2013 年11 月号 

  1. MO治療方針
  2. 第29回ECTRIMS2013がCopenhagenで開催-1
  3. 現役CAの告白
  4. エネルギー消費量の比較
  5. 第29回ECTRIMS2013がCopenhagenで開催-2
  6. スーパーレントゲン
  7. 「年報 医事法学」
  8. シルバー川柳3
  9. 成田・羽田でCAに聞いた自社以外で美味しい機内食ランキング
  10. TPP交渉前に、薬価を上げると約束したことを日本政府が公表
  11. RA患者の腸内細菌叢
  12. CISのMSへのconversionにおけるOCBのリスク
  13. ここにきて、PMLが多発?
  14. 岩波ジュニア新書 綾瀬はるか「戦争」を聞く
  15. 「半沢直樹」最終回での取締役会での半沢の発言
  16. 第18回日本神経感染症学会
  17. T2強調画像での“owl eye””snake eye”は虚血性ミエロパチー
  18. 紫外線で皮膚老化が促進
  19. ここまできた草食男子
  20. MERSは第2のSARSになるか?
  21. 「日本国憲法を口語訳してみたら」(幻冬舎)
  22. 土橋さんがALSで他界
  23. 診療ガイドラインと医療事故で問題とされる医療水準
  24. 「婚活」症候群 
  1. MO治療方針
    毎年、少しずつ今でも世界は動いています。私自身の現在の治療方針です。
    1. ステロイドで初期治療を開始し、長期間投与の必要が予想されるなら、早めに免疫抑制剤を併用します。免疫抑制剤は効果発現までにその作用機序から3ヶ月程度はかかることが多いので、免疫抑制剤で治療を開始することはリスキーです。これにより半年でステロイドは5mg以下にまで減量可能です。もちろん,軽症例ではステロイド単独でも可能でしょう。ただ、年単位で投与すると、白内障が必発ですし、骨粗鬆症のリスクも出てきます。ステロイドを半年で内分泌量にまで減量できれば副作用の心配はありません。免疫抑制剤により感染症のリスクは生じ得ますが、用量の調節が容易です。
    2. 上記の治療により95%以上はコントロール可能です。早期診断・治療により治療は従来よりさらに容易になると思われます。
    3. しかし、難治例に対する治療法の開発は必要です。効果の強弱からいえば、ミトキサントロン,リツキシマブ << トシリツマブ < エクリツマブの順(私見です)で、有害事象の頻度と生命へのリスクからでは、ミトキサントロン > リツキシマブ >> エクリツマブ > トシリツマブの順と個人的には想像しています。少なくとも、ミトキサントロン、リツキシマブの効果はシャープではない上、それぞれ心不全や白血病,多巣性白質脳症のリスクを抱えています。ミトキサントロンは蓄積しますので、用量の調節に経験を要します。

  2. 第29回ECTRIMS2013がCopenhagenで開催-1
    ハーバード大のProf Ascherioは血中ビタミンDがMSの疾患活動性や進行を予測できるかどうかを紹介。対象を補正したグループで検討すると,血中の値は季節で変化はなく,5年間の観察では50以上と以下のグループの間で脳MRIでのT2病変や脳萎縮に差はなかった,と(#96)。  

    イタリアのMilanのProf Comiのグループは自験例699例の8年間の観察期間で,治療が不充分として他のDMTや二次選択薬に変更された242例を解析。治療開始の2年間で疾患活動性がないと(再発や脳MRIでの造影病変や新あるいは拡大T2病変が出現しない),長期の治療効果も良く,治療を変えることが少なかった,と。それゆえ,治療開始の2年間のdisease activityが高い場合は早期に治療法の変更を考慮するべき,と。(#98)  

    MSでのウイルスによるトリッガーに関する研究。MSとHIVの関連について,両者の合併の報告は1例しかないんだそうですが(Eur J Neurol 2011;18:110-1),5018例のHIV患者を6年間観察したデンマークの研究があるけれども,MSを発症したのは1例のみ(RR: 0.3; 95%CI: 0.04-2.2)。そこで,1999-2011年の21207例のHIV患者についてUK Healthcareを利用して7年間観察した結果が報告されました。その結果,7例が発症し,RRは0.38で95%CIは0.15-0.79 (p=0.011)。ヒト内因性レトロウイルスは少なくとも一部のMS患者の病因に関与? (#115)  

