2013年7月号 

  1. 再発と脳MRI活動性とは相関する
  2. 宇多野病院での小児期発症MS/NMO
  3. 本邦ではSPMSはまれ
  4. 人気の大統領は誰か?
  5. 政治的議論を誰とするか?
  6. IFNβ1b-induced autoimmune hepatitis 「医薬品・医療用具等安全性情報」
  7. カナダでの有病率の急速な変化
  8. パン消費量全国1位
  9. Pediatric tumefactive MS
  10. 余郷嘉明、杉本智恵、鄭 懐穎ら JCウイルスから見た日本人とアイヌの起源
  11. 治験の結果を評価する上での注意
  12. 「常在戦場」
  13. Fingolimodのpharmacokinetics
  14. Fingolimod –associated macular edema (FAME)の特徴
  15. 山形で話題のラーメン
  16. 世の中を動かす仕掛け人たち
  17. 業界内で使用されている暗号
  18. 「コロッケ千夜一夜 歌とお喋りとものまね芸▽ものまねで繋がった絆」
  19. 武田鉄矢の発言
  20. Fingolimodのリンパ節以外への作用
  21. 再犯率の高さをどうする?
  22. 「東京ダンジョン」
  23. NMOでの治験の問題点
  24. 浮気女子の実態
  25. 小児MS
  1. 再発と脳MRI活動性とは相関する
    以前は治験で薬剤の評価をする場合、プラセボを対照として再発率の低下で評価していました。しかし、これですと、どうしても2年間は必要になり、プラセボ群では2年間無治療になってしまいます。Phase 3 studyでは現在でも従来のやり方を踏襲していますが、そのうち、基準薬に対する効果をみる、という方向になるでしょう。  

    すでに、脳MRI活動性(造影病変数あるいはnew or enlarged T2病変数)と年間再発率(ARR)はきれいに相関することが示されています(Ann Neurol 2009;65:268-75)。この時は23の治験、6591名の患者を対象に検討され、メタ解析による相関が初めてきれいに証明されました(0.45)。今回、同じグループはその後の治験も加えて、合計31治験、18901名の患者を対象に検討され、ほぼ同じ程度の相関が証明されました(slope=0.52)。主要評価項目をARRに設定すると、2年間で30%ARR減少を証明することに必要とされる、一つのarmに330名の患者が必要(つまりプラセボ群との2群間比較なら660名の患者が必要)ですが、6ヶ月間の期間で脳MRIを主要評価項目とすると一つのarmに110名必要になることを証明しました(Lancet Neurol 2013;12:669-76)。これに対して、Rudick & Cutterは
    1. このようなことを証明する方法がスタンダート化されていない。
    2. 一つの治験の中で様々なMRIが使用されている。
    3. 撮影法や画像解析が標準化されていない、
    4. 脳MRI活動性と再発とは患者個人のレベルでは相関しないという報告(Mult Scler 2008;14:770-8)もある。これはFingolimod中止時の造影病変がすぐに治療前のレベルに戻るけれども、実際に再発する患者はNatalizumab中止時と程ではない、ことと同じ現象。むしろ、Natalizumabで共通して認められない原因は?ということも議論になるのでしょうか?
    5. MRIで認められるのは病変の一部でしかない。Lassmannらの仕事で造影病変が認められなくても、血漿蛋白の漏洩はあることが示されています。
    6. この研究で使用されたのは出版された治験だけであり、有意差が出た治験だけを取り上げて検討したことになる。
    7. たとえばGAが効果が出るまで時間がかかることが知られており、薬剤によってはIFNβより効果発現が遅い薬剤もあり得る。 などという問題点があることが指摘されました(Lancet Neurol 2013;12:628-30)。

  2. 宇多野病院での小児期発症MS/NMO
    2年以上観察できた患者さんが27例あって、まとめられています(Brain Dev 2005;27:224-7)。ただ、この時代なので、MSとNMOは区別されていません。
  3. 本邦ではSPMSはまれ という記述がすでにありました!(神経免疫学 2002;10:181-3) Saidaらの宇多野病院例をまとめた報告で、250例中わずか8.6%!
  4. 人気の大統領は誰か?
    USA Today紙にこんな図が出ていました。
    Former president we would most enjoy a burger with
    Clinton     22%!
    Lincoln     15
    Regan      14
    Kennedy    14
    (USA Today 6 Nov 2012)  
    クリントン大統領って人気があるんですねえ。ダントツ!面白いことを言うからでしょうか。ホワイトハウス研修生のことなんか、人気に影響しません。明るさが大切!
  5. 政治的議論を誰とするか?
    欧米では、政治と宗教を公の場でしてはいけない、というのがルール。トラブルの元だからですが、日本では平気ですね。話す範囲をわきまえた上でなら、笑いで済みますが、そうではないこともあるので難しい。その難しさが判らない輩が困ります。さて、USA Today紙に出た、米国人の本音は・・・
    People we don’t talk politics with
    Co-workers     25%
    Strangers      16
    Neighbors      13
    Family        12
    People at church  12
    (USA Today 2 Nov 2012)  
    教会はキリスト教の宗派によっては同じ政治的趣向の人々が集まる場合もあるからでしょうが、通常はもっと上位でしょうね。家族が低いのはともかく、ご近所さんも低いのは・・・
  6. IFNβ1b-induced autoimmune hepatitis 「医薬品・医療用具等安全性情報」
    No.301で流れました。国内例が出ています。自己免疫現象としてはほかに、SLEや1型糖尿病の増悪または発症、が報告されています。  
    MSでのAIH合併頻度は0.17%という報告(Autoimmun Rev 2003;2:119-25.)もあります。つまり、薬剤とは関係がなくても自己免疫性肝炎の発症が知られています!(Mult Scler 2005;11:691-3; Neurology 2006;66:1954-5; Am J Gastrenterol 2008;103:2147-8)この頻度は一般住民の頻度(0.02%)の10倍。IFNβ自体が自己免疫現象の報告が古くからあって、他に甲状腺炎やMG、関節リウマチ、Raynaud現象が知られているそうです(Neurology 1999;53:1622-7; Am J Gastroenterol 2002;97:767-8)。  
    Glatiramer acetateでもAIHの報告があります(J Neurol 2007;254:816-7)。
  7. カナダでの有病率の急速な変化
    日本の変化は特定疾患登録患者数でも反復して施行された全国調査でも明白ですが、カナダはこの20年間で有病率が8倍になっています。1993年で人口10万人当たり30(Can J Neurol Sci 1993;20:17-29.)。現在は240。
  8. パン消費量全国1位
    実は京都府は全国1位なのですね。市内各所にある進々堂は有名。筆者は府庁前店にはないメニューのある、植物園前の北山店の朝食が好きです。京都市民はパンが大好き。焼き肉も好きですが、これは在日が多いためかもしれません(昔風のおばんざいなんて、今時、家庭でも食べてる人がいるんやろか?)。さて、市内でも今出川沿いと北大路沿いには有名なパン屋さんが並んでいます。北大路には・・・
    1. 「ブーランジュリレトランジェ」 075-411-0910
      堀川から西へすぐ南側、喫茶スペース有り、9:00-19:00、火曜日定休
    2. 「雨の日も風の日も」 075-432-7352
      建勲神社前交差点西へすぐ南側、8:00-19:00、無休
    3. 「ラミ デュ パン 京都北山本店」 075-494-3308
      堀川から西へ猪熊通南東角、カフェスペース有り、7:00-19:00、水曜日定休
    4. 「フリアンディーズ北大路店」 075-432-6688
      堀川から西へ100m、7:00-19:00、無休
    5. 「ブラウニーブレッド&ベーグルズ」 075-494-6610
      烏丸北大路東へ240m北側、8:00-19:00、日曜日定休
    6. 「ルポンディー」 コルネ・クリスプが有名、075-724-5335
      叡山電鉄こえて東へすぐ北側、7:00-19:00、無休
    7. 「レ・プレドオル」 オーガニック小麦使用 075-705-2510
      下鴨本通東へ松ヶ崎通手前北側、7:30-19:00、水曜日定休
    8. 「プチ フランス」 075-451-9682

