2009年2月号

  1. AANガイドラインによるMS治療の評価
  2. 小児MSの鑑別診断
  3. 思春期以前に発症した小児MSの病態は特殊?
  4. Regulatory cells in MS/EAE (Yamamura 2007)
  5. MSの病理
  6. 病態と症状分布からみたMSの分類
  7. NMOのHLAは?
  8. 第1回PACTRIMS
  9. MSの視床萎縮は高次機能低下を予言
  10. MSの脳MRI所見のまとめ-2
  11. 子癇前症は自己免疫疾患
  12. 抗GluRε2抗体の意義 
  13. Post-vaccination encephalomyelitis
  14. 低髄圧症候群で硬膜が造影される理由
  15. 肝細胞(幹細胞ではありません)で自己免疫を治療する
  16. 深部頸部リンパ節でのT細胞の活性化
  17. astrocyteがヒト単球・ミクログリアを調節
  18. 神経疾患を呈する感染ルート別ウイルス
  19. 神経細胞別に感染しうるウイルス
  20. Segmental zoster paresis
  1. AANガイドラインによるMS治療の評価
    Attack Reduces disease Disability rate severity on MRI Progression IFNβ A B  
    B Glatiramer acetate A C C Mitoxantrone B NA C Natalizumab A A A
    Level A: established as effective
    Level B: probably effective
    Level C: possible effective
    (Neurology 2007;68 (Supple 4)S3-7)

  2. 小児MSの鑑別診断 
    成人に比し、先天性の疾患が加わりますから大変です。以下の論文が参考に。
    Ruggieri M, Polizzi A, Pavone L, Grimaldi LM. Multiple sclerosis in children under 6 years of age. Neurology. 1999;53(3):478-84.

    Ruggieri M, Iannetti P, Polizzi A, Pavone L, Grimaldi LM; Italian Society of Paediatric Neurology Study Group on Childhood Multiple Sclerosis. Multiple sclerosis in children under 10 years of age. Neurol Sci. 2004;25 Suppl 4:S326-35.

    Mikaeloff Y, Adamsbaum C, Husson B, Vallee L, Ponsot G, Confavreux C, Tardieu M, Suissa S; KIDMUS Study Group on Radiology. MRI prognostic factors for relapse after acute CNS inflammatory demyelination in childhood. Brain. 2004;127(Pt 9):1942-7

  3. 思春期以前に発症した小児MSの病態は特殊?
    San FranciscoのUCSF MS Centerから報告が出ています。(Chabas D, Castillo-Trivino T, Mowry EM, Strober JB, Glenn OA, Waubant E. Vanishing MS T2-bright lesions before puberty: a distinct MRI phenotype? Neurology. 2008;71(14):1090-3.)

    男児が多く(女児の割合が10歳未満の発症例では38%なのに対し、11-18歳発症群では61%)、脳症を呈することもある。また、成人用のMRI criteriaを満足するほどの病変数がない代わりに、tumefactiveだったり、T2-brightに。13例の10歳以前の発症例と18例の11から18歳発症例とを比較すると、発症3ヶ月以内の脳MRIではwell-defined ovoid T2-bright lesionsが認められるが数が少なく(平均で7 vs 21.5)、よりconfluent (31% vs 0%)。2回目のMRIでは、早期発症群ではT2病変が消失することが特徴(92% vs 29%)。  

  4. Regulatory cells in MS/EAE (Yamamura 2007)
    CD4+CD25+ T cells
    CD8+ T cells
    TR1 cells
    NK cells
    CD1d-restricted NKT cells
    MR1- restricted NKT cells  

