2008年5月号
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  1. Possible of paraneoplastic myelopathies
  2. Paraneoplastic optic neuropathy
  3. Paraneoplastic cerebellar degeneration
  4. Paraneoplstic opsoclonus-myoclonus syndrome
  5. Paraneoplastic vasculitis
  6. SLE合併例へのIFNβ投与は禁忌
  7. Sjogren症候群でIFNβ治療は禁忌か?
  8. 第16回神経免疫フォーラム
  1. Possible of paraneoplastic myelopathies
    悪性腫瘍 抗体
    SCLC Amphiphysin-IgG, collapsing response-mediator protein (CRMP)-5 IgG,
    glutamic acid decarboxylase (GAD),
    P/Q or N-type calcium channel,
    KC voltage-gated potassium channel
    乳癌 Purkinje cell antibodies (PCA)-2
    卵巣癌 antineuronal nuclear antibodies (ANNA) 2
    非SCLC Neuronal and muscle AChR antibodies
    (参考: ANNA-1: anti-Hu, PCA-1: anti-Yo)
    (Semin Neurol 2008; 28:105-120.  詳細は本文をご覧下さい。)  
  2. Paraneoplastic optic neuropathy
    主要な背景腫瘍はSCLCであるが、時に甲状腺、鼻咽頭、腎、胸腺癌が認められ、視神経の脱髄病変を呈する。血清中に、抗CV2 (CRMP-5)抗体が認められる。亜急性に視力消失をきたすが、小脳変性や脳炎、sensory neuropathy、LEMSを伴うことが多い。まれに、単独(Isolated paraneoplastic optic neuropathy)で出現する報告がある(J Neurol 2007; 254: 1131-2; J Neuroophthalmol 2006; 26: 168-72)。急性期にdisc swellingをきたし、やがてpallor、萎縮を呈する。(Curr Opin Ophthalmol 2007; 18: 462-9)
  3. Paraneoplastic cerebellar degeneration
    Tumor antibody
    Gynecologic & breast Anti-Yo
    Anti-Ri
    Anti-CV2 (CRMP5)
    Lung Anti-Hu
    Anti-VGCC
    Testicular Anti-Ta (Ma2)
    Hodgkin’s disease Anti-Tr
    Anti-R1
    (Curr Opin Ophthalmol 2007; 18: 462-9 詳細は本文をご覧下さい。)  
  4. Paraneoplstic opsoclonus-myoclonus syndrome
    Tumor antibody
    SCLC Anti-Ri
    Breast Anti-Hu
    Ovarian Anti-Yo
    Neuroblastoma Anti-Ma1/2
    Anti-amphiphysin
    Anti-CV2 (CRMP5)
    Anti-Zic2
    Anti-PSD
    (Curr Opin Ophthalmol 2007; 18: 462-9 詳細は本文をご覧下さい。)
  5. Paraneoplastic vasculitisという、やや怪しげな報告があります。でも、そのうち、確立されるようになるかもしれません(Solans-Laque R, et al. Paraneoplastic vasculitis in patients with solid tumors: Report of 15 cases. J Rheumatol 2008; 35: 294-304.)。

    Spainからの報告で、1991年1月から2006年1月までの自験例15例をまとめたもの。
    ・男女比は、9 : 6 (M : F)
    ・年齢は、58-84歳、平均72.5歳
    ・7例は血管炎が癌の診断に先行、2例のみが癌の診断後に血管炎に。他の6例は同時発症
    ・血管炎のタイプは、cutaneous leukocytoclastic vasculitis (9), giant cell arteritis (3), henoch-Shonlein purpura (2), polyarteritis nodosa (1)
    ・腫瘍の部位では、意外にも泌尿器が40%と最も多く、次いで肺(26.7%)、消化器(26.7%)。
    ・10例が死亡
    ・経口ステロイド剤が無効なことが多い
    ・腫瘍が縮小することで血管炎も軽減することが多く、腫瘍の再発で血管炎も悪化する傾向 (この経過が両者の関連を示唆)
    ・特に高齢者で、ステロイド治療抵抗性の血管炎の場合、悪性腫瘍の存在の可能性を考慮すべき、と。
  6. SLE合併例へのIFNβ投与は禁忌と考えられます。その根拠は理論的なものですが、MSに投与されて、SLEが発症した、という症例報告もあります。
    Crow MK. Type I interferon in systemic lupus erythematosus. Curr Top Microbiol Immunol. 2007;316:359-86. IFNαとβの一次的役割を紹介したreview。

    Lee PY, Reeves WH. Type I interferon as a target of treatment in SLE.
    Endocr Metab Immune Disord Drug Targets. 2006;6(4):323-30.