    カナダの小児MS患者で治験を行った場合に、どのくらいの規模が必要かが検討されました。2年間の治験期間でARRを50%減少させることをendpointに設定すると(ある程度、危険な薬剤を使用することになります1群で70-105人必要に。つまり,placebo群と治療群の2群で用量が単一ならば全体で140から210人の患者が必要に。ARRを30%減少することを目標にするなら,1群(one arm)当たり230から365人必要に。小児MSですから大変です。成人のPhase II studyのように半年の期間で新T2病変の50%減少なら,one arm当たり90名で済みます。(#282)
     
    最近,OECDには未加盟ですが,MSのPhase II治験にロシアが参加することが多くなりました。旧西側で行うより白人比率が高く(95%以上),対象患者が均質になるからだと思われます。メーカー側の論理で言えば,重症度が高く,治療への反応性が白人とは異なる危険性のある、特にアフリカ系患者がロシアや東欧諸国では少ないからでしょう。Dr Evgeniy EvdoshenkoというSaint Petersburgの小児科医が小児MSの自験例(City Center of MS)をポスターでまとめていました。モデルみたいに美しい方。MS患者が全体で3000名。18歳以下で発症した患者が152名で,さすがに小学生は少ないようで0-9歳が5例(3.3%),10-14歳が31例(20.4%)。(#283)
     
    US Network of Paediatric MS Centersのdatabaseを使用して、18歳以下で発症し1年以上経過観察できたADEM患者65例をまとめた報告がありました(#285)。単峰性経過が28例(45%)で再発性が36例(55%)。16/36 (44%)はMSと診断。2例が再発性ADEM、2例がmultiphasic ADEM、5例がNMO。発症年齢を11歳で分けると・・・
    Total below 11 above 11
    ADEM Monophasic 29 27 2
    ADEM Multiphasic 2 2 0
    ADEM Recurrent 2 2 0
    NMO 5 6 0
    MS 16 10 6
    Demyelinating 11 10 1

    Disease NOS
    Total 65 56 9

    11歳以上でADEMとして発症すると、MSへ進展するリスクが高い(6/9例)ことが判りました。  
    18-20歳女子の肥満(最低でも森三中レベルですが)は、その後のMS発症リスクが高くなることが知られています。Adipokinesは脂肪組織から産生されるホルモンで、代謝や炎症と関連すると考えられています。Canadian Pediatric Demyelinating Disease Studyとして前向き研究が国内23ヶ所の施設が参加して行われました。中間値5年間経過観察し得た急性脱髄性疾患(視神経炎や横断性脊髄炎、ADEMなど)発症3ヶ月以内の血清を集め、ELISAで測定(#753)。性や年齢を補正後、単峰性群(127例、白人比率は80%)に比してMS群(42例、白人比率は81%)ではadiponectinが高値を示しました (HR 1.585, 95%CI 1.076-2.335)。

    地域の社会的経済的背景のMS発症や進行のリスクを130万人以上が住む英国South East Walesで検討(#296)。この地域のMS患者は1489名。社会的な立場の高低で有病率が異なり、人口10万人当たりでは・・・
    Socioeconomic status High Medium Low
    有病率 135.9 106.5 92.5
    (p <0.001)  

    一方、障害度を比較しますと、発症からEDSS 4.0あるいは6.0に達するまでの時間を調べると、どちらでも時間はHigh > Lowでした。つまり、社会的立場が高く、高収入だとMSにはなりやすいけれども、進行が遅い、あるいは治療を受ける機会に恵まれている、ということになるようです。  

    筆者らは日本人患者のOCB陽性率が低めであることと疾患活動性が低い可能性を指摘しましたが、東北大と英国Oxford大との共同研究で、日本人患者(EDSSの中間値:2.0)では障害度が英国患者(5.9)より低いことが示されました(#764)。解析の対象は日本人MS患者104例、英国患者が1148例。EDSSは両群で有意差が認められました(p <0.001)。EDSSが4.0以下の患者の割合は、日本人では80.8%に比して、英国人患者は46.1%。分布を見ますと・・・
    EDSS 日本人(%) 英国人(%)
    ≦2 51.0 27.6
    2.5-4.0 29.8 18.5
    4.5-6 8.7 25.7
    ≧6.5 1.5 28.2
    注目するべきはDMT治療を受けている患者の割合が、83.7% vs 16.5%。治療の有無で補正しても日本人患者の障害度の低さは証明されています。
     
