2007年10月号
- Paraneoplastic PNS disordersの分類
- definiteとpossible paraneoplastic PNS disorderの定義
- Paraneoplastic PNS syndrome
- Post-streptococcal opsoclonus-myoclonus syndrome
- 世界で二番目に樹立したアッセイ系が漸く論文
- 脳浮腫とアクアポリン
- 1型糖尿病とMS
- MSのoriginal Kurtzke’s EDSS評価法
- 視神経炎の講義
- IFNβに対する中和抗体の意義
- 小児MSに対するIFNβ1b治療
- CIDP review
- TNFαとmyelinopathy
- Sicca syndromeに関連したimmune neuropathiesの病型
- 自己免疫疾患のステロイド療法
- ITB療法
- non-compressive radiculopathiesの原因
- 結核性髄膜炎での虚血性脳血管障害
- Paraneoplastic PNS disordersの分類
Classical paraneoplastic PNS disorders
Subacute sensory neuronopathy
LEMS
Chronic intestinal pseudo-obstruction
Non-classical paraneoplstic PNS disorders
MND
GBS
Brachial neuritis
Subacute/chronic sensori-motor neuropathy
Neuropathy with vasculitis
Autonomic neuropathy
Neuromyotonia
- definiteとpossible paraneoplastic PNS disorderの定義
Definite
1). A classical paraneoplastic syndrome of the PNS and cancer that develop within 5 years of the diagnosis of the neurological disorder.
2). A non-classical PNS disorders that resolves or siginificantly improves after cancer treatment without concomitant immunotherapy, provided that the syndrome is not susceptible to spontaneous remission.
3). A non-classical syndrome with onconeural antibodies and cancer that develops within 5 years of the diagnosis of the neurological disorder.
4). A PNS disorder with well-characterized onconeural antibodies
(Hu, Yo, CRMP-5, Ri, Ma2 or amphiphysin) with or without cancer.
Possible
1). A classical syndrome, no onconeural antibodies, no cancer but at high risk to have an underlying tumor.
2). A neuropathy, no onconeural antibodies, and cancer within 2 years of diagnosis.
(Graus F, et al. JNNP 2004;75:1135-40詳細は本文をご覧下さい。)
- Paraneoplastic PNS syndrome
Syndrome Antibody Tumor Lower MND Hu SCLC, NHML Sensory neuropathy or neuronopathy Hu SCLC Distal sensory nruropathy No ST, HD Sensorimotor neuropathy thymoma CRMP-5 ST, NHML, SCLC, Neuromyotonia VGKC Thymoma, SCLC, HD GBS No HD, ST CIDP ganglioside NHML, ST, melanoma Mononeuritis multiplex Hu SCLC, NHML, ST Brachial plexopathy No HD Autonomic neuropathy Hu, CRMP-5, ganglioside SCLC LEMS VGCC SCLC
(Lancet Neurology2007;6:75-86 詳細は本文をご覧下さい。)
- Post-streptococcal opsoclonus-myoclonus syndrome
成人のopsoclonus-myoclonus syndromeは、occult malignancy、特に乳癌や小細胞肺癌と関連することが多いですが、悪性腫瘍がなくとも出現することがあって、多くの例では感染症後あるいは特発性で、感染症としてはEpstein-Barr virusあるいはcoxsackie virus B2、enterovirus後に出現することが知られています。特発性例の多くは感染症後と考えられています。Paraneoplasticの場合は、抗Ri抗体や抗Hu抗体が見いだされます。最近、Blaesらはopsoclonus-myoclonus syndrome患者血清中に、小脳granule細胞に発現している細胞表面の抗原と反応する抗体の存在を見いだしています。Queen Squareのグループは、細胞表面の56 kDa蛋白と反応する抗体をpost-streptococcalの患者血清中に見出し、対応抗原をNLK (neuroleukin: glucose-6-phosphate isomerase)と同定しました(JNNP 1006;77:507-12)。患者は11歳と16歳の少女で、感染症の1週間後に神経症状を発症しています。Neuroleukin (NLK)という名称の由来は、脊髄や感覚神経細胞の培養系に添加すると、neurotrophicな効果があるため。NLKの機能障害はAIDS associated neuropathologyでも指摘されていますし、NLK遺伝子のmutationは溶血性貧血とmental retardationを伴うmyopathyで報告がありますし、抗NLK抗体はALSでも証明されているそうな。
上記の患者さんとは別に、同じQueen Squareの別のグループ(著者が全く重なっていません)から31歳の白人女性でpoststreptococcal opsoclonus-myoclonus syndrome患者さんの症例報告が出ています(Movement Disord 2007;22:1490-1)。CSFではoligoclonal bandsが認められています。
- 世界で二番目に樹立したアッセイ系が漸く論文になりました。
Tanaka K, Tani T, Tanaka M, et al. Anti-aquaporin 4 antibody in selected Japanese multiple sclerosis patients with long spinal cord lesions. Mult Scler 2007;13:850-5.
