変異による疾患
  18. 微小血管狭心症
  19. 年齢判定基準
  20. 東北地方には天皇家の血筋が多い
  21. 「新・日本朝鮮戦争」森 詠著
  22. 「ミシュランガイド 京都・大阪2010」
  23. 抗生物質の投与法
  24. 「法廷に吹く風」佐木隆三さんの新作
  25. Lupoid sclerosis
  1. MSの再発について
    分娩直後の女性の72%では再発が見られない(Brain 2004;127:1353-60)。出産後、子供に授乳した場合としない場合とで再発率は変わらない(JAMA 1988;259:3441-3)。  

    ワクチン接種による再発のリスクについて、周知のようにNational MS Societyはinfluenza, hepatitis B, varicella, diphthria/tetanusでは起こさないことを結論づけています(Neurology 2004;63:838-42; N Engl J Med 2001;344:319-26)。  

    発病初期に再発率が高い場合、将来の障害度が高いことが判っています。発病後の2年間で1回以下しか再発しない場合、10年後にEDSSが6.0に達する(歩けなくなる)のは20%。一方、最初の2年間に5回以上再発があった患者では、10年後には杖が必要となります。  

    ステロイドパルスは末梢血CD4陽性細胞数やIFNγを減少させ(Eur J Neurol 2000;7:281-9; Clin Exp Immunol 2002;127:165-71)、造影病変を96%にまで抑制しますが、この効果は1ヶ月しか持ちません(J Neurol Neurosurg Psychiatry 1992;55:450-3)。通常はパルスは点滴で行いますが、カナダでは経口剤が投与されています。ただし、外国ではメドロールの大容量の錠剤が発売されているので可能ですが、国内では4 mg錠なのでえらいことになります。I gのメチルプレドニゾロンと1250 mgの内服薬の血中濃度の比較では、mean under the concentration-time curveは同一、という結果が出ています(Neurology 2004;63:1079-80)。

    ステロイドで反応しなかったり、禁忌で投与できない場合はIVIg(0.4 g/kg/d for 5 days)を考慮するべき、という意見があります。妊娠中も安全、と。ステロイドに反応しない場合は単純血漿交換も考慮すべき。(Neurologists 2009;15:1-5)

  2. CISの診断基準
    MSの診断基準としてはMcDonaldの基準がよく知られていますが、さらに早期診断のための工夫が追究されていて、CISの段階で、つまり最初の脱髄性病変によると思われるエピソードの時点で将来MSに進展する可能性の高い患者を如何に診断するかという試みがあります。McDonaldの診断基準(Ann Neurol 2001;50:121-7)ではCSF中のオリゴクローナルバンド(OCB)は除外されましたが、Polmanらによる改訂版ではPPMSからさえ不必要と判断されてしまいました(Ann Neurol 2005;58:840-6)。ここへきて、改めてOCBの重要性が見直されています。  

    TintoréらはMRI所見の如何に関わらずOCBの存在は2回目の再発のリスクを2倍にすると報告し(Neurology 2008;70:1079-83)、4項目中少なくとも3項目の満足を要求するMRI Barkhof criteriaは特異性は高いけれども感度が低く、少なくとも2項目のT2病変にOCBを加えた方が感度がよいことが示されています(J Neurol Sci 2008;266:34-7)。イタリアのFlorenceからは、118例のCIS患者を少なくとも1年以上(平均:4.0年)観察し、clinically definite MSへ56%が移行。OCBの存在がMSへの移行には特異性が高いことが示され、少なくとも2項目のT2病変にOCBを加えた診断基準の正確さが証明されました(Multi Scler 2009;15:472-8)。
  3. CISからMSへの移行におけるOCBの重要性を示す他の報告もあります。発症から6年後、OCB陽性例のCISのほどんどがMSと診断されたのに対し、陰性例では2回目のエピソードをきたしにくかったそうです。(Neurology 2006;66:576-8)
  4. 日米の経済格差
    Rochesterの人口は10万人だそうですが、そこにあるMayo Clinicで働いている医師は1600名、レジデントが2000名だそうな。これにほぼ相当する数字を発見しました。国内の病院です。総職員数2万名、常勤医師1600名、非常勤医師1900名。ただし、66病院、55診療所などの合計。徳州会グループでした。(医事新報, 2009;4457:96)
  5. Extavia?という新しいIFNβ1bが米国とヨーロッパでスイスのNovartisから発売されました(CNS Drugs 2009;23:805-815)。