    大徳寺前南側、7:00-19:00、火曜日定休  ついでに今出川通沿いのパン屋さん 疲れたので名称だけ。 エズブルー、ル・プチメック、フリアンディーズ、ラパンドール、大正製パン所、ラ・ナトゥラ、マリー フランス、ベーカリー白川、ABC、ボナペティ、パンドブルー堀川今出川店。
  9. Pediatric tumefactive MS からの報告ですが、自験例4例と文献例12例のまとめ。表にもなっていないし、まとまりが悪く判りづらいです(Pediatr Neurol 2002;26:18-25)。
  10. 余郷嘉明、杉本智恵、鄭 懐穎ら JCウイルスから見た日本人とアイヌの起源
    VIRUS REPORT 2007;4:82-92. というウイルスの系統樹をもとにした議論が提出されています。JCVはヒト集団とともに進化してきたと考えられるので、JCVの系統から集団としての移動の歴史を推測可能だそうです。MS関連で興味深いのは、ヨーロッパと地中海沿岸地域に分布するEU-aが日本の東北地方の日本海側、韓国北部、北極圏などにも分布していること。バイキングは北欧周辺だけでなく、ヨーロッパ各地から中東にまで進出しています(MSの多いサルジニア島には侵略の歴史はありません。そのためか、サルジニアのMSは北欧とはHLAも臨床像も異なります)。中東にまで来たバイキングたちの子孫はパレスチナ人たちに金髪を残し、MS susceptibilityを残しました。また、アジアからヨーロッパに広大な領地を維持していた元の軍事顧問団にもなっていたそうです。そのことと関連しているか否かは不明ですが、Kurtzke教授の作製した図では沿海州にMSの多いことが記されています(文献としては発見できていません)。かつて、日本海は大陸と東北地方とを結ぶ重要な海上交通路でもあったわけで、JCVは一緒に住んでいた親から子へ感染したと考えられるそうですので、MS susceptibilityのHLAなどの遺伝的要因を考える上で大変興味深いと思われます。  
  11. 治験の結果を評価する上での注意
    複数の薬剤が市販されると作用の強さの比較が求められ、様々な治験結果をもとに、相互の効果の比較を行うNetwork meta-analysisがMSでも行われるようになった(Eur J Clin Pharmacol 2012 ; 68 : 441-8; Clin Ther 2012 ; 34 : 857-869; Curr Med Res Opin 2012 ; 28 : 767-80.)。代表的な例(Eur J Clin Pharmacol 2012 ; 68 : 441-8.)を挙げると、治療開始12ヶ月後の再発のない患者の割合を効果判定基準とした相互の作用の違いを示している。hazard ratioの1をまたがずに1より大きい場合に対照薬より効果が大きいと言える。プラセボと直接比較した上側の結果は治験の結果そのものだが、実際には直接比較した治験のない下側のような組み合わせでの比較を求めるのが本法の目的である。Natalizumabよりインターフェロン(interferon: IFN)βのほうが成績が良いような奇妙な結果になっている。この手法は関節リウマチや心不全など数多くの疾患で報告されているが、MSのようなheterogeneityの強い疾患では評価には注意が必要である。  
    同一の治験でも地域により結果が異なることが既に知られている。二次進行型MS(Secondary progressive MS: SPMS)の進行抑制に対するIFNβの効果が欧州では認められたが(-22%, p = 0.0008)、北米の患者では認められなかったことがある(Neurology 2004 ; 63 : 1779-87.)。一般的にアフリカ系アメリカ人では疾患自体の活動性が高いことが知られており、最近の薬剤の初期の治験はポーランドやウクライナなどで行われることが多く、白人率が90%を超える。有意差はなかったが、比較する対象が異なると印象が一変する報告もある。カナダ・ブリティッシュ コロンビア州で868例のSPMSに対する同様の結果を同時期のコントロールと比較するとhazard ratioが1.30 (95% CI: 0.92-1.83, p = 0.14)だが、historical controlを対象とすると0.77(0.58-1.02, p = 0.07)だった(JAMA 2012 ; 308 : 247-5)。  
    同じIFNβやGlatiramer acetateに対する治験でも2001年以前は年間再発率(annualized relapse rate: ARR)が0.6-0.8だったのが、2002年以降では0.3-0.4にまで治療により低下している。メタ解析の結果、治験に入る患者のARR自体がこの30年間に毎年2.0%ずつ低下(95% CI 1.3-2.6, p <0.001)(Steinvorth SM, et al. Mult Scler 2013, in press.)しているので、治験に入る患者の疾患活動性が低下していることが想像できる。単純にARRや造影病変数がプラセボより何%低下した、という結果だけで治験の時期や地域の異なる薬剤の強弱を比較はできない。
  12. 「常在戦場」
    火坂雅志さんの新作短編集(文藝春秋)。徳川家康家臣団の関ヶ原の戦い前夜、伏見城で全滅した鳥居元忠(家臣団の最期の血飛沫は京都市内のいくつかの寺で鎮魂のため血天井として現代に継承されています)や今川家での人質時代からの家臣でありながら豊臣に寝返った石川数正、阿茶の局、京都所司代の下、情報活動をしていた牧野忠成(越後の長岡藩藩祖)などが描かれています。
  13. Fingolimodのpharmacokinetics
    1. Tmax (最高血中濃度到達時間)は12-16時間と吸収が悪い*。Cmax (最高血中濃度)は健康人が1.25mg、1錠内服12時間後で1.1±0.2 ng/ml。AUC (血中濃度-時間曲線下面積)は201±31 ng・hr/ml (Biopharm Drug Dispos 2007 ; 28 : 97-104.)。CmaxやAUCは食事の影響を受けない*。
    2. 半減期は8.8日 (Br J Clin Pharmacol 2004 ; 45 : 586-91.)。連日投与すると、血中濃度は4-8週後に定常状態となり、初期量の時の10倍に達する (J Clin Pharmacol 2005 ; 45 : 1268-78.)
    3. リンパ球減少は服用数時間後から認められ、数週間以内に投与前の20-30%にまで低下する (N Engl J Med 2006 ; 355 : 1124-40; N Engl J Med 2010 ; 362 : 387-401; N Engl J Med 2010 ; 362 : 402-15; 神経内科 2012 ; 77 : 109-113.)
    4. リンパ節からの流出が阻害されて末梢血中で激減するのは、CCR7陽性あるいはCD62L陽性細胞サブセットで、CD4、CD8、Bリンパ球分画に属する (Int Immunopharmacol 2006 ; 6 : 1902-10; 神経内科 2012 ; 77 : 109-113.)。CD4分画にはMSの脱髄病変形成に関与しているといわれているTh17細胞が含まれる (Neurology 2010 ; 75 : 403-10.)。
    5. リンパ球減少は用量依存性ではあるが線形には相関しない (Transplantation 2003 ; 76 : 1079-84.)。
    6. 中止すると数日以内に増加し始め、3ヶ月以内には治療前の80%程度にまで回復する (Mult Scler 2010 ; 16 (suppl 10) : S146-7.)。ただ、中止後の9ヶ月間、34ヶ月間もリンパ球減少が持続した例がある (Clin Immunol 2010 ; 137 : 15-20.)。
    7. 重篤な腎障害があると、CmaxとAUCは各々32%、43%増加するので血中濃度が上昇する*。また、肝障害では本剤のクリアランスが障害され、軽度では10%、中等度では30%、重度では50%障害される (J Clin Pharmacol 2005 ; 45 : 446-52; J Clin Pharmacol 2006 ; 46 : 149-56.)。Cmaxは影響を受けないが、AUCは障害の程度により各々12%、44%、103%増加し、半減期も中等度以上で50%延長する*。
    8. Ketoconazole (ニゾラールⓇ)内服薬はCYP4F2阻害作用があり、Fingolimodのtmaxや半減期には影響しないが、CmaxやAUCをそれぞれ1.2倍、1.4倍へ増加させる
    (J Clin Pharmacol 2009 ; 49 : 212-8.)。国内では外用薬しかなく、5gを塗布しても血中濃度は検出限界以下だが、欧米では内服薬が市販されていて、個人輸入代行もされているので注意を要する。
  14. Fingolimod –associated macular edema (FAME)の特徴
    1. 治験中の0.5-5.0 mg投与のデータから出現率は用量依存性で、高用量ほど出現率が高くなり、5.0 mgでは2.5%以上になる。
    2. 市販量である0.5 mg内服での出現率は1%位。
    3. 41歳以上、糖尿病、ぶどう膜炎患者ではリスクが高い。
    4. 投与開始後3-4ヶ月以内に出現することが多いが、まれに12ヶ月以降でも出現することもある。
    5. 黄斑は視野の中心なので、ぼやけたり(blurred vision)、視力低下に気づきやすく、眼痛が出現することがある。症状は視神経炎と紛らわしい。無症候性のことも少なくない。
    6. OCT (optical coherence tomography)は患者への負担が少なく診断効率が高いが、蛍光眼底造影検査より浮腫の検出率が劣る。
    7. 診断が確定したら、直ちにFingolimodを中止する。機能的予後は良好だが、局所への抗炎症剤が必要なこともある。
    8. 投与開始時と特に治療開始初期の4ヶ月間は視力検査やOCT検査をする。12ヶ月以降も必要に応じて行った方が良い。再投与により再発することがある。再発の頻度は不明である。