    Kuwaitに住んでいるアラブ人は元来、MS有病率が低かったのですが、湾岸戦争後に急速にMS患者が増加していることがすでに報告されていますが、その後の変化について報告されました(#774)。MSはさらに増加しています。太陽が燦々と照射していますがサウジアラビアとともにMS多発地域に変化しつつあります。日光が強すぎて、日光浴をするアラブ人は少ないでしょうから、紫外線照射は少ないのかもしれません。でも、なぜ、急激に変化しているのか・・・米軍が現地にはないウイルスを持ち込んだのか・・・Kuwaitでは1176名もMS患者がいらっしゃるそうです。有病率では85.05で、日本の8.5倍。2003年と2011年を比較すると、女性で3.22倍、男性で2,54倍も増えているそうな。
  3. 現役CAの告白
    深夜放送って変な番組がたくさんありますが、偶然発見したトーク番組から・・・
    1. CA (キャビンアテンダントのことですよ)と付き合う可能性が一番高いのはお客さま
    2. 客の立場でCAに一番喜ばれるのプレゼントは「ありがとう」のひと言
    3. パイロットとCAのカップルはほとんどいない
    4. 会社にもよるが、パイロットとCAは空港からホテルまでのバスは別々。これはパイロットの妻たちからの要望だそうな。「バスが一緒だとロマンスが生まれるから」
    5. CAの出勤時はコスプレ状態
    6. CAはガラガラの引き方が素人とは違う。特にコーナー
    7. CAと出会いたければエコにミーに乗れ!
    8. CAはガン見されたい!
    9. CAも名刺は持っているが、渡す機会はない。クレームの時くらい。
    10. 外国人のCAには合コンはない。合コンは日本の文化で、大切にしたい
    11. 機内でお気に入りのCAがいても、渡航先のプライベート状態のCAに絶対に声をかけてはいけない
    12. 有名人と会いたければ、CAになれ
    13. CAになるには身長と視力で、顔は関係ない。(でも、審査するのは男性社員でしょ?)
    14. CAはお客さまからの名刺を持っている
      (TBS系列「有田とヤラシイ人々」 2013年9月1日放映より)

  4. エネルギー消費量の比較
    データ自体が少し古いのですが、US Energy Information Administration for 2010によりますと・・・世界のエネルギー消費量全体を100%とすると
    中国    20%
    米国    19
    ロシア    6
    インド    4
    日本     4
    (2013年3月23日付け USA Todayより)  
    中国が多いのは、人口が多いだけではなくてシステム自体が古くて無駄が大きいのでしょう。米国は使い方自体が無駄だから。「おもてなし」だけではなく、一時、ノーベル賞で話題になった「もったいない」を世界に広げましょう!
  5. 第29回ECTRIMS2013がCopenhagenで開催-2
    サテライトシンポジウムの一つとしてMSのB細胞を標的とした治療の特集がドイツのProf Hartungの座長で開催されました。  

    カナダのDr Bar-OrはMSでのB細胞の役割として,以下を挙げました(Semin Neurol 2008;28:29-45)。
    1). 髄膜にectopic follicle-like structureが形成 (JCI 2012, Brain 2011, Ann Neurol 2010)
    2). IL-10, IL-6, LT-α, TNF-αの産生抑制や放出 (Ann Neurol 2010;67:452-61)
    3). APC
    4). 抗体産生   
    たとえば,Prof Lisakはoligoを傷害する抗体を報告しています(JNI 2012;246:85-95)。

    GenentechのDr Chanは抗CD20抗体治療について紹介(Curr Opin Neurol 2013;26:569-76; Exp Opin Ther Targets 2013;17:293-306)。Ectopic follicle formationはシェーグレン症候群や関節リウマチでも認められるそうで,抗CD20抗体によりB細胞は肝のKupffer細胞のFcγ受容体により排除されるそうです。しかし,あるB細胞はこの治療でも保持される,と.もちろん,組織に出た細胞は血中に入らない限り排除されませんし,形質細胞にはCD20自体が発現されていないので排除はされませんね。(JI 2005;174:817-26)では抗CD20抗体治療後のB細胞が解析されていて,血中のB細胞は分単位でFcγ受容体により排除され,splenic follicular B cellsは日単位で排除。補体は別の部位で作用。抗CD20抗体治療の抗体反応性を検討した結果では,抗CD20抗体抵抗性の抗体としては血中IgG, anti-glycolipid ab, anti-nuclear ab, anti-influenza IgG, anti-varicella ab, anti-pneumococcal IgG。一方,抗CD20抗体治療で影響を受けるsensitive antibodiesとしてはanti-MAG, anti-AQP4, anti-AChR, serum IgM。(Arth Rheum 2006;54:2793-806) 抗CD20抗体治療によるT細胞サブセットへの影響としては,Tregが増加し,Th1, Th2, Th17, などが減少(JIDermatol 2008;128:2850-8など)。抗CD20抗体を比較すると・・・全てIgG1で
    Rituximab
    Chimera
    Ocrelizumab
    humanized
    Ofatumumab
    human
    ADCC 1X 〜2〜5X 〜1〜1.5X
    CDC 1X 〜0.2X 〜9X
    半減期 18d 17d 14d
    affinity to CD20 1-5nM 1-5nM 〜5nM
    infusion reactions in MS 7.4% 0% not reported
    anti-neutralizing not reported ab in MS 24.6% 0% not reported