- 脳浮腫とアクアポリンの総説が出ています(祖父江和哉ら:脳浮腫の発生機序と水チャネル・アクアポリン. 日本臨床 2006; 64 :1181-1189)。ほ乳類ではAQPの0から12まで13種類が報告されていて、3種類に分類されています。水のみを通すchannel-like
integral protein (AQP0, 1, 2, 4, 5, 6, 8)、水と小分子も通すaquaglyceroporin (AQP
3, 7, 9, 10)、水を遠さず細胞内のオルガネラに発現して何らかの物質輸送に関与していると言われている、スーパーAQPと位置づけられている第3のグループ(AQP11,
12)。
脳にはAQP 1, 3, 4, 5, 8, 9が発現していて、特にAQP 1と4が比較的多く、特に脳内で様々な機能を果たすアストログリアには多種類のAQPが発現していますが、特にAQP 4が豊富で、次いでAQP 9が多く発現しているそうです。AQP 4は、脳では脳室周囲、脈絡膜叢、くも膜下腔、視索上核などに発現。細胞レベルではBBBを形成する脳毛細血管内皮細胞周囲のアストログリア足突起と毛細血管内皮細胞に発現。脊髄液量調節やホルモン分泌などへの関与が示唆されています。AQP 1は脈絡膜叢で脳室側の細胞側に発現していて、髄液産生時の水の移動に関与していると考えられています。
脳浮腫は古典的にIgor Klatzoによる原因分類(vasogenic edemaとcytotoxic edema)が有名ですが、臨床的に両者を分類することはできません。前者はBBBの破綻による細胞外への液体貯留であり、後者はBBBの破綻はなく、アストログリアの膨化が特徴とされています。AQP 4ノックアウトマウスではcytotoxic edemaは軽度で、vasogenic edemaモデルでは頭蓋内圧上昇や脳の水分含有量の増加が認められ、水の排泄能の低下が示されました。AQP 4は浮腫の成因によって機能が異なる可能性と浮腫の進行にも改善にも関与する可能性が示唆されました。AQP 4に結合するシントロフィン欠損マウスではAQP 4発現量は変化がないものの、極性が失われることで機能が損なわれ、損傷を加えなくてもBBBの透過性亢進やアストログリアの足突起の膨化が認められています。cytotoxic edemaモデルでは浮腫は軽度ですが、AQP 4欠損マウスとは異なり生存率は改善せず、全例死亡。以上から、AQP 4は脳浮腫の進行に関与していることが示唆されました。脳浮腫が発症する時期には、AQP 4の発現が増強し、水の通過を促進させて浮腫を増強させますが、一方で脳浮腫の治癒にも関与している可能性も指摘されています。また、ミクログリアが活性化すると、AQP 4が発現するそうで、ミクログリアの遊走にも関与しているそうですから、脳内での免疫応答にも関与している可能性があるそうです。
- 1型糖尿病とMS
欧米ではT1DMとMSの合併例や家系内での発症例の報告があり、最近のデンマークの報告では20歳以前に診断された6078例のT1DM患者のうち11例がMSを呈しており、T1DMではMSを発症するリスクが3倍高く、11862名のMS患者の家族調査では、1親等でT1DMを発症するリスクが63%増加すると報告されています(Arch Neurol 2006; 63: 1001-10)。
- MSのoriginal Kurtzke’s EDSS評価法について、北海道の西円山病院・深澤先生のご講演をお聞きする機会がありましたので(2007/5/19)、ご紹介します。
都道府県により取り扱いが異なる可能性があるが、KurtzkeのoriginalのEDSS評価と特定疾患個人調査票に添付されてくる評価基準(視力障害がある程度以上ある場合、日本人に多い高度の視力障害でEDSS評価が引っ張られないように1/2にして評価する、といった方法)とは異なっていることに留意。
Function System (FS)評価状の留意点
1). MSに関連した所見のみを評価する。たとえば、視覚障害なら白内障による障害は対象外。
2). 他覚的に確認された所見で判断する。しびれ感など自覚症状のみの場合は評価しない。
3). 最も近いと判断したグレードに評価する。
4). 異常所見のみで障害が認められない場合は、基本的にグレード1として評価する。
以下は、約束ごととして頭に入れておく。錐体路機能の評価に当たっては、頸部以下の機能のみを評価し、顔面・咽頭などは脳幹機能として評価する。IIIrdからXIIthの脳神経症状については、核上性だろうが核下性だろうが脳幹機能として評価する。仮性球麻痺、小脳性構音障害、眼振(これらは小脳病変によるとしても)、外眼筋麻痺、、顔面の感覚障害(大脳病変によると考えられても)は脳幹機能として評価する。感覚機能についても、頸部以下のみで判断する。