  5. MSの病理  
    ウイーン大学のProf Lassmanによりますと、MSのactive lesionで浸潤しているT細胞の60-83%はCD8陽性で、65%はclonalityがあり、18%はGranzyme Bが陽性(つまり、組織を傷害しているってことですね)。炎症病変はCD8陽性細胞により、今までの治療開発はCD4によるEAEをモデルとしてきたので、今後考慮する必要がある。CD20陽性B細胞は髄膜でfoliclesを形成。Pattern IからIVに分類されていて、pattern IIはab-mediatedで、NMOが対応しますが、MSのnormal appearing white mattered この病理像を示す、と。NMOだけではないのです。Lassman教授によれば、pattern IIでは、まずT細胞が浸潤し、BBBが破壊され、その後に抗体が作用して、microgliaが活性化され、ついには脱髄や軸索傷害が起きる、と想定。(2007年、名古屋での国際神経免疫学会にて)  

  6. 病態と症状分布からみたMSの分類 (The 4th MS Forum Pan Asian Conference in Soul)
    Classic MS (with brain symptoms and without LCL*)
    NMO (anti-AQP4 (+) or LCL with or without brain symptoms)
    Optic-spinal MS (OSMS)** without LCL
    Spinal MS (more than 5 years disease duration***)
      * contiguous long spinal cord lesion extending more than 3 vertebral segments in MRI  ** different from optico-spinal MS (OSMS) (Kira)
      *** transition to optic-spinal MS or NMO is common in patients with short disease duration.
    (Saida & Tanaka, 2006)  

  7. NMOのHLAは?
    北海道の菊池先生は、吉良先生の定義によるOSMS (視神経炎+脊髄炎+軽度な脳幹症状があっても良い)は西日本より北日本のほうが有病率は高い、と。Conventional MSではDRB1*1501と、少しはDPB1*0301と相関し、OSMS (Kira)はDPB1-0501と相関。北海道のfluminant OSMSやfluminant CMS (両者ともNMOと思われますが)はDPB1*0501と関連はないそうです(2007年、名古屋での国際神経免疫学会にて)  
  8. 第1回PACTRIMSが2008年11月21-22日、Kuala Lumpurで開催されました。これで、ECTRIMS, ACTRIMS, LACTRIMSに次ぐ4つめの地域別MS研究学会ができました。ECTRIMSが最も歴史が古く、毎年演題が1000程も集まる世界最大のMS学会。PACTRIMSのPresidentはDr. Takahiko Saida、Vice-PresidentはオーストラリアのDr. William Carroll。日本からは20名ほどが参加しました。来年は香港。  

    Dr. Saidaは挨拶として、日本のMS研究史に簡単に触れました。Ikutaが75例の剖検例を報告した際、33例がclassic、現在のNMOに相当するDevic病が35例。SMSは8例。今回、Iranから40名以上参加したそうですが、Iranの有病率は56/10万人とされ、急速に増加しているそうです。  

    Dr. EbersはMSのmonth of birth effect (Willer, Br Med J 2004)を紹介。HLA DRB1*01と04は悪性MSへのprotectと関連。  

    Dr. Kiraはご自身のデータを紹介されました。1996年のAnn Neurolにそれまでsymptom complexであったOSMSを疾患単位として確立したとし、Opticospinal (Asian type) vs Conventional (Western type)を提唱。これが国内で流通している、いわゆる”OSMS”の一般的定義でしょう。視神経と脊髄症状以外に、軽度の脳幹症状を伴うもの。ゆえに、重症のNMOはこの”OSMS”には入らず、CMSになってしまいます。2004年の全国調査で、SMSは10.6%あって、北部では8.4%、南日本では11.2%だったそうな。  

    Dr. GoodinはMRI in western MSについてreview。MRI criteria in CISを用いた臨床試験としては、CHAMPS, BENEFIT, ETOMS studyがあって、前2者は同じですが、ETOMSは条件がきつく異なります。偏頭痛患者でもCISのMRI criteriaを満足することがあるそうな。cross sectional studyでは、T2 lesionとEDSSは相関しません。new T2 lesionとEDSSも相関しませんし、ΔT2 lesionとEDSSも相関しません。これは以前からEDSSで指摘されていたことで、筆者も総説にまとめたことがあります(田中正美:実践講座 疾患特有の評価法 多発性硬化症。総合リハ, 35:167-72, 2007.)。EDSSの問題としては、poor inter-rater reliability, poor test-retest reliability, incomplete coverage of CNS domain (e.q. cognition), non-linearityなど。MRI自体の問題としては、T2 lesionが病理学的にheterogenousであること。全てのnew MRI lesions (new T2 Gd+, T1 black hole)がsymptomの原因となるとは限らない。Symptomaticになるのは、わずか1-4%だそうな。  