  6. MS双生児研究での同胞発症率いろいろ研究結果には幅がありますが,まとめた表を発見。

    研究地 研究規模 MZ DZ
    Finland 1987   21 twins 9.1 0
    France 1992 54 5.9 2.7
    UK 1994 105 25.0 3.0
    Canada 2003 370 25.3 5.4
    Denmark 2005 178 24.0 3.0
    Italy 2006 198 14.5 4.0
    Sardinia 2006 18 22.2 0
       (MS Forum, Wiesbaden, Feb 2007)

  7. アトピー関連神経障害全国調査の結果が発表されました。トップオーサーは、九大の磯部紀子先生(Neurology 2009;73:790-7)。
  8. カレントテラピー9月号がわずか2ヶ月で完売してしまいました。若い人に数冊買おうと思っていましたら、あっというまになくなってしまい、出版社のリストからも削除されてしまいました。
  9. 相国寺ってご存じですか?
    筆者の京都の自宅からは,京都御所や同志社大学今出川キャンパスは散歩コースですが、相国寺の境内も静かな良いところです。「そうこくじ」ではなく、「しょうこくじ」と読み、京五山第二位の名刹で、同志社大学になった薩摩藩京屋敷のすぐ北に位置します。HPをみるとすぐに理解できますが、臨済宗相国寺派の総本山で、鹿苑寺金閣寺や慈照寺銀閣寺は相国寺の境外塔頭で、相国寺の所属。開祖は夢窓疎石で、現在の住持は132代目。境内にはいくつかの鳥居がありますが、中でも宋旦稲荷は謂われがあって、江戸時代の初め、千利休の孫である茶人・千宋旦(利休との関係は複雑で、父は利休の後妻の連れ子で、母が利休の娘)に姿を変えて境内に出没した白狐がいたそうで、その狐の供養のために建てた稲荷なんだそうな。説明文の後半が消えかけていて読めませんでした。宋旦の三人の息子がそれぞれ、表、裏、武者小路千家の祖に。
  10. 遠忌って?「おんき」とか「えんき」と読むんだそうで、本来は亡くなった人の十三回忌以上の年忌法会を言うそうですが、現在では50年ごとの大法要を指すんだそうです。なので、父親の大法要を主催する人は稀だから言わないのか、仏教的には恐れ多いのか、使用しませんね。代表的な遠忌だけで京都にはこれだけあるんだそうな。(京都新聞 2009年9月21日付けより)
    名前 遠忌年 回忌 本山
    栄西禅師 2014年 800年 臨済宗・建仁寺(祇園です)
    法然上人 2011 800 浄土宗・知恩院(紅葉)
    親鸞聖人 2011 750 浄土真宗・東西本願寺(石山本願寺は信長と戦って無くなり、跡地に大坂城が)
    無相大師 2009 650 臨済宗・妙心寺(宇多野の近く。戦国大名の軍師学僧の供給元)
    元三大師 2009 1025 天台宗・延暦寺(信長に焼かれた寺ですね)
    理源大師 2009 1100 真言宗・醍醐寺(秀吉の花見)
    重源上人 2006 800 華厳宗・東大寺(これは京ではありませんね)
    道元禅師 2002 750 曹洞宗・永平寺(これも京ではありませんね)
    役行者(「えんのぎょうじゃ」と読みます) 2000 1300 本山修験宗・聖護院(かぶら)
    無窓国師 2000 650 臨済宗・天龍寺(紅葉)
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  11. IFNβ治療に関連して皮膚血管炎が発症しうることが示されています(Clin Neuropharmacol 2009;32:301-3)。Disseminated cutaneous lesionsの特徴は、”palpable, small, red papules of round shape up to 2 to 3 mm in diameter”. ステロイドに良く反応するそうです。