  15. 山形で話題のラーメン
    龍上海三代目・佐藤元保さんの「赤湯からみそラーメン」だそうな。山形にまで行かなくても、新横浜の「ラーメン博物館」で食べられるそうですよ。(日本TV系列「月曜から夜ふかし」2013/6/10放映より)
  16. 世の中を動かす仕掛け人たち
    1. ジューンブライド 6月の花嫁は幸せになれる、と新婦さん達は信じているようですが・・・6月は梅雨のために結婚式には不人気の季節だったため、結婚式を挙げてもらうために、BMCというホテル団体が考え出したことだそうな。45年前にホテルの支配人達は6月に売り上げが落ちることに悩んでいました。Juneという6月は結婚を司る女神・ジュノーに由来することから、仕掛けたんだとか。10-11月に次いで、6月が多いそうです。意外に、一番じゃないのね。
    2. 結婚披露宴のキャンドルサービス。1959年、その頃のローソクと言えば使用されていたのは主に仏具。ろうそくを作っていた、「カメヤマ」の営業課長は何か新しいろうそくの利用法はないか、と自分の結婚式で日本初のキャンドルサービスを実行。洋式の披露宴で日本風のろうそくに点火するというのはそもそもおかしいけれど、食べるしかやることがないため、参加者も主役の一員となれ、ちょうど良い暇つぶしにもなるため、瞬く間に拡大。現在はキャンドルリレーといって、ゲスト同士が新郎新婦からもらった火をリレーするんだそうで、人数分のろうそくが売れる、ということに。考えるなあ。
    3. 給料の3ヶ月分といわれる婚約指輪。婚約指輪にダイヤモンドを贈る風習は1950年代にアメリカで始まったそうなのですが、このときは給料の2ヶ月分とされ、見事に成功したんですね。1970年代にダイヤモンド業界が日本に持ち込んだのですが、このときに2ヶ月分を3ヶ月分に水増し。婚約指輪にダイヤを贈るのは米国と日本だけの風習なんだとか。われわれは黒幕に踊らされてますなあ。
    4. クリスマスにチキン。欧米ではチキンはいつも食べているので、特別の食材にはなりません。「ハレ」の料理にはならないのですね。感謝祭もそうですが、クリスマスは七面鳥!1970年代にケンタッキー・フライドチキンにやってきた外国人が、日本では七面鳥が手に入らないからチキンでお祝いをしようと思うんだ、と言ったことが発端(凍結だけれど、明治屋なら七面鳥は1970年代でも入手できたかも。明治屋を知らなかったに違いない)。仕掛け人はケンタッキー。チキンを食べるのは日本だけ。
    5. 恵方巻。これは新しいですね。でもいつのまにか、伝統的な風習のような立ち位置になってしまっていますね。これは大阪の寿司組合と海苔業者が結託して、大阪の一部だった風習を広げようとしたもの。当初はうまく拡大できなかったのに、恵方巻を全国化したのがセブンイレブン。コンビニは年中無休のため1月は売り上げが伸びるけれども2月には冷え込んでしまいます。そこで、起死回生のアイディアとしてヒット商品に。でも、良く受け入れられましたねえ。ちょっと不思議。個人的には悪趣味だと思いますし、大体たいして旨くないでしょ?
    6. 「○○の日」というのがありますね。348/365日は何らかの日ですし、同じ日にたくさんの記念日が指定されていることもあります。あれは業界や各種団体が勝手に宣言しているのではなくて、「日本記念日協会」という官僚の天下り用品みたいな団体がちゃんとあるのですね。驚くことに10万円払えば、審査が通れば新たな記念日を作れるんだそうな。「サラダ記念日」では無理なのか・・・
    (日本TV系列「月曜から夜ふかし」2013/6/10放映より)
  17. 業界内で使用されている暗号
    1. タクシー業界では、会社から各タクシーへ業務連絡をしたいときに・・・「第二京浜、汐留、日テレ付近、工事中です」(この場所で警察の取締中、という意。本当に工事をしているときは「本工事中です」)「甲州街道、落下物に注意して下さい」(会社によって表現が違うそうですが、ネズミとりのことを言うことも)「305号車、調整して下さい」(これも会社によるそうですが、食事休憩を指す会社があるそうです) さまざまな客をこんな風に仲間内で入っているそうでありますよ。「流れ弾」(遠距離客を期待して、大企業や官庁前に停車していたのに、空気を読まない近距離しか乗らない客のこと)逆は「お化け」深夜割り増し料金の客は「青タン」(表示板が青に変わるため) それゆえ、青タンでお化けが出ると最高の客。「わかめ、ゾンビ、納豆」(わかめは本来は客を乗せなくて良い回送-海草からきています-運転のこと、ゾンビは大勢の客が手を上げている状態、納豆は初乗り運賃の710円) 「わかめだったのに、ゾンビだったので載せたら、納豆だった」なんて表現するわけでありますね。「大きな忘れ物」(タクシー強盗)「SOS」や「助けて」と前方に表示されていたり、屋根の行灯が点滅していたら、110番に連絡を。
    2. デパート業界の暗号。「川中様」(語源は不明だそうですが、万引き客のこと。店を出るまでは捕まえられないために、こう表現して連絡するんだそうな)「五八様」(5X8で40。始終来てくれるお得意様のこと。)「イクラちゃん」(どうでも良い客のこと。これいくらですか?と値段は聞くが買わない客のこと)「伊丹よりお越しの○○様、3階婦人服売り場までお越し下さい」(痛みから派生している表現で、クレームをつけている客のこと)「ただいま、店内が大変混み合っております。お荷物には充分ご注意下さい。」(これはスリや万引きが発生した合図)「”Singin in the rain”の歌が流れたら、雨が降り出したという連絡。この一斉放送があったら、雨カバーなどを用意する。外の天候が判らないため。」「(雨が上がったら)”Somewhere Over the rainbow”の歌を流す」
    (日本TV系列「月曜から夜ふかし」2013/6/10放映より)
  18. 「コロッケ千夜一夜 歌とお喋りとものまね芸▽ものまねで繋がった絆」
    MCはもちろんコロッケで、チーママは唐橋ユミアナ。BS日テレで毎週金曜日の夜に放映中。ものまね芸人の若手を紹介するコーナーがあって、今や、コロッケはものまね界の重鎮。メインゲストは美川憲一さんとか別にいるのですが、若手を紹介することが主たる目的の番組のようです。フリーアナの唐橋ユミさんは週刊誌でグラビアも公開したことがありますが、TBS、NHKだけでなく、K2のCFにも出演していますし、テレビ東京のCFをテーマにした番組もやっています。凄い売れっ子。
  19. 武田鉄矢の発言
    時々話題になっているようです。ちょっと抵抗はあるけれど・・・「ヒトは相手のことが判らないから結婚する」んだそうな。女性は別れるときに、「やっと、あなたというヒトが判った」と言うんだそうな(よく知らないけれど)。「もう、知りたくない、というメッセージでもあります。長くつきあっていて、解り合えていると思うような状況では、かえって結婚には至らない。」と言います。(TBS系列「もてナイ!伝説だらけの大ヒットドラマSP ▽3年B組金八先生」にゲスト出演して。2013/6/11放映より)  
  20. Fingolimodのリンパ節以外への作用
    1. カンナビノイド受容体アンタゴニスト作用  
      食欲増進剤として米国の一部の州では医師による処方が認められているマリファナはカンナビノイド受容体アゴニストであるが、アンタゴニスト作用のある肥満治療薬が2008年に鬱の副作用で発売が中止された。(Mol Pharamacol 2006 ; 70 : 41-50.)
    2. ホスホリパーゼA2阻害作用  
      抗炎症作用により疾患活動性を抑制できるかもしれない。 (Blood 2007 ; 109 : 1077-85.)
    3. セラミド合成酵素阻害と肺水腫  
      同じ代謝部位を阻害する、マイコトキシンの一種であるFumonisin B1を動物に投与すると、ウマ大脳白質軟化症やブタ肺水腫を起こす(J Biol Chem 2009 ; 284 : 5467-77.)。ヒトで肺水腫が臨床的に問題になることはないが、血管透過性の亢進はFAMEの原因との関連も考慮するべきかもしれない。ただ、ヒト肺血管内皮細胞のセラミド合成を本剤が阻害する、という報告はある。(J Biol Chem 2009 ; 284 : 5467-77.)
    4. Ceramide-induced BBB破壊への減弱作用  
      MS脳ではセラミドの産生が亢進しているが、産生細胞は反応性アストログリアである。本剤はceramide-producing enzyme acid sphingomyelinaseの発現を抑制し、ヒトの反応性アストログリアでのセラミド合成を抑制する。アストログリアのBBB保持機構の分子レベルの詳細は不明だが、セラミドも関与しているのかもしれない。炎症細胞のCNSへの侵入を抑制し、抗炎症作用が期待できる。(Acta Neuropathol 2012 ; 124 : 397-410.)
    5. SHRで血圧が上昇  
      治験でも血圧の軽度上昇が知られていた。リン酸化されてFingolimodはMSで治療効果を発揮するが、血圧への作用はリン酸化されるとSHRの動脈壁を収縮させなくなる。(Br J Pharmacol 2012 ; 166 : 1411-8.)
    6. 抗腫瘍効果  
      S1Pは腫瘍細胞から放出されるため、早期の腫瘍マーカーとしても利用が考えられている(Nat Rev Cancer 2010 ; 10 : 489-503; Methods Mol Biol 2012 ; 874 : 55-67.)。
      グリオーマやT-cell large granular lymphocyte leukemiaやB-cell malignancies (Blood 2008 ; 112 : 770-81.)、肝細胞癌、膀胱癌、前立腺癌、腎癌、膵癌、乳癌、肺癌などさまざまな腫瘍細胞のapoptosisを誘導したり、血管新生を抑制(J Cell Biochem 2007 ; 10 : 259-70.)することで、in vitroだけでなく、in vivoでも抗腫瘍効果が認められている(Neuro Oncol 2012 ; 14 : 405-15)ので、腫瘍に対する治療が可能かもしれない。特に悪性のグリオーマは機能予後も生命予後も不良であり、BBBを超える本剤の併用は治療効果が期待できる。動物実験では原末を溶解して注射しているが、ヒトに投与する場合は新たに注射を開発する必要がある。
    7. 末梢神経の脱髄増悪  
      ラットを使用した脱髄モデルでSchwann細胞のアポトーシスを引き起こすことが判明した(Köhne A, Stettner M, Jangouk P, et al. Arch Neurol, in press)。まれにMSではCIDPを合併することがあるので、脱髄病変を増悪させる危険がないか、注意を要するだろう。
    8. アストログリアやミクログリアへの作用  
      S1PはCNS内の神経細胞や様々なグリア細胞に発現しており(J Neurol Sci 2013 ; 328 : 9-18.) 、本剤は正常なBBBも超えてCNSの様々な細胞に作用し得るので、MS以外の疾患にも応用が可能と思われる。本剤はアストログリアのS1p1受容体を介してマウスのEAEを改善させるという、リンパ球ではなく、CNSへの直接作用を示唆する報告がある。(Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 ; 108 : 751-6)  
      ミクログリアからのbrain-derived neurotrophic factor (BDNF)やglial cell-derived neurotrophic factor産生だけでなく(J Neuroimmunol 2013 ; 256 : 13-8.) 、神経細胞からのBDNF産生も亢進させて(PLoS One 2013 ; 12 : e61988.)神経保護作用を示す。Aβ1-42のラット両側海馬への注射による記憶障害を本剤は軽減できる(Asle-Rousta M, Kolahdooz Z, Oryan S, et al. J Mol Neurosci 2013, in press)ことで、アルツハイマー病への治療が示唆された。
      動物の脳虚血モデルのメタ解析の結果から、脳梗塞容積や神経症状の軽減が証明されていて(Int J Neurosci 2013 ; 123 : 163-9)、神経細胞保護作用だけでなくリンパ球のCNSへの流入を阻害する抗炎症効果も加味しているのかもしれない。
    9. CNSへのdelivery  
      低分子化合物を排出する主な作用を有するP蛋白の活性を抑制するので(Proc Natl Acad Sci U S A 2012 ; 109 : 15930-5)、低分子薬物のCNSへの持ち込みを容易にできる可能性があり、新しい治療法の開発に繋がり得る。
    10. 皮膚の樹状細胞やLangerhans細胞のリンパ節への移動抑制  
      ハプテンと結合した皮膚の樹状細胞やLangerhans細胞は皮膚からリンパ管を通ってリンパ節へ移動して、そこでペプチドと結合したハプテンをT細胞に抗原提示することで抗原特異的T細胞を感作する。本剤は皮膚からリンパ節への移動を抑制するので、接触性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の治療に使える可能性がある(Am J Transplant 2005 ; 5 : 2649-59.; J Invest Dermatol 2009 ; 129 : 1954-62.)。