視覚機能はややこしいのですが、グレードは実際に7段階で判定されたグレードを用いる。基本的に障害の強い方の眼で評価し、良い眼のFSが3あるいは3以上の場合には、悪い眼のFSに算術的に1を加える。大脳病変による半盲などの視覚障害も視覚機能として評価する。同名半盲でも、視力が0.3以上あって視力低下がない場合はグレードは3とする。視力が0.3以下であれば、グレードは4 (3+1)とする。精神機能に関してのみグレード1の場合、EDSSを1.0にはせずEDSS評価に反映させない。軽度の障害とは、抽象的概念や計算力の障害などを示し、中等度の障害とは、記憶、判断、洞察力の障害などを示し、高度の障害とは、見当識障害などを示す。
EDSS 4.0以上の評価は、基本的には歩行障害・日常生活動作の内容をもとに評価する。特に歩行機能障害が優先される。EDSS 3.5以下の評価はFSグレードによって評価する。どのFSグレードよりEDSSグレードが低いことはない(NMOのように、たとえ歩行可能であっても、1側がblindの場合、このblindのFS評価でEDSSが決まる)。
- 視神経炎の講義を拝聴する機会がありました。講演というよりは、学校の講義という感じ。久しぶりでした。第2回南大阪神経免疫セミナーにて、近畿大学眼科・中尾雄三教授によるもの。
視神経炎の特徴は、
1). ちらつきが判りにくくなる。このために、フリッカー値が低下する。
2). 赤と緑が判りにくくなる。
3). 眼を動かすと、奥が痛い。
4). 中心暗点
5). 乳頭浮腫
中心フリッカー値(CFF)は正常なら35Hz以上だが、35Hz以下が視神経炎。ステロイドパルス後、視力よりもCFFの回復は遅れる。この解離は回復期だけでなく、発症時にもあって、視力低下より先に低下し、遅れて正常化する。30Hzを指標にパルスの効果判定を行う。白内障ではCFFは低下しない。
診断ではCFFとともにMRIが重要で、coronal sectionの脂肪抑制画像(STIR法)で100%描出可能。この撮影法は炎症性病変を検出でき、中毒性病変やLeber病では等信号に。STIRはglyosisでも高信号になるので、active inflammationの証明にはT1脂肪抑制による造影しかない。追加パルスの適応を考える指標になる。つまり・・・
炎症・脱髄病変 萎縮 STIR 高信号、腫大 高信号、縮小 T1脂肪抑制による造影 信号増強 信号変化なし
1992年にDr. Beck RWがN Engl J Medに発表した論文では、180日までに視力が1.0に達する割合は、ステロイドパルス、経口プレドニゾロン、placeboで同じ60%で、パルスは回復が早いだけだった。
かすむ、白っぽい、テレビの色が不鮮明、眼を動かすと痛い、といった症状にも注意が必要で、視力やCFFが良くても、視神経炎の可能性がある。また、数時間の(外来から病棟へ入院するまでの期間程度の時間)経過で、急激に中心暗点の拡大や視力の低下が起きることがある。
以下の順序で視神経炎は進行することに留意。
自覚症状
MRI異常
VEP異常
対光反応異常、マーカス・ガン
CFF低下
視野、色覚異常
視力低下
MSの視神経炎の鑑別診断には、以下が重要。
眼精疲労
近視、老眼
白・緑内障
ストレス、心因
CFFが正常で、視力が低下することがあり得ない。白内障ならあり得る。
視神経炎を反復すると、視力や視野が正常でも、P100やCFFは少しづつ延長、低下してゆき、STIRでは高信号で細くなり、視神経は萎縮してゆく。再発すると、必ず視機能はボールを床に落としたように、徐々に低下してゆく。
成人52眼、38例の視神経炎の病変部位の自験データは、
眼窩内 63%
視神経管内 7
頭蓋内 28 (視神経、視交叉、視索)
視神経全長 2
Venero JLはNeurosciで視神経にはAQPが多いことを1999年に報告。 視神経炎には、ステロイドが良く反応する人も無反応の例もある。
- IFNβに対する中和抗体の意義について、AANから勧告が出ています(AAN Evidence Report, 2007夏)。IFNβ1aでもIFNβ1bでも中和抗体が産生されることは確かで、特に高力価の抗体が産生されると症状やMRIで評価したときの治療の効果が減弱することは、ほぼ確かのようです。IFNβ1aのほうがIFNβ1bより抗体ができにくいかもしれないが、データが一定しておらず、特に低力価の抗体の場合、多くの患者では治療を継続していると抗体が消失するので、両者の間で抗体の産生しやすさや持続性については判断が難しい。抗体の産生は、IFNβの製剤のタイプ、投与ルート、投与量、投与の頻度に影響を受ける可能性があり、理由は説明されていないが、筋注のほうが皮下注で頻回に投与された場合より、免疫原性が低いことは確か。しかし、いつ抗体を測定するか、どの方法を用いるか、測定する頻度について、勧告できるだけの充分な根拠はない。