  12. 古典型MSでも抗体と補体が沈着していることが改めて示されましたが、補体の沈着部位がNMOとは異なることが示されました(Arch Neurol 2009;66:1298-9)。当初、Lucchinettiらが発病初期(発病から0.6-4.9ヶ月:平均1.4ヶ月という超初期)の脳生検で得られた病理組織を4つのpatternに分類し(Ann Neurol 2000;47:707-17)、inttraindividualではpatternはhomogenousで一定であることが示されました。当初からMSを対象とした研究であったはずですが、その後の同研究グループからのNMO研究成果があまりに顕著であったために、抗体と補体が結合するpattern IIはNMOのことではないかという誤解が生まれました。

    NMO-IgG陰性のMS患者85例の病理像の頻度は、pattern Iが15例、IIが53例、IIIが17例、IVが0でした。脳生検を施行した時点で、バイアスはかかっていますが。抗体と補体が沈着するpattern IIが62.4%も占めていたことが注目されます。ここで強調されているのは、補体の沈着部位が異なること。C9neoはNMOでは血管壁に沈着していますが、MSではミエリンを貪食したマクロファージに認められていることです。これは、マクロファージをeffector細胞とするADCCが作用している可能性も示唆しているかも。もちろん、単に壊れた組織を貪食しただけかもしれませんが。また、NMOとは異なり、当然ですが、AQP4の染色性は失われていないことも示されています。  

    それ故、再発時の血漿交換療法はNMOで強調されていますが、古典型MSでも効果が期待される患者さんがいらっしゃる、ということも示唆しているように思われます。このことは過半数の患者さんでADCCが働いているかもしれないということとともに、短い報告ですが、大変重要な研究結果であると思われます。  

    もう一つ強調しておかなければならない点は、MS患者CSF中のオリゴクローナルIgGバンドは診断上の重要な所見として、脳MRI所見と併せて用いることでより診断効率が向上するとして近年注目されていますが、病態を考える上でも、抗体の対応抗原が何であるかなど、もう一度再検討が必要であることを示唆しています。

  13. NMO再発時のCSF中IL-6が増加していることが千葉大学から報告されています(J Neurol in press)。MSでは全く上昇しませんが、9/17例で明らかに増加しています。IL-6を分泌する細胞として著者らはTh17細胞に注目していますが、Th17はMSでも注目されおり(Nat Med 2008;14:337-42; Ann Neurol 2009;65:499-509)、Th17だけでは説明できないかもしれません。一方、RRMSに比して、NMO患者のCSF細胞はMOG刺激でIL-6を産生することがすでに示されています(Neurology 2004;63:2363-70)。まだ、この領域は混沌としています。
  14. NMO患者の脳MRIの造影病変”Cloud-like”であるという報告が千葉大学からなされました(Ann Neurol 2009;66:425-8)。MSに比して、造影病変の境界がblurredであることが強調され、この現象は18例のNMOの検討では90%で認められたそうです。  
  15. 出産時に母体が死亡する確率はMS有病率と同じ
    比較することには医学的な意味は全くありませんが、いずれも10万人あるいは10万件当たり7人だそうな。出産って今でも危険なんですね。
  16. 阪大医学部卒の作家、霧村悠康はすでに10冊以上、上梓していますが、すべて文庫書き下ろしで、ハードカバーがありません(どうも処女作の「摘出」だけは単行本だったようです)。しかも、いずれもマイナーな文庫なので、八重洲ブックセンターにでも行かないと発見できません。腫瘍外科医で腫瘍免疫を研究していらした方なので、そちらの方面の記述は詳細です。しかし、プリオン病の記述はあまりに不正確。ま、それらを差っ引けば、充分に面白いミステリーです。初期の「昏睡」(新風舎文庫)は枝葉の多いミステリーですが、楽しめます。まるで「白い巨塔」。「吼える遺伝子」と以前、新風舎文庫から上梓され、再出版の「摘出 黒いカルテ」を出した、青山社文庫はALS協会の松岡幸雄さんの奥様で、「ハリーポッター」シリーズの翻訳者でもある松岡佑子さんがご主人から引き継いだ出版社による新しい文庫。
  17. 脂肪萎縮症と筋疾患を主症状とするPTRF変異による疾患が国立精神神経センター神経研究所疾病研究第1部の西野先生らのグループが報告しています。以前、新潟大から豊島、山田らが主治医となって報告した姉弟例があって、その後、私も主治医になり、reviewを書いたことがあります。(Tanaka M, Miyatani N, Yamada S, Miyashita K, Toyoshima I, Sakuma K, Tanaka K, Yuasa T, Miyatake T, Tsubaki T. Hereditary lipo-muscular atrophy with joint contracture, skin eruptions and hyper-gamma-globulinemia: a new syndrome. Intern Med 1993;32(1):42-5.)新潟例とは異なるようで、lipodystrophyは単一の疾患ではなく、ホットな領域になっているようです。西野らの報告例の特徴は常染色体劣性遺伝で、乳幼児以降に発症する全身性脂肪萎縮症、糖代謝異常、脂質代謝異常、ミオパチーを主症状とします。(J Clin Invest 2009;119:2623-33 )新潟例と臨床的には区別できないようですが・・・