    中国のDr Wuは7例のBaloを報告。造影パターンには3種ある、と。Concentricに造影されるsynchronous、comfined in outer rings、heterogenous。脳室周囲にMS like lesionを伴うこともあるとのことですが、sagittal sectionがないので断定しにくいですが、Dawson’s finger風ではないように見えました。Balo患者が再発するとMS様病変を示すようになるので、両者に共通した病態があるのではないか、と。しかし、再発頻度はMSより低いそうですが、急性期にはステロイドが効くそうです。これに関連して、Dr Saidaは90年頃に日本でも報告があり、病理学的にはconcentricだが、経過も再発も典型的なMS。新潟大学でBaloの国際会議を開催したことがあったそうな。88-90年の間?筆者は知りませんでした。  

    台湾のDr TsaiはSjogrenとNMOを比較し、女性に多いこと、脊髄炎と視神経炎、再発寛解の経過、MRIでの大脳白質病変、CSF pleocytosis、抗SS-A & B、脱髄と軸索変性は両者で差異はない。以下が異なる、と。
    NMO Sjogren syndrome
    Systemic        negative   peripheral nervous system
    Spinal cord lesion   central      post column/tranverse
    OCB           negative     positive
    Increased CSF IgG index negative  positive
    Anti-AQP4       positive      negative  

    米国のDr CreeはPRECISE studyというCISへのIFNβ治療という臨床研究があるそうです。知らんかった。  Mayo ClinicのDr Weinshenkerは”NMO in Western Countries”と題して講演。彼は”classic MS”という言葉を使用していました。MayoのDr Wingerchukが報告したNMO spectrum disordersにassociated with comorbid disordersとして、autoimmune disordersとparaneoplastic disordersを追加。Encephalopathy in NMOとして2種を挙げ、1). Acute, severe with sequelae, accompanied by corpus callosum lesion、2). Transient with PRES-like vasogenic edema (confusion, cortical blindness)。病態としては標的抗原としてAQP4が関与するFocal inflammatory lesionsとfunctional water channelとしてAQP4が関与するVasogenic edema。さらに、彼は以前はOSMSとNMOは同一であると主張していましたが、今回は”OSMS and NMO are not the same”と私の主張(Tanaka M, Tanaka K, Komori M, et al. Anti-aquaporin4 antibody in Japanese multiple sclerosis: The presence of optic-spinal multiple sclerosis without long spinal cord lesions and anti-aquaporin4 antibody. . J Neurol Neurosurg Psychiatry, 78:990-992, 2007.)に同調するスライドを提示。時代は変わりました。また、欧米でのNMO患者は有色人種だと思っていましたが、多くは白人だそうな。  

    東北大・Dr Fujiharaは抗体を測定依頼され陽性例だった242例を解析。男女比は22/220、年齢は3-74歳(平均:38歳)、EDSSは0-9.5 (5.5)、OCB 20/158で陽性、抗核抗体は66/138、抗SS-Aは41/137、抗SS-Bは16/135例で陽性。IFNβ治療後に再発したり効果がなかったのは25/43例(58%)。これは意外に低い数字ですね。抗体陽性例の仲で、narcolepsyが初発症状だった患者さんがいる、と。  

    東北大・Dr Misuはポスター賞を受賞し、賞金を得ましたが、CSF中のGFAP levelはNMO再発時に著明に上昇し、寛解期にはMSと同じレベルにまで低下することを報告。  

