2013年12月号

  1. 韓国からNMOsdへのRituximab治療5年間の報告
  2. Monoclonal antibody治療により発現するPMLの頻度
  3. 抗CD20抗体・RituximabでHB virusが活性化
  4. L-selectinはNatalizumab-treated MSでのPML発症を予告
  5. 「京都ルール」(中経出版)
  6. NMOでの病変分布の特異性を規定する因子
  7. 権力者の傲慢は脳の仕組みに起因している可能性
  8. 2013 ECTRIMS報告 Part 3
  9. 血中microRNA解析でRRMS/SPMSが識別
  10. 死亡者の住民税のおかしさ
  11. Natalizumab中止後のFingolimod治療開始早期での再発
  12. ダラットコーヒー
  13. NatalizumabからFingolimodへのswitchは3ヶ月空けて
  14. Fingolimodによる自己免疫性溶血性貧血
  15. 小布施のモンブラン
  16. Paraneoplastic isolated myelopathyで認められる抗体と頻度
  17. Mayo ClinicでのParaneoplastic isolated myelopathy31例
  18. ドクササコ中毒の重症度は3段階に分かれる
  19. 抗amphiphysin抗体によるstiff-person syndromeの責任病変
  20. 抗amphiphysin抗体の機序
  21. 東京の美味しいハンバーグステーキ
  22. 英断でしょうねえ、在韓被爆者への医療費支給を大阪府知事が決断
  23. Harding病あるいはHarding’s syndrome
  24. 50代は伝書鳩
  25. 破傷風
  26. 獣肉媒介寄生虫症
  27. ゲテモノ食いによる寄生虫症
  28. 大脳にmass lesionsを形成する寄生虫の鑑別
  29. 「京都鳴滝-謎多き里の歴史の光と影」
  30. 「成人スキルの国際比較-OECD国際成人力調査(PIAAC)報告書」
  31. 「京都建築専門学校 銭湯マップ」
  32. 宮崎シーガイアは不思議なホテル
  33. 第34回日本アフェレシス学会が軽井沢で開催
  34. C型肝炎ウイルスはセックスで感染しない
  35. Yahoo!知恵袋などに見るビッグマウスの心理学
  1. 韓国からNMOsdへのRituximab治療5年間の報告
    Prof Kim HJのグループから(JAMA Neurol 2013;70:1110-7)。30例でスタートして3例が脱落。1例はfollowから脱落し、1例は効果不充分で、1例は頻回投与を要したため他の治療法へswitch。単独治療で、ステロイドへのadd-onではありません。27例中11例で合計21回の再発が認められています。治療をミスした患者さんも含められてはいますが・・・再発の重症度は不明。確かに、一部の患者では再発したり、中には効果が無いという患者さんもいることはMayo Clinicのグループも言っていましたが、この再発回数は少し多め。多くは3年を過ぎると再発しなくなるようですが、えらく時間がかかっているのは単独治療だからでしょうか。中和抗体測定の記述はありません。結果、再発もしていたため、EDSSがどうなったのかは重要ですが、不明。
  2. Monoclonal antibody治療により発現するPMLの頻度
    MedlineやWHO adverse event databaseで集計した数字が報告されています(Can J Neurol Sci 2011;38:565-71)。少し古いですが、その後の類似の報告が見あたらなかったので・・・この時点ではRituximabがトップ。現在は・・・?Natalizumabの次であることは確かですが。
    Rituximab         114例
    Natalizumab        32
    Alemtuzumab       14
    Efalizumab         8*
    Ibritumomab tiuxetan    5
    Infliximab         4
    Bevacizumab        3
    Cetuximab          1
    Adalimumab         1
    * LFA-1のCD11a subunitに結合する抗体。乾癬に対する治療として利用されていましたが、1/500人の頻度でPML発症したため2009年4月に市場から消えました。
  3. 抗CD20抗体・RituximabでHB virusが活性化
    末梢血中のB細胞はほぼ消滅しますが、T細胞は減少しません。しかし、APCとしての機能が低下するからでしょうか、Rituximab治療によりHBウイルスが活性化するという報告が出ています(Am J Hematol 2009;84:195)。
  4. L-selectinはNatalizumab-treated MSでのPML発症を予告
    乾癬に対する治療に使用されていた、efalizumab (LFA-1に対するモノクローナル抗体)でPML発症のために発売が中止されました。この抗体は接着分子に対する抗体であり(Neurology 2012;78:458-67)、CD49dのような他の接着分子の発現に影響することが解っている(J Invest Dermatol 2008;128:1182-91)ため、Natalizumabでも検討されました(Neurology 2013;81:865-71)。PML発症前にCD4+CD62L+が劇的に減少(治療前の40.2%から4.6%へ)することが判明しました。rituximabやefalizumabで治療中の患者(13%)やHIV患者(10%)で発症した急性PMLでも減少していました。CD8でも同じ傾向がありますが、CD62LはCD8よりもCD4のほうでより発現量が多いために、変化が目立つのだろう、と。他の治療薬やHIVでも同じ現象が認められたことは、CD62Lの減少がJCV特異的な免疫応答に関与している可能性を示唆、と考察しています。  

    すでに、私たちはFingolimod内服すると、CD4+CD62L+細胞がその日のうちに激減することを報告しています。FingolimodでPMLが発症した患者さんが1例報告されています。関連があるのでしょうか?その割に頻度が低いですが・・・この報告は2013年ECTRIMSでも話題でした。
  5. 「京都ルール」(中経出版)
    毎春、新人の学生が大挙して京都に住むようになるわけですから、京都案内本が市内で売れるのは当然ではありますが、こんな本まで京都新聞朝刊1面に広告が出ます。どんなことが書かれているか、広告で紹介されていた項目は・・・

    「足はチャリンコ」 自転車のことをチャリンコなんて言うのは大阪だけかと思いましたが、最近の子供達は京都でも使います。市内に自転車専用通路を歩道に描いているのは堀川通などごく一部ですが、自転車で移動するのはとても便利。逆に言えば、自転車で移動できる範囲内で日常的に必要な買い物などは充分可能です。