    Crispin JC, Diaz-Jouanen E. Systemic lupus erythematosus induced by therapy with interferon-beta in a patient with multiple sclerosis. Lupus. 2005;14(6):495-6.
  7. Sjogren症候群でIFNβ治療は禁忌か?
    SLEに比して、controversialのようであります。Primary Sjogren症候群患者の唾液中の蛋白やペプチド、mRNSを調べたところ、27の遺伝子がup-regulatedだったそうで、この中にはIFNα-inducible protein遺伝子が含まれる、という報告があって、考察でIFN type Iの関与は一定ではなくて評価が定まっていないことが整理されています(Arth Rheum 2007; 56: 3588-600)。一方、Primary Sjogren症候群患者でIFNα投与により、唾液流量が増加した、という報告もあります(Arth Rheum 2003; 49: 585-93)。  

    Acute steroid responsive small-fiber sensory neuropathy  
    Israelから4例の報告が出ています(Dabby R, et al. J Peripheral Nerv Syst 2006; 44: 47-52.)。
    • Idiopathic
      膠原病やSjogren症候群、DM, HIV, Lyme, 内分泌疾患、Vitamin B12やB1欠乏はない。抗sulfaride抗体は陰性。
    • 17-59歳、M/F: 2/2
    • 10-42日で極期を迎える、acute onset neuropathic painを主症状とし、distal and symmetrical 2例はerythromelalgia-like
    • CSF: norrmal
    • Normal nerve conduction studies
    • Sural nerve biopsy: normal density of thick myelinated fibers、炎症所見やアミロイド沈着はない。
    • Skin biopsy: nerve fiberをanti-neuronal gene protein 9.5 (DAKO) 1:100 で染色。hair follicleや汗腺、dermal blood vessel周囲で著減。ホルマリン固定でも可能。
    • 経口ステロイド(1 mg/kg)で1-2週間(主に1週間以内に)で著明に改善。

    末梢神経に限局した血管炎を伴った、small-nerve fiber neuropathyという報告もあるそうな(Arth Rheum 1997; 40: 1173-7; Isr Med Assoc J 2004; 6: 183-4)。
  8. 第16回神経免疫フォーラムが2008年3月22日、油谷彎温泉のホテル楊貴館(山口県長門市)で山口大学神経内科神田 隆教授主催で開催されました。  

    医学部卒業後まだ2年の竹下幸男先生は、「ハンチントン関連蛋白1と球脊髄性筋萎縮症由来アンドロゲン受容体との細胞下相互関連」と題して、医学部在学中の実験データを紹介しました。すでに英語の論文を3編発表されていて、平成19年度山口大学学長賞を受賞されています。主要論文は、Hum Mol Genet 2006; 15: 2298-312. HDでのhuntingtinの分布と傷害部位が一致しないけれども、HAP1と関連づけて説明すると理解可能で、MJD, HD, SCA17では、ハンチントン関連蛋白1(HAP1)が神経細胞変性に対して防御的に作用するので、この分布で臓器内の部位別変性の有無を説明できるそうです。ただ、全てを説明はできないようで、SBMAではHAP1のない海馬はandrogen受容体は豊富に存在しているが傷害されない、と。HAP1 KOマウスでは、homoでは胎児中に死亡してしまい、heteroでは生まれてくるものの、ミルクを飲まないという行動異常が出て、すぐに死んでしまうそうです。  

    二人目の東京医科歯科大膠原病・リウマチ内科の上阪 等准教授は、「多発性筋炎・皮膚筋炎―膠原病内科医の見た目―」と題して講演されました(J Immunol 2001; 167: 4051-8; Arth Rheum 2006; 54: 2074-83)。  

    全ての筋が傷害されるわけではないこと、治療に成功しても末梢血中には筋に浸潤していた活性化されたCD8陽性細胞と同じくローンが残存している、という現象があることを紹介。DMとPMとでは浸潤細胞が違うと言われているけれども、原著の数字をまとめると・・・