  18. 微小血管狭心症
    女性特有の疾患なんだそうな。閉経期に左胸部痛で発症。エストロゲン分泌低下により筋内の微小血管が収縮してしまうため。特徴は、ニトロが効かず、治療法が異なること。更年期が終わると消失するそうです。ただ、心筋梗塞を起こすリスクが高いという報告が米国から最近出ているそうですから要注意。女性の循環器内科医が説明していらっしゃいました。(TBS系列「週刊! 健康カレンダー カラダのキモチ」2009/10/18放映より)
  19. 年齢判定基準
    フォーククルセダーズの加藤和彦さんが自死された直後に、新型インフルエンザワクチンの医療従事者への接種が開始されました。京都府では3万本しか入手できず、今後に入荷する分は患者向けになるため、医療従事者は最初の2回の出荷分に限定されることとなりました。そこで、当院医局で非公式に(昼休みの雑談ですが)出た提案はアラフォー以上は接種を遠慮しようやないか、というもの。職員の子供が罹患しても親に感染することはなく、メディアで報道されているのも重篤になるのは30歳未満。やはり、70年代の豚インフルに感染している世代は大丈夫なのでしょうか?もちろん、職員であれば生年月日はわかるわけですが、年齢詐称を接種時に簡単にスクリーニングする方法として、フォークルの3人のメンバー全員の名前をフルにいえるかどうか、なんていう意見がありました。これはアラフォーでもちょっと無理。ちなみに、きたやまおさむさん(京都府立医大)、はしだのりひこさん(同志社大)です。加藤さんが龍谷大ですべて京都市内ですが、大学はばらばら。同じ京都ですが、岡林信康(同志社大)のヒット曲を3つ挙げよ、なんていうとこれはもう団塊の世代のリトマス紙。ピンクレディのヒット曲を3つ挙げよ、のほうがアラフォーにはええかな?
  20. 東北地方には天皇家の血筋が多いかもしれない、という指摘が竹内久美子さんから出されています(「遺伝子が解く! 万世一系のひみつ」文春文庫)。女帝誕生か!という議論が秋篠家の男児誕生で吹っ飛んでしまいましたが、万世一系の伝統にはY染色体の継続という生物学的な意義があると指摘。司馬遼太郎さんによりますと、源義経は奥州藤原氏に匿われていた頃、天皇の子孫だということで、貴種ということから「種馬」状態だったそうな。ペアで存在し交差も起こしうるX染色体と異なり、Y染色体は交差を起こさず、父から息子へ確実に遺伝子が伝わることから、遺伝子がキープされる、というのです。ただ、短いY染色体には男性を規定する以外にはたいした働きはしていないようですが。故に、東北地方には天皇家のY染色体が豊富に残っているのではないか、というもの。
  21. 「新・日本朝鮮戦争」森 詠著(TOKUMA NOVELS)がreleaseされつつあります。前のシリーズからは15年ほどの間隔をおいての新しいシリーズ。前回は4年間で15部まで出ましたが、今回は何部まで続くのでしょうか?今回は鳥インフルエンザが北朝鮮国内で流行することから始まります。まだ、第2部までしか出ていませんが、どういう結末になるのでしょうか?久しぶりに森 詠さんの著作リストを紀伊国書店のHPで見ましたら、ずいぶんイメージが変わってました。昔は政治的な環境を背景とした冒険小説、あるいはハードアクション系の長ーい小説を書く作家というイメージだったのですが、時代が変わりましたモンねえ。そもそも冷戦ではなくなったので、OO7シリーズを書いたイヤン・フレミングだったら、M5の情報員を主人公にどういう小説が書けるんでしょう?