    「バスの代表的系統は頭に入っている」 一方通行の狭い道路も走りますから、往復で、道路が異なることがあります。一部が山手線のように環状になっている路線では降りた停留所から帰りも乗ることになります。京都市内のバスは観光客も利用しますので、近くを走る路線なら有名な観光スポットに必ず寄ります。最短距離を走らないので、普段、利用しない路線は確認しないと間違えます。京都生まれのヒトでも、普段利用しない路線は全く知りませんし、そもそも有名な観光地にも行ったことがない人さえいます。乗り換えもできるようになればバス利用者としては一人前でしょうが・・・

    「『天一』や『王将』の”行きつけ”がある」 これは確か。不思議ですが、チェーン店なのに味が違います。

    「大文字焼ではなくて、五山送り火」 大文字だけではないのですから当然。  

    そう言えば、エスカレーターは関西では右側に立ちますが、京都駅や四条では関東風に左側に立ちます。地元の人が少ないためでしょうか?私の覚え方は、「関西には橋下がいるから、右!」 大阪はミュンヘンになり損なった!  
  6. NMOでの病変分布の特異性を規定する因子
    NMOではAQP4の分布と病変部位が一致はしていますが、頻度は異なります。圧倒的に視神経と脊髄が傷害される頻度が高いことの説明はありませんでした。MSでも頻度は高いのですが・・・視神経と脊髄ではAQP4のmRNAと蛋白の発現量が多いんだそうな(JAMA Neurol 2013;70:1118-25.)。
  7. 権力者の傲慢は脳の仕組みに起因している可能性があることをカナダのウィルフレッド・ローリエ大学の研究者らがまとめたことをCNN日本語電子版が2013年10月28日に伝えました。「人が自分の権力を認識すると、脳の仕組みがはたらいて他人に対する思いやりを失ったり、他人の立場に立って考えることができなくなったりすることが、今回の研究で示された」そうです。ただ、「米リーダーシップ研究機関が世界38カ国の管理職約6000人を対象に実施した2011年の調査では、思いやりのある管理職ほど高い実績を上げていることが分かった」そうで、周囲を見てみましょう!ひどい奴もおるなあ・・・
  8. 2013 ECTRIMS報告 Part 3
    薬剤を選択する場合、どっちの効果が強いんだろうか、と気になりますね。Fingolimodとフマル酸(BG-12)の各々placeboを対照とした2000名ほどの患者さんが参加したPhase III studyを比較して計算した結果が報告されました(#1105)。対照群が一様なので間接比較ではありますが期待を持てますね。再発回数と3ヶ月間進行しない割合(1.21 [1.06-1.39])、MRI activityが認められない割合(1.40 [1.03-1.93])のいずれでもFingolimodが有意に優位でした。ただし、baselineでの患者さんの特性が違っていて、フマル酸の方が疾患活動性(造影病変数-1.4 vs 1.9-やT2病変数-ほぼ倍です)が高いんですね。どう評価したら良いのか・・・活動性が高かったためにプラセボとの差が小さかったのか、逆に、活動性が低いともっと差が出なかったのか・・・?  

    Natalizumabは来年、国内でも発売される予定ですが、中和抗体が6%で出現し、hypersensitivity reactionが1.3%で認められるとされています。数例で局所的なヘルペス感染症の報告があり、死亡例も報告されています。最も大きな問題はPMLでしょう。Natalizumabを安全にMS患者さんに投与するためのモニタリングとしては、
    中和抗体      3, 6, 12ヶ月後に測定
    抗JCV抗体     6ヶ月毎に
    脳MRI        年に1回
    PMLが疑われたら、薬剤を中止し、脳MRIとCSFのPCRを行う
    PMLなら血漿交換をし、IRIS予防のためにステロイドを投与。(#176)
    他の薬剤を投与することになるが、switchする場合の間隔をどうするか?薬剤により異なる可能性がありますが、Fingolimodなら3ヶ月が一般的でしょう。  

    PMLの鑑別診断上、PMLでは視神経炎や脊髄が傷害されないことがポイント。発症直前にCD62L+CD4+が急上昇するので、L-selectinがpre-PMLのbiomarkerになることが紹介されました。また、anti-JCV antibodies index (この定義が不可思議なのです。問い合わせたところ、anti-JCV antibody陽性血清を希釈して標準品としたものだそうな)がCSFで上昇することが示されました。特異性は100%、感度は63-80% (p <0.0001)。血漿交換で薬剤の血中濃度は著減しますが、トリプトファンカラムによる吸着でも良い、と。IRISはウイルスのeliminationに必要な過程、と。治療にはmirtazapine、mefloquine、zidofovirを使用。痙攣を超すことも。生存率は75-80%ですが、重篤な後遺症が40%に(JNNP 2013;84:1068-74)。(#177)  

    抗JC virus antibodies indexという抗体価をvirus-like particleを抗原とした、2-step ELISA改良版でBiogenのラボが報告しています。ただ、この定義が曖昧で、キャリブレーターに対するOD値の比で抗体価を表現しているのですが、negative controlではなくて低力価の健康人の血清も入っているそうなのです。#181ではCSF中のこのindexを評価。Natalizumab治療中のMS患者89例とNat関連PML患者25例とのCSFを比較すると、有意差が認められたそうな(p <0.0001)。CSF中のJCV PCRではfalse negativeがあることが問題とされ、こっちの方が診断に有用と他の報告で強調されていました。JCV DNA copiesとindexは相関しないそうです。

    400例ものNatalizumab治療のMS患者を解析。L-selectinは治療開始6-10ヶ月後に15%位にまで低下。治療によりCSF中のCD49d+ T細胞がCD4だけでなくCD8陽性細胞でも著減するので、CNSへ入る際にCD49d以外の接着分子を利用していると考えられるそうです。末梢血のL-selectin (CD62L)はPML発症を予告します(Neurology 2013;81:865-71)が、Nat治療開始18ヶ月後にCD4+CD62L+が少ない場合、PMLのリスクが高い、と。PML発症すると増加します。CD4陽性細胞内のCD62L+が30%以下が62/346例(17.9%)ですが、継続的に低かった10例(2.9%)ではうち1例が発症。抗JCV抗体陽性患者の場合、治療開始18ヶ月後にCD62Lをチェックし、再検しても低いようなら治療を中止するべき、と主張。ただ、CD62LとJCV immune surveillanceとの関連は不明。(#232)  