    東北大・Dr NishiyamaはNMO発症3ヶ月前にたまたま日赤に保存されていた血清を測定したところX32で、再発時にはX128まで上昇。これは抗AQP4抗体が組織破壊により二次的に産生されたモノではないことを強く示唆。ただ、MSのように、臨床症状を呈さなくても組織障害が起きている可能性があるとしたら、これでも二次性抗体を否定することは困難になりますが・・・  

    Dr KiraはNMOの再発時と寛解期とで、力価に差がないことを主張。NMOでは脳MRIでのGdによる造影病変は1/6例でしか認められないが、ADCは4/6例で上昇していて、vasogenic edemaを強く示唆していて、DWIによるチェックが必要、と。  

    Dr Batesは”The Future of Therapy in MS”と題して講演。すでに35500名にNatalizumabが投与されています。IFNβの併用の禁止を条件に米国FDAは再発売を認めましたが、投与患者数が多くなれば、投与期間が長くなれば、当然出現するであろうと筆者は考えておりましたが、今夏以降相次いで単独投与例で合計3名のPMLがスウェーデン、ドイツ、米国で見出されました。ま、悪性腫瘍に対する化学療法と同じように、「ケモデス」を防ぐためにも、ある程度共存する路を探るしかないのではないでしょうか?

    2010年以前にphase 3に入る経口剤を中心とした薬物(Cladribine, FTY, Teriflunomide, fumaric acid, Laquinimod)が注目されています。Fumarateに関しては、Lancet 2008;372:1463-72に臨床試験の報告があります。Laquinimodは、phase II/IIIで臨床症状やMRIでは有効性が認められたものの、副作用で中止になったRoquinimexの誘導体で、Th1/Th2 shiftに影響する薬剤(Lancet Neurol 2008;7:672-3)。Firategrast (UCB232)は抗SAM moleculesで、Natalizumabと似た作用を示すようです。臨床試験に入っているmonoclonal antibodiesとしては、Daclizumab, Rituximab (進化型としては、Ofatumumab, Ocrelizumab), Alemyuzumab, anti-LINGO-1。Rituximabは補体依存性やマクロファージを介したADCCあるいはapoptosisのinduceによりB細胞が減少。ただし、形質細胞には抗原であるCD20は発現していないので、減少しません。つまり免疫グロブリンはさほど減少せず、B細胞の抗原提示能やサイトカイン分泌減少によると考えられています。PMLは2008年11月までに23例報告があり、RA1例、SLE例など。AlemtuzumabはINFβ1aに比し、再発を74%減少させますが、副作用としてバセドウ病が27%、ITPが6/216例に出現することが問題。抗LINGO-1はミエリン再生を誘導する作用があります。  

    韓国のDr Kimは18例の抗AQP4陽性のNMO spectrumにRituximabを投与し、12ヶ月後にEDSSが3.3から2.0に低下したと報告。11例で神経症状が回復。年間再発率も減少したそうです。375 mg/m2を毎週4回投与か1000 mg/m2を週に連続2回投与するか、投与間隔をどうするか、など投与法をどうするかが未確定、という問題点を指摘。  

  9. MSの視床萎縮は高次機能低下を予言するという報告が出ています。視床萎縮は脳全体の萎縮と強く相関し、T1やFLAIR lesionsと良く相関。また、高次機能障害と第三脳室の幅と強く相関。(Neurology 2007; 69: 1213)  

  10. MSの脳MRI所見のまとめ-2
    常識的なこともありましょうが、整理してみましょう。
    1. 造影病変の存在は血液脳関門の破綻を意味し、中枢神経内での炎症性病変の活動性 が高いことを意味し、臨床的には再発と関連している。 Katz D, et al. Ann Neurol 1993 ; 34 : 661-9; Bruck W, et al. Ann Neurol 1997 ; 42 : 783-93; Kappos L, et al. Lancet 1999 ; 353 : 964-9; O’Connor P, et al. Mult Acler 2005 ; 11 : 568-72.
    2. 造影病変は、また、中枢神経障害と神経細胞消失を意味する大脳萎縮と関連する。 Richert ND, et al. Neurology 2006 ; 66 : 551-6.
    3. T1低信号病変は、軸索病変を含む組織全体の障害を意味する。
     Van Walderveen MAA, et al. Ann Neurol 1999 ; 46 : 79-87.  