    Hauser教授はclinical trialsについて報告。RituximabについてはRRMSを対象としたHERMES trialとPPMSを対象としたOLYMPUS trialとがあり,96週で行われた後者もすでに報告されていますが(Ann Neurol 2009;66:460-71),p=0.1442でした。ただ,51歳以下で造影病変が1個以上あるグループでは有意差あり。OcrelizumabではPhase II studyがすでに発表されています(Lancet 2011;378:1779-87)。144週間,造影病変がほぼゼロに。治療開始8-12週後から著減しています(大体,どの治療法でも早くてもこの程度の期間は必要のようですね。換言すれば,MSだからこの程度の時間は充分我慢できますが,NMOでは単独治療は危険。FDAなどでもadd-on治療を要求しているのはこの辺の事情がわかっているからでしょう)。Cycle 1では2回投与し,24週後のCycle 2でも2回,48週後と72週後に1回ずつ(Cycle 3と4として)投与しています。その投与しなくても効果は持続。0〜24週でARRは0.127へ低下し,placeboより77%低下。現在,Phase III studyとしてORCHESTRAの登録が終了し,2015年に結果が判明する予定だそうな。
  6. スーパーレントゲン
    30歳代の女性はまだ乳腺が発達しているため、通常のマンモグラフィーでは白く見え、癌と判別できません。スーパーレントゲンでは癌組織だけが描出され、早期発見が可能になるそうな。これを発明したのは、東北大学の工学博士・百生 敦教授。軟部組織を撮すことができるそうで、ラットの脳スライスの皮質と白質の区別が可能。解像度はMRIの100倍。柔らかい組織をX線が通り抜ける際にわずかに屈折(わずか1/10000度)するんだそうで、この性質を利用して画像化に成功。この研究はNat Medに発表されました。指の軟骨を撮影することで、RAの早期診断も可能に。
    (BS161「夢の扉」2013年8月9日放映)
  7. 「年報 医事法学」という日本医事法学会編集の雑誌みたいな年報が毎年出ています。基本的には学会の記録集。28号(2013年)には、「医療過誤訴訟裁判例における説明義務違反の傾向—統計的手法を用いた分析」「医療と経済-成長戦略と社会保障」「シンポジウム 医療事故の無過失補償と医療の安全」といった論文が掲載されています。300頁近くあります。英文名が”Journal of Medical Law”。  
  8. シルバー川柳3

    毎日新聞に出ていた広告から・・・
    来世も 一緒になろうと 犬に言い 「アレどこだ?」 「アレはあそこにソレですよ」
    AKB わしらはこれよ AED  


  9. 成田・羽田でCAに聞いた自社以外で美味しい機内食ランキング
    第1位 シンガポール航空      38人
    第2位 日本航空           18
    第3位 全日空             15
    第4位 タイ国際航空         14
    第5位 キャセイパシフィック航空  12
    第5位 大韓航空           12
    第7位 エミレーツ航空        10
    第8位 ルフトハンザ航空       8
    第9位 アシアナ航空          7
    第10位 エールフランス航空     6  
    科学的調査ではないので、母集団には目をつむりましょう。自社以外と言っても、日本に離発着している航空会社ですから日本人CAが多い可能性があり、JALやANAが上位にランキングされるのは当然でしょう。それにしても、さすが、シンガポール航空!ダントツ一位。
    (日本テレビ系「真相報道 バンキシャ!」2013年9月1日放映より)
  10. TPP交渉前に、薬価を上げると約束したことを日本政府が公表
    米国の製薬メーカーが自由に薬価を上げることを認める、と交渉前に日本政府は発表してしまったと東大大学院農学生命科学科・鈴木宣宏教授がTVで発言。これは生放送ではないので、筆者は未確認ですが、正しいのでしょう。英仏や日本では薬価は公的機関が決定しますが、米国では製薬メーカーが決めます。売れれば売れるほど、日本では薬価は低下しますが、米国では逆に上昇します。みんなが欲しがれば価格は上がるのは当然で、ヨーロッパや日本では治療を受けられなくなる患者が出てくるので、公的機関が調整しているわけです。米国では新自由主義で動いていますから、市場に価格は任されています。さて、薬価は実際はどのくらいなのでしょうか?IFNβなどのMSの治療薬は2004年からの6年間で2倍以上になっていて、新薬であるFingolimodが最も高価で、1年間で500万円します。IFNβを含めて、日米の価格差は150万円ほどありますから、3割負担になると、実際には治療費を負担できるヒトは少ないでしょう。特定疾患制度は自己負担が増える方向に動いていて、今でも医療保険しか適応されない患者さんもいますから、大変です。
    (NHK BS「グローバルディベートWISDOM TPP世界はどう見る〜貿易の自由化」)  