    2013年5月6日までにNatalizumabを投与されたMS患者さんのうち、359例がPMLを発症(#413)。Nat-associated PMLで生存している患者さんと亡くなった患者さんの背景を調べてみる(2012年10月の時点での解析で21%が死亡)と、PMLと診断された年齢が生存者の方が若く(mean ± SD, median, range; 43.5 ± 9.2, 44, 15-71 vs 49.5 ± 9.7, 50, 24-73, p <0.0001)、PML診断時のEDSSが低く(mean; 3.5 vs 5.3, p =0.0004)、CSFでのウイルス量が少ない(mean, 106382 copies/ml vs 575552 copies/ml, p <0.0001)ことが判明。生存率曲線を描いてみますと、えらく緩やかで、致死的な疾患というイメージからはほど遠いことが判ります。生存率は診断4ヶ月後で82.1%、9ヶ月後で81.0%、15ヶ月後で75.8%、29ヶ月後で73.9%。グラフを見る限り1000日後以降はほぼ横ばいで、3年を経過すると死亡者がほとんどいないようです。  

    Anti-JC virus antibodies indexについて多くのポスターで触れられていましたが、Biogenの研究者たちが定義したこの原理が理解しにくいのです。抗体自体はvirus like particleというJCVを構成しているペプチドを抗原として、感度や特異性を上げるために他のウイルスで吸収したりして、2-step ELISAで行うのですが、ここまでは普通の抗体測定。PMLの診断に役立つように特異性を追求した結果、抗体価の表現法を工夫したもの。ELISAプレートのOD値そのままでは測定するたびに変化しますので、コントロールをおいて比較値で表現します。ここではそれが少し変わっているようで、キャリブレーションとの比で表現しているのですが、ここでリファレンスとして利用しているのが、抗体陰性の健康人血清やCSFではなくて、PMLを発症していない健康人の低力価の抗体陽性サンプルを利用していること(これは問い合わせた結果)。これではリファランスがロットの違いで変化する可能性があるはずだと思うのですが・・・現在、さらに問い合わせ中です。(#1067)ではPML診断にこのindexが有用であることを報告。つまり、単に抗体陽性ではウイルス感染者でしかないですし、CSFのウイルスPCRも感度が低いので、これが有用である、と。ここではCSFではなくて、血中の抗体を解析し、感度は93% (95%CI: 80-99%)で、特異性は70% (67-81%)で、6%にfalse negativeという結果でした。尿中のウイルスをreal time PCRで検索して血中の抗体と比較しますと・・・尿中のDNAより当てになるようです。
    Anti-JCV ab-positive negative
    JCV DNA positive 28 2
    Negative 16 37

    本来ならJCVに対する一般住民でのseroconversionが毎年2.5%なのに、Natalizumab治療中では30%に達すると複数の報告が示しています。STRATIFY testという今やスタンダードになっている、抗JCV抗体測定法(anti-JCV ab index)を用いて、抗体陰性Natalizumab治療MS患者の10-12ヶ月後の抗体の有無を調べた結果が報告されていて、45例中15例(33%)が陽転していることが判明(#599)。やはり、Natalizumab治療中は感染しやすいのか、抗体ができやすいのか、いずれにせよJCVに対する免疫監視機構に変化が生じることは確かですね。  

    PMLの発症率に米欧で差があることに関して、従来は欧州では免疫抑制剤治療歴を有する患者が多いためと考えられてきましたが、今春 (2013年)のAANで米欧での患者の体重差が原因と報告されました。(Tanaka M. Topics of MS research presented at the 65th American Academy of Neurology Annual Meeting held at San Diego in 2013. Clin Exp Neuroimmunol, 2013;4:107-13.)  

    その流れになると思われますが、隔月(実際は6あるいは8週毎)投与という治療法の提案がありました(#1068)。81例を対象に24週間治療したところ、再発率、脳MRI activityは4週毎に投与した場合と有意差はありませんでした。観察期間がまだ短いですけどね。PMLのリスクは本当に小さくなるのか?治療後のseroconversionが低下するか?一般住民での陽転化率にまで低下するかどうかが鍵でしょう。  

    NatalizumabからFingolimodへswitchした結果が報告されました-ENIGM study-(#623)。フランスの36病院でNatalizumab加療中の4500人のMS患者さんのうち、Fingolimodへswitchした308例を対象に解析。平均年齢は41歳(18-67歳)、F/M比は2.36。平均投与回数は21回(range: 1-80)。72%がJC virusの抗体陽性。Natalizumab中止の理由で最多はやはりPMLのリスクで40%、他に患者の選択が25%、効果が不充分(20%)、耐えられない(6%)。Washout期間は平均17週(2-156週)で、55%はこの間に全く何も治療を受けておらず、45%はステロイドパルスを受けていました。3ヶ月以内が20.3%、3-6ヶ月が30.9%、6ヶ月以上が58.8%。27%の患者がwashout期間中に再発していて、このリスクは、washout期間の長さと相関し(p<0.001)、3ヶ月以内の再発リスクのORは0.23 (0.1-0.65, p<0.001)。Natalizumabを中止したことによる再発のリスクは当然あって、ORは3.2 (1.5-6, p<0.004)。勿論、Natalizumab治療前の疾患活動性とも相関(p=0.03)していました。Fingolimodへ切り替えた後に20%が再発していて、washout期間中の再発が唯一のFingolimod治療中の再発を規定(OR: 3.8, 1.3-7.6, p=0.05)。つまり、washout期間中の再発がその後の予後を決め、Fingolimodを開始した後ではない、と。これらの結果から、washout期間は12週以上長くするべきではない、というのが結論。パルスの再発予防効果は不明。  

    喫煙はMS発症のリスクになることは確立していますが、詳細について紹介されました(#118)。発症リスクはOR: 1.48 (95%CI: 1.35-1.63)。発症時に喫煙しているか否かが問題ではなく、既往歴でもリスク。肺がんとはリスクの性質が異なるようで、一日の本数にかかわらず、喫煙していた期間がリスクが関与。同じ期間なら、本数が多い方がリスクが高いというわけではなく、ほとんど変わらないそうな。  