  11. 子癇前症は自己免疫疾患 
    子癇前症の女性血中にはAT1-AAという自己抗体があり、この自己抗体はアンジオテンシンII受容体1a型(AT1受容体)に結合し、活性化します。子癇前症の患者血清から精製されたIgGやAT1-AAを妊娠マウスに投与すると、子癇前症と同じ症状が再現できた、という報告が出ています(Nature med 2008;14:855-62)。(The Mainichi Medical Journal 2008;4:864-5より)  

  12. 抗GluRε2抗体の意義 
    神経学会に招かれたDr. Dalmauは2回講演しましたが、2回目の朝早く行われた教育講演で、1枚だけこんなスライドを出しました。「抗NMDAR抗体と抗GluRε2抗体は同じではない」説明はしませんでした。講演後に不思議に思って、本人に尋ねました。今まで直接会って話したことはありませんでしたが、paraneoplastic neurologic syndromeで競い合っていた仲なので、彼も筆者のことをよく知っていました。その時に受けた説明は、直後の雑誌にLetterとして掲載されました。抗GluRε2抗体が見出される非典型例の報告がこれから出る可能性があり、今後、重要。抗NMDAR抗体の抗原エピトープは三次元構造依存なので、抗GluRε2抗体のようにイムノブロットでは検出できない、と。抗GluRε2抗体は疾患特異性がなく、ovarian teratomaを伴うparaneoplastic encephalitisで認められる抗NMDAR抗体(Ann Neurol 2007;61:25-36)と同一の意義はない、と。高橋班では平成20年度の重要テーマとして、抗NMDAR抗体測定系樹立を設定し(このへんの批判を受け入れる度量の大きさと言いますか、びっくりしますが-後日、そうでもないことは判明しましたけども・・・)、10月には金沢医大神経内科の田中恵子が樹立しました。  

  13. Post-vaccination encephalomyelitisではPNSもinvolveされる。多分、2007年の名古屋での国際神経免疫学会でのProf Antelの講演のメモだと思いますが、JAMA 1994;22:969の論文を紹介されました。また、MHC class-I restricted CD8+ CTL against human oligodendrogliaは証明されませんでしたが、この実験をやったのはNIHのDr Biddisonのようです。一方、CD4+CD56highはoligoに対して細胞傷害活性を持っているそうな。  

  14. 低髄圧症候群で硬膜が造影される理由 
    硬膜の内側面に小血管が豊富で、これらの血管が拡張しているためだそうです。何となく判るような判らないような・・・頭蓋内圧が低いために代償的に拡張しているなら、choroid plexusはより造影されるようになるのでしょうか?  

  15. 肝細胞(幹細胞ではありません)で自己免疫を治療する 
    マウスの肝にMBPを発現させますと、MBP特異的Tregが誘導されて、EAEを抑制できるようになるんだそうな。このTregは胸腺非依存性で、CD4+CD25-T cellsからconversionしたもの。(J Immunol 2008;118:3403-10)  そもそもTregの大部分は胸腺由来ですが(Nat Immunol 2005;6:345-52)、末梢でも誘導できることが判っていました(Immunol Rev 2006;212:114-30; Front Biosci 2006;11:1014-23)。

    しかも、末梢で誘導される場合、胸腺のTregが末梢でexpansionする(Nat Immunol 2002;3:33-41; J Exp Med 2003;198:249-58)だけでなく、通常のCD4+Foxp3-T cellsからconversionする場合もある(J Exp Med 2005;201:127-37; J Exp Med 2005;202:1375-86; Nat Immunol 2005;6:1219-27; Nature 2008;453:65-71)ことが判っていたそうな。筆者らが述べているように、この原理を臨床に応用できるでしょうか・・・?  