- 小児MSに対するIFNβ1b治療
小児MS患者は再発頻度が特に発病初期に高いと言われています。また、SPMSへの移行や長い間にわたる障害は成人に比して、ゆっくりしています。IFNβ1bは26/43例ではfull doseで開始せず、25-50%から始めたという報告があります(Neurology 2006;66:472-6)。成人例でも漸増することが多いので、むしろ当然でしょうか。IFNβ1aでも9例中6例ではfull doseで始めたという報告がありますが、8歳の最年少を除くと1ヶ月以内にfull doseにupしています(Neuropediatrics 2001;32:211-3)。(Neurology 2007;68(Suppl 2):S54-S65)
- CIDP reviewが出ています(N Engl J Med 2005;352:1343-56)。Dr. Gorson KCのコメントによれば、自分なら治療の第1選択は容易なので、IVIg。数ヶ月間で3-4回施行しても改善がないようなら、血漿交換かprednisone。これらにも反応しなかったり、しばしば再発するようなら、cyclosporinかintravenous
pulse cyclophosphamide療法。
“axonal” CIDPとかmultifocal acquired motor axonopathyは、たとえ炎症性病変だったとしても、CIDPのvariantにするべきではない、と。(J Watch Neurol 2005;4(8):61-2)
- TNFαとmyelinopathy
CIDPではTNFαが高いとされ(JNNP 2002;72:37)、抗TNFαはSchwann細胞のapoptosisを引き起こし、hyperalgesiaを実験的neuropathyで証明されています(Neurosci Letters 2001;306:77; J Peripher Nerv Syst 2001;6:67)。10例のCIDPでetanercept (recombinant human TNFα-receptor fusion protein)を投与しますと、3例で改善し、3例で軽度改善した、という報告があります(J Neurol Sci 2003;210:19)。etanerceptやinfliximab (Remicade; chimeric monoclonal antibody to TNFα)投与により、RAやSjogren syndrome, Chohn病に合併していたneuropathyが改善したという報告も(Rheumatology (Oxford) 2002;41:234; Neurology 2002;59:1113; Gut 2003;52:1070)。
一方、infliximab治療中にGBSをきたしたという報告(ただし、薬剤中止で改善したが、再投与でも再発しなかった)もありますし(Arth Rheum 2002;46:3107)、etanercep投与後にbilateral distal sensorimotor neuropathyをきたしたという症例やinfliximab投与後に下肢のdistal motor neuropathyを呈し、いずれも筋電図学的にはmultifocal demyelinating neuropathyを呈したという報告もあります。薬剤中止でneuropathyは改善(Neurology 2005;64:1468-70)。(J Watch Neurol 2005;4(8):60-1)。
- Sicca syndromeに関連したimmune neuropathiesの病型
Sensory ataxic neuropathy (SAN) 39%
Painful sensory neuropathy without sensory ataxia 20%
Trigeminal neuropathy 17%
Mononeuropathy multiplex (MM) 12%
Multiple cranial neuropathy (MCN) 5%
Radiculoneuropathy 4%
Autonomic neuropathy 3%