    Prof Haflerらにより食塩を摂取するとTh17が活性化するという論文は一世を風靡しました。ちょこっと気になるのは、Th17だったらMSよりもNMOの方がやばいんじゃないの?Hafler教授はInt Neuroimmunol Meetingでの口演で、米国のファーストフードはリスクだとおっしゃってました。その関連の報告で、イントロのスライドでちょっと驚きました。Na摂取量の比較のグラフが出され、WHO<USA<Japanだそうで、しかもその量がそれぞれ2.0、3.2、5.0mg/dayだそうな。少なくないか?ラーメンを最期の一滴まで吸ったら、1杯で10gいかないですか?NaClじゃないからなのかな?さて、18-20歳女性の肥満がMS発症リスクであることも話題ですが、肥満とNa摂取量とは相関するんだそうですね。Na摂取量の測定を尿中Naから類推可能だそうです。尿中のNa排出量をspot urineで推測するTanaka式というのがあるそうです。Na摂取量と再発率だけでなく、MRI activityやT2病変量とも相関。しかし、血中Na値とは相関せず。発表後、座長からNa摂取が増加すると、BBB hyperpermeability亢進しないか、と質問あり。ん?(#119)  

    有病率10万人当たり227人でMS患者が全国で12500人というデンマークで2511例を対象にアンケート調査が行われました。回答率72%。うちデンマーク人は83%で、そのうち1383例(93%)を解析。BMIは20歳時点、喫煙とアルコールは15-19歳での有無、伝染性単核症は20歳未満での発症で評価。すると、BMI増加より3.6年、IMで2.5年、アルコール摂取量が週に5単位以上で(この単位が不明ですが)2.5年、それぞれ発症年齢が早まるそうです。(#120) これに対して、座長はanorexiaもMS発症のriskだと。  

    EBVとMSの関連はよく知られています(神経内科 2013;79:275-84)。EBVの再活性化がMS病変形成の原因になりうるか否かについて検討されました(#876)。9例について経過を追ったところ、末梢血単核球や血漿、唾液でのEBV DNAの存在と、2週後の脳MRIでの造影病変数との相関や、in vitroでEBV刺激後のIFNγ産生細胞数と造影病変数との相関が認められました。また、omega-3 fatty acidsを用いたtrialの機会を利用して、87例を対象に24ヶ月間monthly brain MRIとEBVに対する血清反応の関連を検討した結果も報告されました(#885)。性や年齢、HLA-DRB1*15で補正後、全経過中のEBNA-1 IgGの10倍増加と脳MRI activityとが相関していました(OR: 4.96, p=0.016)。この現象はIFNβ治療前で有意に認められましたが(OR: 8.78, p=0.045)、治療中は認められなくなりました(OR; 3.54, p=0.138)。逆に、VCA IgMの10倍増加とMRI activityは逆相関していて( OR:031, p=0.026)、増加するほど疾患活動性が低くなることが判明しました。EBNA-1 IgGとは逆に、この逆相関現象はIFNβ治療前は認められませんでしたが(OR; 0.41, p=0.219)、治療中は有意でした(OR; 0.69, p=0.030)。これらの結果から、EBVに対する抗体反応は疾患活動性に関連していることが示唆されました。  

    NMOの臨床治験でのprimary endpointとしては再発率ではなく、再発までの時間を指標として評価するべき、という報告がありました(#746)。倫理的にもこのほうが良いでしょうね。

    九大から全国調査で見いだされた、中枢(MS)と末梢神経(CIDP)の両者で脱髄病変が認められた患者(combined central and peripheral demyelinations: CCPD)で血中の抗体の検索結果が報告されました(#274)。recombinant neurofascinを抗原としたELISAではCCPDの86%、MS患者の10%、CIDP患者の25%、GBS患者の15%で陽性。さらに、cell-based assayでは5/7例のCCPDで陽性。  

    細胞内ドメインも含んだcDNAを用いて細胞に発現させたMOGと多くが細胞外のみのcDNAによるMOGを用いた抗体測定の比較が報告されました(#158)。その結果、full-length MOGのほうがtruncated MOGよりも抗体陽性率が高いことが判明。三次元構造に影響するのかもと演者は述べていました。検査をした対象は、16歳以下で発症した、視神経炎やADEMなどを含む小児の急性脱髄性症候群28例。
       Full length MOG 29%  truncated MOG 7%
     Optic neuritis   2/7例  1/7例
     ADEM  1/3  0/3
     Transverse myelitis  1/12   0/12
     CISなど   4/6 (うち3例で再発)  1/6

    同じ抗原を使用する限り、抗体の検出方法が免疫抗体法でもFACSでも陽性率は同じ。抗体陽性者の性比はM/F: 3/5。Full lengthでのfalse negativeはなし。抗AQP4抗体陽性患者100例中抗MOG抗体陽性はなく、double positiveはない。  2ヶ所のブラジルの医療機関と東北大でのNMOsd患者215例を対象に抗MOG抗体を検索(#260)。152例がブラジルで63例が仙台。ただ、陽性率に人種差があるかどうかは不明。全体では16例(7.4%)で陽性。各グループ別では・・・
     AQP4-antibody seronegative 16/76 (21.1%) M/F比は10/6と男性優位 
     Definite NMO  1/101
     LETM  5/78 (6.4%)
     Bilateral and/or recurrent ON  10/36 (27.8%)

    20例のanti-AQP4陽性NMOと9例のanti-MOG陽性NMOの臨床像を比較した報告がありました(#263)。
       anti-AQP4-NMO  anti-MOG-NMO p  
    女性患者の%   90%  44%  0.0164
     発症年齢  44.9  32.3  0.0538
     classic Devic or
    rapidly sequential ON & myelitis
     0% 44%    0.0053
     発症時の排尿障害  0%  33%   0.0230
     median EDSS   5.5  6.0  ND
     median EDSS at best  4  0  0.0098
     recovery conus involvement on MR I  17%   75% 0.0194 
     その後の再発  40%  0% 0.0332  

    anti-MOG-NMO患者はanti-AQP4-NMO患者に比して、男性比率が高く、発症年齢が若く、早期に排尿障害と脊髄MRIでそれに対応するconusの病変が認められる特徴を有し、障害度の予後は良好。  