  22. 「ミシュランガイド 京都・大阪2010」が発売されました。仕方ないので買いましたが、これっていろんな意味ではた迷惑な本。まず、余計に混んでしまうこと。しかも、先行した東京の例では、ドタキャンが多いためにお店が困っていること。そのため、食べてくださる方に捨てざるを得ない食材の原価を上積みせざるを得ず、商品単価が高くなってしまうことだそうな。筆者などには知らないお店ばっかりでした。  
    ほぼ同じ頃に発売された、以下の方がより便利でしょう。  
    高橋マキ 「ミソジの京都」 光村推古書院  
    関谷江里 「京都美味案内」 芙桑社       
         「京都でおいしい!」  枻(えい)出版社  難しい字です。

  23. 抗生物質の投与法
    PK/PD (pharmacokinetics/pharmacodynamics)理論から抗生物質の種類によって適切な投与法が知られています。ま、復習ですね。  

    アミノグリコシド系やキノロン系は薬物濃度に依存し抗菌作用が増強するので、効果はCmax/MICあるいはAUC/MICと相関します(バンコマイシンやテトラサイクリンではAUC/MICと相関)。一方、β-ラクタム系では、通常MICの4倍以上では飽和するので、MICの持続時間を長くすることがよい、ということになります。  

    カルバペネム系メロペネムを0.5 g 30分点滴1日3回から0.5g 4時間点滴1日3回に変更することにより予測されるtime above MICを29%から51%に延長した結果、11日間投与後に緑膿菌が陰性化した、という報告があります(化学療法の領域 2005;21:405)。(医事新報2009; 4450:83-4)
  24. 「法廷に吹く風」佐木隆三さんの新作
    裁判員制度が始まっていますが、ありそうな六つのsituationを背景に、裁判員たちの苦悩を描いた短編集。佐木さんの地元の版元、福岡市の弦書房から出版されています。朝日新聞社の「論説」に連載されていた小説ですが、短編という制約のためか、裁判員たちの心の描写が乏しい感じは否めません。小説家というよりはノンフィクション・ライターである著者の特徴を生かしたともいえるでしょうが、実際にあった事件とよく似た設定をすることで、裁判員制度の抱える問題点を小説の形で明らかにしようとした意欲作と言えるように思われます。

  25. Lupoid sclerosis
    死語かと思いきや、報告が出ました(Rheumatol Int 2009 in press)。SLEとNMO両者の診断基準を満足する病態で、ここでは今までのreviewがされ、自験5例(詳細は不明)が紹介されています。うち、3例はNMOだそうです。残りは本当に古典型?古典型を積極的に診断する方法がないため、NMOと言いきれないケースというだけなのかもしれません。こういう例では確かにIFNβ治療は禁忌ですね。