  16. 深部頸部リンパ節でのT細胞の活性化がEAEのinitial event ?
    マウスの自然発症EAEモデルを利用して、さまざまな時期の深部頸部リンパ節でのT細胞を解析すると、発症前にここで活性化されることが重要である、と。リンパ節を除去しますと、EAEの発症を遅らせたり、軽症化できる、と(J Immunol 2008;181:4648-55)。  monkeyやヒトの頸部リンパ節には髄鞘抗原の存在が知られていますし(ORL J Otorhinolaryngol Relat Spec 1996;58:164-6)、樹状細胞が脳から頸部リンパ節にmigrateすることも知られていました(Am J Pathol 1999;154:481-94; J Immunol 2004;173:2353-61)。  

  17. astrocyteがヒト単球・ミクログリアを調節
    そもそもはGlioblastoma multiformeでは免疫担当細胞が多数浸潤しているのに、腫瘍細胞に対する反応が乏しい、ゆえに平均生存率が1年なのですが、この現象はなぜか、から始まった研究。腫瘍から分離したミクログリアではIL-10やSTAT3の発現が増強していて、腫瘍細胞存在下では単球のHLA class IIやCD80の発現が抑制され、腫瘍細胞と共培養した単球はCD4陽性T細胞を活性化できないばかりか、あらたに分離された単球の活性化も抑制する。腫瘍化していないastrocyteも程度は軽いけれども、同じような現象が認められるので、astrocyteのこの現象を利用すれば、MSの治療もできるのではないか、と。(J Immunol 2008;181:5425-32) suppressor astrocyte ?

    アルツハイマー病でも似た現象が知られていて、amyloid s刺激によるマクロファージによるTNFα産生をヒトastrocyteは抑制するんだそうですね。(J Immunol 2001;166:6869-76)  

  18. 神経疾患を呈する感染ルート別ウイルス
    1). Sexual-HIV-1, 2, HSV-1, HTLV-1, HTLV-II
    2). Blood transfusion-HIV-1, West Nile, HTLV-I, HTLV-II
    3). Vertical transmission-HIV-1, HIV-2, HTLV-I, HTLV-II, CMV
    4). Oral-Echo, Coxackie, Polio, EBV
    5). Tissue graft, organ donations-West Nile, Rabies, LCMV, HHV-6 6). Immunocomprimised patients-CMV, PML, HSV-1, HSV-2, VZV, HHV-6
    (Neurol Clin 2008;26:617-33詳細は本文をご覧下さい)  

  19. 神経細胞別に感染しうるウイルス
     1). Neurons
          HSV-1, JE, Coxackie, Echo, West Nile
     2). Motor neurons
          Polio, Coxackie, Echo, West Nile
     3). Microglia, perivascular macrophages and astrocytes
          HIV-1
     4). Oligodendrocytes
          JCV
     5). Meningeal cells including meningeal ma crophages
          Coxackie, Echo, HSV-2, HIV-1,
     6). Dorsal root ganglia
          VZV, HSV
    (Neurol Clin 2008;26:617-33詳細は本文をご覧下さい)  

  20. Segmental zoster paresis
    皮膚のherpes zosterの3-5%でsegmental paresisが認められます。皮膚症状出現7日以内に筋力低下が出現した3例が報告されています(Neurologists 2007; 13: 313)。2例は上肢近位部、1例は下肢近位部。全例機能的には良好に改善。概ね発疹出現2週以内に筋力低下が出現することが多く、末梢神経伝導速度は運動・感覚とも振幅が低下し、針筋電図ではparaspinal musclesも通常障害されるそうな。経口の抗ウイルス剤はsegmental paresisの発現を減少させるそうですが、発症後の抗ウイルス剤の点滴やステロイド治療の効果は不明確。(J Watch Neurol 2008; 10: 21-2)