    AQP4-negative NMO患者の27例中4例(15%)に抗MOG抗体が陽性で、抗AQP4抗体陽性(22例)とdouble positive例はなく、成人MS患者48例では陰性だった、という報告あり(#715)。また、seronegative NMO/NMOsd62例中6例(10%)で抗MOG抗体が陽性だった、という報告も(#264)。  

    Anti-IL6R monoclonal antibodyであるTocilizumabはanti-AQP4 abを産生するplasmablastのgrowth factorであることがYamamuraらにより示され、NMOに対する治療が内外で試みられています。SteroidやRituximabへのadd-on治療効果がすでに報告されています。神経センターからはTCZ治療によりCD56highNK細胞が徐々に増加することが示されました(#736)。この細胞はヒト型anti-CD25 abであるDaclizumab治療中のMS患者で認められ(Clin Immunol 2012;142:9-14)、この薬剤の治療効果の機序と考えられています。ただ、治療効果は早くから認められる可能性があるので、抗体産生細胞への成長抑制(免疫応答の上流への抑制)では時間がかかりすぎるので、説明しにくいように思われます。疼痛にも効くので、IL-6が疼痛だけでなく、NMO再発機序に関連した免疫応答の上流ではなくて下流にも作用しているように思われるのですが・・・  

    フランスのデータベースを使用した自殺に関する解析が報告されました(#775)。15のMS Centersで2009年元旦以前に発症した27617名のMS患者が対象。810例の死亡例があり、うち46例が自殺が死因。性比(M/F)は26/22。女性が多い疾患なので、男性患者が目立ちます。これらの患者の死亡時年齢は20から69歳(mean±SD: 46.9±10.9)、罹病期間は2から46年(13.1±9.6年)。自殺者の1/4は発病5年以内。この頻度に注目しました。Fingolimod発売当初に心停止の副作用が問題になったとき、EMAがまとめたFingolimod治療後に死亡した患者30例のうち、6例(20%)が自殺者と今回の頻度(5.6%)に比してやはり高いことに注目するべきでしょう。
  9. 血中microRNA解析でRRMS/SPMSが識別
    Prof Weinerのグループから報告されています(Ann Neurol 2013;73:729-40)。hsa-miR-92a-1*はRRMSとSPMSおよびRRMSとhealthy controlとの間で異なり、EDSSおよび罹病期間と相関。さらに、RRMSとSPMSとで発現が異なる、let-7とmiR-92により、RRMSとALSの識別も可能であるだけでなく(これは余り利用価値がありませんが)、SPMSとALSを識別できなかったことから、両疾患に共通の疾患プロセスの存在が示唆されたそうです!
  10. 死亡者の住民税のおかしさ
    元旦に生きているかどうか、で判断されるんだそうですね。つまり、1月2日に亡くなっても、その年丸々1年分住民税の請求が来ます。おかしくはないですか?1年を四つに分割できるので、住民税はせめて4分割するべきでしょう。昔ならともかく、今はコンピューター管理されていますから、死亡診断書が提出された時点で行政から連動して動くシステムは税金だけで、年金も未だに連動しないため、遺族が申請する必要があります。で、問題が生じるわけで・・・
    1). 1月1日と2日とで住民税が全く違ってきますから、2日の午前1時に死亡するくらいなら、元旦の23時に死亡した、と死亡診断書に書いて欲しいと家族が主治医に希望する可能性はあり得ます。相続税が変わってくることもあるようで、死亡日時はトラブルになる危険性がありますし、私文書あるいは公文書偽造になりますから、日時の変更は止めるべき。たとえ診療録自体の記述が最初から遺族の希望通りで文書偽造にならなくても。
    2). 遺族が年金を止める申請をしないでもらい続けることは、今後も出てくるでしょう。  コンピューターに入力されているわけですから、年金は連動させるべきでしょう。銀行は死亡後も金はかかりますし、民間企業なので、連動は無理。
  11. Natalizumab中止後のFingolimod治療開始早期での再発
    NMOでFingolimod治療開始直後に再発することが知られていますが(Mult Scler 2012;18:113-5; Clin Exp Neuroimmunol 2013;4:239-40; 臨床神経 2013;53:513-7)、NatalizumabからFingolimodへ移行した直後にも再発しやすいことが知られています(Mult Scler 2012;18:1647-9; Mult Scler 2012;18:1640-3; Mult Scler 2012;18:1650-2; Neurology 2012:79:2004-5)。似た現象ではありますが、意味合いは違うように思っておりました。後者の報告では、7/22 (32%)でFTY開始1ヶ月以内に疾患活動性が亢進し、4例が再発し、3例が脳MRIで新病変が出現。Fingolimod治療開始直後に重篤な再発が出現したという症例報告(Neurology 2012;79:2000-2; Neurology 2012;78:928-30; Neurology 2013;81:403)がありますが、これらはNMOではないのだろうか?  