  21. 再犯率の高さをどうする?
    窃盗、覚醒剤、交通事故は再犯率が高いとされています。2012年末に芸能界へ復帰している酒井法子さんの場合、覚醒剤取締法違反で逮捕されましたが、逃亡したのは悪質とされたものの初犯だったので、懲役1年6か月、執行 猶予3年の有罪判決を受けました。初犯の場合、常にこの数字になるんだそうで、ならば、裁判なんていらないじゃん、というほどに画一的だそうですね。でも、再犯防止は難しいでしょう。病気ですから。日本では逮捕後に覚醒剤の治療をきちんと行う制度はありません。法務省と厚労省の縦割り行政のためでしょうか?  
    最近、気になっていることは、交通事故。ドライバーのほとんどが保険をかけているでしょうが、事故を起こした際に、欧米風に保険会社に一任してますから、という態度が多いのではありませんか?自分が起こした場合も現代の風潮を考えますと、そう言わざるを得ないような気はします。妙な米国化が進んでいて、昔風の日本人気質は失われているような気がします。30年、40年前と比べて、国内車両数当たりの交通事故は増えてませんか?あるいは契約保険を分母にした、事故で支払われている件数が以前より増えてませんか?機械的になったことは余計なストレスがなくなってある意味では良いのですが、安易になっていませんか?事故を起こした後の保険料を大幅にアップするべきです。法律で規制できないものか?保険を支払ったら、掛け金は最低5割増、とか・・・  
    最近、ようやく警察庁も理解するようになってきましたが、自転車もすごいです。本誌で少し記載したことはありますが、以下は実際に京都市内で目撃した事例。
    1). 夜間でも1/2は照明をつけない(今出川通での19時過ぎの実測。対象は50台)。
    2). 「止まれ」の標識や道路上での記載も無視。止まるどころか、左右を見る人を見たこともありません(市内のあちこち)。
    3). 片道2車線のバス道路の交差点を赤信号を無視して、車の警笛も何のその、悠然と自転車で車のようなラインで右折したおばさんがいました(北野天満宮前、つまり西陣警察署前!)。
    4). バス通りですが、狭い路を3列横隊でおしゃべりしながら(京都学園近く)。
  22. 「東京ダンジョン」
    パニックものがお得意の福田和代さんの新作(PHP)。今回は東京の地下鉄を標的にしたテロがテーマではありますが、少し風変わりで、パニックを起こすわけではありませんし、犯人とゲームをしたり、争ったりもしません。地下鉄の構造がどうなっているのか、などの興味はありますが・・・
  23. NMOでの治験の問題点
    1. 特定疾患登録患者数が急増しているとは言っても、せいぜいMS/NMOで国内で16000名程度。2004年の全国調査でNMOは概ね25%で、その後も増えている分の大半はMSでしょうから、全国でNMO患者は3000名余りでしょう。2011年の全国調査で有病率が判るはず。患者数が少ないので、当然、治験を行う場合は国際共同試験になります。この場合、外国での治験のやりやすさに、治験の実施条件は依存することになります。日本には医療保険や特定疾患制度がありますから、よほど患者側にメリットがないと医療機関側はやりたくても実施自体が困難かもしれません。
    2. MSでは脳MRIでdisease activityをチェックできますから、客観的な方法が確立しています。NMOにはないので年間再発率(ARR)で評価するしかありません。客観的で患者さんの負担が少ない再発補評価法が確立していないので、再発の定義が問題になります。感覚障害だけの「自覚的再発」を否定できない場合はどうするのか?24時間以上放置してから、パルスをやるのか?ARRを第一次評価項目とすると、2年間は必要でしょう。
    3. MSと同じように、過去1年以内に再発がないと登録できない、という条件の治験になるでしょうが、どういうsituationが想定されるかというと、再発しているのにステロイドが投与されていないか (少し特殊な状況なので、前主治医が再発と評価していなかったか?「再発性」という定義がきちんと入るなら、未治療という患者さんは少ないはず)、既に投与されているけれども充分な量ではないか(治療にどじったか、減量が早かったか、MSでいうbreakthrough diseaseの状態か)、いずれにせよ、再発する患者さんは少ないですね。多かったら、治療が下手、という可能性が高いですから。もちろん、昔はめちゃくちゃ活動性の高い患者さんがいらっしゃいましたが、早期診断、早期治療できるようになって、充分に病気の原因になっているリンパ球が増える前に治療しているためか、軽症の患者さんが増えています。