    特定疾患の見直しは、草案がすでに数ヶ月前に出ています。将来的には消滅するような気がします。旧郵便局の簡保が売り出そうとした癌保険が発売中止に追い込まれました。すでにアフラック(ガチョウのCF)は入院だけでなく、外来通院にも適応できる保険を売り出しています。今後は、全国津々浦々に展開している郵便局の窓口で、医療保険を補佐する米国生命保険会社の保険が売り出されるのでしょう。これがTPPの実態。政府の政策を米国の会社が補填するための商品を日本で売り出す。そのためにも政策を変えさせる・・・?ISD条項がありますからねえ。米国の会社にとって不利になる法律や制度を国際裁判で変えさせられる制度。下手をすると、関税外障壁と認定されると、企業に対して数百億の賠償金の支払いを政府は命じられます。株主として、個人でも日本政府を訴えることが可能です。NAFTAではカナダやメキシコ政府が負けています。被告が勝訴したことがありません。裁判所が世界銀行の影響下にあるため、米国政府のコントロ−ル下にあるとされます。  
  11. RA患者の腸内細菌叢
    関節リウマチ(RA)の発症には遺伝的要因だけでなく、喫煙や感染症などの生活習慣や環境要因も関与していると考えられています。大阪大学呼吸器免疫アレルギー内科の前田悠一氏らは、RA患者では腸内細菌叢が健常人とは異なり、乳酸菌などの通性嫌気性菌が多いこと、生物学的製剤の投与により腸内細菌叢が変化することを明らかにしました。  

    RA患者の腸内細菌叢は健康ボランティアとは異なること、生物学的製剤の使用によってRA患者の腸内細菌のいくつかは細菌数が減少することが示された、と日経メディカル2013年欧州リウマチ学会レポートとして報道(2013/9/2)。
  12. CISのMSへのconversionにおけるOCBのリスク
    71論文をまとめた メタ解析が出ています(JNNP 2013;84:909-14)。  
    12253例のMS患者の87.7%、2685例のCIS患者の68.6%でCSF中オリゴクローナルIgGバンドが陽性で、OCB陽性CIS患者のMSへconversionするリスクのオッズ比は9.88 (95%CI: 5.44-17.94)。いかにOCBがあると、MSへ進展する可能性が高いかが解ります。  
    高緯度地域ではOCBの陽性率が高いという論文が既に出ていますが(Mult Scler 2012;18:974-82)、北緯だと思いますが、20-60度の範囲で、同論文で28論文を対象としたメタ解析でもOCBと緯度との間に相関が認められています(p < 0.002, R2 = 0.31)。
  13. ここにきて、PMLが多発?
    20年以上にわたって、ドイツでは乾癬患者に投与さ れてきたので、フマル酸(BG-12)は安全と言われてきましたが、最近、4例のPMLが報告されました。すでに乾癬患者14万人以上に投与されてきたので稀ではありますが、乾癬とPMLに関連があるならともかく、薬剤投与後に発症するようになったので、関連がないとは言えないでしょう。乾癬で使用されている薬剤には、一部他の構造をしたフマル酸も含有されてはいますが、だからといって、無視して良いとは思えません。2/4例でミトキサントロンの治療歴があり、1例ではEfalizumab (Raptiva) –CD11a subunitに対するヒト型モノクローナル抗体で乾癬の治療として投与されていました。この薬剤単独でもPMLが1/500の頻度で発症したため、FDAとEMAは発売中止を勧告- が投与されていますので、Natalizumabのように免疫抑制剤の治療歴も問題かもしれません。  