    イタリアからの類似の報告がでています。5/11例(45%)で再発したそうな。2例は2週間以内。この場合、前治療はNatalizumabではなくて、IFNβやCA。最大1ヶ月間のwash-outをしたそうですから、治療offの期間はそれほど長いわけではありません。FTYの効果発現まで、3ヶ月はかかるようですから、ある程度は理解は可能なのですが・・・本当にNMOとMSでFTY治療開始直後の再発に病態の差異があるのか・・・?
  12. ダラットコーヒー
    フランス人が避暑地として開拓した標高1500mのベトナムのダラット高原で栽培された豆を使用しているそうです。アラビカ種とロブスタ種、クリ種をブレンドしたもの。小松空港JALラウンジや香林坊のカフェモーダ、金沢市内の創作友禅アトリエ桃梨(076-253-1247)で飲めます。人工的ではないのに、香りが強い個性的な珈琲。
  13. NatalizumabからFingolimodへのswitchは3ヶ月空けて
    Fingolimod開始まで3ヶ月以上空けると、再発頻度が急上昇するため(Mult Scler 2012;18:1647-9; Mult Scler 2012;18:1650-2; Mult Scler 2012;18:1640-3)、このような意見が大勢を占めています(Mult Scler 2013;19:1248)。筆者がすでに半減期と脳内の免疫応答を完全にかつ連続的に抑えないようにするためにはこの数字しかないと考え、2012年1-2月から導入していました。
  14. Fingolimodによる自己免疫性溶血性貧血の報告がでています(Mult Scler in press)。  
  15. 小布施のモンブラン
    桜井甘精堂が本店の隣で経営している、栗の木テラスで販売している一番人気のケーキ。シュークリームもありますが、どちらも栗がふんだんに使用されていて、他では味わえません。美味!トップシーズンではカフェに入ることは不可能。並んでも無駄。本店のレストランのランチは1-2時間待ち。
  16. Paraneoplastic isolated myelopathyで認められる抗体と頻度
    対応抗原    頻度(%) a
    mphiphysin    24
    Ri         18
    ANNA-3      18
    CRMP-5      16
    Hu        11-60
    PCA-2       10
    Yo         5
    Ma        4
    Ta         3
    (Neurology 2011;76:2089-95)  
  17. Mayo ClinicでのParaneoplastic isolated myelopathy31例
    発症様式: 亜急性 52%、潜行性 48%
    性差     65%が女性
    発症年齢 37-79歳、62歳(中間値)
    OCB陽性率 7/23 (30%)
    (Neurology 2011;76:2089-95)  
  18. ドクササコ中毒の重症度は3段階に分かれるそうで、登木口先生が発表されています(新潟県医師会報 2013;762:1-2)
  19. 抗amphiphysin抗体によるstiff-person syndromeの責任病変
    脊髄のGABAergic neuronの阻害を抑制することによるそうです
    (Brain 2010;133:3166-80.)。抗体とchorea、hypokinesisやrigidity、tremor、myokimiaとの対応表が出ている総説があります(Curr Opin Neurol 2011;24:346-53)。
  20. 抗amphiphysin抗体の機序
    傍腫瘍性神経症候群の中で、各種受容体などの細胞表面に発現している蛋白に対する抗体は抗原へアクセスしやすいので、抗体自身が神経症状の原因となる細胞傷害を起こしていると考えられています。一方、古典的なHuやYoは細胞内抗原なので、抗体が抗原にアクセスするとは考えにくく、pathogenicとは考えられていません。細胞内でHLA class Iに組み込まれたペプチドをCD8陽性細胞傷害性T細胞が細胞を破壊していると想定されています。ところが、細胞内抗原に対する抗体である、抗amphiphysin抗体だけは少し違うようです。  

    抗体をラットに投与すると、spasmsやrigidityを引き起こせるそうです(Lancet 2005;365:1406-11)。運動障害だけでなく、anxietyに関連するamygdalaや海馬に結合することが同じ研究グループから報告されています(J Neural Transm 2012;119:981-5)。また、培養下では、精製した抗体を添加することでglutamateよりもGABAの放出をbaseも刺激下でも減少させることが示され、この抗体がGABAergic neuronの抑制を阻害することが示唆されました(Brain 2010;133:3166-80)。
  21. 東京の美味しいハンバーグステーキ
    あるTV番組で(メモし損ないました)、タレントの市川沙耶さんがお薦めのお店を紹介していました。この情報は東京カレンダー10月号でも紹介されているそうです。以下は紹介された順です。
    1). 元祖俵ハンバーグと自慢しているお店で、WOODSTOCKというお店。小金井市関野町2-1-4。東小金井駅から1381mもあるそうなので、ちょっと行きにくいですが、タクシーでも判るのでしょうか?
    2). メタボには優しい?赤身系ハンバーグ。ギューギューMASA。中目黒駅から徒歩7分。山手通りに面したマンションの1F。食べてみました。オージー牛らしいです。ハンバーグとステーキの大盛りもあります。3人前あるので,シェアすると良いですね。美味しいです。ステーキ1Kgなんていうメニューも。知りませんでしたが、中目黒にはケネディー、ナグラ、食いしん坊、ふたごや、ビーフキッチン、チャンピオンなど、チェーン店も入れると肉専門店の集まる、ステーキの一画なんですねえ。
    3). 銀座古川。帝国ホテルの料理長がオープンした、カレーとシチューの専門店だそうな。銀座駅から1分。ハンバーグステーキ・シチューソース。すでにご主人は他界されているそうですが、元タカラジェンヌの奥様と息子さんが味を守っているそうです。実際に行ったことのある若い夫婦に聞きましたら,気取らない昭和のにおいのする,美味しい街の洋食屋さん,だそうな。  
  22. 英断でしょうねえ、在韓被爆者への医療費支給を大阪府知事が決断
    維新の会としては珍しい(?)、朝日新聞が評価するような決断をしました。判決には控訴せずに従う旨を発表し、国にも方針変更を依頼。韓国にも被爆者がいることを初めてメディアに載せたのはたぶん、竹中 労で、その後、ドキュメンタリーを番組内で報道してギャラクシー賞を受賞したのが、大橋巨泉さんが司会していた日本テレビの月曜イレブン。裸だけ出していたわけではないのです。昔の方がテレビに女性の裸が登場する機会が多かったですねえ。先進国になったのか・・・?
  23. Harding病あるいはHarding’s syndrome
    Leber’s hereditary optic neuropathyとMSの合併例を1992年に初めて報告したのはProf Anita Harding (Brain 1992;115:979-89)。

    MSで重篤な視力障害が出現した場合、NMOの可能性を常に考えるべきで(Tanaka M, Tanaka K, Komori M, et al. Anti-aquaporin4 antibody in Japanese multiple sclerosis: The presence of optic-spinal multiple sclerosis without long spinal cord lesions and anti-aquaporin4 antibody. J Neurol Neurosurg Psychiatry, 78:990-992, 2007.)、抗AQP4抗体がかつて陰性だったとしても必要によっては再検するべきです。しかし、古典的なMSでも重篤な視力障害が認められた場合、Leber病の可能性を考慮するべきと (Ir J Med Sci 2010;79:599-601)。視力の予後が全く異なるからです。MS + Leberの場合、両者が合併した場合、視力障害はLeber病の特徴を呈します。視力障害は両側性が多く、亜急性に疼痛を伴わずに発症し、ステロイドパルスでもほとんど改善することはありません(当たり前のようには思われるのですが、seldomと書いてあるということは極めて稀には多少は改善する?)。Leber病単独であれば、脳MRIに所見はありません。逆に、Leber病と思っていたのに、脳MRIで大脳白質病変があったら、MSの可能性も考えるべきでしょう。ただ、Leber + MSでは特徴的な脳MRI所見があると主張している報告はあります(Eur J Neurol 2007;14:591-3)。いずれの疾患でも女性が多く罹患。しかし、Leberでは男性優位という記述があり、喫煙やアルコールなどの環境因子の影響で、女性の10%に比し、男性では50%まで浸透するため、と(Pract Neurol 2008;8:118-21)。Leber病の90%では3ヶ所の呼吸鎖のcomplex Iのmutation (11778, 3460, 14484)が知られています。症状は同一。Leber + MS例ではこの3ヶ所のmutationが報告されています(J Neurol 2005;128:35-41)。(Ir J Med Sci 2010;79:599-601) ミトコンドリア異常により、炎症を起こしやすくなる可能性について、言及している論文があります(Pract Neurol 2008;8:118-21)。
  24. 50代は伝書鳩
    こんなおっそろしい話題がネットを駆け巡り、40歳代以下の喝采を浴びています。  