  24. 浮気女子の実態
    人妻ではありません。彼氏がいても・・・という女の子たち。浮気の経験の有無についての問いに、YESと答えたのは32%。ま、深夜のバラエティ番組ですから、社会学的あるいはドキュメンタリーでもないので、番組調べという形態なので、母集団の数も対象年齢も不詳。ゲストの会話から、街頭アンケートの場所は渋谷のようであります。ハチ公の前あたりでしょう。「浮気」の定義がはっきりしません。爆笑問題はキス以上と言っていましたが、番組が作成したフリップのイメージでは、街頭インタビューの際のスタッフ側のニュアンスとしてはエッチ付きのようであります。
    問1. 浮気の相手は誰?
    第1位 地元や学校の男友達(暫くぶりに同窓会で会って・・・)
    第2位 ナンパしてきた見ず知らずの男(浮気がばれないから!というのがたった一人正解した西川史子センセのコメント。ゲストの多くは「友達の彼氏」あるいは「彼氏の友達」というすごい関係ではないか、と答えていました。一応、クイズなのです)
    第3位 元カレ
    第4位 SNSで知り合った男(携帯などのネットなので、第2位に近いですが、どうなってるんだ、今の日本は?)
    第5位 合コンで知り合った男
    問2 浮気がばれないためにやることは?
    第1位 携帯の履歴削除やロックして見せない
    第2位 友人に口裏を合わせてもらう
    第3位 ツイッターやブログ、メールに嘘の情報を流す。時には前に撮った写真を使用。
    第4位 彼氏のスケジュールを調べる。
    第5位 優しく接して彼氏を安心させる
    問3 浮気に至った理由は?
    第1位 彼氏に関する愚痴を優しく聞いてくれたから*
    第2位 彼氏よりも好みの男性を見つけた
    第3位 元カレから誘われた(西川女史によれば、元に戻るわけじゃない。一度壊れたら無理なんだそうな。付き合った人数が増えないからだそうな-人数を気にすると言うことはやっぱりエッチ付きなのだな。西川センセは同時に6マタはかけられる、とお馬鹿な発言をしてました。一応、まだ結婚して2-3年でしょ?-)
    第4位 ちゃんと褒めてくれたから(彼氏は可愛いとか、もう言ってくれないそうな)
    第5位 彼氏に怪しい女の影を発見(じゃ、私も!)
    * この答えを当てるクイズでは全員外れ。6人中4組(爆笑問題の田中裕二-敬称略、西川史子、小島慶子-元TBSアナ、博多華丸・大吉)の共通の答えは、「酔っ払ったとき」。(テレビ朝日系列「ストライクTV-緊急調査!浮気する女の実態スペシャル」、2013年6月18日放映より)
  25. 小児MS
    断りのない場合は、Verhey LH, Shroff M, Banwell B. Neuroimag Clin N Am 2013, in press  
    Pediatric MS 18歳以下の患者はMS全体の2.2から4.4%で,米国での年間発症者数は10万人あたり0.51人(Neurology 2011;77:1143-8),急性脱髄性中枢神経疾患全体の頻度は0.9から1.56人(Neurology 2009;72:232-9; Neurology 2011;77:1143-8)。  歴史的には14世紀の少女の記録が最も古い(Acta Neurol Scand 1979;60:189-92)が,小児期発症MS患者のコホート研究の報告は1958年まで待たねばならなかった(Pediatrics 1958;21:703-9)。  
    成人発症MSでは高緯度地域、特に北欧、カナダで有病率が高く、F/M比も年々急速に上昇しているが、小児でのデータはない。地域だけでなく民族差も激しく、同じ地域に住んでいても民族が異なると有病率は異なる。小児での数少ない報告があって、Bostonの小児MS Centerでは成人発症MSに比して小児ではAfrican Americanが多く(7.4% vs 4.3%)(Mult Scler 2009;15:627-31)、AAは病初期に白人より重篤な再発を呈する(Peditr Neurol 2009;40:31-3)。ヒスパニック系は非ヒスパニック系に比してbreakthrough diseaseの頻度が多い(50% vs 24%, p<0.001)が、African Americanとnon-African Americanとでは有意差はなかった(p<0.87)( Arch Neurol 2011;68:437-44.)。

    2009年の本邦での全国調査-1  
    15歳未満の患者の有病率は、10万人当たり1人(成人ではMS+NMOで7.7人)。「MS」全体患者全体の6.3%を占め、欧米の2-5%より高めで、小児発症MSが占める割合が高いことが特徴と鳥巣らは記載したが、このときに用いた基準は2007年版IPMSSG基準なので小児の全国調査ではNMOは除外されているはず。2004年のMS全国調査では後の追加調査で、約25%に3椎体以上の脊髄病変が認められているので、6.3%より割合は多いだろう。ただし、2004年から2009年までに成人患者数も劇的に増加はしていて、2010年の段階で有病率は約10 (推定)である。欧米ではPPMSがほとんどいないこともあって、MS患者全体の50%がSPMSへ移行すると言われるが、本邦調査では小児MSの90%以上がRRMS。  
    平均発症年齢は8.3歳。  
    運動麻痺64%、視力低下45%、痙攣45%、感覚障害38%、精神症状35% 、排尿障害30%、眼筋麻痺27%、躯幹失調19%。本邦では運動麻痺(括弧内は欧米の割合*27%)、視神経炎(20%)、痙攣が欧米より多い。横断性脊髄炎は少ない(鳥巣浩幸、原 寿郎. 小児多発性硬化症、最新アプローチ 多発性硬化症と視神経脊髄炎、辻 省次総編集、吉良潤一専門編集、中山書店、東京2012, pp85-91)。* Nat Rev Neurol 2009;5:621-31)。  
    成人例に比して小児発症例では髄液細胞増多例が多く(平均70/mm3)、IgG index上昇例も少ない。OCBはわずか16%にしか認められなかった。方法は不詳。統一はされていない。SRLも多いか? (鳥巣浩幸、原 寿郎. 多発性硬化症と急性散在性脳脊髄炎。小児科 2010;51:1775-85)

    危険因子  
    少なくとも一つのHLA DRB1*15 alleleを有していると,MSのリスクは2倍になる(Lancet Neurol 2011;10:436-45)。
    血中25-hydroxyvitamin D3値が10 ng/ml増加するごとに再発率が34%減少する(Ann Neurol 2010;67:618-24)。
    抗EBウイルス抗体が陽性だとMSの発症リスクが3倍になる(Lancet Neurol 2007;6:773-81)。  
    喫煙もリスクで,親が家庭で喫煙していると(受動喫煙),MS発症リスクが高まる(Brain 2007;130:2589-95)。

    成人発症MSと小児発症MSの違い 1
    1. 10歳以下での発症は稀で,小児発症例の17%を占めるに過ぎない.成人では特に最近,世界中で患者のF/M比が著増しているが,6歳以下の発症患者では0.8:1とむしろ男児が多く,6から10歳発症群でようやく1.6:1となり,10歳以上群で成人と同じ現象となる(Lancet Neurol 2007;6:887-902; Lancet Neurol 2009;5:621-31)。
    2. 思春期以降の成人患者では単症候性で発症するが,小児では多症候性で発症することが多い(50-70%)。
    3. PPMSはきわめて稀でほとんどいない。
    4. 年間再発率は治療群・未治療群合計でも、成人(0.3-1.78)より多い(1.12-2.76)。(Arch Neurol 2009;66:54-59)
    5. SPMSは成人発症より10年遅く移行するが,年齢としては10歳早く到達する。
    6. 再発からの回復が早い(Neurol Sci 2004;25(Suppl 4):S326-35; Neurol Sci 2004;25(Suppl 4):S323-5)。
    7. 罹病期間が同じだと、T2病変や造影病変容積は成人と変わらないが、T2病変数や造影病変数、大きなT2病変数は成人発症患者より多い。テント下病変、特に脳幹でのT2病変数は成人より多い。
    8. 小児では胸腺がまだ萎縮しておらず、T細胞分化に重要な臓器であるが、Fingolimodは胸腺からのT細胞の末梢血への移行を妨げ、免疫機能に影響する危険性がある。
    9. 機能的予後は良好で、EDSS 4に達するのは発症から平均で20年で、EDSS 6には28.9年、EDSS 7には37年かかり、成人発症群に比して経過が長い。
    10. しかし、認知機能障害は目立ち、10年間観察すると半数で認められ、cross-sectional studiesでは健康小児に比して30%以上で認められる。2年間の観察で70%の患児に認知機能の増悪が認められた、という報告もある。
    11. 深部灰白質、特に尾状核頭部に鉄沈着と考えられているT2低吸収病変が認められる。
    12. MSの初発として、周囲の浮腫を伴う直径2 cm以上のtumefactive lesionが出現することがある。特に幼い子供の場合、しばしば両側性瀰漫性に大脳白質病変が発症時に出現することがある。(J Child Neurol 2012;27:1378-83)
    13. 脳MRI所見は11歳以上では成人と同じだが、11歳以下では発症時に”large confluent T2 lesions with poorly defined borders”(tumefactive lesionsとの異同は?)を呈することがあるが、自然経過で消失する(“vanishing MS T2-bright lesions before puberty” Neurology 2008;71:1090-3)。これは、成人や青年期の患者で認められるovoid lesionsが持続的に存在することと対照的で、年齢に影響を受けた病変関連浮腫によるものと考えられている。  
      成人とは異なり、テント下、特に橋の病変が多い。(J Child Neurol 2012;27:1378-83)
    14. 2010年の成人発症MSのMcDonald criteriaでのDIS 4項目中、小児例では少なくとも2カ所に2個の病変を呈する程度が大部分で利用できない。小児発症例向けのMcDonald criteriaが発表された(Ann Neurol 2012;72:211-23)。


    成人との違い-2
    (Soares B, Chabas D, Wintermark M. MRI features of pediatric MS, in “Demyelinating Disorders of the Central Nervous System in Chilfhood”, ed by Chabas D & Waubant E, Cambridge Univ Pess, 2011, pp48-57.)