    CD4陽性細胞 CD8陽性細胞
    DM 33.5% 68.2%
    PM 18.2% 82.5%
    という相違でしかなく、これでそれぞれCD4 disease、CD8 diseaseといって良いのだろうか、と(浸潤している部位も問題のような気はしますが・・・)。また、日本語の総説ではDMは血管炎によると書いてあるけれども、英文では誰も言っていない。正しくは、vasculopathyだ。組織学的に浸潤している細胞で区別すると、圧倒的にDMが多く、PMは稀。荒畑は帰国後、国内では追試できなかったという噂があり、perifascicular atrophyは小児DM例に多いらしい。(東大グループは皮膚症状の有無ではなく、組織学的な診断で両者を鑑別する姿勢は一貫して変えてはいませんね)  

    神経研の松本らはミオシンは筋炎モデルの抗原にはなりえず、ラットで骨格筋C蛋白により筋炎ができると報告していたので、マウスモデルの作製を試みた。1回の免疫で筋炎を起こすことができた。筋線維間の浸潤細胞はCD4/CD8比は1位だが、相対的にはCD8が多く、perforin陽性のCD8陽性細胞も認められた。Balb/cでは筋炎を発症できず、B6、MRLやSJLで作製可能。遺伝的にさまざまなマウスを利用できるB6を主に使用。CD8陽性細胞でpassive transferが可能で、CD4でもCD8抗体でも治療が可能で、このことからCD8陽性細胞がeffector cellと考えられた、と。つまり、CD8 CTLの誘導にはCD4が必要ですからね。筋線維間でのサイトカインとしては、IL-1α、TNFαが染色されるけれども、IL-1αβKOマウスでは筋炎発症率が25%まで低下し、組織所見も軽減するので、IL-1が重要でTNFαは不要。このモデルにIVIgを投与すると症状は軽減し、B cell KOマウスでもIVIgで改善するので、IVIgによりIgを組織から引きはがすことが機序ではないことが判明。また、このモデルは一過性の経過を示すので、なぜ改善するのかを検討。IL-10 KOマウスでも一過性なので、IL-10で抑制されるわけではない。活性化T細胞のapoptosisでもない。Fas KOでは筋炎が起きず、Fasによりマクロファージが活性化されることが判っていて、このモデルではマクロファージが浸潤しているのでこの細胞が重要なのだろう、と。CD25抗体を発症前に投与しても一過性経過を示したので、Tregの関与でもない。自然軽快したマウスにもう一度免疫したら筋炎が再燃したので、免疫寛容が起きているわけでもない。自然軽快したマウスにCFAのみ投与したら再燃したので、発症にはinnate immunityが重要。受動免疫の際に、footpadへのCFA注射が必要で、1側にのみ投与すると、非投与側には筋炎は発症しない。CFA注射による組織でのinnate immunity活性化が筋炎発症に重要で、組織にCD11bが活性化していることでも証明された。この現象は自己免疫病の”seed and soil theory model”になるのではないかと考えている、と。つまり、seedがCTLとすると、活性化した自然免疫というsoilが関与しているので、症状がpathyになるのではないか。Microiinjuryを起こす部位に筋炎が起きるのではないか、と。  

    筋から放出されるMyokineという考え方がある。筋運動により、血清のIL-6が上昇する現象が知られている。炎症並みに増加するそうな。筋由来のIL-6の役割としては、
    1. IL-1 receptor antagonistやIL-1βの血清濃度を上昇させる。
    2. TNFαの分泌を止める。TNFαはインスリン抵抗性を高める。アジュバント関節炎モデルにIL-6を投与すると、改善する、という現象がある。IL-6はTh17を誘導するので炎症性サイトカインとも考えられているが、逆の作用もある。
    3. 肝からのグルコースの放出を促進する。
    4. 脂肪組織では脂肪の分解を促進する。
    5. 筋組織ではグルコース摂取を促進する。  
     
    Myokineとしては、ほかにIL-4, IL-8, IL-13, IL-15, visfatinなども含まれる。  
    IL-6KOマウスでは筋炎発症が抵抗性になる。このモデルにIL-6R抗体を投与すると、免疫と同時に投与しても、免疫7日後に投与しても(治療効果)、効く。IL-17KOマウスでも発症したので、IL-6KOマウスの現象は、Th17誘導阻害によるのではない。おそらくは、リンパ球の筋へ入るリクルートを減少させているのではないか、と考えている、と。  

    Polymyositisの翻訳としたら、多発筋炎が正しく、多発性筋炎だとMultiple myositisではないか、Polyneuritisは多発神経炎である、という指摘が名大錫村教授から出されましたが、内科学会用語集では多発性筋炎なので、如何ともしがたく、上司の宮坂教授も多発性筋炎という用語を主張されているそうな。