    アエラが会社勤めの20~50代を対象に「使えない社員」について調査したところ、全世代が共通して挙げたのは「50代男性」だったそうです。ある企業ではこんな「お荷物社員」を抱えている、と。  

    大手メーカーA社の首都圏の支店。50代前半の男性本部長のあだ名は「糸電話」「伝書バト」。いつもぼーっと席に座っていて、たまに「調整」の名目でいそいそと本社に出かける。現場の社員はこう思っている。彼は何のためにいるのか?ある女性社員(27)は言う。「年配社員が就くポストをなくさないためだけにある、いわば『ポスト維持のためのポスト』。仕事はほぼすべて本部長より下の上司だけで回っているし、むしろ彼のせいで現場が混乱します」  

    これに対して、50歳代の「伝書鳩」が反論します。「最初に組織ありきの問題だからです。 こうやって書いている人間だってやがて50代になる。 その時には組織によっては、同じように言われているかもしれないのです・・・風見鶏も、仕事が無くても居られる人間も、組織上に生じて来るのであって、最初からそうなのではない。 企業組織にも役所と同じ要素があって、自分の能力を自由に発揮したり栽配したり出来ることは少ない。」
  25. 破傷風
    一般的な総説としては、救急医学 2012;36:534-7.がありますし、動物咬傷による感染症についての総説的な記述としては、日医雑誌 2012;141:1033-6.があります。  

    自然災害で破傷風が増加していることが海外で知られているそうですが、東日本大震災でも9例が知られていて、うち詳細な情報が得られた7例が報告されています(Neuroinfection 2012;17:77-81)。平均年齢は67歳で、原因は津波に巻き込まれての受傷であり、発症までの期間は平均12日(8-20日)。受傷部位は下肢が6/7例で、汚染創のない患者さんや受診時に創傷の特定が難しい患者さんのいらっしゃるそうな。破傷風の発症因子は創傷の重症度のみではないという報告(J Trauma 2005;58:1082-8)とも一致。人工呼吸を要したのは5例も。これらの患者さんで治療に使用されていたのはペニシリンで、破傷風に対する第一選択薬であるメトロニダジールは静注用製剤が未承認のためか、と。また、交感神経ストームに対しては5例に硫酸マグネシウムが使用されていました。破傷風ワクチンが導入されて以来、年間の発症者は100例程度だそうですが、ワクチン接種歴があっても10年以上経過している場合は抗体価が低下しているので、成人以降に追加免役していない場合、破傷風を発症した場合、創のの重症度に関わらず、TIGを投与するべき、という報告(J Trauma 2005;58:1082-8)とを紹介。ただ、災害時に大量のTIGを入手することは困難なので、日頃からワクチン接種を推進するべき、と。震災時のボランティアってどうしてましたっけ?  

    復旧活動に従事する被災者やボランティアで、10年以内に破傷風トキソイドを摂取していない40歳以上では接種を検討する必要性を強調している論文がありました(感染炎症免疫 2012;42:79-82)。ただ、追加免疫後に充分な抗体産生が期待できるまで3-4週必要とされるので、TIGは必要だそうな。
  26. 獣肉媒介寄生虫症
    特に冬になりますと、カモやウサギ、キジ、シカなどの野生動物の肉を調理したフレンチなどを食べる機会が増えてきますが、生肉はもちろん調理が不完全ですと、感染症の原因となります。キジはハンティングでは恒常的に得にくいためか、伊豆半島付近では人工的に飼ってもいますね。
    寄生虫種  主な感染源   神経疾患
     有鈎条虫 Taenia solium   ブタ(筋、肝など)  脳、脊髄、眼球に嚢虫形成
     トキソプラスマ  ネコの糞便  
      Toxoplasma gondii 豚や羊の筋 脳炎
     旋毛虫 Trichinella spiralis
    (食衛誌 2009;50:215-20より)  
  27. ゲテモノ食いによる寄生虫症
    ヘビやカエルの筋肉や血液を生で食べるだけでなく、一般の人も危ないのは鶏肉を生で食べますと、マンソン裂頭条虫(Spirometra erinaceieuoipaei)の幼虫を食べてしまう危険性があります。馬刺しやウシのレバーの生食も危ないようです(医薬の門 2007;47:633-6)。小腸で成虫にまで発育したり、炎症部にカエルの皮膚を張るという民間療法では経皮的に感染して皮下に無痛性の移動性腫瘤を形成することがあるそうで、皮膚科医にとってはよく知られた病態(Clinical Parasitology 2010;21:33-6)なんだそうな。場合によっては、脳に侵入して腫瘤を形成することも。
    (食衛誌 2009;50:215-20より)   

    最近では推定原因食材には変化がないにもかかわらず30歳未満の発生がないことは、食生活が都会化した(?)ためでしょうか? (Clinical Parasitology 2010;21:33-6)  