    こっちは診断がMSかどうか不明確で、少なくともRRMSではありませんが、Fingolimod内服患者でもPMLが1例発症しています。
  14. 岩波ジュニア新書 綾瀬はるか「戦争」を聞く
    紀伊國屋書店HPの本棚で紹介しましたが、「ジョン・レノンのイマジン」のコメント欄に綾瀬はるかさんは今や第二の吉永小百合さん、と記載しました。綾瀬さん、いやここは本名の綾さんとお呼びするべきでしょうか、広島生まれなので、吉永さんの後継者のように呼ぶ理由はないかもしれません。
    おばあさまの被爆体験を綾さんがインタビューする場面から、始まっています。「NEWS23」では、今年でシリーズが15回を数えています。エピソードを丹念に拾い上げてゆく作業は、スポーツではなく、往年の「ドラマと報道」のTBSを彷彿とさせる丁寧さで、綾瀬さんの落ち着いたトーンのインタビューとナレーションがレポートを支えています。
    吉永小百合さんは、被爆二世が主人公の「夢千代日記」(原作・脚本: 早坂暁、NHKで放映)で原爆症に苦しむ主人公を演じ、1986年(昭和61年)からボランティアで原爆詩の朗読会をライフワークとして行っていらっしゃいます。英国のオックスフォード大学の招きで、同大学で朗読会もされたそうです。この時の伴奏は坂本龍一さん。2013年3月には京都市内の同志社大キャンパスで朗読会が開催されました。  
    出版して、まだ半年経過していません。この基準は理解しにくいですが。全国学校図書館協議会図書に選定してはいかがでしょうか?ジュニア新書ですが、大人「でも」読めます。
  15. 「半沢直樹」最終回での取締役会での半沢の発言
    「メガバンクはこの国の経済を支えている。決して潰れてはならない。確かに絶対に潰れてはならない。ですが私たちはそのことに拘る余り、いつの間にか自分たちのことしか考えない集団になっているんじゃありませんか!弱いものを切り捨て、自分たちの勝手な論理を平気で他人(ヒト)に押しつける。問題は先送りされ、誰一人責任を取ろうとしない。くだらない派閥意識でお互いに牽制しあい、部下は上司の顔色をうかがって、正しいと思うことを口にしない。そんな銀行は、もう潰れているようなものです。世の中には、本当に銀行の力を必要としているヒトや企業がたくさんいます。彼らを裏切り続けるなら、私たちはもう存在していないのも同然じゃありませんか。これ以上、自分たちをごまかし続けるのは止めましょう。クロはクロ。シロはシロです。そうは思いませんか。」(TBS系列 2013年9月22日放映より) ま、組織の問題という点では銀行だけではありませんが・・・でも,こう言った半沢は出向を命じられ、銀行を裏切った常務は平取りに降格させられただけですみ、常務の命令を実行した部長も出向させられたのも組織の論理。潰れそうになったら税金を投入してもらえる組織だからでしょうか。
  16. 第18回日本神経感染症学会が2013年10月初めに宮崎市のシーガイヤで開催されました。外来があったので土曜日しか行けませんでしたが、一部をご紹介します。

    佐賀大学から非痙攣性てんかん重積で発症した84歳女性の発病初期のCSFで、長崎大が報告したQUIC法が陽性になり、弧発性CJDが疑われたけれども、発症4ヶ月後の再検では陰性だった患者さんが紹介されました。てんかん重積ではfalse positiveになることに留意するように注意喚起されました。症状安定語の再検査が必要です。

    NHO呉医療センターからは、心筋梗塞の診断に利用されている(もちろん、この場合はサンプルは血液)、ラピチェック(H-FABP)を用い、CSFで弧発性CJDの診断に利用できるか否かについて検討した結果が報告されました。CJDでは1/2例で陽性。14-3-3の陽性と一致したので神経障害のマーカーとしては使えそうです。しかし、急性脳症でも陽性なので、疾患特異性はないようです。陽性だったCJD例ではakinetic mutismまでの時間が短かったそうなので、病態との関連はあるのかもしれません。  

    愛知医大加齢研からは、約40年間のプリオン病自験例113例についてのまとめが報告されました。以前は臨床的にプリオン病と疑われていない患者さんが剖検でプリオン病と初めて診断されたケースが数例あったが、最近ではMRIの拡散強調画像の普及のおかげか、そのようなケースがなくなった、と。  

    鹿児島大からは、南九州に集積する、男14例、女13例からかるGSS大家系(全例P102L変異)が紹介されました。平均発症年齢が57歳。失調性歩行25例と圧倒的。拡散強調画像は発症前は異常はないが、急速進行例ではほぼ全例で高信号を呈する、と。家系内で古典型と急速進行型と同居しているそうで、臨床経過を規定している因子は遺伝子だけではないようです。英国では84名からなる大家系があるそうで、この家系では79%で下肢深部反射が消失していて、鹿児島例でも同程度の頻度。アミロイドPETではアルツハイマー病は皮質が、GSSでは白質が陽性に。金沢大の山田教授は病理学的にはGSSでも皮質にアミロイドが沈着するのだけれども・・・と。  