    1. 後頭蓋窩病変が多く、脊髄病変が少ない(68.3% vs 31.4%)。また、造影病変の頻度が高い(68.4% vs 21.2%)。(Arch Neurol 2009;66:54-9)  脳幹病変が多いが、特に男児では橋病変が多い(Ann Neurol 2008;63:401-5)。小児でテント下病変が多いのは個体発生上の髄鞘化の進行と関連していると考えられている(Radiology 1988;166:173-80)。髄鞘化は小脳と橋、内包から始まって、脳梁膨大、視放線へ、次いで後頭葉と頭頂葉へ拡大し、脳梁膝、前頭葉と側頭葉へ進行する(J Neurosci 2011;31:784-91)。テント下は最も早くに髄鞘化が始まった部位で、最もきちんとした場所だから?
    2. 脳MRIでT2病変数は多く(中間値で成人と比較すると21 vs 6)、病変が大きい(4 vs 0) (Arch Neurol 2009;66:54-9)。
    3. 2154例の成人発症例と146例の小児発症例での痙攣の頻度を比較したトルコからの報告では、成人例で28例(1.3%)であったのに対して、小児例では8例(5.5%)に認められた(p≦0.001)。 Durmus H, Kurtuncu M, Tuzun E, Pehlivan M, et al. Acta Neurol Belg. 2013, in press.
    4. CIS段階で、McDonaldの診断基準を成人では52%が満足するけれども(Lancet Neurol 2006;5:221-7)、小児ではわずか12/52例(12%)でしか満足しない(Brain 2004;127:1942-7)。造影病変が認められる頻度は、41例の小児の68.4%に対して、成人35例では21.2%(p<0.001)(Arch Neurol 2009;66:967-71)。小児のこの現象は罹病期間の長さには依存せず、年齢と関連があり、小さな子供ほど造影病変が多い。Tumefactive lesionも小さな子供で出現しやすく、造影される頻度も高い。4/20例の小児MSでtumefactive lesionが認められた、という報告がある(Neurology 2004;62:806-8)。
    5. 8年間経過観察した研究で、成人よりblack holesや脳萎縮といった、非可逆性変化の進行は遅い(Neuropediatrics 2001;32:28-37)。ただ、この所見が単に観察期間の短さによるものか否かは不明ではあるが。


    臨 床  
    発症はほとんどが9-13歳(Lancet Neurol 2007;6:887-902)。初発時の改善は良好。(J Child Neurol 2012;27:1378-83)  
    MSと診断されるのは発症から0.9-2.0年後である (Neurologist 2010;16:92-105)。  10-23%は視神経炎で発症する。一側性よりも両側性の方がMSへconversionするriskが高い(Neurology 2006;67:258-62)。  
    脳MRIで1個以上の白質病変が認められると、2年以内に68%がMSへ進展するリスクがある。(Neurology 2006;67:258-62)  
    30-50%の患者はmonofocal symptomsで発症する。polysymtomaticで発症することが、特に若年者で多く、脳症や失調症状はADEMとの鑑別を困難にする(Neurologist 2010;16:92-105)。特に、北米やヨーロッパに比して、南アメリカの小児ではADEMを呈することがMS患児では多く、ADEMで発症して後にMSに進展する (Lancet Neurol 2007;6:773-781)。  
    急性横断性脊髄炎が単独で初発症状を示すのは2-14%にすぎない。3椎体以上の長い脊髄病変が小児MS患者(14.3±3.1歳)の10/36例(27%)で認められ、小児ではこの所見はNMOの鑑別に役立たないという報告がある。(Neuroradiol 2010;52:1153-62)  
    30%で認知機能障害(注意力低下、記憶障害、喚語障害など)があり、50%で鬱症状、75%に疲労が認められる。認知機能障害は発症後1年目から顕著な低下が目立つ。身体の障害度や再発回数、罹病期間とは相関しない。身体の障害度の低く罹病期間が短い患者でも、小児では認知機能の低下が認められることに留意。(J Child Neurol 2012;27:1378-83) イタリアでの多施設共同研究で経過観察した研究では、70%の患児が2年間で認知障害が増悪した(Neurology 2009;72:A97)。  
    ドイツの136例の検索ではCSF OCBは92%が陽性 (Neurology 2004;63:1966-7; J Child Neurol 2007;22:109-113)。発症時、常に陽性になるわけではない、という報告がある。
    MRI単独ではMSの診断は困難(Neurologist 2010;16:92-105)。ADEMと鑑別が難しい。一般的に、障害度をMRIで予測はできない(Neurologist 2010;16:92-105)。28例のRRMSの検討で、視床容積低下はT2病変量と相関するが、障害度や罹病期間とは相関しない。皮質や基底核は顕著には障害されない(Neurology 2008;70:1107-1112)。

    思春期前後の違い-思春期前の患児の特徴
     
    思春期前の患児では病態が異なる

    1. CIS段階で、境界の明瞭なovoid lesionは乏しく、しばしば癒合した病変を呈する。
    2. 造影病変は稀で、深部灰白質病変がしばしば認められる。
    3. CIS以降の経過で92%の患児で病変数と大きさは減少するが、思春期患児ではわずか29%でこういった現象が認められるのみ。
    4. 当初は両側性の大きな病変を呈するので、ADEMとの鑑別は困難。
    5. 病変数が多いのにMcDonaldの診断基準を満足しない理由は、McDonald基準で指定されていない、成人発症MSに特異的な部位に病変が少ないため。発症年齢によっても異なり、診断基準を満足する10歳以下の患児では27%が再発を予想できたが、10歳以上では80%だった(Arch Neurol 2009;66:967-71)。
    6. CSF IgG indexは11歳以上では68%で上昇しているが、11歳未満では35%のみであり、OCBも前者では63%だが、後者では43%にとどまる (Nat Rev Neurol 2009;5:621-31)。


    McDonald診断基準は小児MS診断に適切か?

    1. 20例の小児MSのCIS段階では、全ての患児が1個以上の病変を呈していたが、わずか53%しか満足しなかった(Neurology 2004;62:806-8)。
    2. 116例について検討したFrench studyでは52%の感度、63%の特異性が認められた(Brain 2004;127:1942-7)。
    3. 1), 2)の初期の研究ではT2病変数はしばしば9個以下とされていたが、Waubantらは成人よりむしろT2病変数が多いと報告した(Arch Neurol 2009;66:967-71)。病変数が多いのにMcDonaldの診断基準を満足しない理由は、McDonald基準で指定されていない、成人発症MSに特異的な部位に病変が少ないため。発症年齢によっても異なり、診断基準を満足する10歳以下の患児では27%が再発を予想できたが、10歳以上では80%だった(Arch Neurol 2009;66:967-71)。幼児ではCIS時にovoid lesionが少なく、経過観察していると病変が消失することが多いこととも関連か。  
      小児期発症MSでのMcDonald基準の有用性が高くはないと、カナダ(Neurology 2004;62:806-8)やフランス(Brain 2004;127:1942-7)からも報告されている。  
      成人発症MSでも当初ほどMcDonald基準の有用性は高いとは言えない(感度が49%)という報告もある(Lancet Neurol 2006;5:221-7)。


    MSのMRI診断基準

    1. KIDMUS MRI criteria (Brain 2004;127:1942-7) 116例の小児RRMSの検討から導き出された。CIS時点で、次の2項目を満たす。
      ① 境界明瞭な病変 (HR 1.71, 1.29-2.27)
      ② 長軸方向の脳梁病変 (2.89, 1.65-5.06)
      しかし、特異性は100%だったが感度が低い(21%)欠点があった。  
      白質の50%以上を占めるような巨大な病変や単一の大きな脱髄病変は単峰性経過と関連することが多く、基底核や視床病変の有無は再発するか否かの鑑別には利用できない。
    2. Callen基準 (Neurology 2008;72:961-7) 38例のMSと45例の非脱髄性再発性神経疾患とを比較して。以下の2項目以上を満たす。
      ① 5個あるいはそれ以上の病変
      ② 2個あるいはそれ以上の脳室周囲病変
      ③ 1個の脳幹病変  
      この基準の感度は85%で、特異性は98%!  
      片頭痛やSLEを対照とした研究なので、適切と言えるかどうかが問題。しかし、感度は良好!