    ちなみに、Mansonがアモイで解剖した中国人の体内からこの幼虫を発見したためにこの名前が付いていますが、京都にもゆかりがあって、報告が遅れましたが、この幼虫を先に発見したのはScheibeという人で、1881年に京都の囚人の尿道から検出しています(医薬の門 2007;47:633-6)。論文は早く書かなきゃダメなんだけれど、でもなあ・・・  
  28. 大脳にmass lesionsを形成する寄生虫の鑑別
    Spirometra erinaceieuoipaei
    Echinococcus
    Multiceps
    Toxoplasma
    cysticercus
    larvae of cysticercus
    Paragonimus westermani
    Gnathastoma
    Trichinella
    (Rev Inf Dis 1991;13:155-9)
  29. 「京都鳴滝-謎多き里の歴史の光と影」
    金閣寺と嵐山の渡月橋の中間地点になりますが、福王寺交差点周辺から宇多野病院辺りまでの狭い地域が鳴滝。体温計などで知られるオムロン発祥の地に近く、名前の由来でもある、御室川周辺。町ではありません。大きな滝はないのになぜ鳴滝?この謎を追った本。
  30. 「成人スキルの国際比較-OECD国際成人力調査(PIAAC)報告書」
    (明石書店)から結果は出版されていますが、新聞各紙も報道しました。YAHOOニュースでは、「国際成人力調査(PIAAC:Programme for the International Assessment of Adult Competencies)は、24か国・地域において、16~65歳の約15万7千人を対象に、社会生活で成人に求められる能力のうち、「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力」の3分野のスキルの習熟度を測定。また、スキルと年齢、学歴、所得等との関連を調査した。調査期間は平成23年8月~平成24年2月。」「読解力と数的思考力で日本が1位に。」米国は読解力が16位、数的思考力が21位、ITを活用した問題解決能力が17位。3項目ともOECD内で統計的に平均より有意に低かった国で米国以外では、アイルランド(各々20、19、18位)、ポーランド(19、18,19位)しかありません。各々の国からの参加者の学歴や賃金も調査されていて、結果と学歴に相関する傾向があったそうですが、当たり前。そもそも各国で参加者自身の分布に有意差はなかったのでしょうか?ぬか喜びにならなきゃ良いけれど・・・  
  31. 「京都建築専門学校 銭湯マップ」というのがあります。京都は都会ですが、古い建築の銭湯もあって、学生達にも評判のようです。
  32. 宮崎シーガイアは不思議なホテル
    このホテルの客は会議参加者(私たちは神経感染症学会)かゴルフ目的のようですね。10月以降は北海道や東北から泊まりがけでゴルフに週末来るそうです。あちらは雪でできませんからね。ただ、目的はゴルフだけでもないようで・・・言い訳か・・・朝食会場の両隣はどうも夫婦とは思えず・・・「わたし、普段、こんなに食べないの」普通、妻が言うか、そんなこと!反対側は上司と部下風(部下はアラサーではなくて、限りなくアラフォー)。  

    宮崎空港から公共交通機関はなく(空港からのリムジンバスは週末だけ)、宮崎市を南から北へ縦断しないといけません。タクシーで4000円。昔はホテルのバスがあったそうですが、倒産後に外資が購入した際に「合理化」の対象に。宮崎駅までの路線バスも朝は1時間に1本のみ。売店は充実していて、これほど種類が多い上に美味しいお土産は見事としか言いようがありません。  
  33. 第34回日本アフェレシス学会が軽井沢で開催
    2013年11月2-3日にプリンスホテルで開催されました。いつもは10月20日頃が紅葉のピークなんだそうで,今年はいつもよりは遅めだったけれど,ピークよりは過ぎたものの連休に残っていて良かった,とタクシーの運転手さんの話。でも,今日みたいに晴れていると東京から車で来る人が多くて渋滞するし,わたしらちっとも儲からんですわ,と。鳩山兄弟や麻生元首相の弟さん、読売新聞社の渡辺恒雄主筆などの別荘の前を通っていただきましたが、さすがに軽井沢で一番と値の高い区域だけあって、美しい森の中に住宅が点在しているようですが、道路からは見えず、それだけ土地が広大。ともかく紅葉は綺麗でした。  
  34. C型肝炎ウイルスはセックスで感染しない
    20年近く前、東京周辺の風俗店従業員を対象とした疫学調査でC型肝炎ウイルス抗体陽性者が少なくなかったのですが、否定的なデータが発表されました(Hepatology 2013;57:881-9)。抗HCV抗体陽性でHIV陰性500例を対象に、長年の(どの位なんだろ?)異性のセックスパートナーを調査。29-79歳(!)(中間値は49歳)で、多くはnon-Hispanic whiteだそうな。パートナーでの抗HCV陽性は20例(4%)のみで、性行為による最大限のリスクは0.07%/年(95%CI: 0.01-0.13)で、19万回の性行為当たり1という頻度。良かったですね。でも、アマチュアとプロのリスクが同一とは限りませんが・・・  
  35. Yahoo!知恵袋などに見るビッグマウスの心理学
    「セルフモニタリングが高モニターの人が行なう自己宣伝(主張的自己呈示)は、他者に自分がどう見られているか分かっていてやっているので好かれます。他人と自分の能力評価が一致してやっているのです。  

    低モニターの人が行なうと、はじめに他人から自分はどう見られているのかを考えることはしません。自らの希望を、自分の能力評価で自己宣伝(主張的自己呈示)を行ないます。周りの能力評価は気にしていません。 低モニターの人が行なう自己宣伝(主張的自己呈示)は、周りからうぬぼれや不誠実な印象を持たれてしまっても、自らの主張を曲げられずにそのまま信用を失うジレンマに陥りやすいです。」なんだそうな。  

    TV「ほんまでっか」によりますと、「ビッグマウスをたたかせてあげる女性はあげまんで、男性のビッグマウスを理解して騙されてあげる方が良好」だと心理学者の植木先生。自己暗示することで能力アップにつながるなら良いことですが、そうではない場面も少なからず見ています。医者ではまずい、ということなのかもしれません。患者さんに迷惑。概ね以下のような医師が多いように思います(複数回答可、といった感じですね。誰とは言わないけれど・・・)。
    1). 逆に自分自身には自信がない。どこかに劣等意識がある。
    2). 実は気が小さい。
    3). プライドだけは大きい。
    4). 嘘を平気で言う。
    5). 会話能力の欠如
    6). 知的レベルが低い (頭が悪い)。
    7). 知識や経験に乏しい。勉強不足。世界のレベルについていけない。
    8). 世間の常識にも疎い。一般教養も欠如している。