MMとMCNはしばしば急性あるいは亜急性に発症しますが、他では慢性に進行することが多いそうな。Ataxic, painful, trigeminal neuropathyはganglionitisと関連しています。neuropathyはsiccaの症状や検査所見より先行することが多いですが、siccaの証拠がないかほとんどなくても出現し得ます。神経生検では主にaxonal lossを示す。MMやSANでは血管炎や血管周囲の細胞浸潤がしばしば認められます。(Brain 2005; 128 :2518-34; Brain 2005; 128 :2480-2) (J Watch Neurology 2006; 8 :25より)
- 自己免疫疾患のステロイド療法―ステロイド抵抗性の機序とその克服という題名で、産業医大・第1内科の田中良哉教授によるご講演が第6回MSワークショップ(2007年8月4-5日、札幌市)でありました。
SteroidはTh1とTh2の転写因子STAT1とSTAT4やSTAT6のGRを阻害するが、Tregでは阻害しない。だから、免疫抑制効果が出る。Th17のSTAT3への効果は不明。
リンパ球のGRを占拠するには、1 mg/kg必要。血中濃度は1x10-7Mにする。パルスでの血中濃度は3x10-6Mになって、GR非依存性作用になる。
副作用として感染症が重要だが、特にニューモシスチス肺炎が重要。以前はカリニ肺炎と呼んでいたが、カリニはブタにしか感染しないので、ネーミングとして不正確。きちんと診断すれば、100%救える。乾性咳そうや労作性息切れが症状として重要で、進行性低酸素血症を呈する。生食を5-10 mlネブライザーで吸入させ、吸痰して(誘発喀痰)DNAを抽出して検査するのが診断法として感度が高い。予防としては、ST合剤1 g/dayあるいは2 g/隔日で内服、または、ペンタミジン300 mgを1回/日吸入。
自験例では、メソトレキセート併用例では、PSL 5mg以上で、感染症のハザード比が2.5を超えるそうな。
PSL 5mg以下でも、糖、脂質、骨代謝に影響する。骨には非可逆性の変化をもたらし、骨芽細胞のapoptopsisを起こして骨形成を抑制し、破骨細胞の半減期を延長させて骨吸収を亢進。0.017 mgなら安全、という報告があるそうです。ボナロン投与で、圧迫骨折の発生を90%抑制。
Steroidにより多剤抵抗性遺伝子(MDR-1 gene)が誘導され、P-glycoproteinが誘導され、薬剤を細胞外に出してしまう、これが薬剤抵抗性の機序だそうです。スクロスポリンはsteroidの排出を阻害し、steroid non-responderをresponderに変えることができる、と。P糖タンパク質拮抗作用としてシクロスポリンやタクロリムスを使用する場合、steroidに加えることで併用療法が可能で、効果発現まで1ヶ月を要せず、数日以内に効果が発現。トラフは100以下でも効果が発現。ただし、副作用が強く出る可能性があり、スクロスポリン併用でmoon faceが出現しやすくなることも。
B細胞の機能は、免疫グロブリン産生、抗原提示、TNFαやIL-6、IFNαといったサイトカイン産生。RituximabをSLE 19例に投与し、5ヶ月後には14例で寛解。CNS lupusにとてもよく効く。数日で改善。MRAやSPECTで改善したので、vasculopathyを改善したのではないかと考えている。2週間でCD19はほぼゼロになるが、これでは説明できない。CD4+CD40L+やCD4+CD69+、CD4+ICOS+も減少。つまり、antibody-mediated diseaseなら改善に時間がかかるが、CNS lupusではT cell-mediatedなので短時間で効果が出るのではないか。
山口大学の神田教授は、MDR-1はBBBに発現しており、steroid投与中にup-regulationされるなら、BBBでのものを出すことに関連しているのか?とコメント。
- ITB療法
Baclofenの持続髄注療法の治験がほんの数年前にやっていたと思ったら、もう可能になりました。ただ、東京と大阪で半年ずつ開催している講習を受講しなければならないという条件付きで認可されました。で、新しモン好きのお姉様お二人と行ってきました。厚さ5 cmのバインダーを渡されて、一日がかりの大変な講習でしたが、未だに発展途上の機械で、聴いていても機械の調整が大変に難しいことが判りました。さて・・・
NathanによるSpasticityの定義というのがあって、「伸張反射が低閾値で、腱反射が亢進し、クローヌスが起こりやすい状態」なんだそうな。痙縮の機序としては、
1). γ運動ニューロンの高い興奮性
2). α運動ニューロンの高い興奮性
3). 脊髄の分節内ならびに分節間での異常な介在ニューロンの活動