    MS患者の75%で1年以内に次の再発が認められる。発症後の2年間は再発率が高く、このときの再発率の高さが後年の障害度を決定する。全小児MS患者の50%がSPMSへ移行する。(Clin Neurol Neurosurg 2008;110:897-904)

    RIS  
    著者らは4例経験している。論文なし。

    CIS
    1. 29例の視神経炎患者の後方視的研究で、平均50ヶ月後、脳MRI所見のなかった患児はMSには進展しなかった。24ヶ月以上followできた18例中7例で発症時の脳MRIで所見があり、うち3例がMSへconversionした(Neurology 2009;72:881-5)。
    2. 35例の視神経炎患者の前方視的研究では、発症時に19例で脳あるいは脊髄に1個以上の病変が認められた。12例でMcDonald基準を満足し、うち10例は2.4年の経過観察期間中にMSへ進展した(Neurology 2006;67:258-62)。
    3. 14例の視神経炎患者中8例に大脳白質に病変が認められ、うち7例は発症から2ヶ月から14年の期間にMSへ進展した(Acta Neurol Scand 1988;77:44-9)。
    4. 脊髄のextensive lesionはMSよりADEMの可能性が高い!?  
      UCSF cohort studyで、発症時の脊髄MRIで3椎体以上の長い脊髄病変は24例のCISと8例のADEMとを比較したところ、8.3% vs 65%であった(Neurology 2008;70:A135)。


    ADEM  
    10歳以下で認められることが多い。ADEMは急性脱髄性疾患で最も多く、25-40%を占める。再発性ADEMはきわめて稀。単峰性だが3ヶ月以上症状が変動することが良くある。  
    一般に機能予後は良好で、後遺症は軽度なことが多く、あるシリーズではEDSSは2.5以下(Neurology 2002;59:1224-31)。  
    IPMSSGの2007年の定義(Neurology 2007;68:S7-12)では複数の病巣に由来する複数の症候と脳症症状*(行動異常、意識障害)を呈することが必須条件だが、病変の多巣性はMRIではなくて症候によらなければならない。(鳥巣浩幸、原 寿郎. 多発性硬化症と急性散在性脳脊髄炎。小児科 2010;51:1775-85)  
    ADEMはNMOやCNS血管炎、サルコイドーシスの初発のこともある。(J Child  Neurol 2012;27:1378-83  
    50%でワクチン接種やウイルス性感染症が先行する。  
    ADEMがMSの初発になるのは2-6%、18%という報告も。  
    ADEMで初発した場合、MSと診断するには初発症状から3ヶ月以降の脳症(行動異常や意識障害)を呈さない、non-ADEM eventsが必要で、初発症状はMSの診断に必要とされるDIT/DISに含めない。  
    OCBは95%で陰性。(Neurology 2004;63:1966-7) 

    * 脳症の内容 25例についての検討がある(Fridinger SE, Alper G. Defining encephalopathy in acute disseminated encephalomyelitis. J Child Neurol, in press.)。呈した症状は、過敏性(36%)、眠気(52%)、錯乱(8%)、鈍麻(20%)、昏睡(16%)であり、24%で痙攣が認められ、65%で脳波の徐波化が認められた。半数の患児が過敏性や眠気のみを呈しており、客観的な症候とは言えないため脳症と診断する上での困難さが示唆された。  

    Hyperacute severe forms:
       Acute hemorrhagic leukoencephalitis
       Acute hemorrhagic encephalomyelitis
       Acute necrotizing hemorrhagic leukoencephalitis  
    ADEM自体が再発する場合、
       relapsing (再発性) 発症3ヶ月以降に同一病変部位が再燃した場合多相性
        multiplasic (多相性) 新たな部位に病変が出現した場合
    あるシリーズによれば、頻度はADEM発症後8年後に3/22例にいずれかが(Pediatr Neurol 2008;39:12-7)。

    ADEMのMRIの特徴:

    1. focal or multifpcalなT2病変でテント上下に存在する直径2 cm以上の融合した病変
    2. black holesはない
    3. 深部灰白質、特に視床に病変を生じやすい
    4. 脊髄病変


    鑑別-ADEMが最も鑑別が困難であり、重要
    MSとの違いは何か?

    1. MSと異なり、無症状期に新T2病変が脳MRIで出現することはない(Neurology 2002;59:1224-31)。
    2. ADEMを除外するためのMS診断基準(Callen 2009) (Neurology 2009;72:968-73)  以下の3項目の内2項目以上を満たす。この基準による感度は81%、特異性は95%。
      a). 2個あるいはそれ以上の脳室周囲病変
      b). black holeの存在*
      c). びまん性の両側性病変の欠如
         * 単純T1強調画像でblack holeは造影病変である可能性があるので、造影MRIで評価する必要がある。
    3. 脊髄のextensive lesionはMSよりADEMの可能性が高い!?  

    UCSF cohort studyで、発症時の脊髄MRIで3椎体以上の長い脊髄病変は24例のCISと8例のADEMとを比較したところ、8.3% vs 65%であった(Neurology 2008;70:A135)。

    2009年の本邦での全国調査-2  
    本邦でのADEMの発症頻度は0.8人/10万人・年で、毎年人口10万人当たり0.8人発症している。米国の結果は本邦とほぼ同じだが、カナダでは0.2人でドイツでは0.07人であることから、地域差や民族差があるらしい。  
    平均発症年齢は5.3歳。2-3歳にピークあり。  
    60%は感染後ADEMで、18%はワクチン接種後。  
    発症3ヶ月以降に同一病変部位が再燃した再発性は年間2例、新たな部位に病変が出現した多相性は年間4例認められた。  
    71%が発症前に発熱、36%が頭痛を訴えた。経過中の症状は、運動麻痺75%、躯幹失調33%、排尿障害30%、痙攣30%、構音障害22%、視力低下9%。  
    OCBは4%で陽性。 (鳥巣浩幸、原 寿郎. 多発性硬化症と急性散在性脳脊髄炎。小児科 2010;51:1775-85)

    ADEMとの鑑別-ADEMにはないMSの特徴
    次のうちの2項目以上。感度は81%、特異性:95%。
    1). 両側瀰漫性の病変の欠如
    2). black holesの存在
    3). 少なくとも2個以上の脳室周囲の病変  (Callen et al. Neurology 2009;72:968-73)

    横断性脊髄炎  
    カナダのシリーズでは小児の急性脱髄性疾患のうち21%を占める(Neurology 2009;72:232-9)。
    通常、横断性脊髄炎は再発しない。逆に、MS患者の10%までは初発症状が横断性脊髄炎を呈する(Neurologist 2010;16:92-105)。 47例の横断性脊髄炎患児のうち、MSに進展したのはわずか1例のみ(Neurology 2007;68:1447-9)。  
    40%は3歳以下で認められ、平均3.2年の経過観察後に40%は車椅子依存、80%に排尿障害が認められた。良好な予後に関連している因子は、脊髄低位レベル、傷害脊髄のセグメントの短さ、脳脊髄液中の細胞数正常、発症時の高年齢、急性期でのT1低吸収域病変の欠如(Neurology 2007;68:1447-9)。

    Tumefactive MS
    Dr Banwellからの報告だが、まとまりが悪く判りづらい(Pediatr Neurol 2002;26:18-25)。自験例4例と文献例12例のまとめ。  
    10歳以下のMS患者ではtumefactive lesionsを呈する。(J Child Neurol 2012;27:1378-83)

    鑑別診断
    各種leukodystrophies, mitochondrial diseases, CADASIL, 血管炎、Fabry, HIV, AMN, HAM, HSP, Leber病など。(Neurologist 2010;16:92-105)

    MRI  
    造影病変は成人 (Harvard Univでも日本人を対象とした宇多野病院のデータも同じ) と同様に3週間持続する。

    診断基準  
    成人MS患者を対象としたMcDonald基準(2001)と2005改訂版を用いた場合の小児MSの特異性は,それぞれ93%と100%だが,初発時で診断基準を満足するのはわずか53%と61%。10歳以上での感度は67%だが、10歳以下ではわずか45%。若年者では非典型的な病変が多いことを示唆。
    IPMSSG (International Pediatric MS Study Group) (2007)
    McDonald criteria for pediatric MS (2010)  
    ほとんどの小児のMS患者はDIT 基準である,4ヶ所のうちの少なくとも2ヶ所で2個の病変を有している。

    診断のための検査(J Child Neurol 2012;27:1378-83)
    I. 脳MRI基準
    以下の項目のうち2項目以上を満足すれば他の非脱髄性疾患を鑑別できる。感度は85%、特異性は98%。(Callen et al. Neurology 2009;72:961-7)
      1). 5個あるいはそれ以上以上の病変
      2). 2個以上(>2)の脳室周囲病変
      3). 1個の脳幹病変
    II. ADEMとの鑑別は重要で、以下の2個以上を示す。(Callen Neurology 2009;72:968-73)
      1). black holesの存在   
      2). 2個以上(>2)の脳室周囲病変
      3). 両側性瀰漫性の病変の欠如
    III. 脳脊髄液
      1). >90%でOCB(適切な方法で測定)陽性
      2). 細胞数は<50μl以下   
      3). 細胞はMNC優位

    予後の推測
     
    Mikaeloffら(仏)によれば、2.9±3年の観察期間で小児のCIS患者の57%がMSと診断され、視神経炎合併例の86%、脳幹症状を呈した患者の50%が後にMSへ進展。このシリーズでMSへ進展するリスク因子は、発症年齢が10歳以上であること(hazard ratioは1.67, 95% CI: 1.04-2.67)と視神経炎の合併(HR: 2.59, 1.27-5.29)で、MSを疑わせるMRI所見(HR: 1.54, 1.02-2.33)がこれらに次ぐ。陰性因子は意識の変容 (HR 0.59, 0.33-2.33) (J Pediatr 2004;144:246-52)。  
    ADEMと診断された患児が後にMSへ進展する割合は0-29%とばらつきがあるが(Nat Rev Neurol 2009;5:621-31)、Mikaeloffら(仏)によればADEMの診断基準をIPMSSGに従ったら18%だった、と(Eur J Paediatr Neurol 2007;11:90-5)。このときのフランスのcohort study (the French National KIDSEP Neuropediatric Cohort) では6±3.3歳の132名。24例(18%)で2回目の再発を来たし、再発のリスクとなる症状は視神経炎のhazard ratioが5.23 (95% DI: 2-13.65)で、CNSの炎症性脱髄疾患の家族歴がある場合のHRは7.8 (1.54-39.5)。  
    発症後2年間での再発回数が多いほど、後遺症として残る障害度が高い(Neurologist 2010;16:92-105)。  