    札幌東徳州会病院からは、聴覚障害を呈した肺炎球菌性髄膜炎が報告されました。髄膜炎菌より予後不良で、死亡率は20-70%。この61歳女性はDMの既往があり、慢性副鼻腔炎もあったことがリスク。8-21%で聴覚障害を合併するそうで、機序としては、①蝸牛への感染、②蝸牛神経障害、③内聴覚動脈障害、④この患者さんではVCMで治療されていますが、このVCMによる障害。  

    ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)が話題なんだそうですが、PRSPによる髄膜炎を呈した65歳男性が藤沢市民病院から報告されました。この方も境界型DM。MEPM耐性だったそうで、注意を喚起。ただ、VCMを頻用すれば、VCM耐性菌の出現の危険も指摘。

    旭川日赤からはCSFでの細菌叢遺伝子診断が紹介されました。嫌気性菌の診断が容易なことと死菌も診断できることがポイント。培養結果と一致することもしないこともあるそうですが、本来は混合感染ではないか、と。  

    大分市医師会立アルメイダ病院からは、MERS (clinically mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion)の患者さんが報告。この病態は発熱後1週間以内に異常言動や意識障害などで発症し、MRIで急性期に脳梁膨大部に可逆性拡散低下を呈し、多くは1週間以内に消失する予後良好な疾患。
  17. T2強調画像での“owl eye””snake eye”は虚血性ミエロパチー
    (Stroke 1998;29:1742; JNNP 2004;75:1431-5)
  18. 紫外線で皮膚老化が促進
    オーストラリアのクイーンズランド州在住の55歳未満の男女約900人を対象に,無作為にグループ化し,1992年から4年間,一方のグループは毎朝,かお,首,両腕,両手に日焼け止めクリームを塗るように指示し,他方は気が向いたときにだけ塗るように指示。すると,シリコーン剤を使用して左手の甲のしわやきめの状態を測定。すると,毎日塗布することにより24%も光老化リスクが減少できるそうです。MS治療の一環として,週末の屋外活動を推奨していますが,難しいでしょうか・・・ビタミンDの内服は高Ca血症のリスクもあってこの方法も簡単ではありません。
    (京都新聞 2013年8月20日付け朝刊より)
  19. ここまできた草食男子
    厚労省が2013年9月に初めて白書のテーマとして「若者」を取り上げました。その中で国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」などによりますと,1982年では18〜34歳の未婚男性で異性の交際相手がいなかったのは36.8%だったのが,2010年になると18〜39歳で62.2%に増加しており,さらに全体の28.0%が「交際相手はいないし,欲しくもない」と回答しているんだそうな。自分の趣味に力を入れたいとか,恋愛が面倒,仕事や勉強に力を入れたい,というのが理由だそうです。  

    「男の生活と意識に関する調査」を2年ごとに行っていて,「セックス嫌いな若者たち」などの著書もある,産婦人科医の北村邦夫氏によりますと,20〜24歳の男性でセックスに「関心がない」「嫌悪している」と回答した割合は,2008年の11.8%から2010年には21.5%に急増し,2012年には24.6%へ。セックス以外の異性との関わりを「面倒」「嫌悪している」という人も20〜24歳で27.7%,25〜29歳で29.4%と上下の年齢層より高い,と。