4). 筋そのものの特性が変化
痙縮を亢進させうる因子として、褥瘡、尿路感染症、腎結石、生理、便秘、温度変化、疲労やストレス、衣服や寝具。意外な感じもしますが、ようは感覚系が刺激されるためのようであります。
他の内服薬が効果がない時に初めてITBができることになっていて、外傷患者をたくさん診ていらっしゃる整形外科医の講師の方は、意外に内服のBaclofenが効くとおっしゃってたのが印象的でした。
Ashworth scaleというのがあるんだそうで、
Grade 1 筋緊張の増加なし
Grade 2 筋緊張の軽度増加。屈伸時のひっかかり。
Grade 3 筋緊張の明確な増加があるが、他動的に動かせる
Grade 4 筋緊張の増加著明で、他動運動困難
Grade 5 硬直
Grade 3の幅がやけに広いですねえ。これでも、髄注後の変化を追えるのですね。Grade 4でもGrade 1にまで低下するようです。
からカテーテルを挿入し、カテーテルの先端は椎体のTh10レベルですが、上肢にも多少は効くそうです。
薬液を注入するポンプを皮下に埋め込み、大体3ヶ月ごとに薬液を追加します。最初だけ埋め込んだ1ヶ月後。このときに初めてポンプから出ている薬液量をチェックできます。結構、やばいです。過量に投与してしまうと、傾眠、ふらつき、めまい、意識低下、呼吸抑制、痙攣発作、昏睡になります。ポンプ自体は2500 mの高山から水深10 mまでの圧には耐えられるそうで、槍や穂高はダメらしいです。カテーテルが抜けてしまうこともある上、ややこしいのですが、耐薬という機序不明の現象があって、効きが悪くなることがあるようです。このとき、休薬すると良いそうですが、離脱症候群を起こす危険性があります。もちろん、カテーテルが抜けてしまっても起きる可能性があります。悪性高熱に類似しているそうな。海外で26名の死亡例があります。最初に効くことを確認するために、bolus投与を行いますが、4-12時間は効き、効かないことはまずない、と。このときに1回量が多いので、実際に投与したときに効きが悪いと不満を言われる可能性が高いようです。効果は絶大ですが、合併症もそれなりにあって、整形外科医や脳外科医を含む数名のチームで行動する必要がありそうです。
- non-compressive radiculopathiesの原因
Infection
Herpes zoster
HIV
Cytomegalovirus
Borrelia burgdorferi (Lyme disease)
Inflammatory
Vasculitis
Sarcoidosis
Diabetic radiculoplexus neuropathy
Neuralgic amyotrophy
Neoplastic
Carcinomatous meningitis
Lymphoma
(Neurol Clin 207;25:373-85 詳細は本文をご覧下さい。)
- 結核性髄膜炎での虚血性脳血管障害
結核性髄膜炎は脳底部に炎症性病変を形成するため、Willis輪の血管に壊死性血管炎を起こすため、anterior-circulation infarctionが主に起こると言われていますが、他の機序としては、水痘症により血管が引っ張られるためという説もあります。しかし、シャントは脳梗塞を予防できません。結核性髄膜炎では6から41%で脳梗塞が起きると言われています。病変は基底核や皮質下白質に形成され、lenticulostriate arteriesに分布。局所的な脱力は梗塞によるよりは、結核腫や結核性脳炎など他の原因によるそうです。Dexamethasoneは死亡率を減少させますが、生存者での後遺症を軽減させることはできません。(J Watch Neurology 2006; 8 :22より)
40例の結核性髄膜炎を対象にした検討がされています(Cerebrovasc Dis 2005; 19 :391-5)。診断がやはり問題で、2種類のレベルが設定されています。Definite例はsmear染色あるいは培養で結核菌が証明された例。Probable例は臨床像とCSF所見が矛盾しないこと、さらに培養が陽性か神経外組織のsmear標本あるいは髄膜炎を起こしうる他の原因が除外されて抗結核薬治療が奏功すること。全例で標準的な抗結核薬が投与され、結核性髄膜炎stage 2あるいはstage 3では6週間のdexamethasoneが投与されました。12例(30%)で脳梗塞が認められました。3例は無症状、2例は髄膜炎発症と同時に出現。8例は多発性。5例ではlacunarで残りはlarge-artery。予後は不良で、2例は死亡し、全例後遺症を残しました。