    2010年のMcDonald基準(DIT & DIS)を発症早期に満足しても、発症から1年後あるいは2年後のEDSSや再発を予測できない。39例の小児MS患者のうち、発症時(CIS時)に21例(54%)が満足し、残りの18例はその後のMRI(12例)あるいは再発(6例)でMSと診断された。

    McDonald基準
      陽性 陰性 p-value
    2回目の再発までの日数 381(n=16) 267 (12) 0.85
    12ヶ月後のEDSS 1.5 (20) 1.0 (17) 0.005
    24ヶ月後のEDSS 1.0 (15) 0.5 (15) 0.10
    (Bigi et al. Mult Scler, in press)

    治 療  
    再発痔の治療 ステロイドパルス30 mg/kg for 3-5 daysを投与(Expert Rev Neurother 2005;5:391-401)。不充分なら
    1). 1 mg/kgから内服薬で2-3週間かけて漸減
    2). パルスを反復 (Neurologist 2010;16:92-105)
    3). IVIg (50 kg以下なら2 g/kgを2日間投与し、50 kg以上なら同量を4-5日間)(Expert Rev Neurother 2005;5:391-401)
    4). 血漿交換(J Clin Apher 2001;16:39-42)  

    Krupp基準((Neurology 2007;68 (Suppl 2):S7-S12))によりMSと診断されたら、直ちにIFNβあるいはGA治療を開始するべき-IPMSSGによる提言(Mult Scler 2012;18:116-27)。  
    IFNβは成人量の25-50%から始め、2-3ヶ月かけて徐々に成人量にまで増量すると、充分に可能。GAでは減量せずに初めからfull doseで可能。  
    発症後2年以内のARRは0.6以下から1.0にまでIFNβ/GA治療で低下させることができ、これは成人での30-40%再発低下に匹敵する。

    IFNβ治療に関する後方視的研究  
    小規模な研究しかなく、ランダム化試験はない。
    1). イタリアからの多施設open studyがあり、AARが1.9から0.4に低下(Neurol Sci 2007;28:127-32)。しかし、controlがないことと、1.9±1.1 vs 0.4±0.5と結果はmarginal(Nat Rev Neurol 2009;5:621-31)。
    2). 197例のcohortから24例に投与して再発までの時間で評価した、Kid Sclérose en Plaques (KIDSEP)研究があり、未治療群に対する再発のHazard riskは1年目が0.31 (95% CI: 0.13-0.72)、2年目が0.40 (0.2-0.83)、4年目は0.57 (0.30-1.10)であった(J Pediatr 2001;139:443-6)。当初は再発をよくできるかに見えるが、4年目には効果が減弱。また、EDSSは治療群と未治療群とで差はなかった(Nat Rev Neurol 2009;5:621-31)。

    IFNβ治療の問題点-継続が困難  
    10歳以上であれば成人と等量の注射に耐えられるが、若年者では減量するべき(Neurology 2006;66:472-6)。US pediatric MS Networkのデータでは、264例を3.5年経過観察すると、IFNβ1a筋注治療した97例中42例(42%)が他の治療を必要とした。24例はBreakthrough disease、18例は有害事象あるいはコンプライアンスの問題で中止を余儀なくされた(Neurology 2009;(Suppl 3):A428)。IFNβ1a皮下注した21/74例(28%)も他の治療を必要とした。10例はBreakthrough disease、11例は有害事象あるいはコンプライアンスの問題で。IFNβ1b皮下注群では15/31例(48%)で中止し、理由はそれぞれ10例、5例であった(Neurology 2009;(Suppl 3):A428)。一方、Glatiramer acetateでは12/58例(21%)が中止。理由はそれぞれ9例、3例であった(Neurology 2009;(Suppl 3):A428)。GAの低さが目立つ。

    Breakthrough diseaseの定義  
    成人では一般的には・・・1) or 2)
    1). 治療中であってもARRが1-2回、あるいはARRが治療によっても減少しない(Neurology 2004;63(Suppl 6):S33-S40; Curr Med Res Opin 2009;25:2459-70; Ann Neurol 2002;52:400-6)。
    2). 治療開始1年目に2個あるいはそれ以上のT2病変が出現するか、1個またはそれ以上の造影病変が認められた場合(Ann Neurol 2002;52:400-6)。

    成人ではCohenらが提唱した基準もあって・・・
    1). ARR1回以上
    2). ARR減少なし
    3). 再発からの回復が不充分and/or障害度が蓄積
    4). 新脳幹病変and/or脊髄病変
    5). Polyregional disease
    6). 運動系and/or認知障害の増悪
    (Neurology 2004;63:S33-S40)  

    258例の米国National Network of Pediatric MS Centers of Excellenceの検討があり、200例(77.5%)がIFNβ治療を受け、53例(20.5%)がGAを投与された。56%は最初の治療が継続されたが、残りの患児では平均3.9年(標準偏差:2.8年)で他の治療に変更された。大半はIFNβやGAの範囲内での変更であったが、55例(21.3%)でCyclophosphamideやMitoxantrone、Natalizumab、Daclizumabなどに変更された。 (Arch Neurol 2011;68:437-44.)  

    小児での条件(IPMSSG-2012年案) (Mult Scler 2012;18:116-27)  
    最低6ヶ月間のfull-dose治療が完全に投与されていて、以下の少なくとも1項目以上がある場合。
    1). ARRが変化がないか増悪、または治療前と比較して新T2病変や造影病変が出現
    2). 12ヶ月以内に臨床的あるいはMRIで2あるいはそれ以上の再発があった場合

    Breakthrough diseaseへの治療(IPMSSG-2012年案) (Mult Scler 2012;18:116-27)  
    二次選択剤として、NatalizumabやCyclophosphamideも候補にはなり得る。6-12ヶ月程度の期間であれば、従来の治療にステロイドパルスを毎月追加施行する方法も。

    Natalizumab  
    抗JCV抗体陽性率は小児では低い(PLoS One 2009;5:e1000363)。米国Colorado州Denverでのデータでは、1-5歳: 16.0%, 5-10歳: 20.5%, 10-15歳: 23.4%, 15-21歳: 21.0%, 21-50歳: 34.2%, 50-60歳: 41.6%, 60-70歳: 43.5%, >70歳: 51.0%1。ゆえに、小児でのPMLのリスクは低い。  
    しかし、数カ国でNatalizumabの小児への投与は禁止されている(Neurologist 2010;16:92-105)。  
    ドイツ・オーストリアから16.7±1.1歳の20例に6-36ヶ月間投与された報告があり、ARRは3.7から0.4(p<0.001)に、脳MRIで1年間の新T2病変数が7.8から0.5へ(p<0.001)減少。2/16例(12.5%)で抗Natalizumab抗体が出現し、重篤な再発を呈したため中止。5/13例(38.5%)で抗JCV抗体が陽性のため、1.8, 3.5, 3.5年で治療を中止。中止により6ヶ月以内に6/8例で再発が認められ、治療前のレベルに戻ってしまった。(JAMA Neurol 2013;70:469-75)

    Fingolimod  
    胸腺でのT細胞分化への影響が考えられるが、EMAにより小児への治験が承認された。

    予後 
    わが国での調査では、平均6.2年の観察期間(1.7〜19.8年)でEDSS scoreが0の患者が57%いて、score 1-5の歩行可能な患児が27%を占める。二次性進行型への移行例は3%と少ないが、EDSS 9(寝たきり)であった。(鳥巣浩幸、原 寿郎. 小児多発性硬化症、最新アプローチ 多発性硬化症と視神経脊髄炎、辻 省次総編集、吉良潤一専門編集、中山書店、東京2012, pp85-91)。* (Nat Rev Neurol 2009;5:621-31)  

    Pediatric NMO  
    最も若い患児は23ヶ月(J Child Neurol 2007;22:1143-6)。全NMOの中で小児は10%という報告がある(Arch Neurol 2006;63:390-6)。カナダの臨床像とMRI所見からNMOと診断した17例中8例でNMO IgG陽性で、抗体陽性患児の78%が再発性を示した(Neurology 2008;70:344-352)。抗体陽性患者の86%は再発性だった、という報告があり、単峰性でも陽性患児が存在(Lancet 2004;364:2106-2112)。再発像はADEMの際の症状に類似(Neurology 2008;70:344-52; Pediatrics 2008;122:e1039-47)。