    コラムニストの北原みのりさん(42)のストレートなコメントが背景を解説しています。「性欲はあるのにロリコン化が進んだ。性欲もあり,言いたいことを言う大人の個性と向き合う体力,知性がなくなってしまった」このままでは日本は滅びます!生物としての危機!もはやDNAを残せる事態ではなくなっています。お父さんたち!もう一度,頑張るか?ん?
    (毎日新聞 2013年10月14日付け朝刊より)  
  20. MERSは第2のSARSになるか?
    すでに本誌でも紹介していますが,中東でSARSと同じコロナウイルスによる感染症が少しずつ拡大しています。不気味です。MERSは中東呼吸器症候群のこと。WHOによれば2013年7月29日現在,9ヶ国,91人が発症し,46人が死亡。患者の8割はサウジアラビアに集中。ヒト-ヒト感染の可能性も指摘されています。家族内感染例から,潜伏期は2〜15日。肺炎だけでなく,下痢も。大半で糖尿病や腎臓病があり,免疫不全があると感染しやすいのか,持病があるので発見しやすいのか,今後の課題と言われていますが,拡大速度が遅いので前者の可能性が高いように思われます。
  21. 「日本国憲法を口語訳してみたら」(幻冬舎)
    俺たちは筋と話し合いで成り立ってる国どうしの平和な状態こそ、大事だと思う。」この文で始まる条項は判りますよね?2013年7月27日付け朝刊に広告が出ていました。この本を買うと、自民党改憲案の口語訳(PDFファイル)がダウンロードできるそうです。
  22. 土橋さんがALSで他界
    2012年6月に歩行障害とサインが困難になる(右手の脱力)という症状で初発し、2013年8月末にお亡くなりになりました。わずか14ヶ月の経過。土橋さん(77)は東映フライヤーズという昔パリーグにあったチームにいた、160勝以上の勝ち星を挙げた投手。1961年には30勝しています。現役引退後はヤクルトや日本ハムの監督やテレビでの解説者をしていらっしゃいました。合掌。
  23. 診療ガイドラインと医療事故で問題とされる医療水準
    1. エビデンスとの関連がいかに明確なガイドラインであっても、個別の臨床場面での判断は、慎重な解釈と医療者の経験に基づいた専門的判断を踏まえた上での適応が不可欠(京大健康情報学・中山健夫准教授)。ただし、診療行為が診療ガイドラインと著しく異なっている場合は、その事実と理由を診療録に記載する必要性が高まってくると予想される(BMJ 1999;318:661-4)、という。
    2. 臨床の現場では、診療ガイドラインに従わないことが直ちに注意義務違反につながるとは言えないが、少なくとも診療ガイドラインの存在や目的を踏まえた上で、個別具体的な症例に応じた適切な医療行為を行うことが求められる。(メディカルオンライン医療裁判研究会)
    3. 医薬品の添付文書に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、医師の過失が推定される、という有名な最高裁の判例 (最高裁 平成8年1月23日) がある。
    4. 診療ガイドラインはエビデンスに基づく標準的診療を示しているが、標準的診療は医療訴訟で問題となる医療水準とは異なる。「医療水準」はそれを上回る診療の存在を連想させる。ガイドラインは「医療水準」の形成に寄与している。ガイドラインに従わない裁量権はあるが、「患者の自己決定権」とのバランスが求められる。医師の裁量権とは、医療訴訟の場では「医療水準」を満たす範囲での権利。医師の裁量権とは「医療過誤の争点の中で医療水準を基準にして、事後的に医療行為の注意義務違反の有無を判定し、法的責任を問えるか否かの限界を意味する法的な概念である。」(日本産婦人科学会, 吉川裕之. EBM・ガイドライン. 日産婦誌 61(11):N-542)
    5. 医師・医療機関が、個々の患者に対して負っている診療上の注意義務を法的に判断する際の基準を「医療水準」と言い、医師・医療機関には「医療水準」に適合した診療を行う義務がある。具体的内容は当該医療機関の特性などにより一定ではない(古川俊治ら. 診療ガイドラインと法的「医療水準」日消誌 2004;101:1-8)。
    6. 医療水準は規範としてのありうべきもので、医療慣行の実施では足りない。(最判平成8・1・23民集50(1):1) 注意義務違反だけでなく、医療水準までを措定することへの批判はあるものの、最高裁は現在でも医療事故を巡る多くの判決で医療水準を基準としており(最判平成16・1・15判時1853号85頁;最判平成18・1・27判時1927号57頁)、医師の説明義務の範囲決定および限界づけとしても機能している(最判平成13・11・27民集55巻6号1154頁)。(判例データベース 民法債権 80 H7.6.9 最二小判 医療機関に要求される医療水準の判断)  

  24. 「婚活」症候群
    「婚活」が一般に認知される、きっかけになった前著の誤解を解くために出版された、山田昌弘教授とジャーナリストの白河桃子による第二弾。  前著でブームになった「婚活」により、専業主婦の生活を維持できる収入を持つ僅かな男たちを奪い合う結果になつたことを総括し、訴えたかったことは二人で働くことで(ダブルインカム)結婚生活を容易にするべき、と。  保育所を増設したり、子育て世代を援助することは無駄ではないけれども、若い世代は非常勤が多くて収入が少なく、そもそも結婚できないことが問題、と。夫婦別姓を認めることや従来からの専業主婦優遇政策を見直すことや若い女性たちの専業主婦願望を変える必要性を訴えていらっしゃいます。